更年期の動悸のセルフケア方法を解説!漢方・薬でよくなるの?
激しい運動をしたわけでもないのに起こる動悸。もしかして更年期障害? と心配になりますよね。ここでは動悸の原因と症状、改善策についてご紹介します。セルフケアを知っておくと突然の動悸にも落ち着いて対応できますよ。
目次
更年期障害とは?
女性なら誰でも気になる「更年期」。閉経前後の約10年間に、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが急激に減少することで体内のホルモンバランスが乱れます。この時期が「更年期」にあたります。
閉経によって起きたホルモンバランスの乱れは、自律神経に影響を及ぼします。自律神経は体温や発汗、呼吸などをコントロールしているため、自律神経が乱れることで、のぼせやほてり、動悸や息切れ、発汗など体にさまざまな不調があらわれます。
このような、ホルモンバランスの乱れによって起こるさまざまな症状を「更年期障害」と呼んでいます。
更年期障害の一般的な症状とは?
更年期障害の一般的な症状には次のようなものがあります。
- のぼせやほてり
- 発汗
- むくみ
- 動悸・息切れ
- イライラ感
- 不安感 ……など
更年期障害でホルモンバランスが変化すると、脳や神経、血管や血流など体の不調に加え、心にも様々な影響が生じます。どの症状も突然起こることが多いため、更年期世代の多くの女性が悩みを抱えます。
更年期に起こるつらい症状「ホットフラッシュ」の改善方法って?
更年期障害の原因って?
更年期になって閉経が近づくと、卵巣機能が低下します。すると女性ホルモンの一種であるエストロゲンが急激に減少し、ホルモンバランスが保てなくなります。
女性ホルモンは、脳の「視床下部」という部位からの指令によって分泌されています。卵巣機能が衰えると、視床下部は足りない女性ホルモンを一生懸命補おうと、卵巣に指令を出します。
しかし卵巣がそれに応えられないため視床下部は混乱。同じく視床下部が司っている自律神経の働きも乱れてしまいます。
自律神経が乱れると、体温や発汗などの体温調節や、鼓動・呼吸をうまく調節できなくなります。これが、更年期障害でさまざまな症状があらわれる原因となります。
更年期障害の動悸の症状とは?
「突然ドキドキして息苦しい」「ちょっと歩いただけで息が切れる」「激しい運動をしていないのに苦しい」といった症状が、突然起こることはありませんか?
更年期障害の動悸は、日常生活の中で場所や時間に関係なく起こります。夜中、眠っているときに起こると、動悸で目がさめてしまうこともあります。
動悸は、不安や緊張を感じたときにあらわれることも多くあります。更年期は、自分の体調が不安定になるだけでなく、子供の独立や両親の介護など、さまざまな変化が訪れる時期でもあり、精神的なストレスが増えます。ストレスによる不安や緊張は、動悸を生じやすくすると考えられます。
更年期の動悸に効果的なセルフケア
動悸は、セルフケアによって和らげることができます。日頃の対策として、リラックスできる時間を作ったり、コーヒーなどカフェインの多い飲料を控えたりして自律神経を整えることをおすすめします。カフェインには、交感神経を刺激し、脳や体を興奮させる働きがあるのです。
また、症状が突然起こったときにそなえて対処法を知っておくことも大切です。ここでは、動悸に効果的なセルフケアをご紹介します。
ただし、動悸は更年期のみで見られる症状ではありません。別の病気の症状として出る場合もあるので、つらいときは自分だけで判断せず、一度医師に相談してみることをおすすめします。
ゆっくり深呼吸して呼吸を整える
動悸を感じたら、ゆっくり深呼吸をして呼吸を整え、リラックスすることを心がけましょう。まずは鼻からゆっくり大きく息を吸います。お腹に空気を入れるように膨らませたら、時間をかけてお腹をへこませるように息を吐きます。これを何度か繰り返すと、動悸は少しずつ落ち着いてくるはずです。
また、アロマオイルをハンカチやティッシュなどに一滴落として、その香りをかきながら深呼吸するのもよいでしょう。一般的に、不安感を鎮めるにはラベンダーの香りが良いと言われています。
アロマテラピーでは、自分の好きな香りをかぐことも大切です。普段から好きな香りをみつけておくことをおすすめします。好みの香りをかぐことで、自律神経のバランスがとりやすくなると考えられます。
動悸を軽減させるツボを押す
東洋医学におけるツボ押しは、全身を巡る「気(エネルギー)」や「血(血液など)」を整えることで体調を整えます。ツボを覚えておくと、簡単にセルフケアができます。
突然起こる動悸には、心臓の働きを整えるツボといわれている「神門(しんもん)」を覚えておくと役に立つでしょう。
神門(しんもん):手首の内側の小指寄りにあるツボ。押さえるとへこむ部分。
押し方:親指を使い、左右交互にジワーッと押しましょう。
ドキドキしたらすぐに押さえるのを習慣にすれば、突然の動悸にも落ち着いて対応できるでしょう。
市販薬で対処するなら漢方や生薬配合の商品を
動悸対策に市販薬を買うときは、漢方や生薬配合の薬を選ぶのも選択肢の一つです。
一般的な薬の場合、少々症状が違っても、同じ病気なら同じ薬が処方されます。一方、漢方は、同じ病気でも症状が違えば処方される薬が変わることもあります。
さまざまな症状がみられる更年期障害では、それぞれの症状に合った漢方や生薬配合の薬が適しているといえます。
生薬も漢方も成分は同じですが、構成によって分類が異なります。生薬とは、植物の葉や果実花、また動植物の分泌物などの不純物や有害な部分を取り除いて加工したものです。漢方は、基本的に2種類以上の生薬を組み合わせたものをいいます。
漢方や生薬を配合した薬は、症状や体質によってどれが適しているかが異なります。薬剤師のいる薬局で相談してみましょう。
漢方でも動悸を改善できる
動悸を含む更年期症状の改善に使われる漢方薬は、「四物湯(しもつとう)」と「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」です。
「四物湯」には血液循環をよくして体を温める効果があります。また、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。
「苓桂朮甘湯」は、めまいや耳鳴りの原因となる「水(すい=血液以外の水分)」の滞りを取り除きます。 心臓やメンタルを含む「心(しん)」を助ける作用もあり、動悸や息切れなどを改善します。
生薬は更年期のあらゆる症状に効果的
生薬に含まれている成分はさまざまな効き目を持っています。体内の血液や水分の循環を改善することで、更年期障害のあらゆる不快な症状を和らげる効果があります。
更年期障害に用いられる主な生薬
・当帰(とうき):女性向けの薬として知られます。血行を改善し、痛みや炎症を鎮める作用があります。
・芍薬(しゃくやく):痛みや炎症をおさえるほか、抗菌作用があります。
・茯苓(ぶくりょう):気持ちを安定させ、胃の働きを良くして水分の停滞を改善します。
・牡丹皮(ぼたんぴ):血行を改善し、痛みをおさえる作用があります。
更年期障害の動悸を病院で治療する方法
動悸は更年期の症状だけでなく、他の病気が潜んでいる可能性もあり、注意が必要です。たとえば、バセドウ病や重症のうつ病、心臓の病気などのケースなども考えられます。正確な判断を得るためには、婦人科を受診するのがおすすめです。
婦人科では、問診に加え、心電図や血液検査などによって、更年期の症状かどうかを判断します。
更年期障害の治療法には「ホルモン補充療法」「漢方療法」「抗うつ剤やカウンセリング」などがあります。次からは、それぞれの治療法について詳しく説明します。
ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、減少したエストロゲンを補充することで症状を改善する治療法です。一般的に、エストロゲンやプロゲステロンを含む飲み薬・貼り薬・塗り薬などで治療します。
不足したホルモンを補充することで自律神経のバランスが整うと、循環器系の働きが改善され、動悸や息切れなどに高い効果が期待できます。主治医とよく相談した上で治療を受けると良いでしょう。
漢方療法
東洋医学から生まれた漢方は、さまざまな更年期障害の治療に役立てられています。自律神経の乱れからくる動悸によく使われるのは、市販薬でも紹介した「四物湯(しもつとう)」と「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」です。
薬局でも同じ漢方薬を買うことができますが、病院で処方されるものとは成分量が異なることがあります。成分量からみても、病院での漢方薬の方が効果を実感しやすいと考えられます。
病院では、一人ひとりの体質や症状にあった漢方治療が受けられるのが大きなメリットです。
抗うつ剤やカウンセリング
更年期に経験する症状の一つに、気分の落ち込みがあります。理由はないけどやる気が出ない、憂鬱になるといった人もいるのではないでしょうか。
動悸は不安や緊張から引き起こされることも多いので、落ち込みや不安感が強い場合は抗うつ薬が効果を発揮することがあります。
薬と併用して、専門のカウンセラーによるカウンセリングも効果的といわれています。人に話をしっかり聞いてもらい、体と心のストレスを取り除くことも治療の一つです。
抗うつ剤は効果があらわれるまでに2週間〜1カ月ほど時間がかかる場合もあります。また、自己判断で勝手にやめるとかえってつらい症状が出ることもあります。医師と相談しながら、あせらず気長に服薬しましょう。
まとめ:更年期の動悸はセルフケアで和らげる
動悸の感じ方や症状は人によって違います。自分でできる対処方法を知っていると、いざというときに安心ですよね。
市販で買える漢方薬もありますが、まずは病院で診断してもらうことをおすすめします。動悸には別の病気が隠れていることもあります。セルフケアで改善が見られないようなら婦人科へ。
無理せずケアしながら、更年期のつらい時期を少しでも和らげながら前向きに過ごしましょう。
[ 監修者 ]