ストレスは頭に現る?癒しの「ヘッドセラピー」|ストレスオフ(5)
ストレスオフ・トレーナーの高橋昭子さんが、心と体を軽くするさまざまな方法をアドバイスしてくれる「ストレスオフ」連載。第5回のテーマは、「ヘッドセラピー」です。ストレスがリアルに現れやすい頭を、やさしくもんで深いリラクゼーションへ。今日からさっそくセルフケアを!
目次
現代人のストレスは、脳の使い過ぎが原因
スマホやパソコンを長時間使うことで、私たちの脳には毎日たくさんの情報が入ってきます。脳は1日に6万回も思考を繰り返していると言われています。そのため、常にお疲れモード…。脳の疲れ、大きなストレスに繋がります。
脳が疲れると、「自律神経」が乱れます。自律神経とは、血流や心拍など、生きるために必要な体のあらゆる機能をコントロールしている神経のこと。自律神経の乱れは、「交感神経」と「副交感神経」のバランスが崩れることで起こります。通常興奮したときや活発なときは「交感神経」が優位になり、寝ているときやリラックスしたときは「副交感神経」が優位になります。しかし、脳を使い過ぎると交感神経が優位に。眠りが浅くなったり、リラックスモードに切り替えられず、どんどん心身にストレスが溜まるのです。
全身リラックスに導く「ヘッドセラピー」って?
誰でも仕事や人間関係で悩み、日々さまざまなストレスを抱えていますよね。その疲れは、あなたの“頭”にはっきりと表れます。例えば頭皮が硬く頭がこったり、むくんだり、頭痛が続いたりします。
そんな頭に表れたストレスを癒すのが、ご紹介する「ヘッドセラピー」です。自分の心と体を守るためには、ストレスを事前に予防していくこと=「ストレスオフ」が欠かせません。このヘッドセラピーは、「日本ヘッドセラピー協会」代表理事、西川聡さんが考案したメソッドになります。私自身が西川さんのもとでヘッドセラピーを学び、今まで感じたことのない深い癒しやストレスオフ効果を体感したため、ぜひみなさんにも体感していただきたいと考えました。そこで今回は、西川さんにご相談のうえ、実際に学んだ内容と西川さんの著書をもとにお話させていただきます。
ヘッドセラピーは、ストレスから生まれる“脳と心と体の疲れ”を頭皮マッサージで癒すもの。「頭皮マッサージ」というと、頭皮をグイグイ指圧してしっかりもみ込むイメージが一般的ですが、このヘッドセラピーは、心と体を癒すことを目的に作られています。また、脳と脊髄(せきずい)周りをほぐすことで、深い癒しを感じられ、ヘッドセラピーで全身がゆるむと副交感神経が優位になり、溜まったストレスがきっと軽くなるはずです。
頭皮の動きで「ストレス度チェック」
頭皮の硬さには、心と体の健康状態が現れます。まずは頭皮に触って、自分のストレス状態をチェックしてみましょう。
片手の5本指で頭頂部を上につまみ、頭皮を動かします。自分の頭皮がどのように動くか、その感触を確かめます。
手はこのような形にして、指のハラでつまむように確認しましょう。
ふわふわで柔らかい→心身ともに健康
頭皮がふわふわで柔らかい人は、ストレスに強い「弾力かまぼこタイプ」。このタイプの頭皮は、ほっぺのように柔らかいのが特徴です。
カチコチで動かない→がんばりすぎ
頭皮が硬くてつまんでもほとんど動かない人は、完璧主義の人や、がんばり屋さんに多い「ガチ鉄板タイプ」。このタイプは、考えごとが多く、いつも脳がフル回転。緊張状態が続き、目の疲れや首・肩のコリなどが原因で血行不良になるため、頭皮が鉄板のように硬くなります。また、不眠にもなりやすいタイプです。
むくんでプヨプヨ→なんでもガマンしすぎ
頭皮は動いたらいいというわけではありません。頭皮がむくんでプヨプヨしている人は、他人を優先して自分を後回しにしてしまう「ユルこんにゃくタイプ」。原因は、体の代謝が悪くなり老廃物が溜まるから。なんでも溜め込み過ぎて心と体が限界になっていることも……。
頭皮チェックで「ガチ鉄板タイプ」と「ユルこんにゃくタイプ」だった人は、ストレスで心も体もぐったりしていませんか? ストレスをスッキリさせて心を元気にしてくれるのが「ヘッドセラピー」になります。
気持ち良くなる「ヘッドセラピー」6つのコツ
ヘッドセラピーの基本は、頭を優しく扱うことです。決して痛いほどグイグイ押してはいけません。実際にヘッドセラピーを行う前に、効果を最大限に感じるための6つのコツをおさえましょう。
【ヘッドセラピーのコツ】
(1) 爪で頭皮をかかない。
(2) 生卵を持つようなイメージで頭皮に触れ、手は頭を握り潰さないように置く。
(3) 頭皮を押すときは、拇印を押すくらいの力加減。強く押しすぎず気持ちいいと感じるくらいがよい。
(4) 頭皮を押したり離したりするときは、息を止めず深呼吸をしながら優しくゆっくりと行う。
(5) 一箇所だけを集中してほぐすのではなく、頭の全体をほぐしていく。
(6) 自分で自分を癒すつもりで楽しみながらやる。
「押す→離す」の動きは、できるだけゆっくり行うのがポイント。特に、離すときは血行が促進し、副交感神経が優位になります。次第に全身がゆるみ、溜まっていたストレスから解放されるでしょう。それでは、実際にヘッドセラピーを試してみましょう。
【生え際をほぐすヘッドセラピー 1】
おでこの生え際をほぐしていくヘッドセラピーです。頭のセンターラインにはたくさんのツボが集中。ここはその始まりになるポイントのため、とても気持ち良く感じます。
<使うのはここ>
指の先の部分「指頭(しとう)」を使う。
(1)人差し指、中指、薬指の「指頭」を揃える。爪が伸び過ぎていないかチェックを。
(2)おでこの生え際のツボ「神庭(しんてい)」に「指頭」を置き、指3本が均等の力になるように、足元に向かってやさしく押す。5秒かけてゆっくり押し、ゆっくり離す。これを3回繰り返す。
押すのは、おでこの生え際のツボ「神庭(しんてい)」。「神庭」は、精神的な不調に関係するツボです。
机にひじをついて行うと、手が固定されてやりやすくなります。
【動画】生え際をほぐすヘッドセラピー
【頭を包み込むヘッドセラピー 2】
耳の上をたどっていくとポコっと頭がい骨が盛り上がっている「ハチ」の部分があります。「ハチ」を手で包み込んで全体をやさしくほぐしていきます。
<使うのはここ>
親指のつけ根にある、少し盛り上がった部分「手根(しゅこん)」を使う。
<やり方>
(1)髪の毛をしっかりかき分けて、ハチに手根を当てる。髪の毛の上から押すのではなく、手のひらが頭皮に当たるように。
(2)頭皮を左右から押しながら、5秒かけてゆっくり上に持ち上げる。ゆっくり手を下に下ろして頭皮から離す。まぶたを閉じて深呼吸しながらリラックスして行う。これを3回繰り返す。
【動画】頭を包み込むヘッドセラピー
ストレスオフのために、この2つのヘッドセラピーを朝と夜に行いましょう。朝行うと目覚めがスッキリしてパフォーマンスが向上し、家事や仕事もはかどります。夜は、1日のストレスを解放してリラックス効果を高めます。眠る直前に行えば、ぐっすり眠ることができますよ。興奮した気持ちを落ち着かせてくれるので、緊張しているときもおすすめです。
ヘッドセラピーは、頭皮をほぐすことで直接脳に働きかけることができるスゴイ技。脳の疲れを取り除くことで、脳がコントロールしている全身を元気にしてくれます。
頭皮が硬くなったりむくんだりしていたら、ストレスを抱えている証拠。ヘッドセラピーでやさしく頭皮をほぐして、心も体もストレスから解放されましょう。
※体調不良の日やお酒を飲んだ後は、やめましょう。片頭痛中や頭皮に炎症があるときもNG。また、持病のある人は医師に相談しましょう。
参考/
西川聡 著『頭皮マッサージで心と体を癒す ヘッドセラピー入門』(マイナビ文庫(2015)
日本ヘッドセラピー協会公式サイトhttps://www.headtherapy.com/
編集Kが癒しのヘッドセラピーを体験!
ご紹介したヘッドセラピーを、編集Kが高橋さんに施術してもらい、実際にその心地よさを体験しました。
今回は、写真のようにふとんに仰向けに寝てから行いました。
ふだん美容院などでヘッドマッサージをやってもらうと、頭皮がガチガチに固すぎて痛くて涙が止まらない編集K。ギュギュっと頭皮を押される度に、「うぅ、痛い、でもこれが効くのか……」とガマンしていました。
髙橋さんに施術してもらったヘッドセラピーは、痛みや刺激はほぼなし。頭皮を押しているというより触れている程度のソフトタッチで、気づかないうちにまどろみの世界へ。頭をやさしく包み込まれるような感覚で、自然と呼吸が深くなっていきます。そして眠りに入るまではいかないものの、夢と現実の世界を行ったり来たり……(このあたりで完全に仕事だったことを忘れました)。全身の力がほどよく抜けてリラックスできている感じが自分でも分かりました。
終わってから高橋さんに聞いたところ、ほんの3分くらいでリラクゼーション状態に入ったそう。口がゆるんでパクパクしたり、手足がピクピクしたりするのがリラックスのサインとか。
20分程度のヘッドセラピーでしたが、一番驚いたのが目のスッキリ感! 視界が明るくなってシャキッとしました。しかも、肩をもんだわけじゃないのに、なぜか首や肩も軽くなって、マッサージに行ったあとの爽快感みたい。頭をマッサージしただけなのに、こんなに全身が軽くなるなんて驚きました! ストレスフルで心と体が疲れている人は、ぜひヘッドセラピーで癒やされてくださいね。
撮影/代 和佳子
[ 著者 ]