毎月つらい「生理痛」に。東洋医学のセルフケアで和らげるには?|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「生理痛」がテーマ。毎月つらい女性の痛みを、東洋医学で和らげる対策やツボを紹介します。
目次
東洋医学で「生理痛」の原因は、巡りの悪さと栄養不足
多くの女性が毎月つらいと感じている「生理痛」。生理中は痛みや体のだるさなどがあり、仕事や家事に影響が出てしまう人がほとんどではないでしょうか。
東洋医学で女性の体は、「気=エネルギー」と「血=血液など」が充実することで生理が始まるとされます。そして生理が終わると、また体が気や血を補充する、というサイクルになっています。生理中は、気と血が空っぽになるため、東洋医学の視点からみても、無理は禁物といえます。
生理のときの痛みの原因は、二つあります。一つ目は、「通らなければ痛い」という意味の「不通則痛(ふつうそくつう)」。これは、体の巡りが悪いことによる痛みです。 二つ目は「不栄則痛(ふえいそくつう)」といって、栄養になるものが不足するために起こる痛み。この二つの原因があると考えられます。
巡り不足? 冷え? 3つの「生理痛」タイプを解説
ひと言で「生理痛」といっても、東洋医学の視点から見ると、次の3タイプに分けられます。症状によっては、複数のタイプに該当する場合もあります。
(1)巡りが悪くて痛む「気滞血瘀(きたいけつお)」タイプ
生理痛がある人の多くに当てはまるのが「気滞血瘀(きたいけつお)」タイプ。ストレスが多く、気と血の両方が滞って流れが悪いため、体の外に血を押し出すときに痛みを感じます。痛みの原因は「不通則痛(つふうそくつう)」。
●「気滞血瘀」タイプの目安
・生理による痛みがひどい(激痛)
・生理1~2日目が最も痛い
・血の塊が出る、ドロッとしている
・経血の色が暗い
・生理前の体調不良がひどい
(2)寒邪が痛みにつながる「冷え」タイプ
寒さの邪気=寒邪(かんじゃ)が体に入ることで痛むのが「冷え」タイプ。もともと冷え体質の人や、冷たい飲み物、食べ物をよく食べる人、薄着で体を冷やしやすい人などが当てはまります。お腹を温めると生理痛が和らぐ場合はこのタイプ。
●「冷え」タイプの目安
・体を温めると生理痛が楽になる
・体が冷えると生理痛がひどくなる
・手足が冷えている
・経血の色が暗い
(3)エネルギー不足で痛む「気血両虚(きけつりょうきょ)」タイプ
痛みの原因が「不栄則痛(ふえいそくつう)」に当てはまるのが、「気血両虚(きけつりょうりょ)」タイプ。気と血の両方が不足していて、生理を乗り切るエネルギーが足りないことで痛みが起こります。激痛ではないけれど、生理の後半までずっと“シクシク”痛む場合は、このタイプの可能性大。
●「気血両虚」タイプの目安
・生理の後半に痛みが強くなる
・激痛まではいかないが、シクシク痛みが続く
・腰周りがずっとだる重い
・虚弱体質
・経血の色が薄め
3タイプ別「生理痛」におすすめの食養生
生理痛を和らげるには、痛みが出てから対策するのではなく、日ごろから自分の体質を補うための食事を摂ることが大切です。3タイプそれぞれの体質改善に役立つ食養生をご紹介します。
「気滞血瘀」タイプは巡りアップ食べ物を
気と血の両方が滞っている「気滞血瘀」タイプは、巡りを良くする食べ物を摂ってください。
気の巡りを良くする食べ物…みかんやレモンなどの柑橘系食材、しそ、パクチー、春菊、三つ葉、セロリ など
血の巡りを良くする食べ物…玉ねぎ、らっきょう、青魚(サバ、いわし、アジ)、なす など
「気滞血瘀」タイプにおすすめのドリンク
気と血の両方の巡りをアップさせるために、次のドリンクがおすすめです。
黒糖しょうがドリンク…黒砂糖としょうがを混ぜて、温かいうちに飲みましょう。
・しょうが(すりおろし)…1かけ
・黒砂糖…約大さじ1
・お湯…約200cc
レモンティー…紅茶が血の巡りを、レモンが気の巡りを良くします。ホットで飲みましょう。香りのいいハーブティーも効果的です。
「冷え」タイプは体を温める食べ物を
「冷え」タイプは、スパイスや薬味、肉類など、体を温める食べ物を摂りましょう。薬味は、おかずや味噌汁などにプラスすると取り入れやすいですよ。味噌汁やスープなど、温かい調理法で。
体を温める食べ物…しょうが、ネギ、にんにく、唐辛子、山椒、シナモン、海老、肉類(ラム肉、牛肉)、栗、ココア など
「冷え」タイプはカイロで温めるのも効果的
「冷え」タイプは、体を温めると生理痛が楽になるのが特徴。ふだんから、腹巻を活用したり、冷えていると感じたらカイロを貼ったりして、体を冷やさない工夫を。温めるものが近くになければ、自分の手をお腹に当てて温めるだけでもOK。
「気血両虚」タイプは気血を補う食べ物を
「気血両虚」タイプは、気と血、どちらも不足していて、それにより痛みが出やすい状態です。それぞれを補う食材を積極的に摂り、エネルギーを補充しましょう。
気を補う食べ物…サツマイモ、かぼちゃ、トウモロコシ、にんじん、豆類、米 など
血を補う食べ物…クコの実、ブルーベリー、いちご、レバー、小松菜、ほうれん草、黒ゴマ、黒豆、ひじき、きくらげ など、赤いものや黒いもの
おすすめのドリンク…ほうじ茶、紅茶
「気血両虚」タイプは無理をしない、休むが鉄則
「気血両虚」タイプは、元気に過ごすためのエネルギーが足りていません。そのため無理をすればするほど、生理痛が悪化する可能性があります。日ごろから、疲れたら休む、体や心に無理をしない生活を送りましょう。
3タイプ別「生理痛」対策のツボ
生理痛を和らげるツボを、タイプ別にご紹介します。痛みが出てから押すよりも、ふだんからツボ押しを習慣にすることをおすすめします。
気滞血瘀タイプのツボ「三陰交(さんいんこう)」
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指幅4本分上の場所。
押し方:足首の内側をつかむようにして、親指の腹で押します。
気滞血瘀タイプのツボ「太衝(たいしょう)」
太衝(たいしょう):足の甲の親指と人差し指の骨の間を、上に向けて指を滑らせて、指が骨と当たり、止まるところのへこんだ場所。
押し方:親指の腹を当てて、やさしく押して軽く揉むようにしたり、回すようにしたりして押します。
冷えタイプのツボ「腎兪(じんゆ)」
腎兪(じんゆ):骨盤の上、ウエストラインあるツボ。背骨から指2本分外側の左右にあります。
押し方:腰に手を当てて、親指で体の中心に向かって押し込みましょう。押しにくい場合は、仰向けに寝て、ゴルフボールやテニスボールをツボの下に置いて刺激を。
冷えタイプのツボ「関元(かんげん)」
関元(かんげん):おへそから指4本分下にあるツボ。
押し方:やさしくなでるように押したり、温めた手をそっと置くだけでも効果的です。カイロを貼って温めるのもおすすめ。
気血両虚タイプのツボ「足三里(あしさんり)」
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:骨の方に押し込むように、親指でグッと力を込めて、イタ気持ちいい強さで押しましょう。
気血両虚タイプのツボ「血海(けっかい)」
血海(けっかい):ひざのお皿の上、内側の角から指3本分上がったところ。
押し方:太ももに対して、上から垂直にイタ気持ちいい強さでグーっと押します。
生理痛がつらいときは薬にたよってもOK
生理痛がどうしてもつらいときは、仕事や家事などに影響が出て生活が困難になってしまいます。そんなときは、我慢せずに薬にたよって、生理が終わったら、食養生やツボ刺激で体質改善を目指しましょう。
また、「生理痛で病院に行くなんて」と思う必要はありません。生活に支障が出るほどの痛みがあるなら婦人科の医師、もしくはお近くにある漢方薬局に相談を。
生理などの女性のお悩みには、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」など、血を補ったり巡りを良くする漢方が代表的です。ただし、体質によりますので、少しでも不調を感じているならば、自分で判断せずに漢方薬局に相談してみてください。
今月の養生ポイント:女性の生理は体調のバロメーター
女性にとって生理は、痛みなどの体調不良があると、ただつらいだけのものと感じますが、実は体調のバロメーターになる大切なもの。
今月は生理痛がひどかった、塊のようなものが出たなど、体からのサインを感じ取れる貴重な数日間でもあります。生理前の一か月、無理しすぎていなかったか、体を冷やしすぎていなかったか、睡眠不足が続いていないかなど、ぜひ生活を振り返るきかっけにしてみてください。
気や血が空っぽになる生理期間は、体も心も“いつもの自分”ではありません。仕事も家事も、いつも通りにできなくて当たり前。思いっきり甘やかして、自分で自分を労わってあげましょう。
イラスト/植松しんこ
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