卵は一日何個まで食べてOK?ライフステージ別の効果的な食べ方とは
朝食やお弁当のおかずに便利で身近な卵。手軽に食べられる反面、一日何個まで食べていいのか? コレステロールを摂りすぎないか? などが気になるところ。卵の健康的な食べ方について、管理栄養士が解説します。
卵は一日何個まで食べていい?
卵は保存がきいて、料理のレパートリーが幅広いのが魅力ですよね。良質なタンパク質を豊富に含む卵は、筋トレやダイエット中に活用している人も多いことでしょう。そもそも卵は一日何個まで食べていいのか、食べ過ぎることによるデメリットについてみていきましょう。
卵は一日1~2個が目安
「健康診断でコレステロールがちょっと高めだった。卵は控えたほうが良いのかな?」と気になる人もいますよね。健康的に過ごすためには、バランスよくさまざまな食品から栄養素を摂ることが大切。それを考えると、卵は一日1~2個が目安といえます。
食べすぎはNGですが、厳密に「卵は一日1個」と限定する必要はありません。オムレツなどの卵料理や親子丼などで卵を2個以上食べた場合は、次の食事で控えるなどして、一日の中で調整するとよいでしょう。
(※)高コレステロール血症と診断された人は、ある程度コレステロールの摂取制限が必要です。医師や管理栄養士に相談してください。
卵を食べすぎるとコレステロールが上がる?
コレステロールは食事以外に体内でも合成されます。そのため卵をたくさん食べる=コレステロール値が高くなる、とは限りません。
コレステロールは、さまざまな食品に含まれていますが、体内に取り込まれるのはそのうち40~60%です(※1)。コレステロールは肝臓でも毎日合成され、血液に混ざって体じゅうに運ばれると、細胞膜やホルモンを作るために使われます。
肝臓で合成されるコレステロールは、食事で摂取する量の3〜7倍にもなります。健康診断の血中コレステロール値は、食品から摂取したものと、肝臓で合成されたものの両方を示したものです。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、コレステロールの目標量の設定がなくなったため、昔よく言われていた「卵は一日1個まで」という決まりはなくなりました。しかしいくら食べてもよいということではありません。他の食品からも栄養素を摂るために、卵は一日1~2個を目安にバランスのよい食事を心がけましょう。
(※1)『きちんとわかる一生役立つ栄養学』(飯田薫子・寺本あい監修/西東社)
食事によるコレステロールが検査値に与える影響は?
健康診断で測定するコレステロール値は、食品から摂取したものと、肝臓で合成されたものの両方であることを、先ほどご説明しました。中でも食事から摂るコレステロールは、血液検査の数値に影響する人としない人が存在し、その比率は半々くらいといわれています。
コレステロールが高い人で、自分が食事の影響を受けるか・受けないかを知るには、まず1カ月間コレステロールを多く含む食品を控えてみてください。コレステロールの代謝は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)で約1週間なので、1カ月くらい続けるとある程度の効果がわかると考えられます。この方法で、もしコレステロールが下がっていれば「食事の影響を受けるタイプ」といえるでしょう。
脂質異常症の場合は、一日1個までを目安に
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、新たに脂質異常症の重症化予防のため、一日のコレステロール量は200mg未満にとどめることが望ましいとされています。脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やコレステロール(悪玉コレステロール)が多すぎる状態をいいます。
卵1個(全卵生50g)に含まれるコレステロール量は210mg。肉や魚卵、乳製品など卵以外の食品からもコレステロールを摂る可能性があることを考えると、脂質異常症の人は一日1個にとどめておきましょう。
コレステロール以外に注意したい飽和脂肪酸
健康のためにはコレステロールに気をつけたいですが、それより注意したいのが飽和脂肪酸の摂り過ぎです。飽和脂肪酸は、卵のほか、肉の脂身やバター、乳製品に多く含まれている成分で、体のエネルギー源になります。
飽和脂肪酸を摂りすぎると体内でコレステロールの合成が増え、動脈硬化を進行させてしまうことに。卵はそのような理由からも一日1~2個を目安にして、食べすぎない方がよいでしょう。
卵の栄養価は?
良質なタンパク質を筆頭に、さまざまな栄養素をバランスよく含む卵。ビタミンCと食物繊維以外の栄養成分をバランスよく含む、ほぼ完全な栄養食品といえます。ここでは、卵の栄養素と調理法についてくわしく解説します。
卵は栄養価の高い完全栄養食品
卵は栄養価が高いため、昔から子どもや病気の人が滋養強壮のために食べる健康食品とされてきました。卵に含まれる主な栄養素と特徴・役割をまとめてみました。
卵の栄養素 | 特徴・役割 |
タンパク質 | 筋肉や臓器、骨、髪の毛、皮膚などをつくるもととなる栄養素。卵の主成分のひとつ。「良質なタンパク質」といわれており、体内で合成できないアミノ酸(必須アミノ酸)をすべて含んでいる。 |
セレン | 活性酸素の分解を助けて、細胞の老化を防ぐ。 |
ビオチン | 糖質や脂質、タンパク質の代謝に欠かせないビタミン。皮膚や髪の毛を健康に保つ。 |
レシチン | コレステロール値を下げる作用が期待されている。 卵黄に多く含まれている。 |
ビタミンA | 粘膜を保護して免疫機能を高める。 |
ビタミンB2 | 糖質や脂質、タンパク質の代謝を助ける。発育を促進させる。タンパク質の合成にも関わり、皮膚や髪の毛などを作ったり、子どもの成長を促進させる。 |
赤卵と白卵の違いは?
スーパーには殻が赤い赤卵と、白い白卵が売っていますが、卵の殻の色は栄養や味に影響しません。赤卵や白卵の違いは、鶏の種類による違いです。
赤卵の方が割高なのは、白卵を産む鶏の数の方が多く、赤卵の生産量が少ないことや、ブランド卵に赤卵が多いことなどが要因でしょう。受精した卵の有精卵と、受精していない無精卵による違いもありません。
調理法によって卵の栄養価は変わるの?
野菜は茹でるとビタミンが失われることがありますが、卵は加熱しても栄養価がほとんど変わりません。加熱すると変化するのは、卵白に含まれている「リゾチーム」という成分。リゾチームは卵の保存性を保つ成分で、加熱によって失われてしまいます。そのため加熱した卵は保存期間が短くなり、日持ちがしません。調理したら早めに食べ切るようにしましょう。
ライフステージ・シーン別「卵の食べ方」を解説
卵は良質なタンパク質を多く含むため、筋トレ中やダイエット中にも積極的に取り入れたい食品です。大人はもちろん、子どもやシニア層も、栄養価が高い卵を上手に取り入れることで健康に役立ちます。ここでは、ライフステージ別・シーン別の「卵の食べ方」を解説します。
(※)医師・栄養士より栄養指導を受けている人はその指示に従ってください。
筋トレをがんばる大人
筋肉を増加・成長させる筋肥大を目指す人が一日に必要なタンパク質量の目安は、体重1kgあたり2gです。体重60kgの人だと、一日に120gのタンパク質が必要です。
卵(全卵生50g)に含まれるタンパク質は6.2gなので、約20個分に相当します。タンパク質の多い卵を積極的に摂りたいところですが、「糖質制限して卵を毎日10個食べる」といった極端な摂り方はおすすめできません。
食品から過剰に摂ったタンパク質は、尿中に排出されてしまいますが、その分腎臓に負担がかかります。糖の代謝を担うインスリンの働きが悪くなることも。また、卵には飽和脂肪酸が含まれるため、摂りすぎることで脂質異常症にもなりかねません。筋肥大を目的としている人も、卵は一日1~2個を目安にして、食事はバランスよく食べましょう。
食品には、タンパク質以外の栄養素も含まれているため、同じものを食べ続けると栄養が大きく偏り、筋肥大には逆効果になることもあります。効率よく筋肉をつけるには、筋肉が分解されてエネルギーにならないよう、糖質をしっかりと摂っておくことが必要。
さらに、摂取したタンパク質が効率よく体内で利用されるためには、ビタミンB6も積極的に摂りましょう。ビタミンB6は、かつおやさんま、バナナ、玄米ご飯などに含まれています。
ダイエット中の大人
ダイエット中こそ筋肉量が落ちないよう、良質なタンパク質を含む卵を味方にしたいところ。ダイエット中の大人が一日に必要なタンパク質量の目安は、体重1kgあたり1g。体重60kgの人だと、一日60gのタンパク質が必要です。他の食品からもタンパク質を摂ることを考えると、卵は一日1~2個なら問題ないでしょう。
タンパク質は筋肉の材料になります。筋肉を維持して美しいボディラインを作るためにも欠かせません。また、美肌や美髪づくりにもタンパク質は深くかかわっています。
ダイエットをしている人の中には「卵や肉類は太りやすい」と思っている人がいますが、適量摂る分には太りません。お菓子を食べて食事をおろそかにしないように、タンパク質を適量摂り、一日3食バランスよく食べるようにしましょう。
学童期・思春期の子ども
タンパク質の摂取は成長期にとても大切です。学童期・思春期の子どもは、一日1~2個を目安に、卵を摂るとよいでしょう。この時期の子どもも、食べすぎると飽和脂肪酸の摂りすぎにつながり肥満の原因に。魚や大豆製品もバランスよく摂り、卵ばかりに偏らないように注意を。
学童期・思春期の子どもは、少しでも長く寝たいと、朝食欠食が目立つ時期でもあります。体が必要とするエネルギーや栄養素量は、大人と同じくらいの量になってくるため、朝食を食べてから出かける習慣をつけましょう。その点、卵ならば調理が手軽。朝食で摂り入れることで、バランスのよい食事になります。
幼児期の子ども
3~5歳の幼児期に同じ食品を一度にたくさん与えたり、毎日同じ食品を食べさせたりすると、アレルギー症状をおこしやすくなることがあります。特に決まりはありませんが、卵は一日1個までを目安に、さまざまな食品から栄養素を摂るように心がけましょう。
この頃には自我が芽生えてくるので、食欲にムラがあったり、好き嫌いが出てきたりします。卵ばかり食べたがることもあるかもしれませんが、他の食品も食べられるように工夫しましょう。
食事は「おいしい」「楽しい」というイメージを大切に。 子どもが食べたがらないときには、調理法で味付けを変えたり、食べやすいように盛り付けをアレンジしたりするのがおすすめです。
離乳食を食べる赤ちゃん
生後5カ月を過ぎると離乳期に入ります。離乳期は、母乳や育児用ミルク以外の食べ物で、必要な栄養素を摂るように進めていく時期。卵は赤ちゃんの成長に必要なタンパク源のひとつで鉄分も含まれています。6カ月頃から少しずつ始めるとよいでしょう。
離乳食の卵の進め方は、生後5~6カ月後頃の体調の良いときに、固ゆで卵の卵黄を少量試すことから始めます。食べられるようになってきたら、生後7~8カ月頃では卵黄1個~全卵1/2個と、進めていくとよいでしょう。(※2)
(※2)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改訂版) より(pdfファイル)
(※)紹介する卵の量や進め方は、皮膚疾患やアレルギーを疑うような疾患がない赤ちゃんを対象とした場合です。治療中の場合は、医師に必ず相談してください。
シニア層の人
体の状態や持病の有無によっても変わりますが、シニア層の人は消化吸収の能力が落ちていることが多いため、他の世代よりも多めにタンパク質を摂る必要があります。
低栄養予防や筋肉量の維持のためには、体重1kg当たり1.2g程度のタンパク質を摂りましょう。体重60kgの人だと一日72gのタンパク質が必要です。卵は料理のレパートリーが多く、良質なタンパク質が多く含まれています。
シニア世代が気をつけたい骨の健康のためには、カルシウムやビタミンDと一緒に良質なタンパク質を適量摂ることが大切。卵は一日1~2個を目安にして、3食の中で取り入れるとよいでしょう。
妊娠中の人
妊娠中はダイエットを気にせず、卵を含めバランスよく食べるようにしたいものです。卵は一日1~2個を目安に、肉や魚、大豆製品からもタンパク質を摂りましょう。
母体に栄養が行きわたらず、子宮内が低栄養になると、胎児の発育が悪くなるだけでなく、高血圧や糖尿病など赤ちゃんが大人になってから、生活習慣病の危険性が高まることが知られています。妊娠中は赤ちゃんと一緒に食事をしているつもりで、健康的な食生活を心がけましょう。
妊娠中期(16~27週)以降は、赤ちゃんの体がつくられる時期。卵を含めた良質なタンパク質を含む食品を積極的に摂ってください。卵は食中毒予防のため、生や半熟で食べるのは避け、しっかり加熱してから食べましょう。
気になる疑問にお答え! 卵のQ&A
完全栄養食品といわれる卵。効果的な食べ方や、食べるタイミングを知っておくと、さらに毎日の健康づくりに役立ちます。 ここでは、卵にまつわる気になる疑問にお答えします。
効果的な卵の食べ方は?
卵に不足しているのが、食物繊維とビタミンC。その2つの栄養素を補う食べ方をすると、栄養バランスがさらにアップします。そのためビタミンCを多く含む野菜や果物と合わせて食べるとよいでしょう。例えば、小松菜と卵を炒めたり、卵を食べるときに果物をプラスすると、バランスが整います。
朝食にも卵をプラスすることで、手軽にタンパク質を補えます。夕食から朝食までは時間が空くため、新たなタンパク質を補うことができません。すると筋肉は合成から一転して分解へと進んでしまい、筋肉量が落ちてしまいます。朝から卵で十分な量のタンパク質を摂り、筋肉の分解をブロックしましょう。
卵は簡単な調理で食べられ、時間のない朝にぴったり! 前日にゆで卵を用意しておく、 スープに落として卵をチョイ足しするなどでタンパク質補給をすると、朝食の栄養バランスが整います。
卵を寝る前に食べるのはあり?
夜遅い食事は睡眠の質を下げたり、肥満にもつながったりします。卵を食べるなら、寝る2~3時間前までに済ませる方がよいでしょう。
特に固ゆで卵は消化に時間がかかり、胃腸に負担がかかるため、寝る前に食べるのはおすすめしません。生卵も消化がよくないので避けた方がよいでしょう。仕事や家事などでどうしても夜遅い食事になってしまう場合には、半熟卵や温泉卵、卵とじなど、消化しやすい調理法で食べましょう。
新鮮な卵の見分け方は?
スーパーで買うときに覚えておいて損はないのが、新鮮な卵の選び方。ポイントは次の3つです。
- 卵の殻の表面がザラザラして光沢がないもの
- 振って音がしないもの
- 電気の光に透かして明るく透けてみえるもの
また、卵のパッケージに表示されている賞味期限は、生で食べられる期限です。生卵を食べるときは食中毒の予防のためにも新鮮な卵を選ぶようにしましょう。
(※)スーパーで購入する際は、振ったり割ったりしないようにして、自宅での調理の際に参考にしてください。
タンパク質を摂るならやっぱり卵?栄養価と効果的な調理法を解説
まとめ:卵は「一日1~2個」を目安にしてバランスのよい食事を
卵は一日1~2個を目安に、さまざまな食品と一緒に摂ることで、健康づくりに役立ちます。
卵は完全栄養食品といわれており、良質なタンパク質が豊富に含まれています。栄養価が高いだけでなく保存がきくため、体づくりを目的とした筋トレ中やダイエット中の人にもおすすめの食品。
ただし、たくさん食べればいいというわけではありません。ご紹介したようにどの世代の人も食べすぎには注意しましょう。
コレステロールが気になる人も、食事で健康になりたい人も、卵を味方にバランスの良い食事を心がけ、健康的に過ごしましょう。