口寂しいのはなぜ?気を紛らわせる方法と食べても太りにくい食べ物
ごはんを食べたのに何かを食べたくなってしまうのは、ストレスや疲労で心が満たされていない証拠です。口寂しいと感じる原因と食べても太りにくい食べ物を、ダイエット専門医・工藤孝文さんが解説します。
目次
口寂しいと感じる原因は?
食事が終わったのに冷蔵庫を開けてしまったり、ついお菓子に手が伸びたりと、「食べても満たされない」状況が続いていませんか。口寂しいと感じる理由には、次にご紹介するような心と体の状態が関係しています。
強いストレスを感じている
口寂しいと感じる1番の原因は、ストレスです。その証拠に、イライラすると甘い物に手が伸びる人も多いのではないでしょうか。
ストレスを感じると、脳が心を安定させるために「セロトニン」を欲します。セロトニンとは、運動や日光を浴びることで分泌する神経伝達物質。セロトニンはそのほかに、炭水化物や甘い物などに含まれる糖質を摂ることで一時的に分泌されます。そのため強いストレスを受けると、脳が糖質を欲して、お腹が減っていないのに何か食べたいと感じるのです。
また、ストレスを感じると食欲を抑制する「レプチン」というホルモンの分泌が減少。ストレスでレプチンの分泌が減ると、食べても満腹感が得られなくなります。
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疲れている
口寂しいと感じる人の特徴に、疲労があげられます。気力が出ない、朝起きるのがつらい人は、これに当てはまるかもしれません。
慢性的に疲れている人は、「副腎」とよばれる腎臓の上にある小さな臓器が弱っていることが考えられます。
副腎には、さまざまなホルモンを分泌する役割があります。副腎が弱るとホルモンバランスが崩れて、心身の疲労を感じやすくなったり、過食しやすくなります。これが、疲れている人が口寂しいと感じる原因に。
副腎の機能低下は、乱れた生活習慣や偏った食事のほか、日々のストレスによっても起こります。
暇を持て余している
疲労やストレス以外に、暇を持て余していることも、口寂しさにつながっているかもしれません。
よく、夜になると嫌なことを思い出したり、明日のことを考えて憂鬱になったりしませんか? 日中よりも寝る前に不安になるのは、仕事や家事に追われる昼と比べて、夜のほうが時間に余裕があるからです。何もすることがないと、仕事や人間関係などの余計なことを考える時間が増えて、不安な感情が大きくなります。
脳は、不安によるストレスから「セロトニン」を増やそうとします。糖質を摂ることでセロトニンは増えるため、お腹がすいていなくても何か食べたくなるのです。
禁煙している
禁煙中の人も口寂しさを感じて食べすぎてしまい、体重が増えることがあります。
タバコに含まれるニコチンは、食欲を抑える働きがあります。禁煙すると抑えられていた食欲が爆発し、あれこれ食べたい気持ちが止まらなくなります。また、禁煙すると味覚や嗅覚が鋭くなり、ごはんがおいしく感じられるという効果も。そのため、これまでよりもたくさん食べてしまい、常に口寂しいと感じます。
口寂しいときに食べても太らない食べ物・飲み物
口寂しいときは、太りにくい食べ物や飲み物を選んで食べることが大切です。食べるのを我慢する人も多いのですが、その反動で暴飲暴食をする可能性があります。ストレスをためるくらいなら、太りにくい物を食べて満足感をアップさせましょう。
次から口寂しさを和らげてくれる食べ物を紹介します。コンビニやスーパーで手に入りやすい食べ物ばかりなので、我慢せずにこれらを活用してみましょう。
(1)ストレスを緩和してくれる食べ物・飲み物
口寂しいと感じるのは、だいたいストレスを感じているときです。イライラした感情を抑えてくれる、太りにくい食べ物・飲み物を紹介します。
ガム
口寂しいときにまず試してほしいのが、ガムです。仕事用のデスクに置いたり、バッグに入れたりして常に持ち歩いてもいいでしょう。
人は、ウォーキングやダンスなど一定のリズムで体を動かす運動をすると、脳から気持ちを安定させる「セロトニン」が分泌されます。実はガムを噛む動作も、同じくリズム運動の一つ。ガムを5分間噛むことで、セロトニンが分泌されてストレスが軽減することが分かっています(※1)。ガムを噛むことでストレスが緩和し、食べることへの執着から解放されます。
しかもガムは、カロリーが低いのもうれしいポイント。口寂しくなったら最初にガムを口に入れてみましょう。
(※1)参考:噛むこと研究室 「咀嚼とストレス解消のメカニズム」(石上惠一) より
GABAチョコレート
強いストレスを受けたら、GABA(ギャバ)入りの食べ物を摂りましょう。特にGABAを多く含んだ「GABAチョコレート」はコンビニで手軽に買えるのでおすすめです。
GABAとは、脳をリラックスさせる効果があるアミノ酸の一種。ストレスや緊張を鎮めてくれます。また、血圧をさげて睡眠の質を高めてくれる効果も。睡眠の質が高まると、食欲を抑えるホルモンの分泌が増え、ストレスによる口寂しさを感じにくくなります。
GABAは、キムチや納豆などの発酵食品やトマト、水出しの緑茶など、食べ物や飲み物などにも含まれています。チョコレート以外にも、これらの食べ物から積極的に摂り入れましょう。
温かい紅茶
一息つきたいときにおすすめなのが、温かい紅茶。紅茶に含まれる成分の「テアニン」にはストレスや緊張をとり除いてくれる効果があります。口寂しさの原因となるストレスが緩和され、何か食べたいという気持ちが減るでしょう。
また、温かい飲み物を飲むと、頭がリセットされてほっとした気分になりませんか。一度リラックスすると、再度集中モードに切り替えやすくなるため仕事や家事がスムーズに進み、ストレスを感じにくくなります。
(2)血糖値があがりにくい甘いおやつ
「甘い物=太る」と思って、食べることに罪悪感があるかもしれませんが、甘い物すべてがNGではありません。甘い物の中でも血糖値があがりやすい食べ物は、太りやすいため避けたほうがいいでしょう。
甘い物や炭水化物などに多い糖質を摂ると、血糖値が上昇。すると、血糖値をさげる「インスリン」とよばれるホルモンが膵臓から分泌されます。インスリンは血糖値をさげるときに、糖質を脂肪細胞にため込む働きがあり、これが血糖値のあがりやすい物を食べると太る原因に。
つまり、甘い物でも血糖値があがりにくい食べ物を選べば、食べても太りにくいというわけです。口寂しくて、どうしても甘い物が食べたいときは、次から紹介する食べ物がおすすめです。
冷凍ブルーベリー
口寂しいときにアイスの代わりにもなるのが、冷凍ブルーベリー。食事制限の反動により、ダイエット中にアイスが食べたくなる人は多いもの。アイスは糖質が多く、血糖値を急激にあげるため、ダイエット中は控えたほうがいいスイーツ。しかし冷凍ブルーベリーは、甘さが強くアイス感覚で食べられるうえに、フルーツの中でも血糖値をあげにくいことが特徴です。
また、ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」という成分は、脂肪の生成を抑える働きがあります。冷凍によりアントシアニンの量が増えるので、ダイエット中の口寂しいときにおすすめの食べ物です。
バナナ
バナナに多く含まれる食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。消化に時間がかかるので、腹持ちがいいのもポイント。
バナナにはアミノ酸の一種「トリプトファン」が豊富です。トリプトファンは、心の安定に欠かせない栄養素。ストレスからくる口寂しさを感じにくくなるでしょう。
シュークリーム
意外に思うかもしれませんが、シュークリームは甘い物の中でも血糖値があがりにくいスイーツです。シュークリームの主な材料は、卵、牛乳、バターと、たんぱく質や脂質がメインなので、消化に時間がかかります。消化時間が長いと、糖質の吸収が緩やかになり血糖値があがりにくいのです。
血糖値をさらにあがりにくくするには、無糖のブラックコーヒーと一緒に摂ること。コーヒーには、血糖値をさげるクロロゲン酸やカフェインが入っています。口寂しいときのティータイムとして、シュークリームとコーヒーをゆっくり味わうことで満足感もあがります。
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【番外編】簡単“おからヨーグルト”
おからヨーグルトは、おからパウダーと無糖のヨーグルト、お好みのフルーツを混ぜたおやつ。おからパウダーはおからを乾燥させた粉末で、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維が豊富。ダイエット食材としても注目されています。
「食物繊維」とヨーグルトに含まれる「乳酸菌」を一緒に摂ると、脂肪燃焼効果がある「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」が作られ、やせやすく太りにくい体になります。
おからパウダーはヨーグルトの水分を吸ってお腹の中で膨らむため、少量でも満腹感があります。口寂しいときに摂ると食べすぎ防止につながります。
(3)腹持ちがいい食べ物
次の食事まで時間が空くときや、食べてもお腹がすく人は、腹持ちがいい食べ物を“補食”として食べるようにしましょう。
サラダチキン
サラダチキンを食べるときは、しっかり噛むので満腹中枢が刺激されて腹持ちが続きます。また、サラダチキンに含まれる脂質により、食欲を抑制する「インクレチン」というホルモンが分泌されます。
サラダチキンは、低カロリーで低脂質。コンビニやスーパーでも買えるので、ダイエット中に口寂しく感じたときにおすすめです。
具だくさんのみそ汁
具がたっぷり入ったみそ汁は、食べ応えがあり満足感を得られます。具は、大きめに切ることで噛む回数が増え、脳内物質「ヒスタミン」の分泌が増加。ヒスタミンは食欲を抑えてくれる働きがあるので、口寂しさが減るでしょう。
また、みそ汁のダシに使うかつお節は、脳の伝達物質「セロトニン」の分泌を促してくれます。セロトニンはイライラを軽減してくれる効果があるので、ストレスによる食べすぎの防止にもなります。
食べ物以外で口寂しい気持ちを紛らわせる方法
口寂しいと感じても、ダイエット中のために間食を控えている人も多いのではないでしょうか。そんなときは、食べ物以外で口寂しさを紛らわせる時間を持ちましょう。
好きなことをする
友達と食事をしたら会話に夢中になるあまり、食事量が少なくすんだという経験はありませんか? これは心が満たされて、食べることへの執着が消えたからです。食べても空腹感が残るのは、お腹ではなく心が満たされていないから。口寂しさを感じたら、自分が楽しいと思える行動をとってみてください。
例えば…
- 好きな音楽を聴く
- 友達と遊ぶ
- 映画を観る
- 推しの写真を眺める
- 散歩をする
- ペットと遊ぶ
- 本を読む
- リズムに合わせて踊ってみる など
没頭できて自分が幸せに感じられるものであれば何でもOK。幸せを感じるとストレスが減り、過食を抑えることができます。口寂しいと感じたら、行動を切り替えて趣味や夢中になれることをしてみましょう。
笑顔を作る
お腹が満たされず何か口に入れたいと思ったら、笑顔を作ってみてください。口寂しいときは、ストレスを感じている証拠です。
口角をあげて笑顔を作ると、心を幸福感で満たす神経伝達物質「β-エンドルフィン」の分泌が増加。すると、脳は「楽しい」と錯覚し、ストレスによる口寂しさが減ります。
口角をあげるだけでも効果的ですが、歯を見せて笑うことでより脳を「楽しい」とだますことができ、さらなる効果が期待できます。“笑うこと”で、自分で自分の食欲をコントロールしましょう。
ToDoリストを作る
暇なときに、つい何かを口に入れてしまう人は「ToDoリスト」が有効です。ごはん以外のことに集中することで、食べることへの執着が消え去ります。
やるべきことをリストにすると、段取りが分かり行動に移しやすくなります。やり終えたらリストから消すことで、やるべきことを果たした達成感で心が満たされます。「リストから消す」という作業で目的を達成すると、不安定だった心が充実して「何か口にしたい」という欲求が収まります。
食欲を抑えるツボを刺激する
口寂しさを緩和するのにおすすめなのがツボ押し。過食を防ぐツボを紹介します。
食欲をコントロールしてくれるツボ「胃・脾・大腸区(い・ひ・だいちょうく)」
胃や腸に働きかけ、食欲を抑えてくれるツボ。手のひらにあるので、口寂しいと思ったときにすぐに押すことができます。
胃・脾・大腸区(い・ひ・だいちょうく):人差し指の下から手首まで伸びる生命線に沿った部分。
押し方:生命線の始まりから終わりまで、移動させながらまんべんなく強めにつねる。2~3分程度繰り返す。
食べすぎを抑える耳のツボ「飢点(きてん)」
過食を防ぐのに効果的なツボ。口寂しさを和らげてくれます。
飢点(きてん):耳穴の前のふくらみより少し下の位置。
押し方:人差し指の腹で、気持ちいいと感じる強さで1〜2分間押し続ける。
暴飲暴食の原因となるストレスを抑えるツボ「中衝(ちゅうしょう)」
気持ちを穏やかにしてくれるツボ。ストレスによる口寂しさを軽減します。
中衝(ちゅうしょう):中指の爪の生え際、人差し指側の位置。
押し方:刺激する手の反対側の親指と人差し指で、中指を挟む。両手1分ずつ、押し続ける。
自分の姿を鏡で見る
お腹がすいていないのに食べてしまうのは、「本当に食べるべきなのか」を、自分で冷静に判断できていないからです。口寂しさを感じたときは、自分の姿を鏡に映してみるのが効果的です。体型を視覚で捉えることで、一瞬で冷静になることができ口寂しさが自然と消えるでしょう。
食べた物を記録するとムダ食いを減らせる
「食べていないのに太ってしまう」という人は、3食以外でムダに食べている可能性があります。無意識に食べた物は、食べたことを忘れてしまいがちです。食事を記録するクセをつけると食事の内容を把握でき、口寂しさによるムダ食いを防ぐことができるでしょう。
口寂しい人がやりがちなNG習慣
口寂しい人がやってしまいがちなNG習慣をまとめました。多く当てはまっている人ほど、口寂しさを感じやすいので注意が必要です。
睡眠不足
睡眠時間が5時間以下の人は、疲れをとって体を回復させるのに必要な睡眠が足りていません。睡眠不足になると、食欲を増進させる「グレリン」というホルモンが増え、食欲を抑制する「レプチン」が少なくなります。その結果、口寂しさにつながります。
理想的な睡眠時間は7時間。仕事や家事で忙しくて、十分な睡眠時間を確保できない人は、時間のほかにも睡眠の“質”を見直してみましょう。
睡眠の質をアップさせるポイント
- 朝食を摂らない→軽くでもいいので朝食を摂る
- 帰りの電車で居眠りしている→15時までに軽く昼寝をする
- 寝る前にお酒やカフェインを摂っている→温かいノンカフェインのお茶や牛乳にする
- 寝る前に運動している→寝る2時間前までには終わらせる
- 寝る直前までスマホを見ている→スマホを見るのをやめて本を読む
- 寝るときはエアコンをつけない→寝苦しい日はエアコンを使って室温を20~26度に保つ
これらに気をつけ睡眠の質を改善すると、次第にムダな食欲に悩まされることが減るでしょう。
ムダな買い物が多い
過食を防ぐためには、食欲や睡眠のコントロールだけでなく、そもそも食べ物を買いすぎないことも大切です。どれだけ意志が強くても、口寂しいときに目の前に食べ物があれば食べたくなるものです。
ムダな買い物を減らすために、コンビニやスーパーに行く回数を減らしてみましょう。また、空腹で買い物をすると、食欲に振り回されて不要な物まで買ってしまう原因に。できるだけ食後に買い物へ行くようにしてください。
過度な糖質制限
口寂しいときに甘い物が食べたくなる人は、食事から摂るべき糖質が不足しているかもしれません。
ダイエットのために極端な糖質制限をしている人ほど、甘い物が食べたくなります。甘い物が食べたくなるのは、体内の糖質が不足しているから。
ごはんやパンなどの炭水化物を一切排除すると、脳が足りない糖質を甘い物で補おうと判断して、かえって過食の原因に。
そのため糖質制限は、ゆるやかに行うのがおすすめです。夜だけ炭水化物を抜く、ごはん茶碗を小さくして量を少なくするなどの工夫をしましょう。
食べすぎた自分を責める
口寂しくてつい食べすぎても、「また食べてしまった…」と自分を責めないこともポイント。なぜなら罪悪感からくるストレスが、さらなる暴飲暴食を招くからです。
ストレスを感じると「コルチゾール」とよばれる食欲を増進させるホルモンが分泌されます。食べすぎた自分を責めるほど、より食べたい気持ちが増してくるのです。
食べすぎたときは、心の中で「おいしかった!」「明日から食べすぎなければOK」と唱えるのが正解。たった一回の過食で落ち込むのではなく、気持ちを切り替えるほうが大切です。
重要なのは、食べすぎた翌日のすごし方です。食べた物をリセットする方法を紹介します。
口寂しくて食べすぎた分は“48時間以内”にリセット
食べすぎた日の翌日は、カロリーを抑えた食事を心がけてください。
食べた物はすぐに脂肪に変わるわけではありません。摂りすぎた栄養は一旦肝臓に蓄えられ、48時間後に脂肪に変化します。つまり、2日間の摂取カロリーを減らして、その間に食べた物を燃焼すればリセットすることが可能です。
食べすぎた日の翌日は、3食とも低カロリーな食事にして、間食はできるだけ控えましょう。
まとめ:口寂しいときは食べても太りにくい食べ物を選ぶ
口寂しさの1番の原因はストレスです。どうしても食べたいときは我慢してストレスをためるのではなく、食べても太りにくい食べ物を選ぶことがポイント。
ご紹介したような血糖値があがりにくいおやつや、腹持ちがいい食べ物を摂ってください。
また、口寂しさは、お腹ではなく心が満たされていない証拠。自分が楽しいと思えることをしてすごしたり、ToDoリストを作って食べること以外のやるべきことに意識を向けてみてください。
口寂しさには、今の心の状態があらわれています。ストレスをためずにすごすことで、次第に食べ物への執着を自然と手放すことができるでしょう。
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