体が硬い原因は?柔らかくする部位別ストレッチと正しいやり方
運動しても体が硬くてうまくできない、伸ばすと体が痛いなど、柔軟性不足で悩んでいませんか? 体が硬くなる原因とリスク、体を柔らかくするための正しいストレッチのやり方を、専門トレーナーが解説します。
目次
体が硬い原因は?
「自分はもともと体が硬いから…」と、体を柔らかくすることをあきらめている人が多いかもしれません。しかし、骨や関節などに生まれつき持った症状がない限り、体が硬い原因のほとんどは、あなたの日常生活の中にあります。
次の4つの原因から、自分に当てはまるものがないか確認してみましょう。
運動不足によって筋肉が硬くなる
運動不足で筋肉を使っていないと、筋繊維がやせ細って硬くなります。また筋肉は、血行を促すポンプ役でもあります。そのため筋肉が衰えると血液循環も悪くなり、体が冷えた状態に。冷えるとさらに筋肉が硬くなる…という悪循環になるのです。筋肉が衰えて硬くならないようにするには、適度な運動が大切です。
筋肉の疲労によって硬くなる
筋肉が疲労して緊張していることも硬さにつながります。本来筋肉は、ゴムのように伸び縮みするのが良い状態ですが、長時間同じ姿勢が続いたり、同じ動作を繰り返したりすことで、その負荷に耐えようと筋肉がギュッと収縮します。
するとその反対側の筋肉は、逆に伸びたまま突っ張った状態に。どちら側の筋肉も緊張した状態が続き、疲労で硬くなってしまうのです。
座りっぱなしのデスクワーク、左右バランスの崩れた歩き方、トレーニングなどでも、筋肉の疲労は蓄積されています。時々ストレッチを行い、筋肉がうまく伸び縮みできるようにケアしましょう。
水分・栄養不足
体に水分が足りないと、筋肉はもちろん、筋肉を包む筋膜(きんまく)や靭帯なども硬くなってしまいます。
筋肉は「水分の貯蔵庫」ともいわれていて、水分量は約75%もあります。また、筋膜や皮膚、腱、靭帯なども約60%が水分でできています。水分は、肌のうるおいだけでなく、筋肉にも必要です。
そして水分のほかにも、栄養不足でも筋肉は硬くなります。「タンパク質」が不足して筋肉が衰えたり、タンパク質の一種の「コラーゲン」が不足して、骨・軟骨・靱帯・腱・皮膚の弾力性や柔軟性が低下したりするためです。水分やタンパク質、コラーゲンがしっかり摂取できるように、食生活を見直すのもおすすめです。
けがや病気の影響
中には生活習慣以外に、けがや病気の影響で筋肉が硬くなる場合があります。関節リウマチ、変形性関節症、外反母趾、捻挫、脱臼などで関節や筋肉、靭帯などが損傷・変形してしまうと、可動域が制限されて体が硬くなることがあります。
無理に伸ばそうとすると、逆に関節や筋繊維を傷めてしまうので、ストレッチの際には注意が必要です。
体が硬いのはなぜダメ? デメリットとリスク
多くの人が、運動をしたときに自分の体の硬さに気づくのではないでしょうか。体が硬いことは、実はダイエットや健康面でさまざまなデメリットやリスクがあります。
しかもそれは、1つだけではなく、いくつもの不調やトラブルが重なることも。次にご紹介するような項目に心当たりはありませんか?
痩せにくい
体が硬いと、痩せにくく太りやすい体質になります。体の硬さから、知らず知らずのうちに日常動作の動きが小さくなるため、脂肪燃焼されにくい状態になります。
また、運動不足が原因で体が硬くなっている場合は、加齢と共に筋肉量が減って基礎代謝も下がります。すると、カロリー消費がしにくいうえに、血液循環も悪くなるので、ますます代謝が落ち、痩せにくく太りやすい体になるのです。
姿勢が悪くなる
体は、筋肉が収縮して硬くなっているほうに引っ張られるため、それが原因で猫背やゆがみといった、姿勢の悪さにつながります。
その悪い姿勢を戻そうとして、収縮している反対側の筋肉にも負担がかかります。
長時間同じ姿勢が続いたり、同じ動作を繰り返したりすることで、筋肉には疲労が溜まります。すると筋肉が緊張したまま固まってしまい、姿勢の崩れだけではなく、慢性的な腰痛や肩こりを引き起こすこともあります。
けがをしやすい
体が硬いとは、「可動域が狭い」ということ。可動域とは関節が動かせる範囲のことをいいます。動かせる範囲が狭いと、関節だけではなく周辺の筋肉や靭帯にも負担がかかり、そのためけがをしやすくなる可能性があります。
スポーツやトレーニングを行う際はもちろん、日常生活でもふいに転んだりしゃがんだりしたときに、関節が可動域よりも大きく動いてしまい、けがにつながるリスクが高くなります。
冷えやむくみ、内臓機能低下などの不調が起こりやすい
先にご紹介した、筋肉の硬さによって起こる代謝の低下、姿勢の崩れ、可動域の狭さ。これらは「冷え」や「むくみ」「内臓機能の低下」を引き起こし、さまざまな不調につながることがあります。
運動不足や疲労で筋肉が硬くなっている場合は、血液循環の悪さから、冷えやむくみを引き起こします。可動域が狭いことで日常の動きも小さくなるため、ますます代謝が落ちて冷えやすい体になります。
また、体が硬く姿勢が悪いと、内臓が下に押された状態に。内臓を支えている筋肉も衰えて正しい位置を保てなくなり、内臓機能が低下しやすくなるのです。
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体を柔らかくするにはストレッチが効果的
硬い体を柔らかくするのにおすすめなのが、ストレッチです。ストレッチは「可動域を広げる」「血行を良くする」「疲労回復」「心身のリラックス」などのたくさんのメリットがあり、体の柔軟性アップにとても効果的です。
運動不足の人はもちろん、運動習慣のある人もストレッチを行うことで、けがの予防やパフォーマンス向上にもつながります。
柔軟性を高める正しいストレッチのやり方・ポイント
ストレッチは誰でも取り入れやすい簡単な運動ですが、効果を出すためには、いくつかポイントがあります。やり方を間違えると逆効果の場合もありますので、次から紹介する柔軟性を高める正しいやり方を参考にしてみてください。
反動をつけずにゆっくり伸ばす
可動域を広げるには、反動をつけずに20~30秒かけて、ゆっくりと伸ばしましょう。できれば2~3セット繰り返すとより効果的です。
筋肉には「伸張反射」という作用があり、急に大きく伸ばそうとすると、ダメージを受けないように筋繊維が縮まろうとします。逆効果にならないように、ゆっくり優しく伸ばすのがポイントです。
伸ばし過ぎない
ストレッチは、痛い方が効いている気がしますが、心地よい範囲で行うことがとても重要です。自分の体に合ったところまで伸ばしながら、痛みがなく、呼吸も苦しくない方法を選びましょう。
伸ばし過ぎて体が痛みを感じると、興奮モードになる「交感神経」が働き、筋肉が緊張してしまうので逆効果。また、筋繊維を傷めてしまう場合もあります。
ゆっくり呼吸をしてリラックスして行う
ストレッチを行う際は、ゆっくりした呼吸も大切。呼吸により、リラックスモードになる「副交感神経」が働き、筋肉の緊張がやわらぎます。ポイントは、息を吐き出すタイミングで脱力し、余計な力を抜くこと。
深く呼吸することで、横隔膜など深層部の筋肉もストレッチされて、柔軟性アップや姿勢改善にも効果的です。
毎日少しずつ継続する
1度のストレッチで一時的に伸びたとしても、生活の中で負荷がかかると、また元の状態に戻ってしまいます。そのためストレッチは、毎日少しずつでもいいので継続して行うことが大切。日々の習慣にすることで筋肉が疲労しづらくなるうえ、少しずつ可動域を広げることができます。
体を温めてからストレッチする
ストレッチの際は、温かくリラックスできる環境がおすすめです。体が硬い人は、お風呂あがりやウォーキングの後など、体が温まっているときにストレッチをすると効果が高まります。
体が冷えていると血行不良や交感神経の働きによって、筋肉が緊張した状態になるため伸びにくくなります。特に冬は、室温を温かくするなどの工夫をしましょう。
体が硬い人におすすめ! 椅子に座ったままできる簡単ストレッチ
体が硬い人でもできるストレッチのやり方とポイントを、部位ごとにご紹介します。
どれも椅子に座ったままできるので、仕事や家事の合間に毎日続けてみてください。
ご紹介するストレッチのうちどれか一つでもOKですが、できれば全体的に行うとより効果的です。
その理由は、硬いと自覚している部位とは違う箇所や、それとは反対側の筋肉が固まっていることもあるからです。また、1つの関節には複数の筋肉が関係しています。それらの筋肉は筋膜や神経を通して全身とつながっているため、さまざまな箇所をストレッチすることで体の硬さが次第に取れていきます。
首のストレッチ
スマホの操作やデスクワークで疲労している首回りをほぐします。首のストレッチは、肩の力を抜いて、頭の重みを感じながら伸ばすのがポイントです!
【やり方】
- 椅子に座って両手を下におろし、肩の力を抜く。
- 頭をゆっくり右に倒し、左腕を斜め下方向へ伸ばす。左の首筋が心地よく伸びるように、左腕の位置を小さく前後左右に動かして調整する。
- 息を吐きながら、頭を右に倒したまま動かせる範囲で、小さく首を振るように横に10回揺らす。続けて、頭を右に倒したままあごを引き、小さく前にうなずくように10回揺らす。
- ゆっくりと正面に戻り、2 に戻って今度は頭を左に倒し、反対側も同様に行う。
- 最後にゆっくり頭を5回す。反対回しも5回行う。首筋は傷めやすいので、頭が後ろを通るときは特に丁寧に行う。
胸のストレッチ
胸の筋肉が硬いと猫背の原因になり、肩甲骨まわりも動きにくくなります。胸のストレッチは他の部位とは逆に、「伸ばすときに息を吸う」のがポイント! 凝り固まった胸が広がりやすくなります。
【やり方】
- 椅子に座り、両手を後ろで組む。
- たっぷり息を吸いながら、胸を斜め上に引き上げ、後ろの両手を斜め下に伸ばす。胸が心地よく開き、肩甲骨が引き寄せられて背骨が伸びるように。
- 息を吐いて脱力。これを3~5回、繰り返す。
体側のストレッチ
体側や肋骨まわりがほぐれると、呼吸がしやすくなるだけでなく、姿勢改善にも効果的。体側のストレッチは、肋骨と骨盤と引き離すのがポイントです。
【やり方】
- 椅子に座り、両脚は腰幅より少し広めに開く。
- 両手を頭の後ろで組み、肩の力を抜く。
- 息を吐きながら、上半身を右に倒して、左ひじを天井方向へ傾ける。左のお尻が浮かないようにしながら、左の骨盤と肋骨を引き離すイメージで行う。そのまま深呼吸を3回繰り返す。
- ゆっくり戻り、反対側も同様に行う。
余裕がある人は、3 の上半身を右に倒したときに、左手を右斜め上へ伸ばし、目線は天井方向を見上げましょう。さらに体側の伸びを感じられます。
腰のストレッチ
腰は立っているときにも座っているときにも、背骨を支え続けています。ねじる腰のストレッチで、背骨のケアに加え、内臓機能アップも期待できます。呼吸と動きを合わせながらねじるのがポイントです。
【やり方】
- 椅子に座り、両ひざを閉じて約90度に曲げる。右脚を左ひざに乗せて脚を組む。
- 右手で椅子の後ろ側の座面や背もたれをつかみ、左ひじを右ひざの外側に引っ掛けるように添える。
- 息を吸って胸が開くように背筋を伸ばし、息を吐きながら「胸→首→頭」の順に、上半身をゆっくり右へねじる。そのまま深呼吸を3回繰り返す。痛みのない範囲で、呼吸のたびに少しずつ背骨を立てながらねじりを加える。
- ゆっくり戻り、反対側も同様に行う。
お尻~股関節のストレッチ
骨盤を支えているお尻や股関節まわりをほぐすと、姿勢改善や腰痛予防のほか、代謝アップにも効果的です。ひざの向きや背中が丸まらないように行うのがポイントです。
【やり方】
- 椅子に座り、両ひざを閉じて約90度に曲げる。
- 右の足首を左ひざに乗せて、右ひざを外側へ倒す。
- 息を吸って背筋を伸ばし、息を吐きながら胸を突き出すようにゆっくり前に倒す。目線は斜め前へ向ける。そのまま深呼吸を3回繰り返す。
- ゆっくり戻り、反対側も同様に行う。
股関節~もも前側のストレッチ
股関節まわりは、脚を持ち上げるなど歩くときにも使っている部位です。腰痛の原因が、股関節~もも前側の硬さが原因という人も多くいます。腰が反らないように注意しながらストレッチしましょう。
【やり方】
- 椅子に対して右向きで座り、お尻の右側だけを座面に乗せる。右手で座面や背もたれを持ってバランスをとる。
- 左脚を後ろにして、脚の付け根~足先までを伸ばす。ひざは伸ばせる範囲でOK。
- 下腹とお尻をキュッと絞りながら骨盤を安定させ、腰が反らないにように背筋を伸ばす。そのまま深呼吸を3回繰り返す。
- ゆっくり戻り、今度は椅子に対して左向きで座り、反対側も同様に行う。
背面のストレッチ(背中~腰~もも裏~ふくらはぎ)
デスクワークやスマホ操作などの前傾姿勢により、体の背面に疲労が蓄積されると、腰痛や冷え、足がつるなど不調の原因になります。背面のストレッチは、余計な力を抜いて脱力するのがポイントです。特にもも裏の筋肉は張りやすいので、無理のない範囲で行いましょう。
【やり方】
- 椅子に浅く座り、両ひざを閉じて約90度に曲げる。
- 右ひざを伸ばして脚を前に出し、かかとを床に置いてつま先を立てる。
- 両手をももに置き、息を吸って背筋を伸ばす。息を吐きながら、「もも→ひざ→すね→足首→足先」の順に両手を少しずつ下に移動させ、心地よく伸びたところでストップ。背筋を伸ばしたまま、目線は斜め前を向く。そのまま深呼吸を3回繰り返す。
- ゆっくり1 に戻り、反対側も同様に行う。
- 最後に1 戻り、両手を両ひざの後ろに回し、両腕でひざを抱きかかえる。首の力を抜いて、頭を下に垂らす。
- 息を吸って吐き出しながら、背中を突き上げるように丸くして伸ばす。そのまま深呼吸を3回繰り返す。
まとめ:体が硬いのは運動不足や疲労が原因かも。正しいストレッチで柔軟性アップを
体が硬い原因は、筋肉の衰えや疲労の蓄積、水分不足などが関係しているかもしれません。
体が硬いことで、「痩せにくい」「姿勢が崩れる」「けが」「冷え」など、様々な不調やトラブルにつながります。何もしないとますます硬くなってしまうので、早めに改善しましょう。
柔軟性を高めるためにはストレッチが効果的です。呼吸やフォームなど、ちょっとしたポイントを意識して行うことで、体が柔らかくなり、気持ちよく伸ばせるようになります。正しいやり方を把握して、無理なくストレッチを行いましょう。
また、体の筋肉や筋膜はそれぞれ連携して働いています。時間があれば、どれか一つだけよりも複数のストレッチを行い、全体的に体を伸ばすことをおすすめします。
柔らかい体を手に入れて、太りにくく健康的な毎日を過ごしましょう。
[ 監修者 ]
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