食物繊維の適量とは。便秘改善のための効果的なとり方は?
野菜やきのこを意識してとっているのに、便秘が改善しなかったり、便秘のせいで肌が荒れたり……。こうした場合、食物繊維のとり方に問題があるかもしれません。便秘の改善に効果的な食物繊維のとり方を紹介します。
目次
食物繊維ってどんなもの?
食物繊維といえば、きのこや野菜などの食べ物を思いつくのではないでしょうか。食物繊維は、食べ物の中に含まれており、人間が持つ消化酵素では消化されない成分です。
よく「5大栄養素」といわれるのは、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つ。これらは口、胃、腸などの消化管を通る間に消化酵素によって分解され、小腸で吸収されます。
一方、食物繊維は消化酵素の作用を受けません。分解されないまま小腸を通過し、大腸まで届きます。 大腸内の細菌が食物繊維を発酵・分解し、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」と呼ばれる腸内細菌のエサになります。すると善玉菌がどんどん増え、腸内環境が改善するのです。
食物繊維には大きく分けて2種類ある
食物繊維は、「水溶性食物繊維」と「不溶性物繊維」の2種類に分けられます。どちらも腸内環境を整えるのに役立ちますが、それぞれ違う働きをしています。
便をやわらかくする水溶性食物繊維
水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶けやすいのが特徴です。
大腸の中で水に溶けた水溶性食物繊維は、ネバネバ・ヌルヌルとしたジェル状に変わります。この性質によって便にうるおいを与えてやわらかくし、スムーズな排便を促します。
また、ヌルヌルとした性質なので、便が腸の壁にひっかかって停滞するのも防ぐことができます。
水溶性食物繊維の多い食品
「食物繊維」と聞くと、野菜をイメージするのではないでしょうか。しかし実は、水溶性食物繊維は野菜にはあまり含まれていません。特に、葉物野菜にはほとんど含まれていないのです。
水溶性食物繊維は、下記のような食品に多く含まれています。
- 穀類:大麦、オートミール、もち麦
- 芋類:こんにゃく、じゃがいも、長いも
- 野菜:らっきょう、モロヘイヤ、オクラ、ごぼう
- 果物:イチゴ、みかん、アボカド
- 海藻類:のり、わかめ、昆布、もずく、めかぶ など
便のカサを増し、腸を動かす不溶性食物繊維
続いて不溶性食物繊維は、水に溶けにくい食物繊維です。
大腸内で水分を吸収してふくらみ、便のカサを増やします。腸の壁を刺激して、腸のぜん動運動を活発化させることで便通を改善します。
それに加えて、不溶性食物繊維には、水溶性食物繊維を包み込んで大腸内のすみずみまで届ける役割もあります。
不溶性食物繊維の多い食品
食物繊維=“すじ”のイメージがあると思いますが、まさにそれが不溶性食物繊維。成熟した野菜などに多く含まれており、ザラザラとした食感が特徴です。
不溶性食物繊維は、下記のような食品に多く含まれています。
- 穀類:玄米、ライ麦
- 芋類:里芋、こんにゃく、さつまいも、かぼちゃ
- 野菜:ごぼう、ブロッコリー、切り干し大根、モロヘイヤ
- きのこ類:きくらげ、しいたけ
- 豆類:おから、きな粉、大豆、枝豆、納豆 など
不溶性食物繊維を摂りすぎると、かえって便秘の原因に!?
日本人の便秘の中で最も多いのは、大腸の動きが低下することで便が腸内を進まなくなる「弛緩性便秘」。この場合、不溶性食物繊維を摂りすぎると便のカサが大きくなりすぎてしまうことも。すると便は腸壁にひっかかって、よけいに腸内を進みづらくなってしまいます。
大腸の中で長時間とどまった便は、腸に水分を吸収されて硬くなります。そのため腸内をスムーズに進むことができず、ますます便が出にくくなる悪循環に陥りがちです。
腸内で水分を吸ってふくらんだ不溶性食物繊維は、腸内細菌が分解するときにガスが発生することも。摂りすぎると、お腹のハリなどにつながる恐れがあります。
食物繊維の1日の摂取目安量は約20g
食物繊維は便秘改善に大切である一方、摂りすぎると別のトラブルを招きます。では、1日にどれだけ摂取すれば良いのでしょうか?
18歳以上の日本人では、食物繊維の摂取量の目標は、1日あたり下記のように定められています。
- 男性 21g以上
- 女性 18g以上
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より(PDF)
1970年代までは、食物繊維の摂取量は目標値を越えていました。しかし近年、日本人の食生活は欧米化。肉や乳製品の摂取が増え、穀物の摂取量が減っています。そのため、食物繊維の摂取量は平均12~14g程度と、目標値を下回っていました。
令和元年の調査結果では、男性の摂取量平均値が19.4g、女性が17.5gと、目標値に近づいています。しかし不足していることに変わりはありません。毎食、意識して食物繊維の摂取を心がける必要があります。
水溶性と不溶性のバランスは1:2が理想的
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、どちらか一方を摂りすぎてしまうと、かえって腸内環境が悪化することがあります。理想のバランスは、「水溶性:不溶性=1:2」の割合になるように食べることです。
ところが、「令和元年 国民健康・栄養調査」では、現状の摂取バランス(水溶性:不溶性)は次のようになっています。
- 男性 3.6g:11.8g
- 女性 3.5g:11.2g
つまり、「水溶性:不溶性=約1:3」となってしまっているのです。これを理想のバランスに近づけるには、水溶性食物繊維を意識的にたくさん摂る必要があります。
水溶性と不溶性のバランスのいい食品
「食物繊維が多そう」とイメージできる食材の多くは、不溶性食物繊維を多く含んでいます。一方、水溶性食物繊維は少ないことが多いため、以下のような1品で食物繊維を多く含み、かつ水溶性と不溶性のバランスがとれた食材を摂ることを心がけましょう。
( )内は食品100gあたりの食物繊維量
- オートミール(水溶性:不溶性=3.2g:6.2g)
- ライ麦パン(水溶性:不溶性=2.0g:3.6g)
- 挽きわり納豆(水溶性:不溶性=2.0g:3.9g)
- オクラ(水溶性:不溶性=1.6g:3.6g)
- アボカド(水溶性:不溶性=1.7g:3.6g)
- キウイ(水溶性:不溶性=0.7g:1.8g)
※「日本食品成分表2019七訂」参照
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食物繊維を上手に摂って便秘を予防するコツ
バランスのとれた食物繊維を豊富に含む食材を紹介してきました。さらにちょっとした工夫を加えれば、便秘を予防しつつ、効果的に食物繊維を摂ることができます。
主食を変えて食物繊維を摂る
手っ取り早く食物繊維を摂る方法は、食べる量が多い主食を活用すること。普段食べている白米を、食物繊維の多い雑穀などに変えてみましょう。
おすすめは、大麦を積極的に食べることです。大麦の食物繊維量は、可食部100gあたり9.6gです。これは、精白米(同約0.5g)の約20倍! しかも大麦は、水溶性:不溶性=6.0g:3.6g(約2:1)と、水溶性食物繊維を豊富に含む食品です。
大麦は食べ慣れない人も多いと思いますが、白米に混ぜて食べると、手軽に食物繊維の摂取量をアップできます。
また、主食を抜くとそれだけで食物繊維の摂取量が減ってしまいます。毎食食べるよう心がけましょう。
発酵食品と組み合わせる
食物繊維をさらに有効活用するためにおすすめなのが、発酵食品と一緒に食べること。
便秘を改善するうえで、「腸内環境を整えること」は欠かせません。大腸の中に住む善玉菌を増やせば、善玉菌が乳酸や酢酸(さくさん)を作り出すことで大腸を活発に動かし、排便を促してくれます。
その善玉菌を増やすうえで重要なのが「発酵食品」です。食物繊維は、発酵食品に含まれる乳酸菌のエサとなって増殖を助け、腸内細菌のバランスを保ち便秘改善に役立ちます。例えば、次のような組み合わせで摂取することをおすすめします。
- 大麦入りご飯+納豆+キムチ
- ヨーグルト+バナナ+キウイ
- 野菜たっぷり味噌汁 など
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食物繊維不足以外の便秘の要因は?
食物繊維を意識して摂取しても、便秘が解消されないこともあります。この場合は、ほかにも原因があるかもしれません。便秘の原因について、さらに見ていきましょう。
水分不足でカチカチ便に
水分は、便をやわらかくするために必要不可欠です。食物繊維を一生懸命摂っても、水分が不足すると便は硬くなってしまいます。
健康な成人の場合、1日の水分摂取量は、食事から摂る水分も含めて2~2.5リットルが理想。飲み水からは、1.2リットル程度の水分を摂ることが推奨されています。もともと水分不足だった人は、まずは今の水分摂取量にペットボトル1本(500ml)を追加して飲むようにしましょう。これだけでも、便に必要な水分を補うことができます。
※腎臓などに疾患を持つ人では、水分の推奨摂取量は異なる場合もあるので医師に相談しましょう。
運動不足による腹筋力の低下
排便で「いきむ」ときは、腹筋に力をいれることでスムーズに排便できます。
しかし、デスクワークや車移動などが多く日常生活の中であまり体を動かさない人は、多くの場合腹筋の筋力が低下。すると、便を押し出す力が弱くなります。
体を動かせば「いきむ」力をつけられるだけでなく、血流が促進されて腸の動きも活性化します。便秘解消のためには、適度な運動を行いましょう。
できれば「週末にまとめて運動」するよりも、「短時間でも毎日運動」する方が、便秘の改善には効果的です。
便秘になりやすい食べ物の過剰摂取
肉類やジャンクフードなど、脂質やたんぱく質が多い食べ物ばかりを食べていると、腸内の悪玉菌が増えます。
増えた悪玉菌は、主にたんぱく質をエサとして有害物質を作り出し、腸内環境を悪化させます。すると便秘を引き起こしやすくなるのです。
また、肉類などのたんぱく質は、腸でほとんどが吸収されるため便のカサも減少してしまいます。たんぱく質も体に欠かせない栄養素の一つではありますが、ほかの栄養素も含め、バランスの良い食事を心がけましょう。
ストレスが腸の動きを弱める
腸の動きは、自律神経がコントロールしています。通常は、活動モードになると働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経が、バランスをとって規則正しく働いています。
しかし、ストレスを感じると自律神経は乱れやすくなり、交感神経の働きが優位になります。すると全身が緊張状態に。腸の動きは鈍くなり、便秘を起こしやすくなってしまうのです。そのため、リラックスすることも、便秘の改善には重要と言えます。
まとめ:食物繊維の種類や摂り方を工夫し、便秘改善を目指そう!
食物繊維の種類や適正量、便秘改善のための効果的な摂り方について紹介しました。
便秘を改善するには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切。割合にこだわりすぎる必要はありませんが、水溶性食物繊維を多く含む食品を積極的に摂ることが、便秘改善の近道です。
そのためにも、食物繊維は野菜からばかり摂るのではなく、穀類や豆類、果物などからも摂るようにしましょう。また、日頃から食べ物や飲み物、運動を意識することが大切です。
お腹の中に便があるのに出ない、お腹が張って気持ち悪いなどの不快感を抱えたままでは、気分は晴れませんよね。毎日スッキリ、気持ち良く便を出すことで、気分も明るく元気で過ごせるようになります。食物繊維の種類や摂り方の工夫をするとともに、できることから生活習慣の見直しをしてみましょう。
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