上手に離れてストレスを軽くする!苦痛な「実母との距離の取り方」
メンタルアップマネージャ(R)の大野萌子さんが、ストレスをためない上手な人づきあいを教えてくれるこの連載。第7回のテーマは「実母との距離のとり方」です。遠慮がない実の親子だけに、ストレートな言い方でギスギスしたり、何歳になっても干渉されてうんざりしたりと、何かと苦痛な実母との関係。そんな悩み多き母娘の関係をどう見直したらいいか、教えてもらいます。
目次
あなたの厄介な実母はどのタイプ?
一緒にいるのが苦痛…、口うるさくて関わりたくない…。そんな読者の声をもとに、実母をタイプ別に分類してみました。4つのうち、あなたの実母はどのタイプですか?
【1】正しいのは自分! 我が強い「支配欲タイプ」
【読者の声】
・自分のやることが一番正しいといわんばかりに、いちいち指示してくる。
・人のアドバイスは一切聞かず、自分の意見を絶対に曲げない。
・言動が自己中心的で、「自分は悪くない」「自分のせいではない」と主張する。
支配欲タイプの母は、「こうあるべき」という考え方に固執して、それ以外の意見を受け入れられない性格。子育てにも人一倍熱心だったはずです。例えば、料理は毎日手作りにこだわる、何事も子どもの予定が最優先など、「こうでなければ」という思い込みが強いのが特徴といえます。このタイプは、「私のときはそうだった」という曖昧な理由や世間体を根拠に、娘に“従順”を求めがちです。
【2】同情で気を引こうとする「悲劇のヒロインタイプ」
【読者の声】
・口ぐせは「もう歳だから」「できない」「わからない」ばかりで、毎回うんざり。
・体は元気なのだから自分で考えて、自分で動いて欲しい。何事も子ども頼りな態度にイライラする。
・口を開けば言い訳やネガティブ発言ばかり。被害者意識が強く面倒くさい。
このタイプの母親は、いわゆる「かまってちゃん」。自分が“悲劇のヒロイン”になることで、周囲の気を引いて注目を集めようとします。特に、娘が結婚してしまうと、自分のものだった娘が取られた感覚になってしまい、結婚して何年経ってもその感情は変わりません。そんな寂しさから、歳をとった弱い自分、ネガティブな自分を過剰に主張して、娘の関心を引こうとしているのです。
【3】娘への口出しが頻繁過ぎる「過干渉タイプ」
【読者の声】
・ヒマがあれば電話をかけてくる母。たいした用事でもないのに本当に迷惑。
・LINEでそっけない対応をしたら、「ショックを受けた」と返信が。面倒くさくて、さらに連絡を取りたくなった。
・近くに住んでいる母は頼んでもいないのに、食事を持ってきたり、留守中に合鍵で勝手に入って掃除をしたり…。いい加減にしてほしい。
娘のやることが常に気になり、干渉してくるタイプ。この手の母親は他人との境界線が曖昧で、依存心が強いのが特徴です。中には、勝手にSNSをフォローして、娘の行動を逐一チェックすることも。娘のすべてを把握し、自分の思い通りにする。それにかけるエネルギーは強烈。根底には、母親自身が“自分”という存在をしっかり持っておらず、娘に自分の存在意義を投影していることがあります。
【4】育てた恩を振りかざす「くれくれタイプ」
【読者の声】
・生活が苦しいわけではないはずなのに、仕送りが欲しいといわれる。
・「旅行に行きたい」「あれが欲しい」など、ことあるごとにねだられる。
・「○○さんのところの娘さんは、△△してくれたそうよ」と、他の母娘を引き合いに出して、ひがまれるのが辛い。
・「育ててやった」「学費を払ってやった」と子育ての恩をチラつかせて、あれこれ要求をしてくる。
常に子どもに何かしてもらおうと考えているタイプ。育ててもらった親に子どもが感謝するのは当たり前のことですが、それを恩着せがましく主張して、自己中心的な要求をしてきます。また、自分が子どもに大切にされていることを周りにアピールしたい気持ちも強く、「いい娘を持った」と、自慢することも。
実母が苦痛なら、距離を置いてもいい
面倒な実母を4タイプに分類しましたが、「関わるのが苦痛…」と思うなら、無理せず距離を置くことを優先しましょう。どのタイプも対策は同じです。
こういう母親はほとんどの場合、「娘は自分の思い通りになる」と思い込んでいるもの。「言えば分かってくれるかも」という考えは、残念ながら通用しません。母親と折り合おうと自分が折れても、態度は大きくなるばかり。こちらの気持ちを察してくれるということがないので、「私はお母さんに合わせる努力をしているに」「なんとか変わってほしいのに、全然変わってくれない」と、ますます自分が苦しくなるだけです。
【対策1】関わる回数を減らす
具体的には「なるべく会う回数を減らす」「メールや電話が来ても、すぐに返事をするのをやめて、しばらくしてからまとめて返事をする」など、関わりを少しずつ減らしましょう。それが自分のためです。腹が立ったら、無理に向き合うよりも、ほどよくスルーしたほうが心の安定になります。
【対策2】「自分はこう思う」を伝える
どうしても我慢できないときは、はっきりと自分の気持ちを伝えるのもいいでしょう。ただし、「私はこう思っている」「私はこうしたい」と宣言するだけで十分。母親がどう思っているか、耳を傾ける必要はありません。話し合いを始めると、また根拠のない理由を並べられて、結局母親の言う通りになってしまいます。
【対策3】事前相談をやめ、事後報告にする
報告する必要があることは、事前に相談せずに事後報告にします。こちらの状況を伝えることが、余計な心配や口出しにつながります。こちらの情報を与えなければ、向こうも何がおきているかわからないので、だんだん口の出しようがなくなってきます。事後報告に慣れてもらい、不必要な干渉を防ぎましょう。
母親の呪縛から逃れられない「共依存」とは?
そもそも大人になっても実母との関係に悩む娘が多いのはなぜでしょう。問題の根っこにあるのは、子どもが小さいときから続く、母と娘の「共依存」です。
「共依存」とは、離れたいと思いながらも、離れられない関係。母親は娘に、娘は母親にストレスを感じながらも依存してしまう、歪んだ関係です。このような共依存は、母娘だけでなく夫婦間のDVでも多く見られます。
共依存の母親は、娘を自覚なしにコントロールしようとします。小さな子どもは母親の思い通りになりやすいので、いつの間にか自分の所有物のように錯覚してしまいます。娘に依存する母親は、自己肯定感が低く、支配することで「承認されている」「なんでも思い通りにできる」という気持ちや、「達成感」を味わおうとします。
また、娘の自立を避けるため「親の愛情」とか「あなたのため」という言葉にすり替えて、支配しようとし続けます。これは、「暴力」を「しつけ」とすり替えるのと同じ構造といえるかもしれません。
マインドコントロールから今こそ卒業を
一方で、小さい頃から、母親の言う通りにしてきた人は、ある種のマインドコントロールの状態にあるかもしれません。自分の子どもの頃を、振り返ってみましょう。
子どもの頃、自分ひとりで決めたことで失敗すると、「お母さんの言う通りにしなかったから」と言われたりしませんでしたか? そういう経験を積み重ねると、大人になっても自ら何かに挑戦したり、決断したりすることを避けるようになり、「なんでもお母さんに相談して決めよう」と、ずっと母親に依存してしまうのです。
今の関係から本当に脱却したいなら、母も娘もお互いが自立し、各自の人生を充実させること。母親と「距離を置く」ことは、母親を「見捨てる」ことでは決してありません。そこに罪悪感を持つ必要はないのです。これまでずっと実母に悩まされてきた人、苦痛を抱えてきた人は、今こそ関係を見直すとき。少しずつ「距離を置くこと」を実践してみてください。イライラ・モヤモヤする場面がひとつでも減るだけで、自分の心が楽になるはずですよ。
取材・文/工藤千秋 イラスト/地獄カレー
会話に困って話題を探してしまう、他人にどう思われているかが気になって仕方がない…。人と話すとき、気を使いすぎて人付き合いが面倒だと感じていませんか。その原因や人付き合いによる気疲れを減らす方法を解説します。
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