健康になれる「太り方」を解説。体重を増やせる食生活って?
ダイエット情報は巷にあふれていますが、真逆の「やせすぎだから太りたい」というお悩みも切実なもの。とはいえ、太ることで見た目や健康を害するのは本末転倒です。健康&キレイをキープできる太り方を解説します。
目次
やせている人が太れない原因とは?
世間ではダイエット願望が広まる一方で、「太りたい」と悩むタイプは少数派。やせ体形は周りからうらやましがられることが多く、抱えている悩みを人に話せず一人で思い悩むこともあるようです。
太れるように食事の量を増やしたり、運動をせず活動量を減らしたりと工夫はするものの、なかなか結果が出ずにモチベーションが低下してしまうという悪循環に陥ることも。まずは、やせている人はどのような理由で太れないのか、考えられる原因を詳しくみていきましょう。
代々伝わる「遺伝」タイプ
体脂肪を構成している脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色(かっしょく)脂肪細胞の2種類があります。白色脂肪細胞はエネルギーを蓄える細胞、褐色脂肪細胞は脂肪を分解して燃焼させる細胞です。
このうち、やせ体質の人が多く持っているのが褐色脂肪細胞です。褐色細胞が脂肪を活発に燃やすため、エネルギーを消費しやすく太りにくい体質になっていると考えられます。
褐色脂肪細胞が多いかどうかは、遺伝が大いに関係しています。つまり、「エネルギー消費が活発でやせやすい」という体質は、生まれつきのものであるといえます。
消化吸収能が弱い「虚弱体質」タイプ
太れない人のなかには、胃や腸の働きが弱い人も珍しくありません。なかには、食事をすると胃がムカムカして量を食べられなかったり、食べてもお腹を下しやすかったりというような虚弱体質の人もいます。
このような理由でやせていきやすい人が、太るためにカロリーの高い脂ものやお菓子をたくさん食べようとすると、体調を崩して余計に食欲を失ってしまいがち。悪循環に陥ってしまうのです。
そもそもの食事量が少ない「小食」タイプ
大食い、小食など食べ方のタイプはさまざまです。普段の食事の量が少ない人は、やせやすく太りにくい場合が多いといえます。
食が細くあまり食べられない人は、食べ物から摂取するエネルギー量は少なくなります。そのため、活動による消費エネルギーの方が上回り、体重を増やすことができません。
また、胃を支える筋肉が弱く、胃が骨盤あたりまで下がってしまう体質を「胃下垂」といいます。胃下垂の人が全員やせているわけではありませんが、お腹のハリや胃もたれ、むかつきなどの症状が起こりやすく、自然と小食となっているケースが多いようです。
太れない人はこんな症状で悩んでいる
体形に関してよく聞かれる悩みは、どちらかといえば「やせたい」人が多数派。そうした人たちにとって、「太りたい」と思うやせ体形の人がどんなことで困っているかは想像しづらいものです。
やせに悩む人は見た目の問題のほか、次のような症状に悩んでいることもあります。
体力不足で疲れが取れにくい
やせている人は、筋肉の量が少ない傾向にあり、筋肉の量が多い人と比べると疲労を感じやすいようです。
運動や日常生活で体を動かしたとき、筋肉量が多ければ、たくさんの筋肉に負荷が分散します。一方、筋肉量が少ないと、その限られた筋肉それぞれにたくさんの負荷がかかるため、疲労物質が溜まりやすくなるのです。
筋肉の量が少ない人は疲れやすいだけでなく、疲労回復も遅くなります。筋肉を増やすためには体を動かさなければいけませんが、少しの動きでも疲れやすいため、運動嫌いな人が多いのも事実。このように、悪循環に陥りやすくなります。
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末端冷え性で手足が冷たい
やせている人は筋肉量が少ないだけではなく、血流が標準体型の人より少ないのが特徴です。
血流が悪くなると冷え性や肩こりが起こりやすく、全身に酸素や栄養が行き渡りづらいため、特に手や足など末端の冷えが起こる原因になります。
生理が止まることも……
やせすぎによる深刻な症状の一つに、生理や妊娠への影響があげられます。
やせている人は脂肪細胞が少ないため、脂肪細胞から分泌される「レプチン」というホルモンが低下しがちです。レプチンには、脳を刺激して女性ホルモンの分泌をうながす作用があります。つまりレプチンが低下すると、脳の視床下部からの女性ホルモンの分泌が抑制されます。すると、3カ月以上生理がこない無月経の症状が起こる場合もあります。
無月経が長期間続くと、女性ホルモンの分泌がさらに低下。子宮の萎縮や骨量の減少などの症状が起こることもあります。将来の妊娠や出産に影響を及ぼす可能性もあるので、こうした場合は医療機関の受診が必要です。
嫌味や自慢に思われる
周りに「やせたい」と口にする人の方が多いほど、「太りたい」とは言いづらい背景があります。自分では本当に悩んでいても、嫌味や自慢に聞こえてしまうのでは……と心配したことがあったり、実際にそうした反応を受けたことがあったりする人もいるのではないでしょうか。
やせている人特有の悩みは、他の人からはなかなか想像しづらいもの。どちらにも悪気はないとはいえ、考えのすれ違いから起こるストレスを避けるため、やせている人はどんどん人に悩みを話せなくなり一人で抱えてしまうのです。
服がうまく着こなせない
やせていることによって、胸が小さかったり、Tシャツ姿が貧相に見えたりと、見た目に悩んでいる人も多いようです。特に学生時代などはプールの授業や部活で人と比較する機会が多く、嫌な思いをしたことがある人もいるかもしれませんね。
薄着をする夏は、胸元の空いた服やキャミソールなどを着る機会が増えます。でも、人によっては骨が浮いている、胸元が寂しいなどコンプレックスを感じることから、ファッションを楽しめなくなってしまうこともあります。
太りたくてもこれはNG!「間違った太り方」
ダイエットでは食事の量を減らしたり運動を増やしたりといったことが行われるので、太るためには反対のことをすればよいのではないかと安易に考えてしまいがちです。
しかし、いくら太りたくても、むやみに暴飲暴食をしたり、カロリーの高いものばかりを何かに偏って食べたりすればよいというものでもありません。
次からは、健康的に体重を増やすための食べ方やおすすめの料理を紹介していきます。
カロリーの高いものばかりを食べる
カロリーの高い食品を食べれば、すぐに体重を増やせると考えるかもしれません。確かに、一時的に体重は増えるでしょう。しかし、そのような食品は栄養素が脂質や糖質に偏っているものが多く、体への影響を考えるとよくありません。例えば、血糖値が急上昇したり、血中の脂質が高くなってしまったりします。
生活習慣病予防の意味でも、カロリーの高い物ばかりを食べるのはおすすめできません。
脂質の多いこってり系料理
脂身の多い肉料理や脂質の多いスープが含まれるラーメン、揚げ物などの料理を食べ続ければ、やがて太れるように思えます。
こうした料理を食べれば、摂取カロリーを増やすことはできます。しかし、脂質の多い料理は消化器に刺激を与え、胃もたれや消化不良の原因となってしまうことも。結果的に食欲を減らしてしまうこともあります。
一食での摂取エネルギー量を増やしたとしても、そのことによる体重の増加は一時的なもの。消化器の不調が起こることで食欲がなくなってしまうと、そもそも食事が食べられなかったり、十分な量をとれなくなってしまったりします。その結果、太れなくなってしまうこともあるので注意しましょう。
ドーナツ、ケーキなど間食で摂取カロリーを上げる
ドーナツやケーキなどの洋菓子は、砂糖やバターなどを原料としており高カロリーのお菓子です。
ダイエットをするときはお菓子を控えるため、太りたい人は反対にたくさん食べれば良いと考えるかもしれませんが、お菓子を食べ続けても体につくのは脂肪ばかり。これでは、健康的に体重を増やすことはできません。
カロリーばかりが高くて栄養バランスの悪い食品は「エンプティカロリー(栄養は空っぽ)」と呼ばれています。こうした食品は、ビタミンやミネラルなどの体に必要な栄養素がほとんど含まれていないので、栄養補給には向いていないのです。
バランスよく適度な食事を保つのが「健康的な太り方」
やせている人が太りたいとき、むやみに食べるのはかえって体に悪影響を与える可能性が高い「間違った太り方」。
料理を選ばずになんでも食べていると、体に脂肪ばかりが溜まり、不健康に太ってしまうのです。下腹が出たり体のラインがたるんだりと、見た目も美しいとは言いがたくなってしまいます。
健康的でより魅力的な体づくりのためには、体にとって必要な栄養素をバランスよくとり入れるのが理想です。
食事は「主食・主菜・副菜」の3点セットに
バランスのとれた食事の基本は、主食・主菜・副菜を毎食そろえること。これだけでも自然と栄養素のバランスがよくなります。まずは、ごはん、肉や魚を使ったメイン料理、野菜のおかずの3つをそろえることを意識しましょう。
栄養素は単体で働いているわけではなく、互いに助け合いながら体のなかで使われます。そのため、一度の食事ではできるだけたくさんの栄養素がとれるよう、品数を増やすのが理想的です。料理単品の量を増やすよりも、品数を増やしてエネルギーを上げる方が、健康的に体重を増やす近道だといえます。
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たんぱく質をしっかりとる
健康的に体重を増やすためには、脂肪でなく筋肉をつけることが欠かせません。このために必要なのがたんぱく質です。
たんぱく質は、筋肉や血液など体のあらゆる組織の材料となる栄養素です。たんぱく質が不足すると、筋力が低下し疲れやすくなります。運動をするための体力づくりという意味でも、必要量のたんぱく質を確保しなければなりません。
たんぱく質の1日の摂取目安量は、一般的には体重1kgあたり1.0gとされています。運動習慣のある人はそれに伴い必要量が増えますが、体重45kgの人であれば1食のたんぱく質量15g程度を目安にしましょう。
たんぱく質が多い食品には肉・魚・卵・乳製品などがあげられます。肉や魚であれば1食80〜100gでたんぱく質は約20g、卵や乳製品であれば1食分あたりのたんぱく質は10gとることができます。
たんぱく質の補給といえば「プロテイン」をイメージするかもしれませんが、プロテインからのたんぱく質補給は激しい運動をする人や、少食で食事量を増やせない人向けです。一般の人の場合、食事で肉や魚をしっかり食べれば、十分な量のたんぱく質を取り入れることができます。
卵1個(約50g)にはタンパク質が6.2g含まれています。“完全栄養食”ともいわれる卵は、タンパク質以外にもさまざまな栄養素がつまっています。卵の栄養価と効率よく栄養摂取できる調理法を解説します。
太りたいなら主食は適量を毎食とる
糖質は、体にとって大切なエネルギー源です。ごはんやパン、麺類などの主食に多く含まれています。ダイエットでは「糖質は太る」というイメージから主食を抜き、糖質制限をする人が増えています。糖質に関しては、やせたいときと反対に意識的にとることをおすすめします。
糖質は1gあたり4kcalのエネルギーを生み出します。体重を増やしたいときは主食を抜かず、毎食しっかり食べるように意識しましょう。
「補食」をとり入れてエネルギー量アップ
間食には、甘いおやつや脂質の多いスナック菓子などをとることが多いのではないでしょうか。これらの食品には、糖質や脂質が多く含まれています。間食をとりすぎることで栄養バランスが乱れると、胃腸に負担がかかるうえ、不健康な太り方をする原因にもなります。
そこでおすすめなのが、間食を食べるタイミングに栄養素を補うための「補食」をとること。補食におにぎりやサンドイッチなどの軽食をとれば、せっかくのタイミングを無駄にすることなく、体にカロリーと栄養の両方を補給することができます。
朝食をしっかりとる
朝食には体のリズムを整えたり、眠っていた臓器の動きを目覚めさせたりする働きがあります。朝食を抜いてしまうと血糖値が低下して日中に眠たくなる、体が疲労を感じやすくなるなどの症状が現れる場合もあります。
少食の人は朝食を抜くことも多いかもしれませんが、1食抜いてしまうと1日の摂取カロリー量が減ってしまうので、体重の増加は遠のくことに。できるだけしっかり食べることが大切です。
朝食のメニューには、ごはんやパンなどの主食だけではなく、卵料理やウインナー、ハムのようにたんぱく質がとれるものを添えましょう。さらに、サラダなど野菜のおかずをそろえるとバランスがよくなります。
朝食をしっかりと食べるためには、早く起きて準備する時間が必要です。早寝早起きの習慣をつけて、健やかな生活リズムを心がけましょう。
筋トレも大事な「太り方」の一つ
太るといっても、ただ脂肪が付けばよいというものでもありません。同じ1kgでも、筋肉と脂肪では重さが変わります。脂肪よりも筋肉の方が重いので、同じ体重でも引き締まって見えるのです。筋肉の量を増やして体重を増やせば、健康的な印象につながります。
筋肉量を増やすためには、有酸素運動よりも筋トレがおすすめです。有酸素運動を行うと脂肪が燃焼されるので、かえってやせてしまうことがあります。
筋トレといってもジムに通うなどの本格的なものではなく、家でできる簡単なものでも大丈夫。腹筋や腕立て伏せ、スクワットなど簡単にできるものを、自分が少しきついなと感じる程度にやってみましょう。
大切なのは、短い時間でもいいので毎日コツコツと続けること。慣れてくれば負荷をかけられるようになり、楽しさや効果も感じられるようになります。
いきなり筋トレをするのは難しく感じる場合、日常生活のなかで活動量を増やすことを目標にしてみましょう。例えば、エスカレーターを階段に変えてみる、バスを1つ前の停留所で降りるなどの工夫があります。時間はかかるものの、それだけの余裕を持てるように生活リズムを見直すことも大切かもしれません。
女性で筋トレを始めてみたは良いものの、なかなか筋肉がつかないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。解決するには筋肉がつかない原因を理解して、適切に対処することが大切です。理学療法士が原因と対策をご紹介します。
まとめ:正しい太り方で健康的な理想の体に!
やせている人が「太りたい」と思う悩みは、他の人からは想像しにくい一方、本人にとっては切実なものです。しかし、太りたいからといってなんでもたくさん食べて、ひたすら摂取エネルギー量を増やせばよいというものではありません。食べるものによってはかえって体調を崩したり、必要な量の食事を食べられなくなったりする可能性もあります。
健康的に体重を増やすためには、体にとって必要な栄養素をまんべんなくとり入れることが大切です。さらに、引き締まった体づくりのためには、運動からのアプローチも欠かせません。体重を増加させることは、食事や運動を含めた生活習慣を見直すきっかけにもなるでしょう。試行錯誤を繰り返しつつ、自分に合った太り方を見つけていきましょう。