眠くて仕方ない…。寝ても寝ても眠い…。日中に眠くなる原因と対処法
「夜しっかり寝たのに、眠くて仕方ない」と悩んでいませんか? 日中眠くなってしまう人に多い病気や、やらないほうがいい習慣、すぐにできる眠気対策について、睡眠専門医の坪田聡さんに聞きました。
目次
日中眠くて仕方ない人に考えられる症状や病気
睡眠時間は十分に取れているはずなのに、眠くて仕方ないという人の中には、次のような病気が考えられます。主な病気の症状や代表的な治療法についてくわしく説明します。
日中眠いからといって全ての人が病気に当てはまるとは限りません。まずは、自分が当てはまるかどうかを確認しましょう。
睡眠不足症候群
睡眠不足症候群とは、慢性的な睡眠不足が続いて、心身に不調があらわれる状態のことです。
睡眠が満足に取れないと、日中元気に活動するための休息ができず、足りない睡眠を補うため昼間に眠ってしまうのです。
「6時間眠れば十分」と考えている人は、危険信号。6時間睡眠は、たった1日だとしても体がうまく疲労回復できず、日中のパフォーマンスが大きく低下します。特に慢性的に睡眠が不足している人は、次のような不調が起こりやすくなります。
- 疲労感
- 倦怠感
- 無気力
- 注意力散漫
- イライラ
- 食欲不振
- 胃腸障害
- 筋肉痛
また、睡眠不足の状態が続くと、体だけではなくメンタルにも影響が出て、人によってはうつ状態になることも。「ただの睡眠不足だから」といって放っておいてはいけません。
まずは、睡眠時間を振り返ってみて、足りない場合は増やしましょう。それでも改善しない人は、睡眠外来、もしくは精神科を受診してください。
ナルコレプシー
ナルコレプシーとは十分に睡眠を取っていても日中に眠くなる「過眠症」の一つで、急に眠気が襲ってくる病気です。立っているときや誰かと会話している途中、もちろん会議中であっても、ところかまわず眠り込んでしまい、自分ではどうすることもできません。
ナルコレプシーには四つの特徴的な症状があります。
- 睡眠発作…眠くて仕方なくなる
- 情動性脱力発作(カタプレキシー)…怒ったり笑ったりすると、急に体の力が抜ける
- 睡眠麻痺…金縛り状態になる
- 入眠時幻覚…寝つくときに幻覚をみる
1~4のうち、二つ以上の症状がある人は、ナルコレプシーの疑いがあります。なるべく早く睡眠専門医の診断を受けましょう。お近くに睡眠専門医や睡眠外来がない場合は、精神科に相談してください。
ナルコレプシーと診断された場合、適切な方法で医師が薬を処方して治療します。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中にひどいいびきをかき、急に呼吸が止まってしまう病気のこと。
「太っている人がなりやすい」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。主に肥満が原因で、寝ている間に気道が塞がれて起こります。
また、あごが小さい人も舌が気道を塞ぐため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高いと言われています。
自分で睡眠時無呼吸症候群かわからない場合は、家族に「寝ているときに呼吸が止まっていないか」を聞いてください。
睡眠中に呼吸が止まるため、そのたびに睡眠が中断され、眠りが浅くなります。十分に睡眠を取っていても昼間に眠くて仕方なくなる、朝起きたときにのどが渇く、頭痛がするなどの症状があります。
まずは、ドラッグストアやネットでいびき防止の口閉じテープや、マウスピースなどを使ってみてください。舌がのどに落ち込むのを防ぎ、気道が塞がりにくくなるので呼吸が保たれます。
肥満が原因と考えられる場合は、運動や食事を見直して生活習慣を変え、体重を減らしましょう。それでも効果がない場合は、睡眠外来もしくは、呼吸器内科や耳鼻科の診察を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つに、寝ている間の無呼吸を防ぐ「CPAP装置」があります。これは鼻から気道に空気を送り込む装置です。つけて寝ると気道が開くので無呼吸が改善され、熟睡できるようになり、その結果、日中に眠気を感じることが少なくなります。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、夜になると足がムズムズして不快感があらわれる病気です。鉄分が不足したり、脳内物質「ドーパミン」の働きが悪いことで起こります。足がむずむずして、夜の眠りを妨げます。
むずむず脚症候群には、次のような特徴があります。
- 脚の不快感が気になって動かしたくなる
- 脚を動かしていると不快感が軽くなり、止めるとひどくなる
- 症状は日中よりも夕方から夜にかけてあらわれる
症状が軽い場合は、日ごろから鉄分を摂ったり、この後紹介する生活習慣を見直すことで、快方に向かう場合があります。それでも改善しない場合は、睡眠外来を受診しましょう。睡眠専門の医療機関では、鉄剤やドーパミンを増やす薬などが処方されます。
病気には該当しなくても、大事な会議や車の運転中など眠ってはいけないときも眠くなってしまう人は、お近くの睡眠外来、もしくは精神科を受診しましょう。
眠くて仕方ない人に考えられる病気以外の原因
眠くて仕方ない人のすべてが病気に当てはまるとは限りません。日々のストレスや間違った生活習慣も、日中の異常な眠気につながっている可能性があります。ここでは病気以外で考えられる眠気の原因を解説します。
必要な睡眠時間が確保できていない
休日は寝てすごして、気がついたら一日が終わっていたという人も多いはず。休日はいつもより2時間以上遅い時間に起きてしまう人は、そもそも平日の睡眠時間が足りていません。
個人差はありますが、理想的な睡眠時間は、6.5〜7.5時間。本当に必要な睡眠時間を知る方法を紹介します。
休日はアラームをかけずに好きなだけ寝てみてください。そのときの「眠ってから起きるまでの時間」が平日より3時間長い人は、日ごろの睡眠が1時間足りていません。4時間長い人は2時間足りていない状態です。
よく“休みの日に寝溜めする”という人もいますが、休日だけで不足している睡眠時間を取り戻そうとすると、体内リズムが崩れ、かえって不調の原因になってしまいます。できるだけ平日も6時間半以上は寝るようにして、休日と平日の睡眠時間の差が出過ぎないようにしてください。
寝る前にスマホを触るのが習慣になっている
夜の眠りが浅いと、体が休まらず疲労感が残り、日中眠くて仕方がなくなります。眠りを浅くする要因はいくつかありますが、その中で最も眠りを妨げるのが「光の刺激」です。
そもそも人間には「朝明るくなったら目覚めて、夜暗くなったら眠くなる」という体内時計が備わっています。そのため夜に強すぎる光を浴びると、睡眠ホルモンの「メラトニン」が減少。寝つきが悪くなり、睡眠の質を落とす原因に。
スマートフォンやテレビの液晶画面から出るブルーライトの強い光で、体が活動モードになる「交感神経」が優位になります。少なくとも寝る30分前は見るのをやめましょう。
特に、寝る前の仕事のメールチェックは、「エスプレッソ2杯分」に匹敵するほどの覚醒作用があると言われています。
ストレスを溜め込んでいる
誰でも仕事や家庭で、多少のストレスは感じているはず。ストレスを感じていると、交感神経が刺激され、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。
コロナ禍で「睡眠時間は伸びているものの、睡眠の質が落ちた」と感じる人が増えています。「自分も感染症にかかるのではないか」「コロナ禍による不景気で先が見えない」と、ストレスを感じる人が増加したことが原因だと考えられています。
(※1)
心がモヤモヤして眠れないときは、一旦布団を出て、その気持ちを紙に書き出すと心が整理されます。
※1…『別冊日経サイエンス 脳と心の科学 意識,睡眠,知能,心と社会』(日経サイエンス社・21/2/18)より。
夕方〜夜に居眠りをしている
夕方のオフィスや通勤の帰りの電車で、ついウトウトしていませんか。数分程度なら問題ありませんが、ここで10分以上寝てしまうと夜の睡眠に関わります。
夕方から夜の間に仮眠を取ってしまうと、夜寝る際に寝つきが悪くなり、睡眠時間を減らす原因に。また、睡眠が浅くなる可能性もあります。昼寝をすると脳がスッキリするのでおすすめですが、仮眠を取るときは夕方から夜ではなく、午後3時までにすませておきましょう。
しっかり寝ているはずなのに疲れが取れないのは、眠りが浅いからかもしれません。睡眠の質を上げるための食事や生活習慣、眠りが浅い人がやってしまいがちな行動を、睡眠専門医の坪田聡さんに聞きました。
日中に眠くならないようにするための対処法
日中眠くて仕方ないのは、寝つきの悪さや浅い眠りが主な原因です。睡眠の質を上げるためには次のような方法があります。
寝室の環境を整える
睡眠の質を改善するには、寝室の環境に目を向けてください。特に気をつけたいのは、室内の「温度」「湿度」「明るさ」「騒音」。さらに、自分に合った枕やマットレスを使っているかどうかも重要です。
理想的な寝室の条件
- 温度…16~26度。夏は26度程度、冬は16~20度が理想的
- 湿度…室内を50〜60%に保つ
- 明るさ…寝る1時間前から寝室の電気を暗くする。寝るときは「真っ暗」か「常夜灯」に
- 騒音…図書館のような静けさ
- 枕やマットレス…寝返りが打ちやすく、硬すぎず柔らかすぎない。通気性がある
これらが熟睡するために最適な寝室環境といえます。また、枕やマットレスを新調するときは必ず試してみて、寝姿勢が整うかどうかをチェックしてくださいね。
毎日同じ時間に食事を摂る
良い睡眠のためには、食事を食べる時間も大切。1日3食、だいたい同じ時間に食べるようにしましょう。
人間には、さまざまな体内時計が備わっているのですが、そのうちの一つは腹時計。食事によって血糖値が上がるタイミングで腹時計が働きます。血糖値が上がると、体内時計を調節するインスリンが分泌されます。
決まった時間にご飯を食べることで、一定のリズムでインスリンが分泌され、それによって体内時計が整うのです。体内時計が整うと、夜になれば自然と眠くなり、おやすみモードに切り替わります。
「リズム運動」で日中はシャキッと、夜はぐっすり
眠りに悩みがあるなら、運動はぜひ取り入れて欲しい習慣です。中でもジョギングやウォーキングなどの一定のリズムで動く「リズム運動」がおすすめ。
昼間にリズム運動をすると、神経伝達物質「セロトニン」が増加して、日中は目を覚ましてくれる効果があります。また、セロトニンは、心をおだやかにしてくれる作用があり、十分に分泌することでストレス緩和にもつながります。
さらに、この「セロトニン」が夜になると、睡眠ホルモン「メラトニン」に変わり、寝つきが改善。運動をすることで、適度に疲れて夜はぐっすり眠れますよ。
心のモヤモヤを紙に書く
心が落ち着かずモヤモヤして眠れないときは、その気持ちを紙に書き出しましょう。
ネガティブな気持ちを紙に書き出すと、一旦頭が整理されて冷静になれます。怒りや悲しみ、焦りが静まるので、眠りやすくなります。
反対に、寝る前にネガティブなことを思い出すと、ますます眠れなくなるという人も。
そんな人は、無理して嫌な気持ちを思い出さなくていいので、ポジティブなことを書きましょう。心をリラックスさせる「副交感神経」が優位になり、心穏やかに眠れるでしょう。
40度以下のぬるめのお風呂で副交感神経を優位に
お風呂の温浴効果が寝つき改善のカギに。入浴は、寝る1時間ほど前に、40度以下のぬるめのお風呂に10分程度つかりましょう。
人は、体温が下がるときに眠くなります。寝る前に入浴で体温を上げておくと、血流が良くなり皮膚表面から熱を発散。冷えた血液が脳や内臓を冷却し、一気に体温が下がると眠気が強くなります。
反対に温度が高すぎると、交感神経が優位に働き、興奮状態になります。寝る前に入るときは、40度以下を守るようにしてください。
シャワーだと温浴効果が期待できません。湯船につかれない場合は、42度のお湯に10〜15分ほど手と足を洗面器に入れる「手浴+足浴」で体温を上げることをおすすめします。
生理前・生理中に眠くなってしまう原因と対処法
女性で多いのが、生理前になると眠くて仕方ない状態になること。生理前には女性ホルモンの一つ「プロゲステロン」の血中濃度が高まります。プロゲステロンには体温を上げる特徴があります。
人は昼と夜の体温の差が大きいほど熟睡できるのですが、生理が近づくと、プロゲステロンの働きにより、昼と夜の体温差が小さくなり、睡眠の質が低下。さらにプロゲステロンには催眠効果があり、日中の眠気を誘います。これが日中眠くて仕方ない原因に。
個人差はありますが、プロゲステロンによる眠気は生理の約1週間前からはじまり、生理がはじまるとともに軽減。
生理がはじまっても眠くて仕方ない原因は、腹痛や頭痛、イライラ、憂鬱などにより寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下するからと考えられます。
生理前や生理中の眠気を軽くする対処法は、体調がいいときの日中はできるだけ活動的に、夜は体をいたわってリラックスすること。昼夜でメリハリをつけるように意識してくださいね。
このように生活習慣を見直してもうまくいかない場合や、日中に眠くて仕方ないと感じている人は、婦人科を受診しましょう。カウンセリングや経口避妊薬(ピル)の服用で改善が期待できます。
眠くて仕方ないときにすぐできる対処法
最後に、眠くて仕方ないときにやってほしい効率の良い仮眠の方法と、仮眠できないときの対処法を紹介します。
仕事中やどうしても外せない用事の途中で眠くなったときに、試してみてくださいね。
仮眠を取る
NASAやGoogleで作業効率を高めるために取り入れられているのが昼食後の仮眠です。
昼食〜午後3時までの間に20分間の仮眠をおすすめします。20分も時間が取れないというときは、1分間目をつぶるだけでもOK。外界の情報がシャットアウトされて、脳と目がリフレッシュします。
仮眠を取る前にコーヒーやお茶などの覚醒作用があるカフェインを取ることで、目覚めたときに頭がスッキリ。
ただし、30分以上寝てしまうと、深い睡眠に入ってしまい眠気が覚めにくくなるだけではなく、夜の睡眠に影響します。仮眠で寝すぎないように、机に突っ伏した体勢、イスにもたれかかるなど、横にならず座ったまま寝るようにしましょう。
仮眠ができない場合は…
仕事があるとどうしても仮眠できないという人もいるでしょう。そんなときは反対に目を覚ます方法を試してみてください。仮眠ができないときは、冷たい水で手を洗ったり、窓を開けて外の空気に当たってみましょう。交感神経が刺激され、脳が活動モードに切り替わります。
また、先ほど紹介したリズム運動も効果的です。具体的には、ウォーキングやジョギングがおすすめです。外に出て体を動かすことが難しい人は、手のひらを開いて閉じる「グーパー体操」や、ガムを噛むだけでも効果があります。特にミントなどのメントール系のガムを摂ると、交感神経が優位になります。
まとめ:眠くて仕方ない人は、睡眠不足の原因を見極めよう
寝ても眠くて仕方ない原因は、病気が関係している場合もあります。病気以外に、生活習慣の乱れが眠りに影響することも。まずは、正しい生活習慣を身につけて、それでも改善しない場合は、専門機関で受診しましょう。
現時点で、誰かと会話しているときや大切な用事の途中で急激に眠くなってしまう人は、お近くの睡眠外来、もしくは精神科を受診してください。
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