東洋医学の「シミ・シワ」対処法とは?巡りを良くする生活とツボ|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「シミ・シワ」がテーマ。東洋医学的セルフケアで、若々しい美肌を手に入れる方法を紹介します。
目次
東洋医学からみる「シミ・シワ」の原因とは?
年齢と共に気になり始める「シミ・シワ」。女性なら誰しもが解消したいお悩みですよね。すっぴんで鏡を見たときや、写真で自分の笑った顔を見たときなどに気になるのではないでしょうか。東洋医学でシミ・シワの原因とされるのは、血や気の巡りの悪さがあげられます。
シミができやすいのは「瘀血(おけつ)」タイプ
シミの原因は、血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」。血がドロドロしてスムーズに巡らなくなることで、滞りができてしまい、シミとなってあらわれます。自然に流れている川も、流れが滞っている場所にゴミや流木、枯れ葉などが溜まりますよね。人間の血流もそれと同じ。血の流れが悪いと不要なものが溜まり、シミができやすくなります。
「瘀血(おけつ)」体質をチェック
次の項目に当てはまる人は、「瘀血(おけつ)」タイプさんです。多く当てはまるほど、シミができやすい体質といえます。
- 首、肩こりがある
- 慢性的な頭痛がある
- 生理痛がひどい
- 生理のときに血の塊が出る
- 目の下にクマがある
- 肌がくすむ
- 肌がザラザラしている(サメ肌)
- 手足などの末端が冷える
- 唇や舌の色が暗い
シワができやすいのは「気陰両虚」タイプ
シワの原因は「気(体の元気)」と「陰(潤い)」不足。これを東洋医学で「気陰両虚(きいんりょうきょ)」といい、気と潤いの両方が足りていない状態をあらわします。気は肌のハリを保ち、ターンオーバーも担っていますが、不足するとたるみや乾燥が起こり、シワにつながります。一方、陰(潤い)も不足すると肌が乾いた状態が続き、次第にシワが刻まれてしまいます。
どちらも加齢によって不足しますが、生活習慣や食事内容が悪いとますますシワができやすくなります。
「気陰両虚」体質をチェック
次の項目に当てはまる人は、「気陰両虚」タイプさんです。多く当てはまるほど、シワができやすい体質といえます。
- 疲れやすい、しんどい
- 風邪をひきやすい
- 手足が重だるい
- のどが渇く
- 空咳がでる
- 手のひら、足の裏が熱い
- 日中の汗、寝汗をかきやすい
- 舌に歯形がつく
- 舌にひび割れがある
現代人はストレスが多く、気が滞りやすい
東洋医学では、人間の体は「気・血・水」によって成り立っていると考えられています。気はエネルギー、血は血液などの栄養、水は血液以外の潤いのこと。
しかし現代人は、仕事や家事、育児などとにかく忙しい人が多く、ストレスによって気が滞りがちに。気血水は常にバランスを保っているため、気が滞ると、血や水にも悪い影響が出てしまい、気陰両虚や瘀血になりやすくなります。
また、暑い時期は汗をかくため誰でも体が陰(潤い)不足になり、一時的に「気陰両虚」体質に。このように、紫外線以外にも体の中のバランスが崩れることにより、シミやシワができやすくなるのです。
体の中から美肌体質になる、東洋医学的「シミ・シワ」セルフケア
東洋医学の考え方で何より大事なのは、食事や生活を整える養生。もちろんシミ・シワの改善にも、まずは食生活や睡眠、運動などを見直すことが大切です。すぐに効果があらわれるものではありませんが、体の土台がしっかり整うことで若々しい肌がつくられます。シミ・シワ、それぞれのセルフケアをご紹介します。
シミ対策:血の巡りを良くする食べ物がおすすめ
シミの原因となる「瘀血体質」を改善するには、血の巡りを良くする食べ物を食事で取り入れてみてください。一般的に「血液をサラサラにする」といわれる食べ物が効果的です。その他にも、脂っこいものや甘いもの、味が濃いものをなるべく避けることも瘀血を防ぐことにつながります。
血の巡りを良くする食べ物…青魚(アジ、いわし)、玉ねぎ、にんにく、しょうが、らっきょう、黒きくらげ、紅茶、ナス、もも など
シミ対策:体を動かして血巡りアップ生活を
じっとしている生活が続けば続くほど、ドロドロ血が悪化して瘀血がなかなか改善しません。デスクワークで長時間同じ姿勢が続く人は、1時間に1回でもいいので立ち上がって伸びをしたり、散歩に出かけて体を動かしたりして、血の巡りをアップさせる習慣を。
また、体を冷やさないようにすることも大切。寒いときは上着を羽織る、靴下を履く、ストールを巻くなど、ちょっとした体の冷えに気をつけましょう。
シワ対策:潤いを補う食べ物と自然の甘みを感じる食べ物がおすすめ
シワの原因は、元気と潤い不足の「気陰両虚」。体の潤いを補うには白い食べ物がいいとされています。また、元気を補うには自然の甘みを感じられる食べ物を。また、このタイプは胃腸が弱いので、食事は温かくてあっさりしたものがおすすめです。
潤いを補う白い食べ物…梨、豆腐、豆乳、レンコン、松の実、白ごま、牛乳、ゆり根 など
自然の甘みを感じられる食べ物…トウモロコシ、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、サツマイモ、栗、お米 など
シワ対策:睡眠と休息を最優先にした生活を
シミができやすい「気陰両虚」タイプさんは、体の元気と、潤いの両方が慢性的に不足した状態です。どちらもしっかり補うためには、ずばり睡眠と休息が大事。仕事や家事を早めに切り上げて、30分でもいいので早く寝ましょう。バタバタと忙しい生活を送っていると気を消耗します。1日の中で数十分、1週間の中で半日といったわずかな時間でもリラックスして過ごせる時間を確保してください。
また、激しい運動やサウナ、岩盤浴などの大量の汗をかく健康法は、気と潤いがますます不足するため逆効果。ヨガやストレッチ程度にしましょう。
「シミ・シワ」対策に効果的なツボ
食事や生活に気をつける以外で、ツボ押しもシミやシワ対策に効果的です。次からご紹介するツボを刺激して、体の中から気・血・水の巡りを改善させましょう。若々しい素肌になりたい人は、毎日の習慣にしてみてください。
シミに効果的なツボ:三陰交(さんいんこう)
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指幅4本分上の場所。※妊婦の方は「三陰交」のツボ押しは避けましょう。
押し方:足首の内側をつかむようにして、親指の腹でじんわり気持ち良い強さで押します。お灸もおすすめ。
シミに効果的なツボ:合谷(ごうごく)
合谷(ごうこく):親指と人差し指の骨の付け根が合わさった、V字になったくぼみ。
押し方:反対の手の親指で人差し指側に押し込み、ズーンと響く強さで押します。
シワに効果的なツボ:足三里(あしさんり)
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:骨の方に押し込むように、親指でグッと力を込めて、イタ気持ちいい強さで押しましょう。
シワに効果的なツボ:太谿(たいけい)
太谿(たいけい):アキレス腱と内くるぶしの間のくぼみにあるツボ。
押し方:左右の足にあり、片足ずつ押します。親指を重ね、ツボを約7秒間しっかり押し続け、ゆっくりと指を離すのを繰り返しましょう。
今月の養生ポイント:シミ・シワのない肌をつくるには“23~3時の睡眠”がカギ
中国には、「子の刻の睡眠を放棄するくらいなら、一度の食事を放棄したほうがいい」ということわざがあります。「子(ね)の刻」とは、23時~深夜1時のこと。この時間に眠ることが、人間にとって1回の食事よりも大切という意味です。
そもそも東洋医学では「子午流注(しごるちゅう)」という考え方があります。子午は時間、流注は流れ。1日24時間を2時間ずつ区切り、体の中の各臓器がその時間帯になると働いたり休んだりして、気血の流れが良くなることをあらわしています。
この中で「子の刻(23~1時)」は最も陰気(陰陽の陰の気)が盛んで“気血陰陽”が転換する時間帯です。そのためこの時間に十分に睡眠をとり、心と体を休めることはとても大切です。「丑(うし)の刻(1~3時)」は全身の血が肝に集まりデトックスする時間帯。古い血液を排出して新しい血液をつくりだすタイミングです。このように23~3時に睡眠をとることは、シミやシワ改善にも直結しています。
高い美容液にお金をかける前に、まずは23時より前に布団に入る習慣を。睡眠を大事にするほど、内側から潤いが溢れ、肌はきれいになりますよ。
イラスト/植松しんこ
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