コーヒーは一日何杯までOK?飲んでもいい量と健康効果を解説
コーヒーは健康に良い、ダイエット効果があるなどと言われますが、一日に何杯まで飲んで良いものでしょうか。今回は健康やダイエットに良いコーヒーの量や、体にいい効果などを解説します。
目次
コーヒーの効果とは? 健康やダイエットにもいいの?
コーヒーが好きで「午後のブレイクタイムには欠かせない」「毎日飲んでいる」という人も多いのではないでしょうか。コーヒーは眠気覚ましになる、というイメージがありますよね。しかし、コーヒーの効果はそれだけではありません。
コーヒーにはさまざまな体にいい効果があります。どんな働きがあるのか、次からくわしく解説します。
カフェインの覚醒効果で眠気覚まし
コーヒーといったら目覚まし、と思い浮かぶ人も多いでしょう。覚醒効果をもたらす成分は、よく知られたカフェインによるものです。
疲れを感じるとき、脳内では「アデノシン」という物質が、「アデノシン受容体」という神経伝達経路に作用しています。これにより眠気が生じます。
カフェインはアデノシンとよく似た構造をしています。そのため、眠気を引き起こすアデノシンをブロックし、かわりにアデノシン受容体へと結びつきます。カフェインを摂取すると覚醒効果があらわれるのはこのためと考えられます。
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2つの有効成分が脂肪を燃やす
コーヒーには脂肪を燃やす効果があるということが、近年の研究でわかってきています。これは、カフェインとクロロゲン酸という2つの成分によるものです。
カフェインには、すい臓から分泌される「リパーゼ」という消化酵素の働きを助ける効果があります。
この消化酵素は脂肪の分解を助けるものなので、活性化させることで脂肪を効率良く燃やすことができると考えられるのです。
また、クロロゲン酸はポリフェノールの一種です。主に肝臓で働き、脂質の代謝を促し、脂肪の蓄積を抑えることがわかっています。さらにクロロゲン酸には、筋肉細胞の中のミトコンドリアに働きかけ、脂肪をより燃えやすくする働きもあります。
カフェインとクロロゲン酸の両方が互いに脂肪の分解、燃焼を促進し、体内に脂肪が溜まるのを抑制しています。
参考:保健指導リソースガイドより
ポリフェノールでアンチエイジング
コーヒーはダイエットだけでなく、美容にも効果的です。
コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、ポリフェノールの一種。ポリフェノールには、強力な抗酸化作用があり、アンチエイジングに効果を発揮します。
抗酸化作用とは、体の「酸化」を抑える働きのこと。体が酸化してサビつくと、美容面では肌のたるみや、シミ・シワの原因に。生活習慣病や体の老化のほか、さまざまな不調の原因になります。
ポリフェノールの抗酸化作用によって血管が柔らかく保たれると、動脈硬化の予防にもつながります。
また、コーヒーのポリフェノールが表皮角化細胞のメラニンの取り込みを抑制する働きがあることや、コーヒーを多く飲む人は統計学的にシミが少ないとの報告もあります。このように、適度なコーヒーの摂取は、老化の予防になる可能性があると言えます。
出典:シンポジウム 加齢に伴う皮膚の変化とアンチエイジング療法より(※pdfファイル)
コーヒーの香りでリラックス
仕事中、気分転換にコーヒーを飲んでほっと一息ついている人も多いことでしょう。コーヒーには覚醒効果だけでなく、リラックス効果があることは、研究でも明らかになってきています。
その大きな要因はコーヒーアロマ、すなわち“香り”です。コーヒーの香りをかぐことで、脳内ではリラックス状態を示すα波が出現することがわかっています。
ちなみに、コーヒーのリラックス度は豆の種類によって異なり、α波の出現量が多いのはグアテマラとブルーマウンテンの2種類だといいます。気持ちを落ち着かせたいときは、こうしたコーヒーを選ぶと良いでしょう。
このほか、カフェインやクロロゲン酸などの成分もストレス解消やリラックスに効果があると考えられています。
出典:香りが脳機能に与える効果(特別講演3)(第17回生命情報科学シンポジウム)より
出典:コーヒー抽出液によるストレス緩和に関する研究より(※pdfファイル)
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コーヒーには病気のリスクを下げる効果も
コーヒーには覚醒効果やダイエット効果だけではなく、病気リスクを下げる効果もあることがわかっています。
病気リスクを下げるコーヒーの量と効果について解説します。
一日3~4杯で糖尿病リスクが低下
まず注目したいのは、糖尿病リスクです。
これまでの複数の研究から、コーヒーに含まれるカフェインには、食後に血糖値の上昇を抑える作用があると考えられています。
コーヒーを飲む量が一日2杯以下の人に比べて、一日3~4杯飲む人の2型糖尿病発症リスクは、24%低下するという調査結果があります。
こうした研究では、カフェインの入っていないカフェインレスコーヒーでもある程度のリスク低下が報告されており、カフェイン以外の成分ではポリフェノールなども関係している可能性があります。
出典:ネスレ日本株式会社 ?「コーヒーと健康」専門家インタビュー より
出典:厚生労働省研究班による多目的コホート研究 (JPHC Study)の結果から
コーヒーは風邪や喘息を改善
コーヒーに含まれるカフェインは、自律神経の一種である交感神経に働きかけ、風邪による呼吸器の障害を改善し、発汗作用をはじめ、新陳代謝を促進してくれる作用があります。このため早く風邪を治す働きがあり、市販されている多くの風邪薬にも含まれています。
さらに、アレルギー性の病気の一つである喘息において、カフェインは狭くなった気管支を広げる効果があり、喘息発作の予防効果があることが示されています。
喘息の発作は、交感神経が興奮しているときには起こりにくく、もう一つの自律神経である副交感神経が緊張しているときにはでやすい傾向にあります。そのため、コーヒーのカフェインによって気管支を広げ、交感神経を興奮させれば喘息の発作の予防につながるわけです。
出典:「コーヒーとぜんそく」(大阪薫英女子短期大学教授・河野友美著(コーヒー健康法))より
コーヒーが死亡リスクを下げるという研究も
コーヒーについては、ある程度の量を習慣的に飲むと死亡リスクが低下するという報告もあります。
いくつかの研究のうち英国バイオバンクにおけるデータ分析によれば、コーヒーを全く飲まない人を基準とした場合、一日に2~5杯飲む人は12%、6~7杯飲む人は16%の死亡リスク低下があるとされました。
国内の研究では、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べ24%低いとの結果が出ています。
これらの研究では、習慣的にコーヒーを飲むことで、脳や心臓、血管、肺などの病気で亡くなるリスクを下げられることがわかってきています。
こうした研究の中には、明らかに死亡リスクが低下しているのは「一日に4杯まで」という結果が出ているものもあり、多く飲めば良いわけではないことがわかります。
出典:カフェイン代謝の遺伝的変異によるコーヒー飲酒と死亡率との関連 英国バイオバンクからの調査結果より
出典:国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト 多目的コホート研究(JPHC Study)コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について
コーヒーは一日何杯まで飲んでもいいの?
さまざまな効果が期待できるコーヒーですが、「飲みすぎると健康に良くない」と聞いたことがある人も多いのでは。
結論として一日何杯まで飲んでいいのでしょうか。
一般的には一日3~4杯が目安
一日に飲んでも良いコーヒーの量は、3~4杯までであると言えます。
カフェインの摂取量については、日本のみならず世界でさまざまな研究がおこなわれてきました。それらの結果から、コーヒーの量が1~2杯の場合よりも、3杯以上の場合に大きな効果があらわれることがわかりました。
一方で、5杯以上飲んでも効果が見られないという研究報告もあります。こうしたデータを踏まえると、一日に飲んでも良い上限として3~4杯が目安と考えられます。
出典:厚生労働省食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A より
出典:農林水産省 カフェインの過剰摂取について より
出典:Coffee consumption and mortality in Japanese men and women: A pooled analysis of eight population-based cohort studies in Japan (Japan Cohort Consortium)
Abe S. K. et al. Prev Med. 2019 Jun;123:270-277
妊婦や授乳中は2杯程度まで
妊婦や授乳中の女性もカフェインの摂取量が気になりますが、コーヒーは一日2杯程度までに留めておいたほうが良いでしょう。
コーヒーに含まれるカフェインについて、子どもの発育に影響を与えるという説もありますが、まだはっきりと解明されていません。
2001年に発表された世界保健機関(WHO)の基準では、妊婦は一日3~4杯までにとどめることが推奨されています。一方、英国食品基準庁(FSA)では2008年に、マグカップ2杯(カフェイン摂取量200mg)程度にすべきとしています。
カナダ保健省 (HC)が2010年に発表した基準でも、妊娠中や授乳中の女性に推奨される量はマグカップ2杯までとされています。制限の理由として、カフェインをとりすぎると不眠症や頭痛、イライラ感、脱水症、緊張感などの原因になると言われています。
出典:厚生労働省食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A より
ダイエット目的でコーヒーを飲むときの注意点
すでにご紹介したとおり、コーヒーには脂肪の分解や燃焼を助け、吸収を抑える効果があります。つまり、ダイエットに効果的な飲み物と言えるでしょう。
しかしダイエット目的でコーヒーを飲むときには、注意したいこともあります。
砂糖やミルクの入れすぎは逆効果
ダイエット中にコーヒーを飲むときは、入れるものに注意してください。理想は、何も入れないブラックコーヒーです。
砂糖やミルクを入れすぎると、糖分やカロリーのせいでコーヒーのダイエット効果が台無しになることがあります。スティックシュガーを1本まるごと、ミルクをたっぷり入れているような場合、砂糖やミルクの影響でかえって太ってしまうことも考えられます。
市販の甘い缶コーヒーや、ペットボトルのコーヒーを飲んでいる人は、さらに注意が必要です。市販の缶コーヒー1本に含まれる砂糖の量は、スティックシュガー6本分ほどにもなります。
とはいえ、ブラックコーヒーが苦手な人もいるでしょう。そうした場合も市販の甘いコーヒーは買わず、自分で淹れると良いでしょう。どうしても苦味が気になるなら無脂肪乳を入れるのがおすすめです。
飲むタイミングは運動30分前に
コーヒーでダイエットをしたいなら、運動30分前に飲むのがおすすめです。
スペイン・グラナダ大学の研究で、有酸素運動30分前にカフェインを摂取すると、時間帯に関係なく運動中の脂肪酸化を増加させることがわかりました。
運動を始める前のコーヒーが、脂肪燃焼に働くカギになるかもしれません。ウォーキングやジョギング、水泳などとコーヒー摂取を組み合わせて、太らない体を目指しましょう。
ただ、コーヒーには胃酸を増やす作用もあるので、胃の弱い方や胃に不調がある方は、食後にしたほうがいいでしょう。食後でもある程度は効果が期待できます。
出典:Care Netより
カフェインの摂りすぎは体に良くないかも!?
コーヒーの代表的な成分であるカフェインは、摂りすぎると体に悪影響をもたらすとも考えられています。
カフェインの摂りすぎが引き起こす症状について解説します。
カフェインの摂りすぎで心身に不調が出ることも
カフェインには脂肪燃焼やアンチエイジングなど、良い影響もあることが示されています。しかしコーヒーを大量に飲みすぎてしまうと、心拍数が増加したり、過剰な興奮状態におちいったりすることがあります。
カフェインは中枢神経を刺激するため、不眠になることもあるでしょう。他にも、摂りすぎで不安や震え、下痢、吐き気、嘔吐といった中毒症状がみられることもあります。
また、カフェインには利尿作用があります。カフェインによって交感神経が刺激されると、腎臓の活動が活発化し、尿が多く作られます。
尿は体内の老廃物を外に出す働きを持つため、ある程度までは健康や美容に良い効果があるととらえても良いでしょう。しかし摂りすぎると、必要な水分まで排出し脱水症状を引き起こすこともあるので、飲み過ぎには注意が必要です。
カフェインの摂り過ぎがかえって肌に色素沈着させることも
「アンチエイジングにも効果的」とご紹介しましたが、カフェインの摂り過ぎは、かえって逆効果になることもあります。
カフェインにはメラニンを拡散させ色素沈着させる働きがあるといわれています。肌のターンオーバーが正常であれば、メラニンは体外に排出されるので気にするほどでもありませんが、カフェインを摂り過ぎるとシミになる可能性もあります。
肌のシミ対策としては、普段から紫外線対策や、ターンオーバーを正常に保つことが重要になります。
一日のカフェイン摂取量の上限は400mg
国際的に、あるいは日本においても、一日あたりの摂取許容量は明確に決められているわけではありません。健康に悪影響が出る量は個人差が大きいためです。
一方、カナダ保険省は2010年に、一日のカフェイン摂取量は400mgまでにとどめるべきと公表しています。日本でも厚生労働省などはこの上限量を推奨しています。
また、2015年に欧州食品安全機構(EFSA)によって発表された情報では、カフェイン摂取量の上限は体重に比例して増減するものと考えられています。この報告では、成人の場合、一日に体重1kgあたり5.7mgまでの摂取量が安全であるとしています。たとえば体重60kgの人なら、一日に摂取できるカフェイン量は342mg。80kgの人なら、456mgとなります。
カフェインの最大摂取量については、さまざまな研究がなされ、詳細がまだ解明されていないとも言えます。
出典:厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A より
コーヒー1杯に含まれるカフェイン量は?
コーヒー1杯を150mlとした場合、この中に含まれるカフェインは60~90mgほどです。コーヒーの種類や濃さによって差が出ると考えられるでしょう。
仮にコーヒー1杯に含まれるカフェイン量を80mg、一日の摂取量を400mgとした場合、一日に飲んでも良いコーヒーは「5杯」という計算になります。
なお、カフェインは緑茶や紅茶、エナジードリンクにも含まれています。コーヒーのほかにこうした飲み物を摂取する場合は、あわせてカフェインの総量を考え、コーヒーの量を減らすなど工夫すると良いでしょう。
まとめ:一日3~4杯のコーヒーは健康に良い効果が
ダイエットや健康に関連するさまざまな研究結果をから考えると、コーヒーは一日に「3~4杯」が適量と言えます。
コーヒーは、仕事や家事のリラックスタイムに欠かせないという人も多いのではないでしょうか。健康に良い範囲内で、飲みすぎに気をつけながら、毎日のコーヒータイムを楽しんでください。
[ 監修者 ]