水の飲み過ぎは1日何リットルから?症状と適切な量を解説
水は生きていくうえで必要なものですが、飲み過ぎも体調不良の原因になるおそれがあります。1日に何リットル以上の水を飲むと、飲み過ぎになるのでしょうか? 水を飲み過ぎたときに起こる症状や、1日に飲んでも良い適切な量について解説します。
目次
水は1日に何リットル飲むと飲み過ぎになる?
しっかりと水分を摂ることは、健康や美容において大切なことです。日頃から、できるだけ多くの水を飲むことを意識している人もいるのではないでしょうか。しかし水を飲み過ぎると、かえって健康を害してしまうこともあります。では1日にどれぐらい飲むと「飲み過ぎ」になってしまうのでしょうか?
1日に必要な水の量は1.5~2リットルが目安
人間は、体重によって増減はありますが、健康な成人の場合、1日の生活で平均2.5リットルの水を消費しています。 これは、汗や皮膚呼吸によって空気中に放出される分や、尿や便として排せつされる分の合計です。
たとえ「今日は暑くないから汗をかいていない」と思っていても、水分は皮膚や呼吸を通して排出されています。想像しているよりも多くの水を消費していると思う人もいるでしょう。
このうちおよそ1.3リットル程度は、食事を摂ることや体内で作られると考えられます。これは食べ物に元々含まれる水分や、タンパク質や脂肪などの代謝によって得られる水です。
そのため、残りの1.2リットル程度を、飲み物として摂取する必要性があります。
水の飲み過ぎは3リットル程度から
実際には、1日に必要とされる水の量は、体重や生活習慣によって多少の差があります。また、夏の暑い日など汗をたくさんかいたときは、多めに水分を取ったほうがよいケースもあるでしょう。
何リットルの水をどのくらい飲んだら飲み過ぎ、という明確な基準はありませんが、1日の水分摂取が4リットルを超えるなど、間違った飲み方で大量に飲んでしまう場合には、水の飲み過ぎにより「水中毒」になる危険が高まります。
水中毒とは? 水の飲み過ぎで起こる症状
水中毒とは、水の飲み過ぎによって起こる症状のことをいいます。
水中毒でどのような症状が体に起こるのか、軽度の症状と、重度の症状とに分けて解説します。
軽度なものはむくみ、頭痛、疲労感など
水中毒を起こすと、まずはめまい、むくみ、頭痛、疲労感といった症状が起こります。
これらの他に、水を多く摂っていることで、尿や便などの排せつにも変化があらわれます。尿の量や回数が増える(多尿・頻尿)、便に含まれる水分量が増えて下痢になるといった症状が見られる可能性があるでしょう。
重度になると意識障害や呼吸困難も!
重度の水中毒になると、嘔吐や意識障害、呼吸困難、けいれんや錯乱といった症状が起こる可能性もあります。こうした症状がみられたときは、すぐに救急車を呼んで対応しましょう。
実際に水の飲み過ぎによって死亡事故が起こった事例もありますので、どこか体調がおかしいと感じたときや、重度といわれる症状に心当たりがあれば、すぐに病院を受診し、内科に相談しましょう。
体調不良の原因は体内のナトリウム濃度の変化
水中毒による体調不良は、体内のナトリウム濃度が変化することで起こります。
ナトリウムとは人体の機能を維持しているミネラルの一種です。主な働きとして体内の水分バランスや浸透圧の調整などを担い、他にも神経の情報伝達や筋肉の収縮を正常に保つ役割を果たします。細胞内外のミネラルバランスを保つことも、ナトリウムの仕事です。ナトリウムのなかでも代表的なものには塩化ナトリウム、つまり「塩分」があります。
人が正常に生命を維持するためには、体内のナトリウムの濃度を一定に保つ必要性がありますが、水分を多く摂り過ぎると、体内のナトリウムの濃度が薄くなってしまいます。この状態を「低ナトリウム血症」と呼びます。
低ナトリウム血症になると疲労感や嘔吐感、むくみ、頭痛などが起こります。これが一般的に「水中毒」と言われる症状です。
「健康のために」と考えて水をたくさん飲んでいる人も、体内のナトリウム濃度を維持できるような水分の摂取量を心がけましょう。
水の飲み過ぎは腎臓にも負担をかける
体内での水分の処理は、主に腎臓が行っています。腎臓は、代謝によって生成されるアンモニア、尿素、尿酸などの体内に不要な“老廃物”をろ過し、さらに余分な水分を尿として排出する役割を担っています。
水を飲み過ぎると腎臓の働きが過剰になってしまうため、腎臓にも負担がかかります。
腎臓で処理をしきれなかった水分は体内に溜まり、低ナトリウム血症を引き起こす原因になります。このような理由からも水の飲み過ぎは避けるべきであると言えます。
水を飲み過ぎると水太りするって本当?
よく、水を飲み過ぎると「水太りする」と言われますが、これは本当のことなのでしょうか?
水にはカロリーがないので、水によって体重が増える、ということはありません。体重計に乗る直前に水を飲めば、飲んだ分だけの量が体重として加算され、普段よりも体重が少しだけ増えるでしょう。ただし、飲んだ水が体脂肪になっているわけではないので、「太った」とはまた違う状態です。
一般的に「水太り」といわれる状態は、「むくみ」を指します。原因は水の飲み過ぎではなく、なんらかの原因で体内の水分が正常に排出されなくなっていることにあると考えられます。
水太りを解消するには、運動をする、塩分の摂り過ぎを防ぐなどの方法があげられます。さらに、水分が不足しすぎると、逆に体が水分を溜め込もうとして、むくみが生じる場合があります。飲み過ぎにならない範囲での水分摂取が大切です。
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水の飲み過ぎを予防するための対処法
ついつい水を飲む量が増えてしまう、という人は、あらかじめ飲む量を制限する工夫をしてみましょう。
次からは水の飲み過ぎを予防するための対処法についてご紹介します。
短時間でたくさんの水を飲まない
例えば運動終わりにコップの水を一気飲みしたり、ひと休みのつもりでペットボトルの飲料をがぶ飲みしたり……。
短時間で一気に水を飲むと、自分で思ったよりも多くの水分量が体内に入ります。体内のナトリウム濃度がいきなり下がるので、場合によっては水中毒の初期症状につながってしまうことがあります。
のどが渇いたら、まずはコップ1杯程度の水を飲みましょう。その後も、がぶ飲みせずに少量の水をちょこちょこと飲み、1日の合計量が多くなり過ぎないように気をつけましょう。
水を飲まずにうがいをする
のどが渇いているだけではなく、口の中が渇いているときにも水を飲みたくなりますよね。
この場合、水を飲むかわりにうがいをすると、口の中がうるおって気持ちを落ち着かせることができます。
うがいなら体内に水分がほとんど入らないため、水中毒も予防できます。ふだんから水の飲み過ぎが気になる人は、うがいの習慣を取り入れてみましょう。
水ではなく経口補水液を飲むようにする
医療用として使われる「経口補水液」は、薬局、ドラッグストア、スーパーなどで手軽に購入することができます。
経口補水液には水では補うことのできない、ナトリウムをはじめとするミネラルや、糖質が含まれています。水を経口補水液に置き換え、こうした成分を同時に摂取することで低ナトリウム血症を防ぐことができる、という考え方です。
ただし経口補水液も飲み過ぎると、今度は塩分の摂り過ぎなどが懸念されます。経口補水液の適量は年齢によって違い、学童~成人では500ミリリットル~1リットルといわれています。市販品ではラベルに記載されていることもありますので摂取量を守って飲むようにしてください。
正しい水の飲み方
それでは、正しい水の飲み方について解説します。量だけではなくタイミングや温度についても参考にしてみてください。
適したタイミングで少しずつ飲む
1日の中で意識して水を飲みたいタイミングは、次の5回です。
- 起床直後
- 食事中
- 運動の前後や最中
- 入浴の前後
- 就寝前
これらのタイミングで、水をコップ1杯ずつ程度飲むことで、1日に必要な水分を十分に摂りつつ、飲み過ぎを防ぐことができるでしょう。
適温は8~13℃程度がおすすめ
健康的な水分摂取に適した水の温度は、8~13℃程度だと言われています。
これは、常温(15~25℃程度)よりやや低めの温度です。冷蔵庫で冷やした水に、氷などを入れずに飲めばちょうどいい温度になります。
この温度帯の水は、さらに冷たい水に比べて体内への吸収が穏やかと言われています。体を冷やしすぎないちょうどいい温度の水を飲めるよう、常備しておくのもおすすめです。
量は1日2リットル以下程度に
1日に飲む水の適量についてはすでに触れたとおり、1日2リットル以下に抑えることが肝心です。
タイミングに合わせた飲み方をしていれば大幅に飲み過ぎてしまうことはないはずですが、気になる場合は自分のコップ1杯が何ミリリットルくらいなのか、そして今日は何杯飲んだかなどを気にかけてみましょう。
お茶やコーヒーは適量を守って
過去には、お茶やコーヒーには利尿作用があるため水分補給にならないと言われていたことがありました。しかし近年、これは必ずしも事実ではないことがわかってきています。
お茶やコーヒーの形で摂取した水分も、1日の水分量としてカウントしてもよいでしょう。ただしカフェインの摂り過ぎには注意が必要です。
一般的にカフェインの適量は、お茶やコーヒーをカップ4~5杯(マグカップなら2.5杯)まで、と言われています。飲み過ぎると、嘔吐や手足のしびれ、動悸、悪寒、意識消失、最悪は心配停止に至るカフェイン中毒を引き起こすこともあるので、適量を超えないようにしてください。
水の飲みすぎは漢方薬で対策を
水を飲みすぎてしまうのは、口の渇きやほてりなどを感じているからかもしれません。そんなときには、漢方薬の使用を考えてもいいでしょう。
漢方薬には水分代謝を整えるものがありますが、口の渇きをうるおす、口が渇く状態を改善改善する、水太りやむくみに効果があるものなどがあります。
漢方薬は自然由来の生薬成分が穏やかに働くので、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされているのもメリットといえるでしょう。心と体のバランスを整え、さまざまな不調を根本的な解決へと導くものです。
次から、水の飲み過ぎに応用できる漢方薬を4つ紹介します。
六味丸(ろくみがん)
疲労感があって、口が渇いてほてりを感じるようなタイプに用いられます。
五苓散(ごれいさん)
水の代謝を改善する漢方薬で、口が乾いて尿量が減少しているようなタイプのめまいやむくみ、下痢、頭痛などに用いられます。
温清飲(うんせいいん)
血の巡りを改善し、熱をとる働きがあります。口の渇きや皮膚の乾燥、ほてりやイライラを感じている方に向いています。
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
麦門冬という口腔や気道を潤す生薬が含まれています。乾いた咳がでるひとに用いられ、口渇に応用されています。
漢方薬を選ぶときに重要なのは「その人の状態や体質に合っているか」ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
どの漢方薬が自分に合うのかを見極めるためには、プロの力を借りるのがおすすめです。最近はオンラインで漢方相談ができるサービスが増えています。人工知能(AI)を活用し、体質に合う漢方薬をマッチングする「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。漢方に詳しい薬剤師が一人ひとりに効く漢方薬を見極めてくれます。
まとめ:水を飲み過ぎたときは水分量を制限して対処を
1日に大量の水を飲んでおり、倦怠感や頭痛などの軽い体調不良がある場合、原因は水の飲み過ぎかもしれません。心当たりがあるなら、1日に飲む水の量を適量近くまで減らし、様子を見てみることをおすすめします。
体調不良が改善しないなど、心配なことがあれば、自分で判断せず医療機関を受診しましょう。
水分をとるタイミングに気をつけて、口が渇いただけのときはうがいをするなど、適切な水分摂取量を保てるように工夫してみてください。
[ 監修者 ]