チョコレートのカフェイン量は?睡眠に影響しない適量と食べ方
甘い物好きにはたまらないチョコレートですが、コーヒーやお茶同様にカフェインが含まれています。管理栄養士が、チョコレートのカフェイン量や摂取の目安、眠りに影響しない食べ方などを解説します。
目次
チョコレートにも含まれるカフェインとは?
「カフェイン」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのがコーヒーではないでしょうか。そもそもカフェインは、コーヒー豆やチョコレートの原料であるカカオ豆、茶葉などに天然に含まれている物質です。
また、風邪薬などのパッケージを見てみると、使用されている成分に「カフェイン」と書かれていることがあります。カフェインは工場で化学的に作ることもでき、さまざまな医薬品にも使用されています。
眠気覚ましの効果がある
コーヒーを飲むと目が覚める、すっきりするといった効果を感じるように、カフェインには眠気を覚ます効果があります。
具体的には、カフェインには脳や脊髄の「中枢神経」を興奮させ、体を活発にする働きがあります。眠気が覚めたり、頭がシャキッとしたりするのはそのためです。
また、適量のカフェイン摂取することで、集中力や注意力が向上するという実験結果もあります(※1)。仕事や勉強に集中したいときにカフェインの効果を活用するのも良いでしょう。
(※1)出典:ネスレ日本(株)コラムより(※pdfファイル)
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過剰に摂取すると不眠や不安の原因にも
適量であれば、眠気覚ましなどの効果が期待できるカフェインですが、摂る量によっては体や心の調子に影響を与える可能性があります。
カフェインを過剰に摂取すると、心拍数の増加やめまい、不安、興奮、不眠や震えなどが起こることがあります。また、カフェインが消化器官を刺激するため、下痢や嘔吐などの症状が起こることもあります(※2)。
薬局やインターネットでも購入でき、眠気を取り除くための眠気防止薬や風邪薬などの医薬品、エナジードリンク。それらには多くのカフェインが含まれている場合があり、多量摂取による中毒や死亡例も報告されています。
チョコレートやコーヒーなどの食べ物や飲み物で、命に関わる中毒が起こる可能性は低いと考えられますが、医薬品を同時に摂取する場合には注意が必要です(※3)。
(※2)出典:厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&Aより
(※3)出典:⽇本中毒情報センター カフェインを含む⾷品や眠気防⽌薬の過量摂取 情報資料より(※pdfファイル)
妊娠中、授乳中の過剰摂取は胎児への影響も
妊娠中や授乳中のカフェイン摂取も気になるところではないでしょうか。
妊娠中にカフェインを摂取しすぎることで、赤ちゃんの先天性の疾患や低体重のリスクが上がったり、自然流産を引き起こす可能性があると指摘されています(※2)。
妊娠中は、お母さんの体と赤ちゃんの体はへその緒(臍帯・さいたい)を通してつながっています。赤ちゃんが生きていくために必要な栄養や酸素は、胎盤という器官を通して赤ちゃんに与えられますが、栄養だけでなくカフェインも胎盤を通過してしまいます。そのため、妊娠中のカフェイン摂取には注意が必要です。
また、授乳中も、母乳を通して赤ちゃんへカフェインが移行してしまう可能性があり、妊娠中と同様に摂り過ぎには気をつけましょう。
チョコレートに含まれるカフェインの量は?
コーヒー同様に気になるのが、チョコレートのカフェイン量。これは、チョコレートの種類によって大きく異なります。
カフェインはチョコレートの原料であるカカオ豆に含まれています。カカオの含有量はチョコレートによって差があるため、カフェイン量もおのずと変わってくるのです。
ミルクチョコレートなどの苦みの少ないチョコレートには、30〜40%程度のカカオが含まれています。近年はカカオポリフェノールの健康効果に注目が集まり、カカオを70%以上含む「高カカオチョコレート」も人気です。
国民生活センターの調査によると、チョコレート100gに含まれるカフェインの量は、ミルクチョコレートなどのチョコレートで30mg前後であるのに対し、高カカオチョコレートでは68〜120mgでした。
ひと口にチョコレートと言っても、このようにカカオの含有量によっては約4倍もカフェイン量に差があるのです(※4)。
(※4)出典:国民生活センター 高カカオをうたったチョコレート 資料より(※pdfファイル)
チョコレート以外は? 飲料のカフェイン量
チョコレート以外となると、コーヒーやお茶などの飲料に含まれるカフェインが身近ですよね。
飲み物100mLあたりのカフェインの量は、コーヒーで60mg、せん茶で20mg、紅茶で30mgとなっています(※5)。
そのほか、清涼飲料水ではコーラ100mLに約10mg程度のカフェインが含まれています(※6)。
また、エナジードリンクなどのカフェインを多く添加した清涼飲料水は種類によって差が大きく、100mLあたりのカフェイン量は、32〜300mg(※4)。
エナジードリンクは、コーヒーのように苦味を感じることなく、ジュースのような感覚で飲めるものも多いため、カフェインの過剰摂取を防ぐためにも、飲み過ぎには注意しましょう。
(※5)出典:日本食品標準成分表2020年版
(※6)参考:日本コカ·コーラ(株)コカ・コーラ、サントリーホールディング(株)ペプシコーラ、各ホームページを参考に計算
カフェインはどれくらい摂っていいの? 摂取の目安量
カフェインの摂取の目安量については、刺激を感じる度合いの個人差が大きく、影響を正確に評価することは難しいとされています。
そのため一日あたりのカフェインの許容量は定められていませんが、世界保健機構(WHO)や英国食品基準庁(FSA)、カナダ保健省(HC)など、さまざまな国や機関によって目安となる量が示されています。
成人の目安量はコーヒー約3杯分
カナダ保健省(HC)では、健康な成人のカフェイン摂取量を最大400mg/日とする注意喚起を行いました(※7)。
これはマグカップで換算するとコーヒー3杯分程度となり、マグカップよりも内容量が少ないコーヒーカップで換算すると、コーヒー4杯分程度となります。
(※7)出典:カナダ保健省(HC)ホームページより
妊娠中の目安量はコーヒー約2杯分
同じくカナダ保健省(HC)では妊娠中や授乳中、妊娠を予定している女性に対するカフェイン量を最大300mg/日までとするよう注意喚起しています。
これはコーヒーをマグカップで2杯分(コーヒーカップでは3杯分)程度となります(※7)。
英国食品基準庁(FSA)では一日あたりの摂取量を200mgに制限するように求めています。これをコーヒーに換算すると、マグカップで1.5杯〜2杯(コーヒーカップでは2杯分)程度に(※8)。
また、世界保健機構(WHO)では妊婦はコーヒーの摂取量を一日3〜4杯までにすべきとしています(※9)。
これらの情報から考えると、成人の場合の目安量はコーヒーをマグカップで3杯分程度、妊娠中や授乳中、妊娠を予定している女性では2杯分程度であると言えるでしょう。
(※8)出典:英国食品基準庁(FSA)ホームページより
(※9)出典:世界保健機構(WHO)ホームページより(※pdfファイル)
睡眠に影響しないチョコレートの健康的な食べ方・適量
カフェインの効き目には個人差があるとしても、睡眠に与える影響が心配な人も多いのではないでしょうか。
チョコレートの中でも、高カカオチョコを食べると、カフェインが多く含まれるため、目が冴えて眠れなくなるといった影響が起こる可能性があります。
では、どれくらいの量ならばチョコレートを楽しんでもいいのでしょうか?
健康的に楽しむ目安量は板チョコレート1/4枚程度
一般的に高カカオチョコレートと呼ばれている、カカオ分を70%以上含むチョコレートの場合、健康的に楽しむ目安量は、板チョコレート1/4枚程度がおすすめです。これは、一枚5g程度の個包装タイプのチョコレートでは、2〜3枚程度となります。
板チョコレート1/4枚に含まれるカフェイン量は、高カカオチョコでは約10〜15mg、高カカオではないミルクチョコレートでは、これより少ない量となります。
先ほどもご紹介した通り、健康な成人のカフェイン摂取量は最大400mg/日が目安。となると、量はそこまで問題なく感じますが、1日の中でコーヒーや紅茶などの飲料からカフェインを摂取することも考えると、このくらいの量にとどめておくのが良いでしょう。
また、チョコレートが問題なのはカフェインだけではありません。チョコレートのカロリーは比較的高く、板チョコ1/4枚程度の高カカオチョコレートでも、80kcal程度あります。脂質は約6gとなり(※4)、30〜49歳女性の一日の摂取目標量のおよそ1割にあたります(※10)。
チョコレートはあくまでおやつ。そのため、これ以上の量を日常的に食べてしまうと、本来食事から摂取すべき栄養が不足したり、肥満につながったりする可能性があります。そのため、多くても1日板チョコ1/4枚程度におさえましょう。
(※10)出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)
食べる時間帯や量に注意を
カフェインに対する感受性は個人差が大きいため一概には言えませんが、夜にチョコレートを食べると覚醒作用により、眠れないと感じる人もいるでしょう。
カフェイン摂取で眠れないと感じる人は、就寝時間の8時間前以降は、高カカオのチョコレートは食べないようにするといった対策がおすすめです。
私たちの体の中にカフェインが入ると、血中濃度は摂取後30分〜2時間程度で最大となります。その後、半分に減るまでの時間は2〜8時間程度とされています。
そのため、摂取する時間によっては、就寝時間になってもまだ体内にカフェインが残っている場合があるため、食べる時間帯に注意が必要です。
また、就寝前の間食は肥満につながる可能性もあるため、眠りに関係なく間食はなるべく日中に。どうしても夜に食べたい場合は、先ほどご紹介した量よりも少なめの、5g程度の個包装チョコ1枚分程度におさめるのが良いでしょう。
また、子どもはカフェインの影響をより強く受けてしまうとされているため、大人以上に量や時間に気をつけてください。
子どもに対する明確な目安量はなく、年齢や体格によっても差はありますが、先ほどご紹介した、成人一日あたりの半分程度(板チョコ1/8枚)を目安量とすると良いでしょう。
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チョコレートの健康効果
近年では、カカオ豆に含まれるポリフェノールなどに健康効果を期待できることが科学的に分かってきました。
チョコレートの原料であるカカオ豆は、古くから不老不死の薬として流行していたという記録もあります。その裏付けとなる成分が明らかになったということかもしれません。次から、チョコレートの健康効果についてみていきましょう。
食物繊維で腸活
腸活と言うと、発酵食品や根菜類などの食物繊維の多い食品が有名ですが、実はチョコレートにも多くの食物繊維が含まれています。
高カカオのチョコレートには、先にご紹介した目安量(板チョコ1/4枚分)で約1.3〜2gの食物繊維が含まれます。(※11)。これは30〜49歳女性の摂取目標量のおよそ1割にあたり(※10)、レタスに換算すると約1個分にもなります。
食物繊維には腸を刺激して排便を促したり、善玉菌を増やすなどの働きがあり、「第6の栄養素」とも言われています。
また、腸は脳に次いで2番目に神経細胞が多く存在している臓器で、脳とも密接にかかわっていることから「第二の脳」と呼ばれるようになりました。腸内環境はさまざまな病気に関係していることからも、食物繊維を積極的に摂ることを心がけましょう。
(※11)参考:明治 チョコレート効果、森永製菓 カレ・ド・ショコラ、各ホームページを参考に計算
カカオポリフェノールで美肌に
チョコレートには、カカオポリフェノールという成分が含まれています。カカオポリフェノールには、美肌効果が期待されています。
私たちの肌は、紫外線やストレスなどによって発生した活性酸素で酸化されてしまいます。その酸化が、シミやシワの原因の一つに。カカオポリフェノールは、この活性酸素を除去し、酸化を抑える抗酸化作用があります。
その他、カカオポリフェノールには血圧低下や動脈硬化の予防などの効果も期待されています。
カカオポリフェノールをはじめとするポリフェノールは、植物に存在する色や苦味などの成分のこと。強い抗酸化作用があり、健康効果が高いとして注目されています。
まとめ:チョコレートはカフェインに注意しながら楽しもう
チョコレートに含まれるカフェインは、食べる量や時間によっては眠れなくなるなど、睡眠への影響が考えられます。
カフェインはチョコレートだけでなく、飲み物や薬などにも含まれるため、一日に摂取する量に気をつけましょう。
ご紹介したように、チョコレートの適量は1日板チョコ1/4枚程度。適量であれば、カカオに含まれるポリフェノールや食物繊維の働きで、体にいい効果が期待できます。
ただし、栄養は日々の食事からしっかり摂ることが大切。チョコレートだけを食べたからといって健康になれるわけではありません。チョコレートは、カフェインに気をつけながら“心の栄養”として楽しむことをおすすめします。