「寂しさ」とどう付き合う?|玉井仁さん ラク生き相談室 出張版
雑誌『からだにいいこと』との連動企画である本連載。臨床心理士の玉井仁さんが、読者のみなさんのお悩みを通し、「ラク」に生きるための考え方・コツなどをお伝えします。今回のテーマは「寂しさとの付き合い方」です。
目次
今回のお悩み:“役に立つ”活動ができない日々、私は必要とされている?
F・Cさん 52歳のお悩み
専業主婦ですが、これまでPTAの役員やボランティアなど「人の役に立つこと」を積極的に行ってきました。
でも、コロナ禍で人と会う機会が減り、そうした活動もすべて中止に。人に喜んでもらえることが嬉しく、生きがいでもあったのに……。
またこの数年のうちに、介護をしていた祖母と父が亡くなり、母は施設に入居。がんばってきた介護にもひと段落つきました。
偶然とはいえ同じ時期に、LINEの連絡先がすべて消えるというアクシデントまで発生。「私を必要としてくれる人はいるのだろうか」と寂しさを感じてしまいます。
玉井さんから回答:エネルギーがわいたら、新たな取り組みを探して
誰かの役に立つことに喜びを感じられるのは、とてもすてきなこと。相談者さんはすばらしい方だと思います。
「私を必要としてくれる人はいるのだろうか」とお悩みですが、まずは「いますとも!」と大きな声でお伝えしたいです。
寂しさは、エネルギーを注いできたからこそ
ボランティアなどの活動が中止になったり、介護から手が離れたりすることで、寂しさを感じるのは当然のこと。寂しさは、それだけ一生懸命にやってきたことの証です。
そこに、友人・知人の連絡先が分からなくなってしまったタイミングまで重なったとか。相談者さんは今、落とし穴に落ちたような苦しみを感じているかもしれません。本当に大変でしたね。
でも、そこで「必要とされていない」と感じてしまうのは、ちょっと思考が飛躍しているかもしれませんよ。
今まで誰かのためにがんばってきたのは、すばらしいこと。それがなくなったからといって、あなたが「誰からも必要されていない」ということには決してなりません。
まずはひと息ついて、自分に対して「よくやってきたよね」とねぎらって。そのうえで、次に一生懸命取り組めることを探してみませんか。
「役に立ちたい」という思いそのままに、新たな一歩を
介護などの大変な状況がひと段落したときによく見られるのは、「無気力」「他人のことはどうでもいい」という“燃え尽き”状態。
でも、寂しさを感じている相談者さんは、「また誰かの役に立ちたい」と思っていますよね。少し休んだらエネルギーがわいてくるのではないかと思います。そして、また一つひとつ始めていきましょう。
次に取り組むことは、相談者さんの「役に立ちたい」「お世話をすることが好き」という思いの先にあるといいですね。新たなボランティア活動を探しても良いですし、仕事を通じて誰かの役に立つという選択も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
次の活動を通じ、新しい人間関係がつくられると、世界がまた広がっていくかもしれません。焦らずゆっくり探してみましょう。
今月のラク生きヒント:「お世話になるだけ」と思い込まないで
人は誰でも歳を重ねます。「誰かのお世話がしたい」「誰かの役に立ちたい」という生き方をしていた人が、新たに何かを始めようと思ったとき、「世話をかける側になってしまうのではないか」と躊躇してしまうこともあるでしょう。
でも、その躊躇は不要な思い込みかもしれません。あなたとかかわることで、相手が「この人の役に立っている」とやりがいを感じたり、お互いにやさしさを感じ合ったりすることもあるのです。
雑誌の「ラク生き相談室」もチェック
雑誌『からだにいいこと』では、毎号、玉井さんが別のお悩みにも答えています。人生をもっとラクに生きるためのヒントを知りたい方は、ぜひ、ご覧ください。
取材・文/馬渕綾子 イラスト/ARI
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