医師がすすめる腸活とは?腸をきれいにする食べ物と簡単セルフケア
腸活とは、腸内環境(腸内フローラ)を整えることをいいます。言葉は知っていても、そもそも「腸活とは何をすること?」とお悩みの方へ、メリットや具体的なやり方、日常生活で手軽に取り入れられるテクを紹介します。
目次
腸活とは? 腸の役割って何?
“腸美人”というような言葉がある通り、腸がきれいだと健康的で美しい体になれるというイメージがありますよね。そもそも腸は、食べ物の消化吸収や毒素の排出など、健康を保つための様々な役割を担っています。腸活とは、腸内環境を整え、腸の正常な働きを保つことです。
腸内環境の良し悪しを左右するのは、およそ「1,000種類100兆」も生息しているといわれる腸内の細菌たち。細菌たちは腸内の壁に群をなし、まるでお花畑(flora)のように張り付いているため、「腸内フローラ」とも呼ばれます。
腸内フローラには大きく分けて善玉菌、日和見菌、悪玉菌の3種が存在します。
善玉菌が増えると腸が活発に動き、有害物質を生む悪玉菌の増殖を防いでくれます。日和見菌は善玉菌か悪玉菌の優位な方に味方になる性質があります。
こうした意味でも、腸活成功のカギになるのが善玉菌を増やすこと。ちなみに理想的な腸内環境は、善玉菌、日和見菌、悪玉菌のバランスが「2:7:1」といわれています。
なぜ腸活が大事なの?
腸の元気を取り戻す腸活は、健康や美容のために重要です。腸は、働きが悪くなると栄養吸収が悪くなり、老廃物が体内に溜まりやすくなります。結果として、体重や体脂肪が増えたり、便秘や肌荒れといった症状につながる可能性があります。
それだけではありません。腸の健康は、免疫力やメンタルを保つためにも重要です。消化吸収の臓器としてのイメージが強いですが、実は腸内には全身の約70%もの免疫細胞が存在しています。
さらに腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳と相互に影響し合い精神の安定に関わります。一般的に各臓器は脳の指令を受けて動きますが、逆に腸は脳へ指令を出す役割も担っています。例えば、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」は、腸からの指令で脳から分泌されることが分かっています。
あなたは腸活が必要? 腸内環境チェックリスト
自分に腸活が必要なのか判断に悩む方は、腸からのサインやお通じでチェックしてみましょう。
体がなんとなく不調なのは、腸内環境の乱れによるものかもしれません。次のような不調があれば、腸内で悪玉菌が増えたり腸の動きが弱まったりしているサイン。腸活で善玉菌を増やし、腸内環境を整えてあげましょう。
腸の働きが弱まっているサイン
- 便秘、下痢、コロコロ便などすっきり出ない
- おならやゲップがよく出る
- ガスが溜まりお腹が張っている
- お腹周りが冷たい
上記に当てはまっていない場合も、より良い腸内環境を目指してお通じの状態をチェックしましょう。次のチェックリストに当てはまる理想の便を目指して、腸活に取り組んでみてください。
健康なお通じ
- 便の色は黄土色
- 便の臭いは少なめ
- 便がバナナ1本分スムーズに出る
- 毎日決まった時間にお通じがある
腸活のメリットや期待できる4つの効果
腸活はさまざまなメリットや効果を期待できます。代表的な効果は次の4つです。
(1)便秘が改善、お腹すっきり
(2)ダイエット効果、ぽっこりお腹改善
(3)美肌効果
(4)免疫力アップ
次からくわしく解説します。
(1)便秘が改善、お腹すっきり
腸活で腸が本来の働きを取り戻すと、便秘が改善しお腹がすっきり。便秘以外にも下痢やコロコロした便など、すっきりしなかったお通じも整います。正しくお通じがあることで、おならや便の臭いも軽減されます。
(2)ダイエット効果、ぽっこりお腹改善
腸活で腸が栄養を吸収しやすい状態なるので、ダイエットが効率的に進みます。余分なものを排出する機能が正常に働くことで、便や余分な水分が溜まってぽっこりしていたお腹周りもすっきり。
(3)美肌効果
肌にニキビや吹き出物ができる原因のひとつに、腸に老廃物が溜まっていることがあげられます。腸で悪玉菌が増えると、有害物質や老廃物が溜まりやすい環境に。悪玉菌を減らして善玉菌を増やす腸活で、腸の老廃物を減らせば美肌効果も期待できます。
(4)免疫力アップ
腸には口や鼻から入った病原菌やウイルスなどの異物から体を守る「腸管免疫」というシステムが備わっています。腸には全身の約70%もの免疫細胞が存在しているといわれており、腸活は病原菌やウィルスに負けない体を作る、免疫力アップに有効です。
基本の腸活テク「食事・睡眠・運動」
腸活と聞くと難しく感じるかもしれませんが、毎日の食事・睡眠・運動を少しだけ変えることで実践できます。効果的に行うためのポイントをご紹介します。
腸にいい食べ物で「腸内フローラ」を整える
腸活のメインとなるのは「腸にいい食事」です。腸内フローラを整えるため意識すべきポイントは、腸の善玉菌を増やし、悪玉菌の割合を減らすこと。
そのために善玉菌を含む食品と、善玉菌のエサとなる食品を積極的に取り入れましょう。
善玉菌を含む食品「プロバイオティクス」
腸内を整える善玉菌は「プロバイオティクス」と呼ばれ、発酵食品に含まれています。
乳酸菌やビフィズス菌をはじめとする「プロバイオティクス」を含む食材は次の通りです。
- ヨーグルト
- 乳酸菌飲料
- ぬか漬け
- 納豆
- 味噌
- キムチ
- チーズ
- 甘酒 など
献立に迷ったら和定食を積極的に選ぶのがおすすめ。和食には、味噌汁や納豆など発酵食品が多く取り入れられているので、自然と善玉菌たっぷりの食事に。
腸活食品の代表であるヨーグルトは、商品によって含まれる菌が異なるため、自分に合うものを見つけるのがおすすめです。具体的には2週間ほど同じヨーグルトを食べ続けてお通じの調子をチェックし、合う・合わないを判断します。
善玉菌のエサとなる食品「プレバイオティクス」
善玉菌を体内で増やすために、発酵食品に加え善玉菌のエサとなる食品も一緒に取り入れてみてください。善玉菌のエサとなるのは食物繊維やオリゴ糖を含むもので、「プレバイオティクス」と呼ばれます。
特に不足しがちな食物繊維は、善玉菌のエサになるだけでなく便の量を増やし排出も促すため、積極的に取り入れたいところ。野菜、果物、豆類に豊富に含まれています。
豆類、玉ねぎ、ごぼう、アボカド、バナナなどは食物繊維だけでなくオリゴ糖も多く含まれているため腸活にぴったりな食材。オリゴ糖を日常で取り入れる方法として、普段の白砂糖をてんさい糖やはちみつに置き換えるのもおすすめです。
質の高い睡眠で自律神経を整える
夜にぐっすりと眠ることは自律神経を整え、腸を正常に働かせてくれます。
通常、私たちの体は夜に副交感神経が優位となりお休みモードに入ります。しかし、ストレスやブルーライトなどにより交感神経がたかぶったまま入眠すると、睡眠の質は下がり腸内環境が乱れる原因に。いわゆる自律神経が乱れた状態となります。
自律神経を整えるためには、夜はシャワーで済ませず湯船に浸かって体を温め、ブルーライトから距離を置く時間を作り睡眠の質を高めましょう。
運動で腸のぜんどう運動を促す
適度な運動をすることも腸活に有効です。運動でお腹周りの筋肉を刺激することで、腸のぜんどう運動が促されます。
気軽にできるおすすめの運動として、ウォーキング、ヨガ、ストレッチを紹介します。
ウォーキング
健康維持や気分転換にもぴったりな20〜30分程度のウォーキングは腸活にも有効です。腹筋を意識して美しい姿勢を保つこと、しっかりと足を使うことを意識して歩きましょう。
お腹周りの血行が促進されると共に、腸の働きをサポートする腹筋や腸腰筋(ちょうようきん)が刺激されるため、便秘解消が期待できます。
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ヨガ、ストレッチ
自宅で気軽にできる腸活エクササイズとしてヨガやストレッチがおすすめです。呼吸をしながら腰まわりをねじるポーズは内臓機能を高め、腸の消化吸収も活発に。
副交感神経を優位にする効果も期待できるため、リラックスしたいときや夜に取り入れると、睡眠の質も上がり一石二鳥です。
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腸マッサージ・腸もみにチャレンジ
腸の消化吸収やぜんどう運動を促す外側からのアプローチとして「腸マッサージ」と「腸もみ」をご紹介します。
指を立てて強く押すなど過度な刺激はNG! 腸の動きをサポートするつもりでやさしく行ってください。
腸マッサージのやり方
朝目覚めたときや、あと少しでお通じがありそうなときなど、鈍っている腸の働きを促すために有効な基本の腸マッサージです。
- 両手を重ねて右脚の付け根に置く。
- 時計回りに円を描くように両手で優しくお腹をさする。
- お腹が温まるまで20周くらい続ける。
大腸もみのやり方
便秘がつらく、お腹の張りを感じるときには、便通を促す大腸もみがおすすめ。“大腸の角”を意識してゆったりと呼吸をしながら行いましょう
- 両手の指を揃えて、指先はたてず手で面を作る。
- 大腸の4つ角をやさしく押すように、右脚の付け根の角から時計回りで順番に刺激する。
- 便が詰まりやすい左脚の付け根の角は、手でじっくり圧をかける。
すぐできる! お手軽「腸活習慣」
腸活をいくつか同時に取り入れることで、より高い相乗効果が期待できます。一気に全部取り入れるのが難しい場合は、できることから始めてみてください。
今日からすぐに実践できる、お手軽な腸活習慣をご紹介します。
朝一杯の水を飲む
朝、目覚めたらコップ1杯の水を飲むことで腸が刺激されます。眠っていた腸が動き出し、自然なお通じが期待できます。冷たいお水は胃がびっくりしてしまうので、常温の水か白湯がおすすめです。
食事は少量をよく噛んで、なるべく水を飲まない
食事は、よく噛んで食べることも大切です。忙しくて食事の時間が短い人や、早食いの人は、噛む回数が少なくなっているかもしれません。
よく噛まずに飲み込むと、当然ながら胃に負担がかかります。また、よくあるのが飲み込む際にのどや胸がつかえることが多くなり、水やお茶で食べ物を流し込んでしまうこと。
食事中に水やお茶を飲みすぎると、食べたものを分解する消化液が薄まり、消化力が落ちます。これが便秘や下痢の原因になります。
食事中は…
- 1回に口に入れる量を少なくする
- 1口15回は噛む
- 食事中に水やお茶をなるべく飲まない
この3つを心がけましょう。腸にいいだけでなく、満腹中枢も刺激され、食べすぎも予防できます。
腸を温める
腸を温めることで、腸の働きが活発になります。内側から温めるには温かいスープがおすすめ。腸活フードの野菜、きのこ、海藻などを入れた味噌汁は、毎日でも取り入れたいメニューです。
外からお腹を温めることも立派な腸活。夜はシャワーで済ませず、ゆっくりと湯船に浸かることで体を芯から温めます。体全体が温まることで腸の動きがよくなるだけでなく、睡眠の質も上がり一石二鳥です。
お腹周りが冷えやすい人は、貼るカイロや小さな湯たんぽで日常的に温める習慣をつけてみましょう。
外食・コンビニで腸活するならこれ! 腸にいい食べ物
忙しくてどうしても外食やコンビニ食が増えてしまう人も大丈夫。外食やコンビニでも、腸活の味方になるメニューがたくさんあります。
腸にいい食べ物や飲み物を覚えておけば、外食やコンビニでも上手に腸活ができます。
すすんで選びたい! 腸にいい食材・飲み物リスト
すすんで選びたい食材は、発酵食品や食物繊維がたっぷりな野菜、海藻、果物など。
コンビニや外食でも、以下の食べ物・飲み物は腸活にぴったりです。見かけたら積極的に取り入れてみましょう。
- 味噌汁
- 海藻サラダ
- ひじきの惣菜
- きんぴらごぼう
- りんご
- バナナ
- 乳酸菌飲料
- コーヒー
- ココア
- 甘酒
- はちみつレモン など
腸活が上手くいかないときは? NG習慣をチェック
腸活食材を取り入れて、腸にいいことを始めたのになんだか上手くいかない。そんなときは腸の働きを悪化させる原因がなかったか振り返ってみましょう。
いくら腸活をしても、腸内環境を悪化させる要素を取り除かなければ効果はあらわれにくいもの。ここでは腸に悪影響があるNG習慣を解説します。
腸活で避けたい食事
腸活にいい食事がある一方で、腸の悪玉菌を増やす食事も存在します。せっかくの腸活を台無しにしてしまう、避けたい食事は次の通りです。
悪玉菌を増やす食事
- 脂っこいジャンクフード
- 動物性タンパク質の多すぎる食事
たまに食べるならいいですが、腸活をするならできるだけ避けたいところ。脂っこいものや肉を食べるときは野菜サラダや温野菜など、ヘルシーな野菜から食物繊維をたっぷり摂るようにしましょう。
ストレスによる自律神経の乱れ
過度なストレスは交感神経を優位にさせ、自律神経の乱れを引き起こします。腸は副交感神経が優位でリラックスしているときに活発に働きます。そのためストレスは腸活を妨げる原因のひとつ。
現代人の生活はストレスと隣り合わせ。ストレスがゼロの生活は難しいかもしれませんね。
しかし腸の働きがいまいちだと感じたら、まずはストレスがあるかも? と自分を振り返り、リラックスする時間を作ってみてください。
腸活フードで調子が悪くなる人は「低FODMAP食」もチェックを
ご紹介したような発酵食品、食物繊維、オリゴ糖などは、「もともと腸に問題がない方」には腸の味方になってくれますが、中にはこれらの整腸食を摂り過ぎて、かえって腸の調子が悪くなる方がいます。
腸活食材を摂ったら、「おなかが張る」「ガスが多くなる」「便秘や下痢になった」という方です。理由は、これらの食材は発酵性があり吸収されにくい糖質だから。
吸収しようとする際に腸の中に水分が引っ張り込まれると、お腹がゴロゴロして下痢の原因に。また、小腸で吸収されず大腸まで到達すると、大腸内の細菌に栄養が行いて、異常増殖し、ガスがたくさんつくられます。するとお腹が張って、おならが多くなる原因になります。
発酵性があり吸収されにくい糖質を、「FODMAP(フォドマップ)」とよび、あえて「高FODMAP」の食品をおさえる食事が今、注目されています。
当てはまるかもと思う方は、「低FODMAP食」を試してみるのもおすすめです。「低FODMAP食」と、控えたほうがいい「高FODMAP」の食品の一部をまとめました。
●低FODMAP食
- 穀類…米、米粉類、そば、グルテンフリー(小麦粉不使用)食品、シリアル(米、オートミール)、オートミール など
- 野菜類…なす、トマト、ブロッコリー、にんじん、じゃがいも(1個まで)、カボチャ、ほうれん草、きゅうり、ショウガ、オクラ、レタス など
- 果物類…バナナ、イチゴ、ぶどう、メロン、オレンジ、キウイ、レモン、パイナップル など
●高FODMAP食
- 穀類…大麦、小麦、うどん、そうめん、パスタ、ラーメン、パン、ケーキ、シリアル、トウモロコシ など
- 野菜類…豆類、アスパラガス、ピーマン、ネギ、カリフラワー、玉ねぎ、ニラ、納豆、ゴボウ、セロリ など
- 果物類…リンゴ、すいか、もも、梨、アボカド、グレープフルーツ、柿、パパイヤ、干しぶどう など
ここまでご紹介したような腸活を試してみても、腸の調子が悪い、体調が悪化したなどの心配な症状があれば、消化器内科などの病院を受診して、医師に相談することをおすすめします。
まとめ:腸活にはメリットがたくさん! 気軽にできることから始めよう
腸活で腸本来の働きを取り戻すことは、元気な体と心を保ち、美肌、ダイエット促進、免疫アップなど美容と健康にうれしいメリットがたくさんあります。
腸活の基本は、腸活食材を取り入れた健康的な食生活を送ること。食事のみならず、運動や睡眠もバランスよく行うのが理想ですが、まずは気軽にできることから始めてみましょう。
少しずつ腸によい習慣が身につき、お通じでそれがチェックできれば、毎日いきいき元気に過ごすことができますよ。
[ 監修者 ]