「湯シャン」が髪に良いのは本当?効果や正しいやり方を美容師が解説
シャンプーを使わず、お湯で髪を洗う「湯シャン」。髪や頭皮に良いと聞いたことがある人も多いと思いますが、一番気になるのはベタつきやニオイ。湯シャンの効果や正しいやり方、続けるコツを美容師が解説します。
目次
シャンプーを使わない「湯シャン」とは
「湯シャン」は、お湯だけで髪を洗うこと。シャンプーをきちんと泡立てないと洗った気がしない、と感じる人も多いと思いますが、実は髪の汚れの7~8割はお湯洗いだけで落とせます。
2~3割の汚れが残ることを心配に感じるかもしれません。でも、それ以上に頭皮に悪影響を与えているのは、市販のシャンプーの洗浄力が強すぎること。
ほとんどの人は、頭皮を“洗いすぎ”。汚れだけでなく、頭皮を保湿しながら守っている皮脂をごっそりと落としてしまっています。すると、頭皮のかゆみや荒れ、フケといったトラブルを引き起こすことも。 シャンプーを使わない湯シャンなら洗いすぎを防げるため、頭皮へのダメージが激減します。すると、頭皮の悩みを減らすことができるのです。
湯シャンの効果を得やすい正しいやり方を解説
湯シャンは「ただお湯で洗うだけ」で、やり方もなにもないのでは……と思うかも知れません。ですが、正しい手順で行えば、湯シャンのメリットを最大限に得ることができます。
湯シャンの基本的なやり方は、次の通りです。
- 乾いた髪をブラッシングする
- 38度前後のぬるま湯で髪全体を濡らす
- 指の腹で頭皮をもみながらじっくり洗う
- 顔周り、もみあげ、耳の後ろ、えり足を意識的に洗う
- ぬるま湯でしっかり流す
- タオルで拭いたら、すぐにドライヤーで乾かす
次からは、特に気をつけてほしいポイントを解説します。これらを守らないと湯シャンの正しい効果が得られず、かえってフケが増えたり、頭皮の環境が悪化してトラブルにつながったりすることもあるので気をつけましょう。
湯シャンの前はブラッシングを忘れずに
まずは入浴前に、乾いた髪をブラシでとかします。上の写真のように、髪を「毛先」「中間」「根元」の3カ所に分け、下から順にブラッシングします。下からパーツごとにとかすことで、髪がからまってしまったり、ダメージを受けたりするのを防ぐことができます。
実はこの工程だけでも、髪についた汚れをかなり落とすことができます。髪には目に見えないホコリなどの汚れがついていることも多いので、入浴前のブラッシングは忘れず行いましょう。
お湯の温度はぬるめに設定
湯シャンは、お湯の温度も重要なポイントです。髪や頭皮をいたわるうえでは、普段よりも少しぬるめの38度前後がベスト。
熱いお湯では頭皮にダメージを与えてしまうので、「ちょっとぬるいかも……」と思うくらいに設定してください。
洗い忘れがちな部位はしっかり洗う
湯シャンに慣れるまでは、洗い残しが生じがちです。汚れが残ってしまうと、ニオイやベタつきの原因になりかねません。強くこする必要はないものの、すべての部位をまんべんなく洗うことが大切です。
特に洗い忘れやすいのは、顔周り、もみあげ、耳のうしろ、えり足の4カ所です。指の腹を使い、しっかり洗うことを心がけましょう。
また、湯シャンの場合はシャンプーの泡を流す必要がないので、すすぎが不十分になりがち。頭全体を、意識的にしっかり洗い流すと良いでしょう。
すぐにドライヤーで乾かす
十分に髪をすすいだら、すぐにタオルで拭き、ドライヤーでよく乾かします。
ドライヤーを使わず濡れたままで放置するのは、濡れたぞうきんを頭に置いておくようなもの。せっかくきれいに洗った髪に雑菌が繁殖してしまうので、時間を空けずにしっかりと乾かしましょう。 ドライヤーは、熱さを感じない程度に頭から離すのがポイント。1カ所に熱風が集中しないよう、腕を軽く振りながら乾かせば、髪や頭皮へのダメージを最小限におさえることができます。
女性の頭皮と髪にうれしい湯シャンの3つの効果
頭皮の環境を改善する湯シャン。続けているうちに頭皮がすこやかな状態に回復すると、結果的に髪にもうれしい変化が起こります。
頭皮のトラブルやフケを改善
頭皮の荒れやベタつき、かゆみ、フケが出るといったトラブルの多くは、シャンプーが原因だと考えられます。
シャンプーに含まれる界面活性剤や酸化防止剤、香料などの化学物質は、合う人もいれば合わない人もいます。特に洗浄力が強すぎるシャンプーを使っていると、頭皮の皮脂が必要以上に洗い流されてしまうことに。すると頭皮が乾燥し、フケやかゆみをはじめ、さまざまなトラブルの原因になります。
さらに、乾燥した頭皮を守ろうとして、皮脂が過剰に分泌されることも。これが、ベタつきの原因になります。 洗浄力が高すぎるシャンプーの使用をやめれば、皮脂の落としすぎを防ぐことができます。頭皮が乾燥しなくなるため、かゆみやフケの改善が期待できます。
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紫外線や乾燥から頭皮を守る
日光が強い夏は、紫外線によるダメージを受けやすい時期。顔と同じで、頭皮も日焼けするとバリア機能が低下。頭皮や髪を健康に保つうえで必要な水分をキープできなくなり、乾燥してしまいます。
湯シャンを行うと、適切な量の皮脂が頭皮に残ります。この皮脂が紫外線から頭皮を守ってくれるので、夏はシャンプーを使わないほうがおすすめなのです。
空気中の水分量が少ない冬も、頭皮が乾燥しがちな季節。湯シャンによる皮脂のキープは、季節を問わず頭皮を守れる方法だといえます。
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長い目で見れば薄毛改善にも効果あり
頭皮のトラブルを改善する湯シャンですが、長期的に見ると、白髪や薄毛の改善にも効果が期待できます。
というのも、頭皮は髪の土台。頭皮にトラブルがある場合、細く抜けやすい毛ばかりが生えてくることも考えられます。
湯シャンによって頭皮環境を整えれば、薄毛の進行を遅らせたり、太く健康な毛が復活したりするきっかけにつながるのです。
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湯シャンのデメリットは?
湯シャンで得られる良い効果を解説してきましたが、湯シャンにもデメリットはあります。気になるデメリットを、対処法とあわせて解説します。
毛先がパサつきやすくなる
シャンプーには、洗浄成分だけでなくヘアケア成分も含まれています。湯シャンに切り替えると頭皮の状態は良くなるものの、髪に対するケアは不十分になることも。そのため、毛先のパサつきは起きやすくなります。
どうしても気になる場合、毛先だけはリンスを使ってもOK。頭皮や根元につかないように気をつけて使えば、なめらかな髪を取り戻せるでしょう。
慣れるまではベタつきが気になることも
湯シャンを始めると、過剰に落とされていた頭皮の皮脂が適切な量に戻ります。このとき、テカリやベタつきが気になる人もいるでしょう。
しかし、これは皮脂がきちんと落ちていないというわけではなく、「本来の頭皮の状態に戻った」ということ。そのまま湯シャンを行い続ければ、皮脂の量が次第に整い、テカリやベタつきも改善していくはずです。
湯シャンの効果が出やすいのはどんな人?
さまざまな効果を得られる湯シャンですが、実はすべての人におすすめの方法とはいえません。頭皮の状態や生活スタイルによっては、自分に合うシャンプーを使ったほうが良いこともあります。
ここからは、湯シャンの効果が出やすい人の特徴を紹介します。
敏感肌・乾燥肌なら湯シャンでトラブルを減らせる
頭皮にトラブルが起きている場合、シャンプーによる刺激を減らすことで肌質の改善が期待できます。
頭皮を刺激から守り、保湿してくれるのが皮脂の役割。この皮脂を過剰に落としてしまっているのが、頭皮が乾燥したり荒れたりしている原因です。皮脂が適切に残る湯シャンなら、頭皮のコンディションを整えることができます。
また、アレルギー体質の人にも湯シャンはおすすめ。市販のシャンプーのなかには、洗浄力や刺激が強すぎるものもあります。アレルギー体質の人がそのようなシャンプーを使い続けると、頭皮の状態がどんどん悪化してしまうことも。頭皮への刺激を最小限にできる湯シャンなら、アレルギー体質の人でも安心して取り組めるでしょう。
顔と頭皮で肌質が違う人は湯シャンを試す価値あり
顔の肌と頭皮は地続きです。顔と頭とでは普段のケアや状況が異なるものの、基本的な肌質は近いと考えられます。
「顔は乾燥しがちだけど頭皮はベタつく」など、顔と頭皮とでまったく違った悩みを抱えている場合は、使っているシャンプーのせいで頭皮にトラブルが起こっているのかもしれません。
湯シャンに切り替えて、頭皮をフラットな状態に戻せば、悩み解決の糸口が見えてくるはずです。
こんな人には湯シャンは不向き
良いことずくめのように見える湯シャンですが、ワックスなどのスタイリング剤を使っている人にはあまりおすすめできません。
スタイリング剤は、シャンプーで落とすことを前提に開発されています。湯シャンだけでは落とし切ることができず、頭皮のトラブルやニオイの原因となることも。
どうしても湯シャンで頭皮の環境を改善したい場合、スタイリング剤を使わなかった日だけ湯シャンにすると良いでしょう。スタイリング剤を使った日は、シャンプーでしっかり洗うことをおすすめします。
頭皮が脂っぽい人は、湯シャンだと皮脂を落としきれずベタつくように思えます。ただしこれも、シャンプーが皮脂を落としすぎていることが原因の可能性も。つまり、頭皮を守るために大量の皮脂を分泌して脂っぽくなっていると考えられるので、湯シャンを試してみる価値はあるでしょう。
湯シャンを続けるうえでの疑問を解決!
湯シャンの効果は、1日や2日で得られるものではありません。頭皮の状態が変わるまでには、ある程度の時間がかかります。
とはいえ、シャンプーを使わない洗い方に慣れるまでは気になることも多いかもしれません。湯シャンを続けるうえで、知っておきたいポイントを紹介します。
ベタつきが気になるときは「1日おき」から始める
頭皮に良い効果が期待できる湯シャンですが、始めるときは毎日ではなく、1日おきから始めるのがおすすめです。
シャンプーを使うのを突然やめると、頭皮の汚れを落としきれず、ベタつきやトラブルを感じやすくなってしまいます。まずは「1日おき」で挑戦し、慣れてきたら少しずつ頻度を増やしていきましょう。
ニオイが心配ならアロマを1滴プラス
シャンプーを使うと、髪に淡い香りが残ります。湯シャンだけではこの香りが残らないので、洗った気がしなかったり、頭皮のニオイが気になったりする人もいるかもしれません。
ニオイが心配な場合は、すすぎに使うお湯を洗面器などに溜めておき、そこにアロマオイルを1滴垂らすのがおすすめ。髪にほのかな香りをつけることができます。
毛先のパサつきはリンスでケアしてOK
髪が長い女性にとって、頭皮の環境と同じくらい気になるのが毛先の状態。お湯のみで髪を洗うと、どうしても毛先は乾燥してパサつきがちです。
そんなときは、毛先にリンスをつけましょう。頭皮の状態を悪化させてしまうのはシャンプーに含まれる洗浄成分なので、湯シャンではリンスの使用はOKなのです。ただし、頭皮にはリンスがつかないよう気をつけてください。
頭皮が変わるまで1カ月続けてみて
湯シャンを始めたあとしばらくは、髪のペタつきなど気になる症状があるかもしれません。しかし、そこで止めてしまっては「頭皮の環境改善」という効果は得られないままです。
湯シャンの効果を得る最大のコツは、気長に続けること。1日おきのペースで始めたら、できれば1カ月は続けてみましょう。2~3週間もすれば、頭皮の荒れや乾燥が改善するのを実感できるはずです。
まとめ:湯シャンの効果で健康的な頭皮に!
シャンプーを使わない湯シャンは、フケやかゆみ、乾燥といった頭皮のトラブルを改善できる方法です。頭皮の環境が良くなることで、白髪や薄毛の改善も期待できます。
ただし、お湯の温度を間違えたり、洗い残しがあったりすると、期待した効果が得られないどころか逆効果になることも。また、体質や生活習慣によっては湯シャンを行わないほうがいい人もいるので要注意です。
湯シャンの効果を得られるまでは、だいたい1カ月と長い時間がかかります。慣れるまでは、頻度を調整したりリンスを使ったりしながら取り組んでみましょう。続けるうちに、頭皮の状態が変わるのを実感できるはずです。
[ 監修者 ]