言いたいことが言えない自分を変えたい!精神科医が改善方法を解説
不満があっても自分の気持ちをはっきり伝えられず、ストレスを溜めていませんか。言いたいことが言えない理由と、思っていることを相手に伝える方法を、薬に頼りすぎない治療に定評がある精神科医の平光源さんが解説します。
目次
言いたいことが言えないのはなぜ?
「家族にも不満を言えない」「嫌われるのが怖くて本音を話せない」。このように言いたいことを言えずに、モヤモヤと悩んでいませんか?
人と接するときに自己主張ができず、息苦しい思いをしている人は少なくありません。言いたいことを言えない人の特徴として次の三つがあげられます。なぜ意見を言うことができないのか、その理由を解説します。
はっきり言うと場が空気が乱れると思っている
一つ目の理由は、自分が言わずに我慢すれば、その場の空気が丸く収まると思っているからです。言いたいことがあっても、自分の意見には価値がないと感じたり、自分の発言で空気を悪くしていないかが不安になったりして、口をつぐんでしまいます。
例えば、次のような状況で、言いたいことを言えないと感じている人も多いのではないでしょうか。
- 先輩のミスを見つけたものの、言うと気まずくなりそうで言えない
- 会議中に疑問を感じても、的外れなことを言ってしまいそうで発言するのが怖い
- 公園でママ友と話しているときに、人の子どもがルール違反していても指摘できない
など、周りに配慮するあまり、言いたいことを言えなくなってしまいます。
特に日本人は、自己主張が苦手だと言われています。日本人のルーツを辿ると、その多くは農耕民族です。農作は地域の人と協力して行うため、調和を大切にして余計な衝突を避ける必要がありました。
言いたいことを言いすぎると、周りから「和を乱す存在」だと思われ非難されます。集団の中で良好な人間関係を築こうと努力してきたため、自己主張が苦手な人が多いのです。
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自分も他人からはっきり言われるのが苦手
二つ目の理由は、自分も他人から言いたいことを言われたくないと感じているからです。
他人から不満を言われたり、怒られたりすると、「自分を否定された」と受け取る人もいるのではないでしょうか。そのため、自分が言いたいことを言うと、相手も傷つくのではないかと思い、ためらってしまいます。
言いたいことを言われるのが苦手な人は、「自分と違う他人の意見=自分への否定」だと感じます。例えば、怒られると、「怒られた理由」より“情けない” “怖い”など「自分の気持ち」にばかり意識が向きます。もちろん相手は、あなたを傷つけるつもりはありません。
反対に、「他人の意見=自分が成長できるチャンス」と捉えている人は、言いたいことをはっきり言われてもあまり気になりません。むしろ「成長のために、伝えてくれてありがたい」と心から感謝できるでしょう。
他人に嫌われたくないという気持ちが強い
三つ目は、他人に嫌われたくない気持ちが強いからです。このような人は、常に他人の言動に振り回されがちです。
仕事を頼まれると、断りたくても相手の気持ちを害しそうで断れない…。ミスに気づいても、指摘できない…。
大変な思いをしたり、嫌な気持ちになったりしても、他人を優先するため、言いたいことが言えないのです。
中でも、幼少期に両親からの愛情を十分に感じなかった人は、「嫌われたくない」という意識が強い傾向があります。なぜなら、親から嫌われると育児放棄されたり、虐待を受けることになるから。生き延びるために、幼いころから親の顔色を伺って育つことになるのです。
子どものころ、親に言いたいことを言うと否定された経験がトラウマになり、大人になっても自己主張が苦手になります。
言いたいことが言えないことが“生きづらさ”のもとに
言いたいことを我慢すると、波風を立てずに済むかもしれません。しかし、自己主張できないストレスが続くと、“生きづらさ”につながります。
自分は言いたいことを我慢しているのに、他人から気持ちをぶつけられると「私ばかりいつも不当な扱いを受けている」「理不尽だ」と他人を許せなくなり、それが寛容さを失う原因に。気持ちの余裕がなくなり、生きることが窮屈に感じます。
ほかにも、嫌われたくないと思っている人は、他人からどう思われているかを基準に物事を考えるようになります。次第に「自分はどうしたいか」「どうありたいか」を見失い、自分の意思がなくなっていきます。
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言いたいことが言えるようになる方法
性格はすぐに変わるわけではありませんが、言いたいことを言えるようになると、気持ちを素直に伝えることができます。そうすると、ストレスが減ります。
次から言いたいことが言いやすくなる方法をまとめました。
「スモールステップ」で自己主張の練習をする
自己主張が苦手な人は、最初からはっきり言おうとしてもうまくいきません。本音を言うことに慣れていないと、感情のコントロールができず、我慢していた気持ちを一気に爆発させてしまうことに。そうすると、かえって「言いすぎてしまった」と反省し、罪悪感という新たなストレスを溜めてしまいます。
そのためにも、言えそうなことから伝える「スモールステップ」がおすすめです。名前の通り、階段を一段ずつのぼるように、少しずつ気持ちをさらけだせるようになります。
例えば、「家事を手伝ってほしいのに言えない」という悩みを持っているとしましょう。最終的には「家事をしてほしい」と言うことが目標です。これを達成するために、目標を「スモールステップ」で分けてみます。
Step 1 「疲れた」とさりげなくアピール
家族に気を遣わせてしまうのではと思い我慢しがちですが、まずは「疲れた」ことを口に出してみましょう。思ったことを心に溜め込まず、声に出す練習が最初のステップになります。
Step 2 協力的な家族に簡単な家事をお願いする
「家事をしてほしい」と言いやすい家族にお願いしましょう。最初から難易度の高い家事を手伝ってもらわなくてもOK。例えば、「高いところのものを取るので、ハシゴを支えてほしい」「皿洗いするから、拭くのを手伝ってほしい」など、ちょっとしたお手伝いから頼んでください。パートナーが忙しい平日ではなく、十分睡眠をとった休みの日の朝を狙って伝えてみて。
Step 3 いつもやっている家事をお願いする
いよいよ最終目標。いつもあなたがやっている家事を「手伝ってもらえない?」とお願いしてみましょう。「自己主張すること」は、ステップ2でもうできています。もしもここでつまずいた場合は、ステップ2に戻って家事の難易度を変えたり、頼む相手を選んだりすることで徐々にステップを上げることができます。
これも難しいと感じる人は、もっと小さなステップでもOKです。
例えば…
- 風呂に入る家族に「シャンプーの詰め替え」をお願いする
- 切れた電球を新しいものに交換してもらう
- 食べ終わったお皿は、自分でキッチンに下げてほしいと言う
- 外出中に雨が降ってきたら、「洗濯物を取り込んでほしい」と伝える
など、自分ではなくてもできる小さなお願いから伝えてみるのがコツ。
このように段階を踏むことで、言いたいことを言えるようになります。一つでもスモールステップが達成できたら、自分を認めてあげることが大事です。
言いたいことを言うときは伝え方を工夫する
はっきり言うことを躊躇するのは、他人を傷つけたり、嫌な思いをさせたりするのではないかと恐れているからです。
言いたいことを言うときは、次のように「相手を拒絶しない言い方」を心がけましょう。はっきり言う罪悪感が薄れ、気持ちを伝えやすくなります。
さらに、やってもらったことを褒め、感謝を伝えることがポイント。例えば、家族に電球を交換してもらったら、「背が高いあなたにやってもらえて、とても助かった」などと褒めるようにしてください。そうすると、相手は満足感や達成感を得るので、あなたのためにもっと手伝ってくれるようになります。
フォローを欠かさずにいれる
言いたいことを言うときは、相手が傷つかないようにフォローをいれましょう!
例えば、他人に対して指摘するときは、改善点だけではなく良かった点も伝える。されて嫌だったことを伝えるときは、「自分もしているかもしれないけれど」と共感の言葉もいれるなど、相手の気持ちに寄り添ったフォローを欠かさずに伝えてください。
なぜそう思ったかを客観的に伝える
言いたいことを言うときは、どうしてそう思ったのかを客観的に伝えましょう。
例えば不満を言うとき、なぜ不満に感じたのかを感情的にならずに言う、仕事を断るときは今抱えている仕事の量や状況を伝えるなど、簡潔に事実だけを話すように心がけてください。
自分が言われても傷つかない言い方をすると、相手も嫌な思いをしません。
他人の言葉を素直に受け止める
他人から何かを言われたときに、その言葉を素直に受け止める習慣を持つと、自分も言いたいことが言いやすくなります。
他人からミスを指摘されたり、不満をぶつけられたりすると落ち込むものです。しかし、相手は傷つけるつもりではなく、あなたを思って「ここを変えたらもっと良くなる」とアドバイスを伝えてくれたのかもしれません。
そんなときは、「否定された」と思わずに、「そういう意見もあるかも」と素直な気持ちで受け取ることが大切です。初めからできなくても、相手の言葉を聞きいれるうちに考え方が変わっていくでしょう。アドバイスを聞いて良くなった経験を重ねることで、自分も言いたいことを言うときに、ストレスを溜めず発言ができるようになります。
言いたいことを言って否定されたときの対処法
言いたいことを言うことにまだ不安がある人は、相手の反応が気になるのではないでしょうか。
万が一、言いたいことを言ったあとに理不尽に逆ギレされたら、次のような方法で対処しましょう。
感情のままに否定してくる人は、日常的に強いストレスを感じている可能性があります。自分の仕事やプライベートで困っていることがあり、八つ当たりのような行動を取っているのです。
理不尽なことを言われて否定されたときは、相手の感情に巻き込まれないように注意を。逆ギレという行動は、相手が自分の感情をコントロールできないことに問題がある、つまり「相手の課題」であると気づくことが大切です。
誰でも他人を簡単にコントロールすることはできません。ご機嫌取りをしたり、相手の感情に振り回されたりする必要はありません。いつどんなときでも、「相手の課題かどうか」を考えましょう。
まとめ:言いたいことを言って我慢を減らそう
言いたいことを我慢するのは、短い目で見ると自分も相手もラクかもしれません。しかし、長い目で見ると心の疲労が溜まる原因になります。
言いたいことを言えるようになるには、最初から一気に気持ちをぶつけるのではなく「スモールステップ」で伝える練習をしましょう。
ほかにも、他人の言葉を素直に受け止める気持ちを持つことも大切です。否定的な言葉と思わず耳を傾ける習慣を持つことで、次第に言いたいことが言える性格に変わっていくでしょう。
少しずつでいいので、今回紹介した方法を取りいれてみて、ストレスの少ない生活を送ってください。
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