気にしすぎで疲れる…。“繊細すぎる心”を軽くする「生き方のコツ」
人付き合いが苦手、細かいことが気になって疲れる……それはHSPとも呼ばれる、“敏感気質”のせいかも? そんな自分の繊細すぎる気質とうまく付き合って、ゆったり楽に生きる方法を教えます!
目次
“繊細すぎる人”の日常は?
「繊細な私」を受け入れ、自分らしく生きて
「“繊細すぎる人は生きづらい”とよく言われますが、そうは思いません。敏感気質とうまく付き合えば、毎日ハッピーに、自分らしく生きられますよ」と、自身も敏感気質であり、HSP(敏感気質)アドバイザーの上戸えりなさん。
上戸さんによると“気質+性格=その人”で、敏感気質といってもタイプはさまざま。よく似た症状もあり、判断が難しいところもあります。
「敏感気質かどうか確信が持てなくても、大きな問題ではありません。大切なのは『私は繊細すぎる人かも』という気づきをきっかけに、自分の新たな一面を知り、自分らしく生きるコツを見つけることです」
「感受性の高さや相手のことを思いやる気持ちなど、繊細すぎる人には良い面がいっぱいあります。ほかの人にはない長所を生かして、自信を持って生きていきましょう!」
私って“繊細すぎる”人かも!?
敏感気質に当てはまる必須項目として、以下の4つの特徴があります。大切なのは“自分がどう思うか”なので、普段の自分を振り返りながら考えてみて。
深く考え込みやすい
ほかの人にとっては取るに足らないことも、深く掘り下げる傾向があります。相手の言葉の裏を考えたり、「人生とは?」「生きる意味とは?」など、哲学的なことをじっくり考えたりします。
◻相手が驚くような深い質問をする
◻いろいろな可能性を考えなかなか決断できない
◻行動を起こすのに時間がかかる
共感・同調しやすい
感受性が高く、人のことを自分のことのように感じる“共感力”に優れています。悩み相談を受けるうちに落ち込んでしまったり、悲しいドラマや映画に感情移入して号泣してしまったりすることも。
◻物事、出来事の意味を深く感じ取る
◻人の心を読むことに長けている
◻周りの人のストレスによく気がつく
強い刺激が苦手
雷やスピーカーの爆音が苦手だったり、人混みだと疲れやすかったりします。親しい友達でも、長時間一緒にいると疲れを感じることが。人の視線や、強いにおいが苦手な人もいます。
◻大きな音が怖く過剰に驚いてしまう
◻人に見られていると本来の力を出せない
◻人と一緒にいると1人になりたいと思う
ささいな変化に気づきやすい
人の表情や声色など小さな変化に気づくため、「私のせいで不機嫌なのかも」と悩みやストレスを抱えがち。相手が本音、本心を言っていないことが、なんとなくわかってしまうこともあります。
◻人や場所などの外見上の変化に気づく
◻PCのタイプ音などささいな音が気になる
◻相手の表情などから本心に気づきやすい
【注意!】 敏感気質とよく似た症状
敏感気質だと思うけれど、上の4つの特徴に合致しないときは、ほかの症状の可能性を考えてみましょう。
うつ症状
見分けるポイントは“深さ”と“強さ”。長期間立ち直れないほど落ち込みが深い、人に迷惑をかけるほどマイルールへの執着が強いなどは、うつ症状が原因のこともあります。
ADHD
相手が不機嫌なとき、敏感気質の人は「私が何かしたかな?」と推測しがち。不機嫌さに気づかなかったり、不機嫌な理由がわからなかったりするならADHDの可能性も。
“繊細すぎる”のは持って生まれた“気質”
繊細すぎるのは生まれつきの気質で、努力で変えることはできません。ただし、人の個性は“気質”と、育つ過程で作られる“性格”で成り立っており、気質は性格でカバーすることが可能。考え方や対処法で、生き方を変えることができます。
“繊細すぎる人”の良いところ・困るところ
どんな気質にも良い面・悪い面があるもの。良い面を伸ばしていくことが、敏感気質を生かすコツ!
[ 良いところ ]
感動が増える
感受性が高く、生きているだけで感動がいっぱい! 楽しさ、喜び、誰かを好きな感情を、人一倍感じることができます。
人の心に寄り添える
言葉で表せないことを含めて、相手の心を深く感じ取れます。「私の気持ちがなんでわかるの?」と驚かれることも。
「相手が喜ぶこと」がわかる
人の気持ちがわかる=相手の喜ぶことがわかるということ。先回りして行動できるので、人に好かれ、感謝されます。
[ 困るところ ]
他人に振り回されがち
自分と他人の境界線があいまいで、相手に合わせて行動しがち。いつの間にか、相手のペースに巻き込まれてしまいます。
自分の疲れに鈍感
自分がこだわることに対して、厳しいマイルールを設定。ルールをクリアするまで、無理してがんばる傾向があります。
燃え尽きやすい
完璧主義で、適度に力を抜けない生真面目さがあります。そのため、ゴールに到達した途端、糸が切れて無気力になりがち。
“繊細すぎる自分”がうまく生きる3つのコツ
「私は繊細すぎる人」と思ったら、まず3つのコツを押さえて。できることから、トライしていきましょう!
1 “繊細な自分”を知る
自分が繊細であることを知り、気質の特性を理解することが、ラクに生きるための第1歩。本当の自分が見えてくれば、日々感じる悩みやジレンマにどう対処すれば良いかもわかってきます。
2 「今日できたこと」の数を数える
繊細すぎる人は、失敗したこと、できていないことを数えて「私なんてダメ」と落ち込みがち。どんなに小さなことでもいいので、今できていること、今日できたことを数えると前向きな気分に!
3 自分にとっての優先順位を知る
臨機応変が苦手で、余計なことまで抱えてパンクしがち。「疲れているときは早めに帰宅する」「今日は家族との時間を優先する」など、あらかじめ頭の中で優先順位を決めておくと気楽になれます。
“繊細すぎる人” 向け状況別の対処テク
「生まれつきの敏感気質は変えられませんが、気質を受け入れ、適切な対処をすればもっとラクに生きられます」と上戸さん。
繊細すぎる人は、自分より相手の気持ちを優先し、ストレスを抱えたり、トラブルに巻き込まれたりしがち。でも原因が気質にあり、対処法があるとわかれば心が軽くなるはず。
「『がんばって変わらなきゃ』と自分を追い詰めず、いかに楽しく気質と向き合っていけるかが重要です。繊細すぎる気質に気づき、変わろうとしている時点で大きな一歩。焦らず少しずつ、ラクに生きられる方法を見つけていってください!」
「繊細である」ことを無理に宣言しなくてもいい
自分の気質を人に言うことで、すっきりするどころか、気まずさを感じてしまう可能性も。無理に告白する必要はなく、人を変えるより、自分の対応を変えるほうがラクになる早道です。
気をつかいすぎる
気疲れするのは、相手のことが嫌いなのではなく、気質の影響かも。適切な対応で自分の身を守って。
気心の知れた人とでも、一緒にいると疲れてしまうことがあるのが敏感気質。1人になれる時間と場所が必要なので、つらいときはトイレの個室などで気持ちのリセットを。楽しくても、疲れるときがあることを気に留めておきましょう。
「エナジーバンパイア」とは、人からやる気やエネルギーを奪い、パワーアップする人のこと。敏感気質の人は他人との境界線がもろく、メールやLINEのやり取りだけで相手の影響を受けやすいため、できるだけ関わらないのが正解です。
もともと断るのが苦手で、相手を気遣う気持ちから、お願いされると引き受けてしまう傾向が。「●●はできるけど、▲▲はできない」など、「できること」と「できないこと」の両方を伝えるようにすると、要望を言いやすくなります。
刺激が気になる
音、痛み、チクチクした服などの刺激を受けやすいのが特徴。対処法を知っておけば怖くありません。
音が気になるときは、遮音性の高いヘッドホンで耳を覆うと効果的。ヘッドホンがないときは、イヤホンや耳栓を使うか、お気に入りのアロマオイルの香りをかぐ、チョコを食べるなど、気分が良くなることをすると気持ちが落ち着きます。
隣の席の人との間に本や資料を積んで壁を作ったり、髪を下ろしたりして物理的に視線を遮るのがベスト。あまりに気になって何も手につかないときは、一時的にトイレに行くなど、その場にいなくて済む方法を考えましょう。
共感しすぎる
関係ない人のことも、自分ごとのように感じてしまうのが敏感気質の特徴。共感する対象を絞ればラクに。
相手の本当の気持ちがわかってしまうと苦しいこともありますが、逆に言えば、相手がうれしいと思うツボもわかるということ。イヤな部分は見ないように線引きしつつ、相手の気持ちを察せる、思いやれる自分の特性は大事にして。
敏感すぎる人は、ネガティブなことに強く共感する傾向があります。映像を見ていて悲しい気持ちになったら、チャンネルを変えるか、席を立ち、イヤなものから物理的に離れて。
周りの人の負の感情に引っ張られてしまうときは、ハッピーになれるものを見て心と視覚のリセットを。スマホや携帯のトップ画面を大好きな家族、ペットなどの写真にしておくと、人がいる環境でもさりげなくリセットできます。
考えすぎる
物事を深く考えられることは、長所でもあります。否定的に考えず、特性を生かしていきましょう。
相手と比べて、自分が勝っていることではなく、劣っていることに目が行きがちな繊細さん。ささいなことでもいいので、自分ができることに目を向けましょう。“できること”や“できていること”をきちんと認識することが、自己肯定感のアップにもつながります。
文章を書くのに時間がかかるのは、読む相手にきちんと伝わるか、相手がどう感じるかが気になるから。相手の反応は予測がつかないため、努力が無駄になることもありますが、細やかな配慮ができる自分を認め、褒めてあげましょう。
とにかく立ち上がり、場所を変えてみると気持ちの切り替えに。また自然に触れると心が落ち着きやすいので、外の空気を吸ったり、森林や植物を見たりするのもおすすめ。外出できないときは、部屋を移動するだけでも効果があります。
さまざまな可能性をシミュレーションするあまり、決断を下すのに時間がかかることが。答えが出ないときは“好きか、嫌いか”“欲しいか、欲しくないか”など、ハッキリ白黒つける二択方式で考えると答えを出しやすくなります。
変われる気がしない……人への3つのヒント
「今の自分を変えたい!」と思っても、考え方や行動のクセを変えるには時間がかかります。無理せず、自分のペースで大丈夫です。
1 すぐに変われなくてもOK
そもそも持って生まれた気質を変えるのは難しく、無理して変わる必要もありません。「自分は敏感気質なんだ」と認め、受け入れるだけでも、変わろうとしているサインです。
2 向き合えないときはそれでいい
繊細さと向き合えなかったとしても、自分を責めず、「今は準備が整っていないんだ」と考えて。自然に向き合おうと思えるときが来るはずなので、タイミングを待ちましょう。
3 繊細さを意識しすぎないで
「繊細すぎるから人生うまくいかない」など、気質のせいにするとすべてがネガティブな方向に。必要以上に繊細さを意識せず、「なんとかなるさ」と気楽に構えたほうが前向きになれます。
イラスト/フクイサチヨ
(からだにいいこと2021年10月号より)
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