タンパク質を摂るならやっぱり卵?栄養価と効果的な調理法を解説
卵1個(約50g)にはタンパク質が6.2g含まれています。“完全栄養食”ともいわれる卵は、タンパク質以外にもさまざまな栄養素がつまっています。卵の栄養価と効率よく栄養摂取できる調理法を解説します。
目次
卵は良質なタンパク質が摂れる食品
手軽に調理できて出番が多い、卵を使った料理。卵は、ビタミンCと食物繊維以外のほとんどの栄養成分をバランスよく含んだ食品です。
特に、良質なタンパク質が豊富に含まれ、体への吸収率の良さも魅力のひとつです。価格が安定していて、幅広い料理に使える面でも取り入れやすい食材ですよね。次から、卵に含まれるタンパク質量について、くわしく解説していきます。
卵1個のタンパク質量は?
卵1個(約50g)のタンパク質は、6.2gです。牛乳1本(200g)のタンパク質6.6gとほぼ同じタンパク質が含まれています(七訂食品成分表2020より)。
30~49歳の女性が1日に摂りたいタンパク質は50gです(推奨量)。卵1個で、推奨量の約12%のタンパク質が摂れます。
何といっても、卵の大きな特徴は、体内で合成できない必須アミノ酸をすべて含む質の良さ。アミノ酸とは、たんぱく質を構成するものです。その中でも「必須アミノ酸」は、私たちの体では合成できないか、合成量が少なくて必要量を満たすことができないために、食事から摂らなければならないアミノ酸のこと。
この「必須アミノ酸」を適切な割合で含むものを、一般的に「良質なタンパク質」といいます。その代表が卵。卵以外では、肉類や魚、大豆製品、牛乳なども良質なタンパク質といえます。
誰でも30歳を過ぎると、筋肉量が年に約1%減るといわれています。筋肉が減ると基礎代謝が落ち、肥満や冷え性、血行不良を招くことも。良質なタンパク質は、筋肉量をキープするためにも欠かせません。しっかり摂取して健康的な筋肉を保ちたいものです。
卵はタンパク質だけじゃない! “完全栄養食”といわれる理由
良質なタンパク質を含む卵ですが、実はそれだけではありません。卵はヒナがかえるのに必要な栄養素がギュッとつまっているため、昔から“完全栄養食”といわれてきました。
卵1個(卵生50g)に含まれている主な栄養素をみてみましょう。
卵1個(卵生50g)に含まれている主な栄養素
- エネルギー:76kcal
- たんぱく質:6.2g
- 脂質:5.2g
- カルシウム:26mg
- リン:90mg
- 鉄:0.9mg
- 亜鉛:0.7mg
- ビタミンA(レチノール活性当量):75μg
- ビタミンB1:0.03mg
- ビタミンB2:0.22mg
- ビタミンD:0.9μg
- ビタミンE:0.8mg
(七訂食品成分表2020より)
これだけ豊富な栄養がぎっしり詰まっているから、“完全栄養食”と呼ばれるのです。
卵黄と卵白のタンパク質の違いは?
卵の重さは、「卵黄:卵白:卵殻=3:6:1」の割合です。その中でも卵黄と卵白では、タンパク質やその他の栄養価に違いがあります。卵黄と卵白それぞれの栄養価についてご説明します。
卵黄のタンパク質
卵黄1個(生15g)のタンパク質は2.5gです(七訂食品成分表2020より)。
卵黄は卵白と比べると、タンパク質と脂質を多く含み、特に卵の脂質の99%以上は卵黄に含まれています。コレステロールが多いのも特徴で、卵黄には、ビタミンAやB1、B2、D、鉄も卵白より多く含まれています。
卵白よりもタンパク質が多いので、卵でタンパク質摂取したいなら卵黄も一緒に食べましょう。
卵白のタンパク質
一方、卵白1個(生30g)のタンパク質は3.2gです(七訂食品成分表2020より)。
卵白は水分が多いのが特徴で、脂質は含まれていません。メレンゲやスポンジケーキがふっくらするのは、卵白に含まれるアルブミン系のタンパク質の働きによるもの。卵白に含まれるタンパク質を泡立て器で混ぜると、性質が変わりとても薄い膜状になります。空気を包み込み、ふわふわのメレンゲになります。
卵白は、卵黄よりもカリウムやナトリウムが多く含まれていますが、ビタミン類は卵黄のほうが多く含まれています。タンパク質は卵黄と卵白の両方に含まれているので、どちらか片方ではなく、一緒に食べるのがおすすめです。
調理法の違いで卵のタンパク質は変わる? どんなときに食べたらいい?
ゆでたり焼いたり、汁物に入れたりと、日々の料理でも大活躍の卵。わずかですが、調理法の違いで卵のタンパク質量が変わります。卵は調理法によっては、消化が良くなったり悪くなったりするため、その日の体調や食べたいシーンで使い分けるとよいでしょう。
「生卵」のタンパク質
まずは生卵。ほかほかご飯にのせて食べる、卵ご飯が定番ですよね。
生卵1個(50g)のタンパク質は6.2gで、1日に摂りたいタンパク質の約12%を摂ることができます(30~49歳女性の場合、日本人の食事摂取基準2020年版より)。
そもそも生卵を食べる習慣は、世界でも珍しい食文化だそうです。日本では、食中毒の原因のひとつ「サルモネラ菌」による卵の汚染が、海外と比べてとても低いからです。
そんな日本では安心の生卵も、胃腸の調子が悪いときなど体調がすぐれないときは控えましょう。消化のよい卵豆腐や卵とじ、半熟卵、茶碗蒸しで食べるのがおすすめです。
また、生卵を食べるときは新鮮な卵を選ぶようにしましょう。卵のパッケージに書いてある賞味期限は、生で食べられる期限が表示されています。
新鮮な卵の選び方
- 卵の殻の表面がザラザラして光沢がないもの
- 振って音がしないもの
- 電気の光に透かして明るく透けてみえるもの
古い卵の見分け方
- 割ったときに卵黄、卵白が広く広がるもの
- 振って音がするもの
- 電気の光に透かして明るく見えないもの
※ただし、スーパーで購入する際は、振ったり割ったりしないようにして、自宅での調理の際に参考にしてください。
「ゆで卵」にした際のタンパク質
ゆで卵はお弁当のおかず、喫茶店のモーニングなどでも人気ですよね。ゆで卵1個(50g)のタンパク質は6.5gで、1日に摂りたいタンパク質の約13%を摂ることができます(30~49歳女性の場合、日本人の食事摂取基準2020年版より)。
ゆで卵は、ゆでて殻をむくだけなので、手軽に良質なタンパク質が摂れます。特に運動習慣のある人は、筋トレ後に食べられるよう持参するとタンパク質の補給ができます。激しい運動をする人は、タンパク質の分解がすすむため、食品から摂る必要があります。
またゆで卵は、ゆですぎるとタンパク質が変化して消化が悪くなるので、半熟程度がおすすめです。
ゆで卵を早く作る裏ワザ
ここで、ゆで卵を時短で、しかも少ない水で作れる方法をご紹介します。この方法だと殻もツルンとむけますよ。
- 鍋または深めのフライパンに卵と少量の水(鍋底1cmくらい)を入れる。卵同士が重ならないように並べるのがポイント。
- 鍋にふたをして火にかける。沸騰したら中火にし、5~10分程度、好みの固さになるよう加熱する。火を止めて10分ほど置いておく。
- 卵を冷水にとり殻をむく。
「ポーチドエッグ」にした際のタンパク質
ポーチドエッグは、落とし卵のことです。酢を入れたお湯に、卵を割り入れて火を通す料理で、ゆで卵などに比べて調理時間が短く、忙しい朝におすすめです。
ポーチドエッグ1個(50g)のタンパク質は6.2gで、1日に摂りたいタンパク質の約12%を摂ることができます(30~49歳女性の場合、日本人の食事摂取基準2020年版より)。
完全栄養食といわれる卵に唯一不足しているのが、ビタミンCと食物繊維。この2つを補って、さらに栄養バランスをアップさせるために、野菜たっぷりのスープにポーチドエッグを入れて食べるのがおすすめです。野菜とタンパク質が一緒に摂れて栄養価がグンとあがりますよ。
ポーチドエッグに酢を入れる理由
ポーチドエッグを作るときに少量の酢を入れます。理由は、酢にタンパク質を固める性質があるから。
酢が入ったお湯に卵を入れると、卵の成分であるタンパク質を固めるため、崩れにくくなります。きれいにまとまったポーチドエッグを作るには、お湯を沸かしてから酢を入れましょう。
お湯600mlに対して、酢を大さじ2、塩を小さじ1入れてから、中央に卵をそっと落とし、弱火で4分加熱すると、上手にポーチドエッグが作れます。ぜひお試しを。
タンパク質が豊富な卵の健康効果
タンパク質が豊富で栄養価の高い卵には、ダイエットや美肌など、女性にうれしいさまざまな健康効果が期待できます。代表的な4つの効果がこちらです。
筋肉量アップ&やせやすい体になる
卵に含まれる良質なタンパク質は、筋肉や臓器など体の組織をつくる材料となり、筋肉量アップにも必要です。
特に激しい運動をしたときは、体に必要なタンパク質の量が増えます。運動後こそしっかり補いましょう。
反対に、体を動かす機会が少ない生活が続くと、筋肉量が減ってしまいます。するとタンパク質をうまく体に摂り入れることができず、この場合も必要量が増えます。デスクワーク中心で運動習慣がない人や、ダイエットしたい人は、体を動かす機会を増やして、適度なタンパク質を摂ることをおすすめします。
新陳代謝を高めて美肌に導く
卵には、女性にうれしい美肌効果も! 卵に含まれるビタミンB2は、新陳代謝を高める役割があります。ビタミンB2は別名「美容ビタミン」としても知られています。タンパク質の合成にかかわっているため、不足すると小鼻のまわりに角栓が溜まってブツブツしてしまうことも。
また、卵に豊富なタンパク質は、皮膚の細胞を作り、肌をみずみずしく保つ働きがあります。健康的な肌や髪の毛、爪を保ちたいなら、タンパク質とビタミンB2は欠かさずに摂りたい栄養素です。
免疫力を高める
卵に含まれるビタミンAには、皮膚や粘膜の健康を保ち、免疫機能を維持する働きがあり、免疫細胞を活性化するともいわれています。
ビタミンAは、油と一緒に調理すると吸収率がアップします。卵料理なら、スクランブルエッグや卵焼き、目玉焼きにすると効率よくビタミンAが摂れますよ。
記憶力の向上に役立つ
卵に含まれるレシチンの構成成分である「コリン」は、脳の記憶や情報伝達に関わっています。そのため、記憶力や学習能力の向上に役立つと考えられ、注目を集めています。
卵にまつわる素朴な疑問を解決!
「卵は1日1個まで?」「食べすぎるとコレステロール値が上がる?」。そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。次から、卵にまつわるさまざまな疑問について解説します。
卵は1日何個まで食べていいの?
一番気になるのが、「1日に何個食べていいのか」ということ。目安は、1日1~2個です。1日1個食べることはもちろん、健康な人でも1日2個食べるのは問題ありません。
ただ、注意したいのは良質なタンパク質が多いからと卵ばかり食べることです。タンパク質や他の栄養素もバランスよく摂取するためにも、卵だけに頼らず、肉や魚、大豆製品もまんべんなく食べるようにしましょう。
卵を食べるとコレステロール値が上がる?
卵はコレステロールが多いからと、食べるのを我慢していませんか? 実は、健康な方なら食事に含まれるコレステロールは、血中コレステロール値に直接反映されないことがわかっています。
もちろん摂りすぎはよくないですが、むやみに避ける必要もありません。また、コレステロールを食事で摂り過ぎても、肝臓で合成量を抑えて、体内のコレステロールを一定に保つようになっています。
卵黄に含まれるレシチンには血中コレステロールが上がるのを抑える効果があり、動脈硬化を予防してくれる役割があります。コレステロール値が気になる方も、1日1個食べるぶんには心配はいりませんが、気になる方は、かかりつけ医に相談したうえで食べましょう。
生活習慣病を予防するためには、適度な運動やバランスの良い食事、節酒、禁煙などを心がけることも大切です。
赤卵と白卵の栄養価の違いは?
スーパーでは白卵と赤卵の両方をみかけますが、実は赤卵と白卵の栄養価は同じです。殻の色の違いは、鶏の種類によるものです。
卵の中には、エサにヨードやDHAを加えて、栄養成分を強化したものがありますが、タンパク質の量は変わらないのでお好みで選ぶとよいでしょう。
まとめ:タンパク質豊富な卵は、女性にうれしい優秀食材
タンパク質豊富卵は、筋肉量がアップしてやせやすい体になる、美容に役立つなど、女性の体づくりに役立つ優秀食材といえます。
調理法によって多少タンパク質の量が変わりますので、調理時間に加え、栄養価のことも少し考えながら卵料理を作ってみてください。
また、卵だけでなく、肉や魚、豆腐など、他の食材から良質なタンパク質を摂ることも大切です。卵の栄養価を味方につけて、健康的に過ごしましょう!
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