フルスクワットが上手くできないのはなぜ?正しいフォームの習得方法
高いシェイプアップ効果が期待できるフルスクワットですが、上手に行うのは意外と難しいエクササイズです。プロのパーソナルトレーナー・藤本千晶が、フルスクワットができない原因と正しいやり方を解説します。
目次
フルスクワットとは?
エクササイズの王道といえばスクワットがあげられます。中でも「フルスクワット」は、複数あるバリエーションの一つで、最も深くしゃがみ込むスクワットです。
まずは、フルスクワットと他のスクワットの違いや、フルスクワットを行うメリットについて解説します。
フルスクワットと他のスクワットの違い
フルスクワットは、太ももの裏面が地面と平行になる高さよりも深くしゃがみ込むように行います。いくつかあるスクワットのやり方の中で、最も深くしゃがみ込む体勢になります。 (参考:NSCA JAPAN 競技のコンディショニングにおけるスクワットエクササイズ より)
スクワットはしゃがむ深さによって呼び方が変わります。ひざの曲がる角度が30°程度だと「クォータースクワット」、60°程度だと「ハーフスクワット」、太ももの裏面が床と平行になる高さのスクワットは「パラレル」、そしてそれよりも深くしゃがむ「フルスクワット」に分けられます。
このようにしゃがみ込む深さによって体の使い方が変わり、体に与える影響も変わってきます。深くしゃがむことで効果を得られるのがフルスクワットなのです。
参考: NSCA JAPAN競技のコンディショニングにおけるスクワットエクササイズ より
フルスクワットのメリット
フルスクワットを行うメリットはいくつかあげられます。まず1つ目は、お尻の筋肉をしっかりと使えること。深くしゃがみ込むことで、お尻の筋肉である「大臀筋(だいでんきん)」が大きく引き伸ばされてから縮まるため、広い範囲で動くことになります。そのため大臀筋にしっかりと強い刺激を入れることができます。
2つ目のメリットは、深くしゃがみ込むことで大臀筋が大きく引き伸ばされるため、ストレッチ効果が期待できる点。そのためフルスクワットを行うことで、ストレッチと筋トレの両方の効果が得られます。
3つ目のメリットは、体幹と骨盤、下半身の動かし方が上手になること。他のスクワットよりも上下の動きが大きいフルスクワットは、動きのコントロールが難しくなります。
そのため、体幹と骨盤、下半身の動かし方が上手くなるほか、フルスクワットだけでなく、他のエクササイズや日常生活の動作もスムーズに行えるようになります。
特に体幹・骨盤を安定させながら力強く下半身を動かすフルスクワットは、体の使い方が複雑。背骨を正しい位置に保ちながら、股関節とひざを正確に曲げ伸ばしする動きを、すべて同時に行わなければいけません。
このように難しい動きを身につけることで体幹や骨盤の安定性、下半身の筋力を高めることができます。他のエクササイズで、体幹や骨盤、下半身の動きがともなう動作も、上手に行えるようになるでしょう。
フルスクワットで得られる効果
他のスクワットよりも深くしゃがみ込むフルスクワットには、ご紹介したような3つのメリットがあります。そのメリットから得られるうれしい効果が、ヒップアップやお腹やせ効果です。ここでは効果についてくわしく解説します。
ヒップアップ効果
フルスクワットは、お尻を引き締めてヒップアップさせる効果が期待できます。
他のスクワットと比較して大臀筋をよく使うため、よりお尻の筋肉が発達しやすくなります。大臀筋はお尻を覆うように存在する大きな筋肉。鍛えると後ろ側に盛り上がり、お尻のトップの位置が高くなります。
そのため、たるんだお尻にハリが出てシェイプアップ。太ももとの境目がハッキリとしてメリハリのついたヒップラインを作ることができます。
お尻の筋肉を鍛えてヒップアップ!効果的な筋トレとストレッチとは?
お腹やせ効果
フルスクワットは、体幹を安定させるためにお腹まわりの筋肉を強く使うため、お腹やせ効果も期待できます。
体幹を安定させるには、お腹・腰まわりの筋肉をフル動員させる必要があります。するとフルスクワットをするたびにお腹まわりの筋肉量が増加。たるんだお腹が、引き締まった見た目に変化してきます。
腰痛改善
フルスクワットは、お腹・腰まわりの筋肉を鍛えて安定性を高めることで、腰痛改善にもつながります。
腰痛が起こる原因の一つは、お腹・腰まわりの筋肉が弱いこと。お腹・腰まわりの筋肉が弱いと腰の周辺が不安定になります。すると腰を動かしたときに背骨同士がズレてダメージを受けやすくなります。
フルスクワットで筋力をアップさせて安定性を高めると、背骨のズレが減少。背骨へのダメージが少なくなり、腰痛が改善されてきます。
姿勢改善
フルスクワットは、姿勢改善効果も期待できます。正しい体幹や骨盤の使い方が身につき、日頃から美しい姿勢がとりやすくなります。
フルスクワットを安全かつ効果的に行うためには、何より正しい姿勢が大切です。その姿勢を体が記憶することで、日常で過ごしているときも自然と体に負担の少ない姿勢に導いてくれます。
フルスクワットの正しいフォーム
立った状態から深くしゃがみ込み、立ち上がることを繰り返すフルスクワット。基本的なエクササイズではありますが、やってみたものの「どれが正しいやり方なのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。ここでは、効果につながる正しいフォームを解説します。
【フルスクワットのやり方】
- 足を肩幅程度に広げて立ち、つま先は30〜45°程度外に広げる。腕は地面と平行になるように胸の前に伸ばし、肩甲骨を寄せて胸を張る。
- 鼻から目一杯息を吸い、腹筋に力を入れて固くしたら、息を止めたままゆっくりとしゃがみ込む。
- 太ももの裏が地面と平行になる高さまで深くしゃがみ込んだら、ゆっくりと立ち上がる。このとき、呼吸は止めて腹筋は固くしたまま。
- 2に戻って息を吐く。1~5を決めた回数繰り返す。
フルスクワットのNGフォーム
正しいフォームで行えばとても効果的なフルスクワットも、間違ったフォームで行うと効果が出ないばかりか、ケガにつながってしまいます。ここではよくあるフルスクワットのNGフォームについて、くわしく解説します。
腰が丸まったり、反りすぎたりする
フルスクワット中に腰が丸まったり、反りすぎたりするのはNG。腰周辺に強い負担がかかり痛める原因になります。
通常、背骨は首から骨盤までS字カーブを描くようにつながっています。このカーブがクッションになり、背骨への負担を軽減しています。しかし、背骨が自然なカーブを保てないと、腰に大きな負担がかかります。
背骨と背骨の間で、クッションのような役割をしている椎間板(ついかんばん)が強く圧迫されたり、背骨同士がズレを起こしたりして、周囲の筋肉や靱帯などにもダメージを与えます。
継続的に腰周辺にダメージを受け続けると、慢性的な腰痛などの原因になります。背骨の自然なカーブを保つためにも、腰が丸まったり、反りすぎたりしないように注意して行いましょう。
かかとが浮いてしまう
フルスクワットを行うときに、かかとが浮いてしまうのもNG。ひざに大きな負担がかかる上に、お尻の筋肉を十分に使うことができません。
しゃがみ込むときにかかとが浮いていると、ひざが大きく前に移動しながら下がります。するとひざに大きなダメージとなります。
スクワット中にひざが前に動くのはある程度起こりますが、かかとが浮くほどに動いてしまうのは明らかに前に出すぎといえます。
さらに、フルスクワットを行ったときに下半身で主に働くのは、太ももとお尻の筋肉。かかとが浮くと太ももの筋肉ばかりが使われ、お尻の筋肉の稼働率が低下。
このようにかかとが浮くと狙った筋肉を鍛えられず、ケガのリスクも高まります。必ず足の裏は、全体を地面にベッタリくっつけた状態で行いましょう。
エクササイズやストレッチで解決! フルスクワットができない原因と対策
フルスクワットを行うときに、ご紹介したようなNGフォームになってしまうのには、体の一部が硬い、筋力が十分ではないなどの身体的な理由があります。
フルスクワットが上手くできない原因と、対策をまとめました。原因別のエクササイズ・ストレッチも参考にしてみてください。
お尻・ももの裏が固い
お尻やもも裏の筋肉は、骨盤から太ももの骨の裏側にくっついています。これらの筋肉は、フルスクワットでしゃがみ込んだときに引き伸ばされた状態に。
しかしお尻やももの裏の筋肉が固いと、股関節を十分に曲げることができず深くしゃがみ込めないため、フルスクワットを上手く行えません。できたとしても腰は丸まり、重心は前に移動してしまいます。
フルスクワットをやる上では、お尻・もも裏の柔軟性が重要になります。
これで対策!「脚組みストレッチ」
イスに座りながら脚を組んで行うストレッチで、お尻やもも裏の柔軟性をアップさせます。片方のくるぶしをもう片方のひざの上に乗せて体を前に倒し、大臀筋をしっかりと伸ばしましょう。
【やり方】
- イスに座り、右足の外くるぶしを左ひざの上に乗せる。右手で右ひざを下に軽く押す。
- 軽く胸を張り、鼻から息を吸う。口から息を吐きながら、伸びる感じがするまで体をゆっくりと前に倒す。
- 倒せるところまで倒したら、そのまま30秒間キープ。脚を入れ替えて反対側も同様に行う。
足首が固い
足首が固いこともフルスクワットが上手くできない原因になります。足首が固いとは、しゃがんだときに十分に曲がらない状態。
足首に柔軟性がないと、すねの骨が上手く前側に倒れません。そのため上下に体を動かすときに適度な位置に重心を持ってくることができず、重心が後ろに傾いてしゃがみ込む前にしりもちをついてしまいます。
このような場合、スムーズにすねが倒れるように足首を柔らかくする必要があります。
これで対策!「足首のストレッチ」
片ひざ立ちの状態で前側の足首を曲げ、柔軟性を高めていくためのストレッチです。
【足首ストレッチのやり方】
- マットなどの上に、左ひざをつけた状態で片ひざ立ちになる。右脚は前に出し、ひざを90°に曲げる。手は右ひざに添える。
- 右のかかとをマットにつけたまま、ゆっくりと右脚に体重をかけて右ひざを前に移動させる。右ひざを目一杯前に移動させたら、さらに手で軽く押し込んで足首の伸びを感じながら、30秒間キープ。
- 脚を入れ替えて反対側も同様に行う。
お尻の筋力が弱い
お尻の筋力が弱いこともフルスクワットが上手くできない原因となります。筋力が弱いと股関節を十分に曲げることができず、重心が前側に移動。すると、NGフォームのかかとが浮いて腰を丸めた姿勢になってしまいます。
フルスクワットを行うときに体重を支えられないほどお尻の筋力が弱いと、しっかり股関節を曲げてしゃがみ込むことができません。
そのため、フルスクワットを行うためにはお尻の筋肉をしっかり鍛えることが大切です。
これで対策!「ヒップブリッジ」
ひざを曲げて仰向けになり、お尻を浮かせるエクササイズ。フルスクワットに必要なお尻の筋力を鍛えます。
【ヒップブリッジのやり方】
- マットなどの上に仰向けになり、手を天井に向けて、胸の前に真っ直ぐ伸ばす。ひざは曲げてかかとは床につけ、つま先はあげる。
- 鼻から思いっきり息を吸い込み、お腹に力を入れて固くする。息を止めたままお尻を床から離して体が一直線になるまで上げ、1秒キープしたら降ろす。
- お尻を下ろして息を吐く。これを10回×3セット繰り返す。
腹圧がかけられない
腹圧が上手くかけられないこともフルスクワットが出来ない原因の一つ。腹圧とは単に腹筋に力を入れることではありません。正式には「腹腔内圧(ふくくうないあつ)」といって、お腹の中の圧力のこと。
フルスクワット中にお腹の中の圧力を高めることが大切なのです。これが上手くできないと、体幹を正しい位置に保った状態でフルスクワットができません。
これで対策!「腹圧を高める練習エクササイズ」
腹圧を高めるためには、呼吸のしかたとお腹の使い方がカギ。その練習方法を解説しますので、スクワット前のウォーミングアップに行うと良いでしょう。
【腹圧を高めるエクササイズのやり方】
- マットなどの上に仰向けになり、腰を床に軽くつける。手を天井に向けて、胸の前に真っ直ぐ伸ばす。脚を床から浮かせて、太ももは床に対して直角に。ひざも直角に曲げる。
- 鼻から息を限界まで吸い切って、腹筋に力を入れて固くする。そのまま1秒キープし、口から息を目一杯吐く。これを10回続けて行う。
まとめ:正しいフルスクワットで効果を最大限に
深くしゃがみ込むフルスクワットは、他のスクワットと比べてヒップアップやお腹やせ効果が高くなり、非常にメリットが大きいエクササイズです。しかし深くしゃがみ込む分、正確に行うのがとても難しいエクササイズでもあります。
正しいフォームで実践するには、少しずつ自分の体を変えていくことがカギになります。足首を柔らかくするためにストレッチを行う、腹圧を高める練習をするなど、根気よく自分の体を変えるトレーニングを。正しいフルスクワットをマスターして下半身をしっかり鍛えましょう。
スクワットの“半分”の深さまでひざを曲げる「ハーフスクワット」。美脚やスタイルアップ、歩いても疲れない体づくりに最適です。そんな女性におすすめのハーフスクワットの効果や、正しいやり方を解説します。
[ 監修者 ]
- オフィシャルHP
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- https://www.instagram.com/chiakifujimoto/