納豆は毎日食べるべき?体にいい11の栄養素と効果を管理栄養士が解説
健康食の代表ともいえる「納豆」。手軽に食べられて栄養価の高い食べ物ですが、どんな健康効果があるのか知っていますか? 納豆を毎日食べることで期待できる効果と、栄養価が高まる方法を解説します。
目次
発酵食品の代表といえば「納豆」
日本人なら誰もが、「納豆は体にいい」というイメージを持っていることでしょう。そのため毎日欠かさず納豆を食べている方も多いのではないでしょうか。まずは発酵パワーが生み出す納豆について、くわしく解説していきます。
納豆は畑の肉「大豆」を発酵させたもの
そもそも納豆は、蒸した大豆を納豆菌により発酵させた食品です。納豆菌は枯草菌(こそうきん)という細菌の一種で、納豆をつくるのに欠かせない菌です。原料が大豆のため、大豆と同じくイソフラボンやサポニン、レシチンといった栄養成分を含んでいます。発酵によって納豆菌が大豆にはない栄養成分を作り出し、栄養価の高い食べ物にしてくれます。
粒納豆とひきわり納豆の違いは?
納豆には粒納豆とひきわり納豆があります。みなさんもスーパーで納豆を手に取るときに、チェックして買っているのではないでしょうか。一般的に食べられている粒納豆は、正式には「糸引き納豆」といいます。粒納豆は、大豆を水で洗ったあと3倍量の水に一晩浸します。水を含んだ大豆を蒸し、納豆菌を接種して発酵させるのが一般的な作り方です(※1)。
一方ひきわり納豆は、大豆を細かく砕いてから蒸して発酵させます。細かく砕くことで大豆の表面積が大きくなると、納豆菌が付着する面積も大きくなります。そのため、発酵により酵素やビタミン類が増えやすく、栄養価が高まるのが特徴です。ひきわり納豆は、同じ時間発酵させた粒納豆と比べ、血液をサラサラにするといわれるナットウキナーゼや、骨を強くするビタミンKなどが多く含まれています。
(※1)農林水産省「大豆のまめ知識」
『クロワッサン特別編集 調子がいいのは、野菜と豆の食べ方を知っているから』(マガジンハウス)より。
納豆の栄養成分と期待できる11の効果
発酵パワーで栄養たっぷりの納豆は、たくさんの美容・健康効果が期待できます。納豆に含まれる栄養成分と期待できる11の効果をくわしくみていきましょう。
(1)細胞をつくる「タンパク質」
納豆には良質なタンパク質が多く含まれているのが特徴です。納豆1パック(糸引き納豆50g当たり)には8.3gのタンパク質が含まれています。成人女性が摂りたい1日のタンパク質摂取推奨量50gの約17%を、納豆1パックから摂ることができます(※2)。
タンパク質は筋肉をつくるだけでなく、髪や肌、ホルモンや酵素など体の材料になります。また、メンタルを安定させる働きもあります。肌のお手入れは丁寧なスキンケアが基本ですが、皮膚そのものを美しくするためには、良質なタンパク質を摂り、体の中から美肌をつくることが大切。コラーゲンは加齢ともに質が低下してしまうともいわれます。質が落ちたコラーゲンを早く代謝させるにはタンパク質が必須。美肌のためにも、納豆のタンパク質を味方にしましょう。
(※2)厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」より。
(2)血栓を予防する「ナットウキナーゼ」
納豆特有の栄養成分、「ナットウキナーゼ」は、発酵によって生じるタンパク質分解酵素です。ナットウキナーゼは、血液中でできた血栓を溶かす作用に関与するといわれています。血圧を下げる作用や、血行を促進する作用などが期待されています。
(3)更年期症状を緩和する「大豆イソフラボン」
納豆には大豆イソフラボンも豊富に含まれており、100g当たりの平均含有量は73.5mgです(※3)。大豆イソフラボンは、女性ホルモン「エストロゲン」と似た作用があり、更年期症状の緩和や骨粗しょう症、動脈硬化、冷え性の予防・改善に有効とされています。
(※3)厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」より。
(4)コレステロール値低下をサポートする「レシチン」
納豆にはレシチンが多いのも特徴。レシチンとは、細胞膜の構成する成分になる、リン脂質の一種です。レシチンには血中のコレステロールを下げる作用があり、動脈硬化を予防するとされています。
(5)脂質の代謝を助ける「サポニン」
サポニンは大豆などに含まれる渋みやえぐみ成分で、脂質の代謝を促す作用が期待されています。サポニンには、脂肪の燃焼を促す「アディポネクチン」の分泌を促進する働きがあるからです。
また、大豆サポニンには老化や疲労の原因となる「活性酸素」を除去する働きも。血液中の脂肪やコレステロールが活性酸素によって酸化されると、LDL(悪玉)コレステロールとなって、血管内に脂肪が蓄積されてしまいます。大豆サポニンが活性酸素を除去し、LDLコレステロールの蓄積を抑えることにより、動脈硬化の予防にも役立ちます。
(6)便秘改善に役立つ「食物繊維」
納豆は食物繊維も豊富で、便秘改善に役立ちます。納豆1パック(糸引き納豆50gあたり)には3.4gの食物繊維が含まれており、成人女性が摂りたい食物繊維の目標量18gの約19%を、納豆から摂ることができます(※4)。
また、納豆を作るときに加える納豆菌そのものにも、整腸作用があることがわかっています。腸内の悪玉菌が増殖するのを防いでくれる効果も期待できるでしょう。
(※4)『日本人の食事摂取基準2020年版』(第一出版)
『七訂食品成分表2020』(女子栄養大学出版部)より。
※納豆は糸引き納豆
(7)健康な心をつくる「トリプトファン」
納豆には必須アミノ酸の一つ「トリプトファン」も多く含まれています。トリプトファンは、精神を安定させる働きがある神経伝達物質「セロトニン」の原料。イライラや落ち込み、ストレスの緩和、生理前や更年期症状の緩和に役立ちます。
(8)貧血予防に役立つ「鉄」
鉄を多く含む食品といえば、レバーを思い浮かべるかもしれませんが、納豆にも鉄が多く含まれています。納豆1パック(糸引き納豆50gあたり)には1.7mgの鉄が含まれており、成人女性が摂りたい鉄の推奨量10.5mg(月経あり)の約16%を納豆から摂ることができます(※5)。
女性は生理や妊娠などで多くの鉄を必要とするため、意識して摂るようにしたいものです。鉄が不足して貧血になると、疲労感や息切れ、頭痛などの症状があらわれます。鉄の吸収を高めるビタミンCや、ヘモグロビンの材料となるタンパク質も十分に摂って、貧血を予防しましょう。
(※5)『日本人の食事摂取基準2020年版』(第一出版)
『七訂食品成分表2020』(女子栄養大学出版部)より。
※納豆は糸引き納豆
(9)脂質をエネルギーに変える「ビタミンB2」
納豆には、別名「発育のビタミン」と呼ばれるビタミンB2も多く含まれています。納豆のビタミンB2は大豆の約5倍。ビタミンB2はタンパク質の合成を助けて、皮膚や髪、爪などの細胞の再生をサポートします。ビタミンB2が不足すると、肌荒れや髪のトラブルのもとになります。
(10)骨づくりをサポートする「ビタミンK」
納豆には骨づくりをサポートする「ビタミンK」も豊富に含まれています。ビタミンKは丈夫な骨をつくるのに欠かせないビタミン。カルシウムを骨に定着させる働きがあります。特に、更年期世代以降の女性に多い、骨粗しょう症の予防にも役立ちます。
また、ビタミンKは「止血ビタミン」ともいわれています。出血を止める働きをするタンパク質が、肝臓内でつくられるときの補酵素として働いています。
(11)強い骨や歯を維持する「カルシウム」
納豆にはカルシウムも豊富に含まれています。納豆1パック(糸引き納豆50gあたり)には45mgのカルシウムが含まれており、成人女性のカルシウム推奨量650mgのうち、約7%を納豆から摂ることができます(※6)。
カルシウムは吸収率の低い栄養素のひとつ。摂った量がそのまま体内で利用されるわけではありません。そのため日頃から十分な量をこまめに摂ることが大切。
アルコールの摂りすぎや喫煙はカルシウムの吸収を妨げるので、骨の健康を考えるなら気をつけたいものです。骨粗しょう症予防のためにも積極的に摂りましょう。
(※6)『日本人の食事摂取基準2020』(第一出版)
『栄養素の通になる第4版』(上西一弘著/女子栄養大学出版部)より。
納豆は毎日食べてもOK?
健康のためには毎日食べたい納豆ですが、1日にどのくらい食べたらいいの? 摂りすぎるとどうなるの? と疑問に思いませんか。次からくわしく解説します。
納豆は1日どのくらい食べたらいいの?
栄養価が高く、ご紹介したようにたくさんの健康効果が期待できる納豆。しかし、残念ながら納豆だけを食べても健康になるわけではありません。健康に過ごすためには、バランスよく食べることが何より大切です。
さまざまな食べ物をバランスよく組み合わせて食べることで、体の機能がスムーズに行われます。「納豆は1パック」を目安に、主食・主菜・副菜のそろった食事を1日3食規則的に摂るようにしましょう。
納豆を摂りすぎると? デメリットは?
日本人は昔から豆腐や納豆、みそなどの大豆製品を食べる習慣があり、これらの大豆製品を食べることによる健康への悪影響は報告されていません。納豆に含まれる栄養素の摂りすぎによる悪影響は、心配ないと考えられます。
市販の納豆の中には「特定保健用食品」として販売されているものもあります。特定保健用食品とは、「おなかの調子を整える」など、国に認められた働きが表示されている食品のこと。特定の栄養素が一般的な納豆よりも多く含まれているため、パッケージに記載の量を目安に食べ、それ以上過剰に摂り過ぎないようにしましょう。
納豆そのものから栄養を摂る分には問題ありませんが、ある特定の栄養素のサプリメントを飲んでいる場合、摂りすぎになる場合があり、注意が必要です。サプリメントでも販売されているナットウキナーゼを摂る場合は、しっかりと安全性を確認した商品を購入することをおすすめします。妊娠中や授乳中のサプリメントの服用は、医師に相談してください。
納豆に関するQ&A
ここまで、納豆の健康効果をご紹介してきました。最後に、納豆に関する素朴な疑問についてまとめました。納豆を買うときや食べるときに参考にしてみてください。
納豆はいつ食べるのがいいの?
みなさんは納豆をどの時間帯に食べていますか? ナットウキナーゼの血栓溶解効果を有効に活用するなら、夜に食べるのが良いといわれています。血栓は深夜から早朝までの寝ている間、発汗のため血液が濃くなり血栓ができやすくなります。
一方、朝食で食べるとタンパク質の補給になります。食事を摂ると「食事性体熱産生」といって、体がポカポカ温まる働きがあります。タンパク質は糖質や脂質に比べて「食事性体熱産生」の働きが特に強いことがわかっています。
平熱が低めの人は、免疫力向上や冷え性対策のためにも朝食をしっかり摂って体温を上げるようにしましょう。手軽に取れる納豆でタンパク質を補給すると良いですね。
粒納豆とひきわり納豆はどちらが良い?
粒納豆とひきわり納豆はどちらが良いか? を栄養価の違いでみていきましょう。それぞれの栄養素の違いは以下のとおりです(※7)。
100gあたり | 粒納豆(糸引き納豆) | ひきわり納豆 |
エネルギー(kcal) | 200 | 194 |
タンパク質(g) | 16.5 | 16.6 |
脂質(g) | 10.0 | 10.0 |
炭水化物(g) | 12.1 | 10.5 |
食物繊維(g) | 6.7 | 5.9 |
カルシウム(mg) | 90 | 59 |
鉄(mg) | 3.3 | 2.6 |
ビタミンB2(mg) | 0.56 | 0.36 |
ビタミンK(μg) | 435 | 650 |
トリプトファン(mg) | 240 | 240 |
(※7)『七訂食品成分表2020』(女子栄養大学出版部)より。ビタミンKのデータは『からだにいい食事と栄養の教科書』(本多京子監修/永岡書店)より引用。
粒納豆は食物繊維や鉄、カルシウムが多いのが特徴。便秘改善や、貧血対策、カルシウムをより多く摂りたい場合は粒納豆を選ぶと良いでしょう。
ひきわり納豆の特徴は、粒納豆よりもビタミンKを多く含む点です。ビタミンKは丈夫な骨づくりに欠かせない栄養素。カルシウムの吸収率を高めたい場合は、ひきわり納豆を選ぶと良いでしょう。納豆を食べる以前に、牛乳や乳製品、その他の食品からカルシウムをしっかり摂ることも忘れずに。
また、ひきわり納豆は粒納豆に比べると、食物繊維が少ない分、消化吸収が良いため、お子さんや高齢者、お腹の調子がよくない方におすすめです。
よくかき混ぜるといいって本当?
納豆はかき混ぜる回数によって健康効果が変わるわけではありません。回数に関係なく粘りがしっかり出てくるまで混ぜると、糸を引くようになり、おいしさがアップします。
納豆のネバネバは、納豆菌がたんぱく質を分解してできたグルタミン酸と、「フラクタン」という糖の一種からできています。 納豆のうま味はグルタミン酸で、フラクタンはネバネバを安定させる役目があります。よく混ぜることでうま味成分のグルタミン酸を引き出すことができます。
納豆を毎日飽きずに摂るには?
美容と健康のために毎日食べたい納豆。スーパーには大粒や中粒などさまざまな種類があるので、飽きずに食べるには商品を変えてみるのもいいでしょう。
納豆の原料になる大豆は、粒の大きさで大粒、中粒、小粒、極小粒、超極小粒、丸大豆を割ったひきわりに分類されます。 昭和40 年代までは大きめの納豆が主流でしたが、現在はご飯に混ぜやすくて食べやすい極小粒納豆が人気だそうです。
納豆に混ぜるタレの味を変えてみたり、青ねぎやしょうがなどの薬味を入れたりして変化をつけるのも良いでしょう。
納豆を控えた方がいい人は?
納豆を食べるのを控えた方が良い場合もあります。ワルファリンカリウムなどの抗凝固薬を服用中の方です。ワルファリンカリウムは血液を凝固しにくくする薬で、血栓ができやすい人や心臓手術を受けた人などに処方されます。
納豆に含まれるビタミンKは血液の凝固を促すため、ワルファリンカリウムと同時に摂ると、薬の効果を打ち消してしまいます。服用中の方は納豆を食べるのは控えましょう(※8)。
*抗凝固薬服用中の方は、医師や薬剤師に相談してください。
(※8)『あたらしい栄養学』(吉田企世子・松田早苗監修/高橋書店)より。
納豆+αでさらに健康に!おすすめ”ちょい足し”食材
納豆は付属のタレやしょうゆなどでシンプルに食べるのが一番おいしいですが、次にご紹介する食材を“ちょい足し”するのもおすすめです。+αの栄養素を加えて、さらに納豆の健康効果をパワーアップさせましょう。
納豆+ねぎ
ねぎを加えると、納豆には含まれていないビタミンCやアリシンなどが補えます。ねぎ特有の香り成分「アリシン」は、抗酸化作用や血液をサラサラにする効果が期待できます。アリシンはビタミンB1の吸収を助け、糖質の代謝をスムーズにする役割も。納豆に刻んだねぎをちょい足しして、栄養価をアップさせましょう。
納豆+青じそ
青じその独特の香りは「ぺリルアルデヒド」という成分。殺菌効果や防腐作用のほか、胃を丈夫にする働きがあります。納豆にはないビタミンAやビタミンCも含まれています。納豆に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まるため、納豆+青じその組み合わせはおすすめです。青じそは断面が空気に触れると黒く変色するため、食べる直前にみじん切りにして加えましょう。
納豆+ちりめんじゃこ
骨を丈夫にしたい方は積極的に摂りたいちりめんじゃこ。ちりめんじゃこはカルシウムやビタミンDが豊富に含まれています。納豆にちょい足しすることで、ちりめんじゃこのビタミンDが、カルシウムの吸収を高めてくれます。納豆にもカルシウムが含まれるため、一緒に食べればさらに多く摂ることができます。
納豆+チーズ
変わり種のちょい足し食材「チーズ」は、タンパク質やビタミンA、B2などが豊富です。チーズのタンパク質が納豆に含まれる鉄の吸収率を高めてくれます。鉄は不足しがちな栄養素なので、吸収を高めるために食べ方でも工夫したいですね。
お酒を飲む方は、納豆+チーズの料理を一緒に摂ることをおすすめします。アルコールの代謝には、脂肪を分解するビタミンB2がたくさん必要になります。納豆とチーズの合わせ技で積極的に摂りましょう。食パンに納豆とピザ用チーズを乗せて、オーブントースターで焼けば簡単においしいおつまみになります。
まとめ:栄養価の高い納豆を毎日食べて、発酵パワーで健康的に!
毎日食べたい納豆の11の栄養素と健康効果について紹介しました。納豆を食べるときには、ねぎや青じそなどをちょい足しすることでさらに栄養価をアップすることができます。ただし、納豆だけを毎日たくさん食べても健康になれるわけではありません。
健康な心と体を保つには、1日3食、バランスの良い食事を摂ることが基本。それに加えて、栄養価の高い納豆をプラスすれば、さらに体にいい生活が送れるでしょう。
納豆はご紹介したように食べ方を工夫すれば、飽きずに継続して摂ることができます。納豆の発酵パワーを味方にして、毎日を健康的に過ごしましょう。
「体にいい」と言われる食べ物はたくさんあるけれど、本当に必要なのはどれ? と、疑問に思うことはありませんか。ダイエットにも美容にも効果的で、健康維持にも役立つ、毎日食べた方が良い食べ物をご紹介します。