髪の悩みには「亜鉛」が効果的?管理栄養士おすすめの食習慣
髪のお悩みのひとつが抜け毛。本来、髪が抜けるのは、毛の寿命による自然現象。しかし、あまりに抜けすぎると心配になりますよね。抜け毛の原因は、亜鉛不足によるものかもしれません。今回は、髪の健康に役立つミネラル、亜鉛について解説していきます。
目次
髪が抜ける原因は亜鉛不足の食習慣かも?
亜鉛は、髪の健康に役立つ栄養素のひとつです。肌や体と一緒で、髪も食べたものでできています。気になる抜け毛の原因は、偏った食習慣により、亜鉛不足になっているからかもしれません。日頃の食事を振り返って原因を探ってみましょう。
乱れた食生活による亜鉛不足
加工食品ばかりの乱れた食生活は亜鉛不足になりがちです。加工食品とは、冷凍食品やレトルト食品、インスタント食品のほか、調理済みや半調理済みの食品のこと。
食品を加工・処理する過程で栄養素が減ってしまったり、食品の味や色が落ちてしまう分を調味料や食品添加物などで補ったりしています。
バランスよく食事を摂っていれば亜鉛が不足する心配はありません。しかし、加工食品に使われていることの多い添加物のリン酸塩は、亜鉛の吸収を妨げることが知られています。
調理済み食品や加工食品は、時短になってとても便利ですが、髪の健康を考えるなら、活用はほどほどに。加工食品の摂り過ぎで亜鉛不足にならないように気をつけましょう。
過度なダイエットによる亜鉛不足
極端なダイエットも亜鉛不足を招き、抜け毛を助長することがあります。亜鉛は、動物性食品に含まれることが多く、ダイエットにより野菜ばかりの食事に偏ってしまうと不足しがちに。
食事の量を極端に減らす偏ったダイエットは、亜鉛以外にも健康を維持するうえで大切な栄養素の不足を招きます。髪を健やかに保つために、ダイエット中でもバランスの良い食事を心がけることが大切です。
過度の飲酒がもたらす亜鉛不足
お酒を飲みすぎると、アルコールの利尿作用によって、亜鉛の排泄量が増えてしまいます。抜け毛が気になる方で普段から飲酒量が多い場合は、お酒の量を減らして適量内で楽しむようにしましょう。お酒の適量は、ビールなら1日500ml、日本酒なら1合を目安に。
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髪の悩みをサポート! 亜鉛ってどんな栄養素?
そもそも亜鉛は、皮膚や体の成長に関わるほか、免疫機能や味覚を正常に保つ働きに関わるミネラルのひとつ。体内では合成されない栄養素のため、食事からしっかり摂ることが必要です。次からは亜鉛の働きについてくわしく解説します。
髪の成長を助ける微量ミネラル亜鉛とは?
亜鉛は人の血液や皮膚に多く存在する微量ミネラルです。また、たんぱく質の合成や細胞の新陳代謝にもかかわっています。体のあらゆる代謝をサポートしているため、亜鉛不足になると新陳代謝がスムーズに行われなくなり、髪の成長にも悪影響を及ぼします。
髪だけでなく、頭皮を含めた皮膚などの新陳代謝が盛んなところが影響を受けやすくなるため、抜け毛の原因のひとつとも考えられています。
亜鉛が髪の成長に良い理由は?
亜鉛は、髪の成長を促すといわれています。これは亜鉛が皮膚の新陳代謝に深くかかわっているから。ただ、髪は亜鉛だけでつくられるわけではありません。亜鉛を多く含む食品を積極的に摂ることはもちろん、当たり前ですが日頃からバランスの良い食事を摂ることで、髪の成長を促すことが期待できます。
髪の成長を助ける亜鉛の吸収をよくするには?
亜鉛は、クエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質と一緒にとることで吸収されやすくなります。亜鉛は他の栄養素と同じく、腸で吸収されますが、吸収率が低く、約30%といわれています。(※1)
また亜鉛は、鉄や銅を大量に摂ると吸収率が下がるともいわれています。吸収率が低いミネラルのため、髪の成長を助けたいなら亜鉛の吸収率を高める栄養素と一緒に摂りましょう。
(※1) 大塚製薬栄養素カレッジ「亜鉛」より
髪がよろこぶ亜鉛を多く含む食品は?
亜鉛は髪の成長に欠かせません。亜鉛を多く含む食品は以下の通りです。(※2)
- 牡蠣(養殖・2個40g):5.3mg
- 豚レバー(1人前80g):5.5mg
- 牛肩ロース肉赤身部分(1人前90g):5.8mg
- ホタテ貝(1個80g):2.2mg
- 糸引き納豆(1パック50g):1.0mg
- 胚芽精米ごはん(1膳150g):1.1mg
(※2)『栄養素の通になる第4版』上西一弘著 (女子栄養大学出版部)より
亜鉛以外の髪にいい栄養素は?
亜鉛のほかにも髪の成長を助ける栄養素があります。髪の健康は亜鉛だけでつくられるわけではありません。さまざまな栄養素が助け合って働きます。次から紹介する他の栄養素も合わせて摂るようにしましょう。
ビオチン
健康な髪のために欠かせないビタミンがビオチンです。糖質や脂質、たんぱく質の代謝をサポートする働きがあります。ビオチンは、髪や皮膚を健康に保つのに重要なビタミン。鶏レバーや卵、ピーナッツ、きのこ類、大豆、糸引き納豆(一般的な納豆)などに多く含まれています。
良質なたんぱく質
髪はケラチンというたんぱく質でできています。ケラチンにはシスチンというアミノ酸が含まれており、シスチンを合成するには、材料となるたんぱく質が必要です。髪の健康のためには、肉類や魚介類、卵、大豆製品といった良質なたんぱく質を含む食品を毎食しっかり摂りましょう。
ビタミンA・C・E
髪の健康のためにはビタミンA・C・Eも大切。これらは抗酸化ビタミンとも言われ、老化を防ぐ働きなどがあります。
・ビタミンA
髪にうるおいを与え、髪や皮膚を健康に保つ働きがあります。レバーや卵黄、うなぎ、緑黄色野菜などに多く含まれています。
・ビタミンC
ストレスや紫外線による抜け毛を防ぐ働きがあります。野菜や果物に多く含まれています。
・ビタミンE
細胞の老化を防ぎ、血行を促進する働きがあります。ナッツ類や植物性のオイル(ひまわり油など)、モロヘイヤ、西洋かぼちゃ、赤ピーマンなどに多く含まれています。
ビタミンB2
ビタミンB2は糖質、脂質、たんぱく質の合成をサポートするビタミンです。特にたんぱく質の合成に関わるビタミンで、健康な髪や皮膚、爪などをつくることを助けるため、「発育のビタミン」ともいわれています。レバーやうなぎ、牛乳、ヨーグルト、糸引き納豆(一般的な納豆)などに多く含まれています。
管理栄養士監修|体の中からきれいになる食習慣と「老けないレシピ」
亜鉛がたくさん含まれている食べ物とレシピ
次からは、亜鉛がたくさん含まれている食べ物と、それらを使った簡単レシピをご紹介します。
牡蠣
牡蠣には髪の健康を保つ亜鉛が多く含まれています。鉄、銅などミネラルの宝庫で「海のミルク」ともいわれています。
特に亜鉛の含有量はすべての食品の中でもダントツ1位。英語で「R」のつく月(9~4月)は体のエネルギー源になるグリコーゲンが多くなり、栄養価が高いですよ。
おすすめレシピ~牡蠣のバターソテー
115kcal、亜鉛:11.6mg(1人分)
【材料(2人分)】
・牡蠣(生食用)…10粒
・塩こしょう… 適宜
・小麦粉…大さじ1杯強
・バター…10g
【作り方】
牡蠣は軽く塩もみして流水で洗う。水気をペーパータオルでしっかりふき取ってから、塩こしょうをふり、小麦粉を全体にまぶす。フライパンにバターを溶かし入れ、牡蠣をさっと焼く。
【ポイント】
牡蠣に含まれる亜鉛は、ビタミンAによって吸収がアップします。そのため、ビタミンAが豊富なバターでさっと焼くのがおすすめ。牡蠣が苦手なら亜鉛を多く含む、同じく貝類のホタテに代えてもOK。
牛肉肩ロース(赤身部分)
牛肉の肩ロースの赤身部分にも亜鉛が多く含まれています。消化のよい良質なたんぱく質が多い豆腐と一緒に食べるのがおすすめ。亜鉛と良質なたんぱく質の両方が一緒に摂れて、栄養価がアップしますよ。
おすすめレシピ~肉豆腐
357kcal、亜鉛:3.9mg(1人分)
【材料(2人分)】
・牛肉肩ロース切り落とし(赤身)…100g
・木綿豆腐…1丁(300g)
・白ネギ…1/2本(50g)
・しらたき…100g
・サラダ油…小さじ2
・だし汁…1カップ(200ml)
A
|酒…大さじ1強
|砂糖…大さじ1
|しょうゆ…大さじ1強
【作り方】
(1)白ネギは3cmの長さ、しらたきは茹でてから食べやすい長さに切る。牛肉肩ロースは3cm幅に、豆腐は8等分に切る。
(2)鍋にサラダ油を熱し、白ネギを入れて炒める。香りが出たら、Aとだし汁を加えて煮立てる。
(3)牛肉肩ロースを加えて煮る。アクが出たら取り除き、豆腐としらたきを加えてふたをする。沸騰後、弱火で約5分煮る。
【ポイント】
時間がないときは、市販のすきやきのたれを使ってもOK。白菜やにんじんなどの野菜をプラスしてもよいでしょう。
糸引き納豆
納豆には糸引き納豆とひきわり納豆があり、糸引き納豆の方が亜鉛を多く含みます。糸引き納豆は、いわゆる普通の納豆のことで、亜鉛が100g中1.9mg、ひきわり納豆は亜鉛が1.3mg含まれているため、髪のために納豆を食べるなら、ひきわりより糸引き納豆を選びましょう。
髪の健康に役立つ亜鉛を摂取するときのポイント
亜鉛が髪の健康に役立つといえども、やみくもに摂ればいいものではありません。1日に亜鉛をどのくらい摂ればよいのか? 逆に亜鉛を摂り過ぎたときの体への影響を解説します。
(1)亜鉛の1日の推奨量は?
亜鉛の1日あたりの推奨量は、日本人の食事摂取基準2020年版によると、以下のように定められています。
【亜鉛の1日の推奨量】
18~29歳女性:8mg
30~49歳女性:8mg
50~64歳女性:8mg
※『日本人の食事摂取基準2020年版』(第一出版)より。
※推奨量…ほとんど(97~98%)の人が必要量を満たすと推測される1日あたりの摂取量のこと。
なお、過剰摂取による害を防ぐため、1日あたりの許容上限量も以下のように定められています。
【1日あたりの許容上限量】
18~29歳女性:35mg
30~49歳女性:35mg
50~64歳女性:35mg
※許容上限量…ほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康被害を起こすことのない最大限の摂取量のこと。
亜鉛を摂りすぎると体への影響は?
亜鉛は、通常の食事をしていれば、摂りすぎになることはないので心配ありません。サプリメントなどによる亜鉛の摂りすぎが続くと、銅や鉄の吸収が妨げられてしまい、貧血を起こすことがあります。また、急性中毒としては、めまいや吐き気などを起こすことがあります。
亜鉛を効率的に摂るには?
亜鉛は肉や魚などの動物性食品に多く含まれます。野菜などの植物性食品に偏らないようにすれば不足することはありません。1日3食、バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。
加工食品には、亜鉛の吸収を妨げる添加物が使われていることがあります。髪を守るために亜鉛を効率的に摂るなら、加工食品はほどほどにして、食材を買って来て作った手作りの料理を食べるようにしましょう。
亜鉛をサプリメントで摂るのも効果的?
サプリメントは、亜鉛が凝縮された状態で摂取できます。忙しくてバランスの悪い食生活が続いたときは、一時的に決められた量を飲むのは効果的です。
しかし、髪の健康に役立つからといって、サプリメントを過剰摂取すると貧血になることがあるため、基本的には食事から摂ることをおすすめします。
また、服用している薬との相互作用(薬の効き目が強すぎたり逆に弱まってしまうこと)で、思わぬ健康被害が発生することもありえます。服用している薬がある場合、サプリメントの活用はかかりつけ医や専門家に相談を。
まとめ:亜鉛を上手に摂り髪の悩みをすっきりしよう
髪の健康に役立つミネラル、亜鉛についてご紹介しました。髪は亜鉛だけでつくられるわけでないため、亜鉛以外の他の栄養素もバランスよく摂ることが大切です。また、過度な飲酒やダイエット、乱れた食生活で、亜鉛不足にならないように気をつけましょう。
文/岩見真由美