アフリカに根付くバオバブのある生活|岡崎優子さん アフリカ的健康生活のすすめ4
西荻窪でアフリカ雑貨店を営む岡崎優子さん。仕事や遊びで訪れて見聞きした現地の健康法を連載でお届けします。第4回は近年、スーパーフードとしても注目を集める、バオバブについてご紹介します。
世界最古にして最大の樹木バオバブ
世界的ベストセラー、サン=デグジュペリ著『星の王子さま』に、星を爆発させる恐れのある恐ろしい木として登場することでも知られる、バオバブの木。「その姿はまるで悪魔が巨木を引き抜いて逆さまに突っ込んだようだ」と言われるなど、もしかしたらバオバブを見たことがない人にとってそのイメージは、決して良くなかったかもしれません。
ところが、バオバブが広範囲にわたって生息するアフリカでは、他の植物が育たない乾燥した地域でも、生きる力と食物を与えてくれる木として、長らく親しまれてきました。地域によっては、「聖霊が宿る木」として信仰しているところも。アフリカを旅していると、バオバブの木の下で食べ物を売っていたり、カゴを編んでいる人がいたり、おしゃべりをしている人がいたりと、村人の憩いの場になっている巨木をしばしば目にしました。
実際、バオバブの木は高さ約30メートル、幹の太さは約10メートルにも及ぶ世界最大の樹木の一つで、中には樹齢数千年に達するものもあります。日本の樹木のような年輪がないため正確な樹齢はわかりませんが、ジンバブエには樹齢約2500年(!)、ナミビアには約1500年と推定されるバオバブが存在します。
また、マダガスカルのモロンダバ郊外には巨大なバオバブが立ち並ぶ並木道があり、人気の観光スポットの一つ。その存在感は圧倒的で、この世とは思えない宇宙的空間が広がっています。
食品、医薬品、生活用品として利用
アフリカでは古くから、バオバブの果肉や種、葉、樹皮などを食品、あるいは医薬品として食してきました。その実は硬い殻に覆われていますが、中身は木になったまま乾燥。一見、いつが食べ時で、どうやって食すのかわかりませんが、木の下でその果実を売っていたおじさんは食べごろだと実を縦に割り、白い綿のような乾燥した果肉を種ごと舐めるのだと教えてくれました。
もさもさとした食感で、味は柑橘系の果物に近い酸っぱさ。聞けば、ビタミンC、ミネラル、カリウム、カルシウム、植物繊維が豊富に含まれ、整腸作用や抗炎症・抗酸化作用があるのだそう。酸っぱそうな顔をしていると笑われ、ジュースやお酒にして飲んだり、調味料として使ったりするのが一般的とのことでした。
ちなみに種からは油が抽出でき、食用として使うのはもちろん、皮膚の修復を促すビタミンAや、くすみやたるみなどを予防するビタミンEを豊富に含んだ、美容オイルとしての利用価値も高いのだとか。
さらに、若葉は野菜として、樹皮は煎じて飲めば解熱剤にもなります。そのほか、樹木は細かく裂いて繊維状にして編み、ロープやバッグ、カゴに。そのまま乾燥させた果実は楽器のマラカスにもなるなど、バオバブはアフリカの人々にとって万能な生活の木と言えるでしょう。
スーパーフードとして世界から注目
近年、アフリカでもバオバブの果実をパウダー状にしたものがスーパーでも売られるようになり、手軽に食すことができるようになりました。ケニア在住の友人はバオバブパウダーを健康のためにとヨーグルトに混ぜたり、コーヒーに入れたりして、日常的に取り入れている人が増えてきたと言っていました。
2008年には、有効性と安全性がある「ノベルフード」としてEU諸国で認定。世界的に、バオバブが入ったチョコレートやシリアルバーなどの食品や、シャンプー、石鹸、美容液などのコスメ・アイテムといった加工品が店頭に並ぶようになりました。
日本でも、さすがにバオバブの実そのものは売ってはいませんが、バオバブパウダーやバオバブの葉をパウダーにした調味料などが販売され、数々の料理レシピが公開されています。バオバブと他の果物を合わせたスムージーを提供するお店や、美容液を開発した化粧品ブランドも登場するなど、目にする機会も増えてきました。
最近では、苗や種を販売している団体も。日本で育てるのはさすがに難しそうですが、アフリカ南部では気候変動による枯木が増えていることから、少しでもバオバブが増えていってほしいなと思います。
ほかにもアフリカには、欧州諸国が注目するスーパーフードがいっぱい。その紹介はまた追って。
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