寝るときに喉を乾燥させないためには?喉を守る就寝時のポイント
朝起きたら喉がカラカラで痛い…。そんな経験はありませんか? 寝るときの潤い不足は、風邪につながることもあり、注意が必要です。今回は、喉を乾燥させないための寝るときのポイントをご紹介します。
目次
寝るときに喉が乾燥する原因は?
寝る前は問題なくても、朝起きると喉の痛みを感じる場合は、乾燥による潤い不足が考えられます。その中でも、室内の湿度や体の水分不足など、原因はいくつかあります。「今日はたまたまかな?」と放置せずに、まずは次から紹介する原因に心当たりがないかを確認してみましょう。
寝室が乾燥している
考えられる大きな原因の1つ目は、寝室の乾燥です。普段あまり気にすることがない寝室の湿度は、「50%前後」が最も快適に眠れることがわかっています(※1)。60%以上では寝苦しさを感じる人が増え、40%以下ではウイルスが飛散しやすくなります(※2)。これらを考えると、喉を乾燥させないためには寝室の湿度は40〜60%の間がよいでしょう。
室内の温度は、エアコンで設定しているため気にかけている人が多いですが、喉の乾燥には湿度の管理も大切です。乾燥しやすい秋冬だけでなく、除湿が必要になる梅雨時期、季節の変わり目などは、「湿度」にも目を向けてみてください。
(※1)住空間の快適性に関わる生理 ・心理学的 研究/梁瀬度子 (武庫川女子大学生活環境学部) より
(※2)G.J.Harper. Airbone micro-organisms: survival tests with four viruses. J. Hyg., Camb. (1961), 59, 479.
エアコンをつけっぱなしにしている
エアコンのつけっぱなしも喉の乾燥の原因になります。特に冬は、エアコンで室温を上げるときに注意が必要です。
空気中の水分量は同じでも、室温が上がれば湿度は下がります。そして湿度が下がると同じ室温でも寒く感じるため、またエアコンで温めようとするという悪循環になります。
また、ジメジメして暑い夏は、エアコンの除湿モードを使う人も多いのではないでしょうか。自動でちょうどよい湿度に調整してくれるエアコンも増えていますが、古いタイプのエアコンでは湿度が下がりすぎてしまうことがあります。
部屋の湿度が下がりすぎると、喉の乾燥につながりますので、使っているエアコンが湿度を調整できるタイプかどうか確認しておきましょう。
口を開けて寝ている
寝ている間は自分ではわかりにくいですが、口を開けて寝ることも喉の乾燥につながります。自分が口呼吸をしているのかを確かめるため、以下の項目を確認してみましょう。
【口呼吸チェック】
- 寝ている間、よだれが垂れていることが多い
- 朝の口臭がきつい
- いびきをかく
- 何かに集中しているときに無意識に口が開いている
- 鼻詰まりがある
一つでも当てはまるものがあれば、口呼吸をしているせいで喉の乾燥が生じているのかもしれません。
水分不足・脱水
夜間の水分不足・脱水も喉が乾燥する原因になります。人は、寝ている間にもかなりの量の汗をかきます。季節を問わず、だいたい200〜400ml(コップ1〜2杯)程度の寝汗をかくといわれています。
そのため、1日を通して水分摂取量が少ない方は、寝ている間に体の水分が不足して、脱水になってしまうかもしれません。また、以下のような場合には寝汗が増えやすいといわれています。
- 生理前…ホルモンの影響で体温が上昇することにより汗をかく。
- 更年期…ホットフラッシュによる影響により寝汗をかく場合がある。
- お酒を多く飲んだ日の夜…アルコール分解によるもの。
- ストレスなどで嫌な夢をみたとき…自律神経の乱れで寝汗に。
生理前や更年期に寝汗が増えるのは、ホルモンバランスの影響が考えらえます。喉の乾燥を予防するために、コップ1杯程度の水を飲んでから寝ることをおすすめします。
喉が乾燥するとどんな影響があるの?
朝起きると喉の乾燥や痛みがあっても、日中はあまり気にすることなく過ごす人が多いかもしれません。でも実は、ちょっとした喉の痛みから体調不良につながる可能性があり、早めのケアが必要です。
喉の粘膜には、目には見えない小さな繊毛(せんもう)という毛が生えています。繊毛は、ウイルスや細菌などが体内に侵入しないよう、バリアとして働くもの。体を守る大切な働きをするのですが、「寒さと乾燥に弱い」という性質があります。そのため、寝ている間に喉が乾燥すると、繊毛の働きが低下して感染症にかかりやすくなるのです。
寝るときに喉を乾燥させないための方法とは?
喉を乾燥させずに寝るには、どうしたらよいでしょうか。寝るときに喉を乾燥させない具体的な方法をいくつかご紹介します。
加湿器を使う
寝室の湿度が低いときには、加湿器を使って調整しましょう。湿度計を持っていない人は、この機会に用意して確認することをおすすめします。
東京は、12〜3月は平均して湿度が低く、日によっては湿度が30%台まで低下する場合もあります。また、日本海側では、6月頃まで湿度の低い日が続きます(※3)。先ほどご紹介したように、寝るときの湿度は40〜60%が最適。それよりも低い場合は、加湿器を使って寝室の湿度を上げ、喉を乾燥から守りましょう。
ただし、水を使う加湿器は、清潔にしなくては「レジオネラ菌」という細菌が繁殖しやすくなります。このレジオネラ菌は、水分のある環境で繁殖する特徴があり、感染すると肺炎を引き起こす可能性があります。メーカーの推奨する頻度できちんとお手入れをおこないましょう。
(※3)参考:国土交通省 気象庁HPより
洗濯物を部屋干しする
乾燥が気になるときは、洗濯物を寝室で干すというのも効果的です。寝室全体の加湿効果が見込めます。
部屋の大きさや洗濯物の量、室温にも左右されますが、部屋干しによって湿度を10〜20%も上げることができます(※4)。加湿器よりも手軽に取り入れられますので、ぜひ試してみてください。
(※4)山下絢也 他. 室内発生水分を用いた湿度環境調整に関する研究 洗濯干しを利用した室内湿度調整性能. J. Environ. Eng., AIJ, Vol.76 No.665, 595-600.
濡れたタオルを枕元に置く
部屋のスペースの都合などで寝室に干すのが難しい場合は、寝る前に濡れたタオルを枕元に置くことでも代用できます。
加湿器や部屋干しに比べると湿度を上げる効果・範囲は狭くなりますが、顔の近くに置いておくことで喉の乾燥を防ぐ効果が期待できます。特に、口呼吸になっている可能性のある人におすすめです。
加湿・保湿マスクを使用する
加湿・保湿マスクも喉の潤いを守ってくれます。例えば温かい蒸気が出たり、加湿フィルターを入れたりする使い捨てタイプ、保湿素材でできた、洗って使えるタイプがあります。
使い捨てタイプは、加湿の効果が高く衛生的に使用できる点で優れています。ただし、素材は不織布が多いため、寝ている間の肌のこすれが気になってしまうかもしれません。
シルクやコットン素材のマスクなら、肌の弱い方でも安心。夜の間ずっと肌に触れていても乾燥が気になりません。また、顔の下半分を覆うネックウォーマーのような形状のタイプは、喉を温められるほか、耳が痛くなりにくい点もおすすめです。
使ってみて呼吸がしやすく喉が乾燥しにくいもの、自分の肌質にあったマスクを試してみましょう。
エアコンの風向きを調整する
エアコンの調整も、喉を乾燥させないためのポイントになります。寝るときにエアコンを使う場合は、風が直接体に当たらないように、風向きを調整してください。風が直接当たることで、体から水分が失われてしまい、脱水による喉の乾燥につながるかもしれません。
エアコンの風向きは体に直接当たらない角度にし、サーキュレーターなどを使って寝室の空気を循環させて寝てください。エアコンをつけっぱなしにする場合は、室内が乾燥しやすくなります。加湿も一緒に行うことを忘れずに。
鼻呼吸を意識する
口呼吸がクセづいてしまうと、寝ているときの喉の乾燥は抑えられません。日頃から口を閉じて鼻で呼吸するように意識しましょう。
日中の鼻呼吸に慣れてくると、寝るときの口呼吸も減っていくでしょう。夜中の呼吸をすぐに改善したい方は、口呼吸を予防して鼻呼吸をサポートする商品を利用してみてはいかがでしょうか。口を留めるテープや、顎につけるサポーターなどがあります。
鼻詰まりの解消も必要
鼻詰まりがあると、どうしても鼻呼吸をするのが難しく、口呼吸にならざるを得ません。花粉症や鼻炎で鼻詰まりがある方は、しっかり治療することが大切です。治療することで、鼻呼吸ができるようになり、喉の乾燥が抑えられます。
また、慢性的な鼻詰まりがある方の中には、鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)という病気が隠れている場合も。左右の鼻の穴を分けている鼻中隔という壁が歪んでいる病気です(※4)。軽度の場合は治療不要ですが、鼻詰まりやいびき、鼻血などの症状が重い方は、手術で改善することもできます。耳鼻科を受診し、鼻詰まりや口呼吸について相談してみてください。
(※4)一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 より
寝る前にコップ1杯の水分をとる
脱水予防のため、寝る前にコップ1杯程度の水分をとるのも良いでしょう。寝ている間に汗として失われる水分を、あらかじめ飲んでおくことで脱水を予防し、喉の乾燥を抑えます。
厚生労働省は、入浴後から寝る前に1杯、朝起きて1杯を今の生活に加えることをすすめています(※5)。
(※5)厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動 より
喉が痛い原因は乾燥だけじゃないかも?
ご紹介したような対策を試しても、寝て起きると喉の痛みが出てしまうという方は、乾燥以外の原因が隠れているかもしれません。
エアコン内のカビによる肺炎
エアコン掃除をせずに放っておくと、カビが発生してしまうことがあります。カビは湿度を好むため、エアコン内の水分やほこりをこまめに掃除しないと、カビが繁殖する可能性が高くなります。
カビを吸い込んで肺炎を起こすと、なかなか治らず治療に時間がかかるため、しっかり掃除をして繁殖させないようにしましょう。メーカーの推奨するお手入れ頻度や方法をチェックし、実践してみてください。
エアコンを使う季節になると咳や息切れがする、熱が続くといった症状のある方は、病院を受診してください。
睡眠時無呼吸症候群の可能性
寝ている間に口呼吸をしている方の一部は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り、寝ている間に何度も呼吸が止まる病気です。10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」の状態が、1時間に5回以上も繰り返されていると診断されます(※6)。
そのため呼吸が止まって苦しさを感じ、口呼吸になりがちで、喉が乾燥してしまいます。また、睡眠時無呼吸症候群の方の多くはいびきが大きく、喉にダメージを与え、炎症を起こすことも。
いびきや寝ている間の呼吸について指摘を受けた方は、耳鼻科や睡眠外来などで睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかを相談してみましょう。
(※6)日本呼吸器学会監修 睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020 より
ウイルスや細菌による喉の炎症
治らない喉の痛みは、炎症によるものかもしれません。乾燥によって傷ついた喉の粘膜に、ウイルスや細菌が付着して炎症を起こしている可能性があります。喉の乾燥から少し悪化して、一般的にいわれる「風邪」やその前兆として痛みがあらわれています。
喉が乾燥すると、体に侵入してきたウイルスや細菌をうまく排出することができません。夏でも冬でも、喉の潤いを保つことは風邪予防にとても重要。先にご紹介した「喉を乾燥させないための方法」を実践してみてください。
まとめ:寝るときの喉の乾燥を防いで快適に眠ろう
寝るときに喉を乾燥させないためには、寝室の加湿や寝る前の水分補給が大切です。また、睡眠のたびに起こる喉の痛みには、鼻炎や睡眠時無呼吸症候群、肺炎などの病気が関わっていることもあります。
喉は、外から入ってくるウイルスを、最初にブロックするところです。体の中にウイルスを侵入させないためにも、潤いを保つことが健康につながります。特に乾燥しやすい季節は、体調を崩さないためにも寝るときの喉ケアを心がけましょう。
妙にゾクゾクする、何だかダルい…。風邪の引き始めに速やかに手当てするのが、不調を撃退するコツです。そこですぐに役立つのが「ペットボトル温灸」。外出中でも自販機があれば対処できますよ。