夜中に何度も目が覚める原因は?病気の可能性や不眠の対処法
夜中に何度も目が覚めることが続くと「もしかして不眠症?」「歳のせい?」など、不安になりますよね。実は眠りのお悩みは、ストレスの影響や病気が隠れている場合も。原因や考えられる病気、対処方法を解説します。
目次
夜中に何度も目が覚めるのはなぜ?主な7つの原因
夜中に何度も目が覚める原因は人によりますが、何気ない日常の行動や環境が関係していることがあります。原因が予測できれば、自分にあった改善策や対処法がわかります。
次から、一般的に考えられる原因を7つ解説します。
加齢による不眠、夜間頻尿など年齢的な問題
年齢を重ねると、夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪くなるなど、睡眠にも変化が出てきます。
一般的に人は年齢を重ねると、眠りが浅くなります。睡眠時は浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」を交互に繰りしていますが、年齢が高くなるにつれ、深い眠りの「ノンレム睡眠」の時間が短くなります。よって眠りが浅くなり、夜中に目が覚めることが増えるのです。
また、浅い睡眠は夜間頻尿にも繋がります。夜間頻尿とは、1回以上排尿のために起きる状態を指し、加齢に伴い増える傾向にあります。原因は水分を多く取ることや、病気や薬による影響などさまざまですが、加齢による眠りの浅さも考えられます。
うつやストレスなど精神的な問題
心配事や不安、イライラすることがあって眠れない日や、夜中に何度も目が覚める日は誰しも経験があるでしょう。日常で溜め込んだストレスは、不眠の原因になります。一時的な問題ならよいのですが、眠れない状況にますます不安や焦りを感じて長期間不眠が続いてしまう……など悪循環に陥るケースも。
また、長期的に憂うつな状態が続いたり、無気力になったりするなど、「うつ」の症状として不眠が現れることもあります。特にまじめで神経質な性格の人ほどストレスを抱え込みやすく、不眠やうつになりやすい傾向にあり、注意が必要です。
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更年期以降のホルモンバランスの乱れ
「更年期」とは、生理が終わる閉経前後の10年間のこと。閉経が近づくと女性ホルモンが大きく低下するため、その影響で体や心にさまざまな不調や症状が現れます。その後も女性ホルモンは減り続けます。
こうした女性ホルモンの減少がイライラや落ち込みを引き起こし、眠りも浅くなるため、夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪いなどの不眠の症状が起きることがあります。
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睡眠時無呼吸症候群などの病気による影響
「睡眠時無呼吸症候群」とは、眠っている間に「10秒以上呼吸をしていない状態」を繰り返す病気です。肥満やあごの小ささなどの影響から、眠っている間に空気の通り道の気道が狭くなり、無呼吸の状態になるのです。すると酸素が体内に行き届かず苦しくなるため、呼吸がうまくできず途中で起きてしまう原因になります。
ほかにも、眠っている間に脚や腕がピクピクと周期的に動く「周期性四肢運動障害」なども、眠りを妨げるといわれています。
このように、夜中に何度も目が覚めるのは病気が影響しているケースも考えられます。眠っている間に起こるため、本人が気づかないうちに睡眠の質が低下しています。
睡眠時の環境
睡眠時の騒音や明るい光、湿度や温度など、環境が眠りを妨げているケースもあります。
また、テレビやスマートフォンの画面から出る「ブルーライト」が睡眠に影響していることも。寝る前に強すぎる光を見ると、睡眠を促す「メラトニン」というホルモンの分泌を妨げ、寝つきを悪くしたり、睡眠の質を下げたりします。
生活サイクルの問題
交替勤務やシフト勤務などによる生活サイクルの変化は、人の体に備わった体内時計を乱れさせ、睡眠の質を下げる原因に。
例えば夜勤をすると、実際の昼夜とは逆転の生活になり、体内時計とズレが生まれます。すると、本来分泌される睡眠ホルモンの「メラトニン」の分泌が抑えられ、夜勤後にスムーズに寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりします。
アルコールや喫煙など嗜好品の影響
アルコールやタバコは、睡眠の質を下げる原因になります。
「お酒を飲むと、よく眠れるのでは?」と感じる人もいるでしょう。確かに適量のお酒には入眠効果があるといわれていますが、飲みすぎると途中で目が覚めるため実は逆効果です。アルコールには利尿作用があり、夜中に目が覚める原因に。
また、タバコに含まれている「ニコチン」には覚醒効果があります。タバコの量が増えると体内のニコチンの量も増え、眠りの妨げになります。
夜中に何度も目が覚めるのは不眠症?
夜中に何度も目が覚める状態は不眠症なのでしょうか。くわしく見ていきましょう。
不眠症とは不眠が一カ月以上続く状態
不眠症とは「長期間よく眠れない状態が続き、心身や日常生活に影響を与える状態」を指します。具体的には一カ月以上、「途中で起きてしまう」「眠りが浅い」など睡眠に影響がある状態のことをいいます。
こうした不眠状態が続くと、日中に強い眠気や倦怠感、抑うつや疲労感など、心身にさまざまな悪影響が起こります。
不眠症には4つのタイプがある
一言で不眠症といっても、4つのタイプが存在しています。それぞれの特徴を紹介していきます。
入眠障害
寝つきが悪くスムーズに眠れない状態を指します。布団に入っても眠るまでに30分以上と長時間かかるケースを「入眠障害」といいます。
中途覚醒
寝つきは問題がなくても、寝ている途中で何度も起きてしまう状態を「中途覚醒」といいます。
早朝覚醒
「早朝覚醒」は、朝早くに起きてしまい、それ以降眠れない状態を指します。具体的には2時間以上、普段よりも早く起きる状態のことをいいます。
熟眠障害
睡眠時間は確保できているにもかかわらず、「よく眠れた気がしない」と不満に感じる状態は「熟眠障害」です。
夜中に何度も目が覚める状態は「中途覚醒」
これまで解説した内容から、夜中に何度も目が覚めてしまうのは「中途覚醒」にあたります。
こうした不眠の症状が続くと、心と体の健康や日常生活のパフォーマンスに悪影響がありつらいものですよね。早めに適切な対処をし、睡眠の改善をすることが大切です。
夜中に何度も目が覚めるときの対処法
原因がいくつか考えられる中途覚醒。朝まで起きずにぐっすり眠るには、どうすればよいのでしょうか。
まずは「途中で起きるようになったのはいつからか?」を振り返ってみましょう。
ここでは、振り返ると良い具体的な内容をまとめました。
生活習慣に乱れや変化がなかったかを振り返る
夜中に何度も目が覚めるなどの不眠が続く状態になる前に、「生活習慣や自分を取り巻く環境の変化がなかったか?」を振り返ってみましょう。
具体的には、
- 勤務形態の変更や就職、離職などによる生活リズムの変化
- カフェインやお酒、タバコの摂取量
- 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用など生活習慣の変化
- 引っ越しなどの環境の変化
- 季節の変化による寝具の変化
…などです。以前と生活習慣や環境で変わったところはないかを考えてみましょう。
無気力や憂うつなどメンタル面で変化がなかったか振り返る
「ストレスや不安、焦り、イライラなどのメンタル面で変化や不調がなかったか?」を振り返りましょう。
うつの症状として夜中に何度も目が覚めるなどの不眠になるケースがあります。以下のような症状がないかもチェックしてみましょう。
- 食欲がない
- 気分が晴れず、何もする気が起きない
- 憂うつな気分が続く
- 倦怠感がある
- 悲しい気分になる、涙もろくなる
- 何に対しても興味がわかない
上記のような症状の他、ストレスに感じることや、メンタルの不調がなかったかを思い返してみましょう。
病気が原因なら早めに病院を受診し適切な治療を
先ほど説明した「睡眠時無呼吸症候群」や「周期性四肢運動障害」などの病気はそのままにしておいても自然治癒するものではありません。うつなどのメンタルの病気も同様です。
夜中に何度も目が覚めるのは「病気が原因かも」と感じたら、早めに病院を受診し、医師や専門家に相談しましょう。睡眠専門のクリニックや睡眠外来などもあります。
すぐに実践できる!不眠を改善するための4つのポイント
不眠が続くと日中の眠気やだるさなどがあり、一日中つらいですよね。夜ぐっすり眠れる体質になるために、すぐ実践できる4つのポイントを紹介します。
日頃から適度にストレスを発散する
ストレスなどメンタル面の影響も大きい不眠の症状。日ごろからストレスを発散したり心身をリラックスさせたりと、自分で自分のメンタルをケアすることを心がけましょう。
具体的には、
- 日中に散歩やランニング、ストレッチなど適度に運動をする
- お風呂や温泉で湯船につかり体を温める
- 音楽を聴いたり本を読んだり、自分がリラックスできる時間を持つ
- 信頼できる人に悩みや話を聞いてもらう
- 紙に今の感情や気持ちを言葉で書き出す
- 瞑想をして心を落ち着かせる
…などを実践してみてください。
仕事や家事、育児などが忙しいと、つい自分の健康のことは後回しにしがち。メンタル面での不調は人からも見えづらく、自分でも自覚がないこともあるため、意識的にこうした時間を確保するようにしましょう。
生活サイクルをなるべく一定に保つ
ズレた体内時計を戻すために、起きる時間と寝る時間を決めて規則正しく過ごし、なるべく生活サイクルを一定にしましょう。実際の昼夜の時間と体内時計がズレると、夜中に何度も目が覚めるなどの原因になります。
夜勤や交替勤務がある方はすぐに対処は難しいかもしれませんが、どうしても不眠が続くなら働き方から見直してみるのも一つの方法です。
睡眠時の環境を整える
寝るときの室温や光、音なども睡眠の質に影響します。
具体的にリラックスでき、快適に眠るポイントをまとめました。
- テレビやパソコンなどブルーライトを発する家電を寝室に持ち込まない、寝る直前は明るい画面を見ない
- 眠るときは電気を消して暗くする
- テレビや冷蔵庫などの家電の音を寝室から減らし、静かな空間に保つ
- 寝室の温度を夏は26度前後、冬場は20度前後、湿度は50%前後にする
寝室の環境を振り返り、改善できるポイントがあれば実践してみましょう。
朝起きたら朝日を浴びる
朝、目覚めたらカーテンをあけて朝日を浴びるようにしましょう。
睡眠を促すホルモンの「メラトニン」は朝の光によって作られます。このメラトニンを正常に働かせるためには、体内時計がカギを握っています。
体内時計は朝日を浴びることでリセットされます。リセットされると、約15時間後にメラトニンが分泌され、夜に自然な眠りを促します。夜眠くなるかどうかは、朝の習慣から始まっているのです。
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夜中に何度も目が覚めて寝つけなくなったら?
ご紹介した改善方法を試しても、夜中に何度も目が覚めてしまうときは、どうすればいいのでしょうか。おすすめの対処法を紹介します。
腹式呼吸でリラックスする
緊張やストレスがあると、人は呼吸が浅くなります。夜中に寝つけなくなったときは、呼吸が深くなる腹式呼吸をしてみましょう。
腹式呼吸には自律神経を整えて、体をリラックスさせる働きがあります。
【腹式呼吸のやり方】
(1)あお向けになって体の力を抜き、ゆっくり息を吐き切る。
(2)お腹を膨らませるように鼻からゆっくり息を吸い込む。
(3)息を3秒止め、(1)に戻る。
(1)~(3)を5~10分間、繰り返します。息を吸うときよりも吐くときに倍の時間をかけるのがポイントです。副交感神経が優位になり、体がリラックスして気分が落ち着きます。
自然音などリラックスできる音楽を聴く
自然音や約4,000ヘルツ以上の高周波を含む音楽を聴くことは、副交感神経を優位にして体をリラックス状態に導きます。
風や波の音などの自然音や高周波を含む音楽には、脳をリラックスさせる効果のある「アルファ波」が含まれています。アルファ波には、眠りを促す働きもあります。
思い切って布団から出て過ごす
どうしても目が冴えて眠れないときは、いったん布団から出て過ごしましょう。眠れない時間を布団の中で過ごすと「早く寝たいのに」「朝になってしまう……」と焦りやプレッシャーになり、余計に目が覚めてしまうもの。
布団から出たら、読書や単調な作業をして、ゆっくり過ごすのがおすすめです。リラックスすると、次第に眠くなるかもしれません。
ただしこのとき、ブルーライトを発するスマートフォンの画面を見る、アップテンポの音楽を聴くなどの強い刺激は逆効果。リラックスして過ごすことを心がけましょう。
不眠改善に効果的な漢方薬は?
夜中に何度も目が覚めるなどの不眠の改善手段として、漢方薬の服用もあります。「睡眠薬は使いたくない」「体質を改善したい」という人にはおすすめです。不眠の改善をサポートする漢方薬を5つ紹介します。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
「柴胡加竜骨牡蛎湯」は、精神的に不安定な人、高血圧の症状がある人、抑うつ、不眠、イライラなどのメンタル面で落ち着きがない場合に処方される漢方です。ストレスや不安からくる不眠をサポートしてくれます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
「加味逍遙散」は、更年期や女性ホルモンの影響でメンタル面での不調がある人、のぼせ感や便秘、疲れなどの症状がある人に処方される漢方薬です。女性ホルモンの影響による不眠や不調をサポートしてくれます。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
「酸棗仁湯」は、心身に疲れを感じている人や、抑うつや不安などによる不眠の改善に処方される漢方薬です。「疲れているはずなのに眠れない」といったケースに用いられます。
抑肝散(よくかんさん)
「抑肝散」は、イライラや不安、神経症状がある人の不眠を改善する漢方薬です。緊張や神経の高ぶりを抑える働きがあります。
帰脾湯(きひとう)
「帰脾湯」は、心身が疲れきって、血色が悪い方の睡眠トラブルに用いられます。熟眠感がなく、夜間に何度も目が覚め、夢をよく見る、日中も眠気があるタイプに。
漢方薬を選ぶときに重要なのは「その人の状態や体質に合っているか」ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
どの漢方薬が自分に合うのかを見極めるためには、プロの力を借りるのがおすすめです。最近はオンラインで漢方相談ができるサービスが増えています。人工知能(AI)を活用し、体質に合う漢方薬をマッチングする「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。漢方に詳しい薬剤師が一人ひとりに効く漢方薬を見極めてくれます。
東洋医学のセルフケアで眠れる体質に。タイプ別「不眠」対策とは?
まとめ:原因を特定し質の良い睡眠を目指そう
夜中に何度も目が覚める原因は、年齢やメンタル面、睡眠環境や病気、生活習慣など人によってさまざま。しかも、原因はひとつではなく、複数にわたる場合もあります。
まずは自分の生活習慣や環境を振り返り、不眠の原因を考えてみましょう。
もし仕事や家事など生活に支障が出るほどつらい場合や、原因が病気と考えられる場合は早めに病院を受診し、医師に相談してください。
今回紹介した改善方法やポイントを参考に、質の良い睡眠を目指しましょう。
[ 監修者 ]