疲れやすい人の食事の特徴は?“だる重”を防ぐ食べ方と栄養素
疲れやすい、体が重いと感じている人は、食事が疲れのもとになっていたり、疲労回復を妨げていたりする可能性があります。今回は、管理栄養士が疲れやすい人の食事の特徴と、改善するための食べ方を解説します。
目次
疲れやすい人の食事の特徴は?
「体調が悪いわけではないのに疲れやすい」「理由はわからないけどだるい」。日々の生活の中で、そのように感じている人は、普段の食事に原因があるかもしれません。
疲れやすい人の食事で多いのが、栄養バランスの悪い偏った食事内容。また、甘い物などの間食も多く、いわゆる「偏食」の傾向があります。
では、なぜ偏食だと疲れやすくなるのでしょうか? 次からくわしく解説します。
甘い物の摂り過ぎ
疲れやすい人は、食生活の中で甘い物=糖分を摂り過ぎている可能性があります。私たちの体は、食事を摂ると血液中の「ブドウ糖」の濃度が上がります。その上昇した血糖値を下げるためにすい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。
通常、血糖値はゆっくりと上昇し、ゆっくり下がるのが理想的。しかし、甘い物を摂り過ぎると血糖値が急上昇するため、それを必死に下げようとしてインスリンが大量に分泌。血糖値が急降下します。すると、今度は血糖値が低すぎる「低血糖」の状態になり、疲れやだるさを感じやすくなるのです。
特に甘い物を日常的にたくさん摂る人は、そのたびに血糖値の急上昇と急降下を繰り返すことに。そのため体は常に疲れた状態に陥ります。
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「糖分」と「糖質」の違いは?
「糖分」と「糖質」は、言葉は似ていますが違います。よく「糖質オフ」や「糖質コントロール」といった言葉を聞くことがありますよね。
「糖質」とは、ご飯やパン、麺類などの炭水化物から食物繊維を引いた成分のこと。一方で「糖分」には明確な定義がなく、甘い物や甘みの度合いを示す表現として使われています。
糖質は、たんぱく質、脂質と共に三大栄養素の一つとして体に必要なものです。必要以上に摂るのは好ましくありませんが、糖分とは分けて考えましょう。
「疲れたときに甘い物を食べると良い」は間違い?
「疲れたからご褒美に」といってスイーツを食べる女性も多いでしょう。たしかに疲れたときに甘い物を食べると、一時的に体にエネルギーが補給され、疲れが和らぎます。
そのため「疲れたときには甘い物」が、間違っているとは言えません。しかし、甘い物を食べることによって疲労感やだるさが強くなる場合があるため注意が必要です。
甘い物の摂り過ぎで依存体質に
人の脳内には、やる気や幸福感をもたらすといわれる「ドーパミン」という神経伝達物質が存在しています。ドーパミンは、糖分を摂取することで分泌されます。
つまり、疲れたときに甘い物を摂ることでやる気や幸福感を得ることができるのです。しかしドーパミンには依存性があり、次第に脳が無意識に甘い物を求めるようになります。甘い物が欲しくてたまらない「甘い物依存」に陥ることもあるため、やはり摂り過ぎはNG。
また、甘い物を摂り過ぎると、上昇した血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌され、しばらくすると急激に血糖値が低下。このような血糖値の乱高下は、イライラや集中力の低下につながります。疲れを感じたからといって、甘い物を積極的に摂ることはやめましょう。
ビタミン、ミネラルが不足している
外食が続いたり毎日忙しいと、ご飯やパン、麺類など糖質中心の食事になりがちです。このような食事では、ビタミンやミネラルなどの栄養素が不足。すると体の機能調整が上手くいかず、疲れやすくなります。
特に、ビタミンB1 は糖質をエネルギーに変える際に必要不可欠な栄養素です。不足することで人間の活動に欠かせないエネルギーを作ることができず、疲れやだるさの原因となります。
朝食を食べない
朝食は、1日の活動に必要なエネルギーを作り出す大切な食事。朝食を抜くと、エネルギー源となる「糖質」や、体を作るもとになる「たんぱく質」が不足します。それにより、エネルギー不足となり疲れを感じやすくなります。
また、私たちの体は寝ている間は活動しないため、低体温の状態になっています。朝食を摂って、胃や腸などの消化管を動かすことで体温が上がり、活動を始められる状態になります。
朝食を抜くと体温が上がらないため、活動をはじめるのに良い状態とはいえません。代謝も落ちて悪く、太りやすい体になってしまう場合もあります。
そもそも「食事を摂らない」こと自体が、体に与える影響もあります。食べないことが習慣化すると胃腸が働かなくなり、消化機能が低下。必要な栄養素の消化吸収がしにくくなり、体に必要な栄養素が行き渡りにくくなります。その結果、どんどん体は疲労感が増していきます。
早食い、よく噛んで食べない
早食いや、よく噛まずに食べることも疲れやすさの原因になります。噛むことは食べ物を細かく分解したり、唾液を分泌させて消化を助ける役割があります。
よく噛まない状態の食べ物が胃の中に入ると、胃腸はたくさんの消化液を出して働かなければならないため、負担がかかります。すると胃腸本来の機能が低下。必要な栄養素がうまく消化吸収されず、体が疲れやすくなります。疲れにくい体を保つには、胃腸が健康であることも重要なのです。
疲れにくい体質になるための食事テク
これまでご説明した通り、疲れやすい人の食事には共通した特徴があります。
自分の食事が「疲れやすい人の食事の特徴」に当てはまると感じた人は、食事の内容や摂り方を工夫することで体質を改善することができます。次から、疲れにくい体質になるための食事の摂り方を解説します。
食物繊維の多い野菜や海藻から食べる
まずは、食事を摂る際の「食べる順番」がポイント。ご飯やパン、麺類など糖質を食べる前に、食物繊維が多く含まれる野菜や海藻から食べるように心がけましょう。
例えば「食事の際にはサラダから食べる」「外食では野菜の多いメニューを選ぶ」「定食にはサラダや野菜の小鉢を一品追加する」などがおすすめ。
糖質を摂る前に野菜や海藻などを摂ることで、血糖値の急上昇を防ぎ、疲れにくい体質をつくることができます。
栄養バランスの整った食事を心がける
疲れにくい体質になるためには、食事の内容も大切です。主食(ご飯、パン、麺類)、主菜(肉や魚などメインのおかず)、副菜(野菜や海藻などのおかず)のそろった食事を摂りましょう。私たちが活動するために必要な糖質、脂質、たんぱく質を摂ることができます。
これらの栄養素をバランスよく摂ることで、代謝がスムーズになりエネルギー効率がアップ。疲れにくい体になります。また、ビタミンやミネラルなどの栄養素も補給できるため、ストレスの緩和にもつながります。
忙しいと、おにぎりだけ、パンだけ、といった主食のみの食事になりがち。そんなときは手軽に取り入れやすい食材で、たんぱく質のおかずと野菜のおかずをそれぞれ一品ずつ追加してみてください。
たんぱく質のおかずは、納豆、卵、豆腐などが手軽です。野菜は、コンビニで購入できる一品料理やサラダでもOK。少しの工夫で、栄養バランスの良い食事に変えることができます。
規則正しく食べる
疲れにくい体は胃腸からと言っても過言ではありません。胃腸の機能を正常に保つためには、規則正しく食べることも重要。不規則な時間に食べたり、間食の回数が多かったりすると、胃腸は常に働き続けることに。
1日3食をだいたい決まった時間に食べることで胃腸も休息することができます。健康な状態が保たれることで必要な栄養素の消化吸収もスムーズに。また、規則正しい食事は血糖値も安定させ、急激な変動による疲労感やだるさを防ぐことができます。
甘い物は適量を守りゆっくり食べる
「甘い物が食べたい!」と思うときは、体や脳にエネルギーが不足している可能性があります。エネルギーを補う意味でも甘い物自体がNGというわけではありません。食べ方や食べる量を工夫することで、疲れやすさやだるさを抑えることができます。
まず大切なのは、食べ過ぎないこと。ご説明している通り、甘い物を大量に摂ると血糖値が急上昇するだけでなく、糖質の代謝に使われるビタミンB1 が不足。
ビタミンB1 が不足すると、代謝がスムーズに行われずエネルギーが産生されなくなります。それにより疲労感があらわれるため、食べ過ぎには注意が必要です。
甘い物を食べる際のポイントは、「空腹の状態で食べない」「ドカ食いしない」「よく噛んで時間をかけて食べる」の3つ。これらを守ることで血糖値の急上昇を抑えることができます。
また、ゆっくり食べることも大切。よく噛んで食べることで、血糖値の上昇が緩やかになります。時間をかけると満腹感が得られ、食べ過ぎ防止にもつながります。疲れにくい体質になるために、甘い物を食べる際にもこのポイントを思い出して食べましょう。
疲労回復に効果的な栄養素と多く含まれる食品
疲れにくい体質になるためには、何より食事がポイントになります。疲労回復に効果的な栄養素を紹介しますので、スーパーで食材を買うときや、料理を作るとき、コンビニなどで商品を手に取るときの参考にしてみてください。
ビタミンB群
疲労回復といえば、まずビタミンB群。中でも、ビタミンB1とB2 が疲労回復に役立ちます。
「ビタミンB1」は、豚肉、うなぎ、豆腐、玄米などに多く含まれています。糖質は、体内でブドウ糖に分解され、小腸で吸収されます。
吸収されたブドウ糖がエネルギーに変わる際には、ビタミンB1が必要。ビタミンB1不足だと、糖質はエネルギー源になることができず、代わりに疲労物質である「乳酸」となって体内に蓄積。その結果、疲労を感じるようになります。
一方、「ビタミンB2」はレバー、うなぎ、卵、アーモンド、干ししいたけなどに多く含まれています。ビタミンB2 は、糖質の代謝に加え、たんぱく質、脂質の代謝にも関わる栄養素。特に脂質の代謝において重要な役割を果たしています。ビタミンB2 が不足すると、脂質をうまくエネルギーに変えることができず、同様に疲労感につながります。
ミネラル
疲れにくい体質になるは、ミネラルも重要です。特に鉄、カルシウム、亜鉛、マグネシウムが不足すると疲れを感じやすくなります。
鉄は、体内で「ヘモグロビン」として酸素を運ぶ働きをしています。不足すると貧血になり、だるさや疲労感の原因に。 鉄を多く含む食材は、あさり、レバー、小松菜、ほうれん草などが代表的です。
カルシウムは、牛乳、大豆製品、海藻類に多く含まれています。カルシウムは神経伝達に関わる栄養素で、イライラを解消してくれる役割があります。カルシウムを十分に摂ることで、精神的な疲労の緩和が期待できます。
亜鉛は、たんぱく質やDNAの代謝に関わるミネラルで、細胞の生まれ変わりや新陳代謝に関わっています。不足すると疲れやすさ、食欲不振、風邪をひきやすくなるなどの症状の原因となります。亜鉛を多く含む食材は、牡蠣レバー、卵黄などがあります。
マグネシウムはアーモンド、大豆、海藻、イワシなどに多く含まれています。筋肉や神経の維持に必要で、不足すると身体的な疲労感、だるさを感じることがあります。
これらのミネラルは、普段の食事で不足しやすい栄養素。ご紹介したように、ミネラルを多く含む食材は身近にたくさんありますので、毎食意識して摂りましょう。
疲れをためない生活習慣とは?
疲れやすい人、だるさを感じている人は、食事を見直すことで改善することができます。食生活はもちろんですが、それ以外に生活習慣を見直すことでより疲れにくい体質を目指すことができますよ!
適度な運動や良質な睡眠を心がける
疲れにくい体質になるには、普段から血流の良い体を作り、体力を維持することが大切。そのためにも日々の適度な運動が欠かせません。
体を追い込むような激しい運動でなくてもOK。毎日続けられるウォーキングやストレッチなど、負担にならない範囲で体を動かすことをおすすめします。運動をして体を動かすことは、心の疲労回復にも効果的です。
さらに、疲れをとるために良質な睡眠も必須。日頃から睡眠不足を感じている、寝ても疲れがとれないという人は、食後2時間以上は時間をおいてから寝る、就寝前のスマホやパソコンを見ることを控えるなど、睡眠前の習慣を見直してぐっすり眠れるように心がけましょう。
運動を取り入れること、睡眠を見直すことは、生活リズムを整えることにもつながります。ご紹介した食事と合わせれば疲れにくい体質を目指せます。
まとめ:疲れやすい人の食事の特徴を知り、今日から改善を!
疲れやすい人の食事の特徴をご紹介しました。私たちの体は、食べた物からできています。そのため、健康な体づくりには何より食事が大切と言っても過言ではありません。
普段から「疲れやすい」「だるい」と感じている人は、疲れやすい人の食事の特徴を知り、自分の食事を見直してみてください。食事を意識して変えると、次第に体質を改善していくことができます。
疲労感がなくなると、心も体も軽くなり、日々の生活にエネルギーが溢れてきます。家事や仕事もはかどるようになり、楽しく前向きな生活が送れるようになりますよ!
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「疲労回復」がテーマ。つらい疲れをすっきりさせるセルフケアを紹介します。