つらい「頭痛」を和らげるツボ・食べ物は?4つの原因タイプ別に解説|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「頭痛」がテーマ。原因別の4タイプやそれぞれに効果的な対策を紹介します。
目次
巡りの悪さと栄養不足。頭痛には2つの痛みがある
仕事中にズキズキする、生理前になるとなんとなく痛い、疲れが溜まると痛くなるなど、突然やってくるつらい頭痛。痛みがあらわれると、仕事や家事どころではなくなってしまいますよね。中には「鎮痛剤を手放せない」という、慢性的な“頭痛持ちさん”も多いのではないでしょうか。
東洋医学で、頭痛のような痛みの種類は二つあるとされています。一つ目は、「不通則痛(ふつうそくつう)」といい、体の巡りが悪いことによる痛み。気(エネルギー)や血の通りが悪いと起こります。
二つ目は、「不栄則痛(ふえいそくつう)」といって、体に必要な材料が足りないことで起こる痛み。睡眠不足や生理で気や血が足りなくなると起こります。頭痛はこのほかに、急性で起こる痛みもあります。次から、くわしく解説します。
原因別「頭痛」4タイプを解説
頭痛は、血流の悪さやストレス、睡眠不足など、原因によって4タイプに分けられます。自分のタイプに合う対策をすることで、頭痛の改善につながります。少しずつ体質を変えて、痛みから解放されましょう。
(1)ドロドロ血が原因の「瘀血(おけつ)タイプ」
血の巡りが悪く、ドロドロ血の可能性もある「瘀血(おけつ)タイプ」。体の巡りが悪いことで起こる「不通則痛(ふつうそくつう)」によって頭痛があらわれます。脈を打つたびにドキドキと繰り返す、刺すような痛みが特徴。座りっぱなしで運動不足の人に多く、体が冷える、夜間になると痛む場合も。
「瘀血(おけつ)タイプ」の頭痛以外の症状は?
- 頭が重い
- 顔色が暗い
- 手足がしびれやすい
- 舌の色が暗い
- 肩こり
- 肌がくすむ
- シミ・ソバカスが気になる
- 生理痛が強い
- 経血に塊が混じる(レバー状や細かいもの)
- 経血の色が黒っぽい
(2)イライラすると痛む「ストレスタイプ」
イライラが原因で頭痛が起こるのが「ストレスタイプ」。「瘀血(おけつ)タイプ」と同じく、痛みの種類は「不通則痛(ふつうそくつう)」で、体の気が滞って起こります。仕事でストレスを感じると頭痛がひどくなるなど、メンタルの影響を受けやすいのが特徴。側頭部が痛くなりやすい“片頭痛持ちさん”もこのタイプ。
「ストレスタイプ」の頭痛以外の症状は?
- 肩こり
- 耳鳴り
- わきや胸が張りやすい
- イライラしやすい
- 口が渇く
- 尿の色が濃い
- 便秘
- 舌の色が紅い、苔が黄色い
- ため息やげっぷ、ガスが多い
- PMS(月経前症候群)がきつい
- 生理周期が長くなったり、短くなったりして安定しない
- 月経前にお腹が張る(月経が始まると治まる)
(3)睡眠不足、疲れからくる「虚弱タイプ」
夜更かしして睡眠不足が続いたり、疲れて体が消耗したりすると頭痛が起こるのが「虚弱タイプ」。痛みの種類は、「不栄則痛(ふえいそくつう)」で、気や血など、体に必要な材料が不足して痛みがあらわれます。朝よりも疲れが溜まる夕方や、生理前などにも起こりやすいのが特徴。ぐっすり寝ると頭痛が治る人もこのタイプ。
「虚弱タイプ」の頭痛以外の症状は?
◆虚弱タイプの中でも、血が不足している場合…
- めまい・立ちくらみ
- 動悸
- 冷え
- 舌の色が淡い
- 乾燥肌
- 不眠
- 不安感
- 経血の量が少ない・色が薄い
- 疲れやすい
◆虚弱タイプの中でも、気が不足している場合…
- 風邪を引きやすい
- 息切れ
- 疲労感
- 朝、起きられない
- 食後に眠くなる
- 胃腸が弱い
- 少量の出血が長くだらだら続く(止まりにくい)
- 月経期間が長い
- 経血の色がやや淡く、サラサラしている
(4)急に頭痛がする「外邪(がいじゃ)タイプ」
前触れもなく突然頭痛が起こるのが「外邪(がいじゃ)タイプ」。外邪とは、外から体に入ってくる邪気のこと。急にガンガンと頭が痛くなり、関節痛や悪寒など、風邪の引きはじめのような症状があらわれます。日中は温かくても夜になると冷える、春と秋に起こりやすいのが特徴。
「外邪タイプ」の頭痛以外の症状は?
- 節々の痛み
- 悪寒
- 発熱
- 咳
- のどの痛み
- 舌の苔が白い
4タイプ別 頭痛を改善する食養生とアドバイス
「鎮痛剤を使うしかない…」とあきらめがちな頭痛ですが、東洋医学では、不調の改善には食事や生活習慣を見直すことが大切とされ、続けることで徐々に効果が期待できます。まずは次から紹介するタイプ別の養生を、生活に取り入れてみてください。
「瘀血(おけつ)タイプ」の食養生:血液サラサラ食材を摂る
「瘀血(おけつ)タイプ」さんは、血巡りの悪さが原因。青魚や玉ねぎなどの血液サラサラ食材や、体を温める食材を摂りましょう。頭痛が悪化する冷たいものや、味の濃いものは控えて。
血液サラサラ食材…いわし、サバ、玉ねぎ など
体を温める食べ物…しょうが、にんにく、きくらげ、ネギ、シナモン、サフラン(紅花) など
「瘀血(おけつ)タイプ」のワンポイントアドバイス:体を動かす習慣を
じっとしていると血の巡りが常に悪くなり、頭痛が起こりやすくなります。デスクワークが多い人は、立ってストレッチする、散歩やウォーキングを習慣にするなど、体を動かす習慣をつくりましょう。冷えるときは重ね着をして、体を冷やさない工夫も大切。
「ストレスタイプ」の食養生:香りのいい食材、熱を取る食材を
「ストレスタイプ」さんは、気の流れをスムーズにする香りのいい食材を積極的に食べましょう。体に熱がこもっているので、熱を取る食材もおすすめ。香辛料たっぷりの辛い食べ物は頭痛を悪化させるのでNG。
気の流れをよくする、熱を取る食べ物…みかん、レモンなどの柑橘系フルーツ、セロリ、ミント、緑茶、夏野菜(きゅうり、トマト、ゴーヤ)、ハーブティー など
「ストレスタイプ」のワンポイントアドバイス:スケジュールに余裕を持つ
「ストレスタイプ」さんは、がんばり屋さんの人が多く、仕事もプライベートもスケジュールを詰め込みがち。色々抱えすぎてストレスになり、その結果、気の滞りが頭痛につながります。週に1日は「何もしない日」を作り、気持ちに余裕を持つことが症状改善につながります。
「虚弱タイプ」の食養生:血と気を補う食材を摂る
「虚弱タイプ」さんは、まず体の材料になるものをしっかり摂ることが大切です。血を補う赤い食べ物や黒い食べ物、鉄分豊富な食材、気を補う食べ物を食べて、不足した体に栄養をチャージしてください。
赤い食べ物…なつめ、クコの実、いちご、プルーン、干しぶどう など
黒い食べ物…きくらげ、黒ゴマ、黒豆、ひじき、のり など
鉄分豊富な食材…レバー、ほうれん草、小松菜 など
気を補う食べ物…鶏肉などの肉類、かぼちゃ、白米、豆類、りんご など
「虚弱タイプ」のワンポイントアドバイス:体を消耗させず、睡眠優先を
疲れで体が消耗しているため、頭痛改善には睡眠と休息が第一優先。「もうちょっとやろう」をやめて、無理をせず1分でも早く布団へ! 特に生理中の無理は厳禁。長風呂、過度な運動、遊びすぎ、働きすぎなどをやめて、体を休めることが養生につながります。
「外邪タイプ」の食養生:風邪を発散させる食べ物
「外邪タイプ」さんの頭痛は、風邪の引きはじめです。主に原因となるのは風邪(ふうじゃ=風の邪気)。気の巡りを良くしながら、風邪をパッと発散させる力のある食べ物がおすすめです。味噌汁やスープなど、温かい食べ物に入れてみてください。
風邪を発散させる食べ物…ネギ、しょうが、三つ葉、パクチー、シソ、葛湯 など
「外邪タイプ」のワンポイントアドバイス:入浴orシャワーで体を温める
風邪の引きはじめなので、お風呂に入って早寝するのが一番。風邪(ふうじゃ)は、後頭部から入ってくるとされています。首元までお湯に浸かる、後頭部に熱めのシャワーをかける、ドライヤーの温風で温めるなどして、熱の力で邪気を飛ばしてみましょう。
4タイプ別 「頭痛」に効果的なツボ
ツボ押しは、頭痛にも効果的です。痛い…と思ったらすぐ対処できるのがいいところ。4タイプ別にツボを紹介しますので、痛みがあらわれたら押してみてください。
「瘀血(おけつ)タイプ」の頭痛に効果的なツボ:合谷(ごうこく)
合谷(ごうこく):親指と人差し指の骨の付け根が合わさった、V字になったくぼみ。
押し方:反対の手の親指で人差し指側に押し込み、ズーンと響く強さで押します。
「ストレスタイプ」の頭痛に効果的なツボ:太衝(たいしょう)
太衝(たいしょう):足の甲の親指と人差し指の骨の間を、上に向けて指を滑らせて、指が骨と当たり、止まるところのへこんだ場所。
押し方:親指の腹を当てて、ズーンと響く強さで押します。
「虚弱タイプ」の頭痛に効果的なツボ:三陰交(さんいんこう)
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指幅4本分上の場所。※妊婦の方は「三陰交」のツボ押しは避けましょう。
押し方:足首の内側をつかむようにして、親指の腹でじんわり気持ち良い強さで押します。お灸もおすすめ。
「外邪タイプ」の頭痛に効果的なツボ:風池(ふうち)
風池(ふうち):首の後ろの生え際部分で、くぼんだ場所。
押し方:右側の風池は左目の方向に向かって、左側は右目の方向に向かって、グッとイタ気持ち良い強さで押します。少し熱めのシャワーや、ドライヤーで温めるのもおすすめ。
今月の養生ポイント:髪をほどいて頭の滞りを解放
ストレスなどで溜まる“気”は、どんどん上に上がり、体の一番上=頭で滞りやすくなります。その結果、体の中に余分な熱が生まれ頭痛に。
このとき、いつも髪を結んでいる人は、余計に気と血の流れが悪くなります。仕事が終わった夜や予定のない休日は、ぜひ髪をほどいて、頭をリラックスさせてください。髪を櫛でとかす、側頭部を中心に指で頭皮マッサージをするだけでも効果的。
気血がスムーズに巡りはじめると、頭痛知らずの快適な体に変わります。髪はもちろん、心もゆったりとほどいて、がんばる自分をゆるめてあげましょう。
イラスト/植松しんこ
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