「反り腰」になる原因は?腰痛・ぽっこりお腹を改善するストレッチ
腰が反った状態になる「反り腰」は、腰痛や肩こりの原因になり、お腹周りが太りやすくなることも。プロのパーソナルトレーナー・藤本千晶が、反り腰になる原因や姿勢を改善するための呼吸、ストレッチを紹介します。
目次
反り腰とは背骨が反り過ぎた状態
「反り腰になると良くない」と聞いたことがあるのではないでしょうか。反り腰とは、背骨が反り返り過ぎて、体に負担をかけている状態のこと。
そもそも私たち人間の背骨は、短い骨が24個積み重なって作られています。本来背骨は、横から見ると「S字カーブ」を描くように積み重なっています。これが正常な状態。
S字カーブを描くことで、体重を支える背骨の一部への負担を分散したり、クッションとしての役割を果たしたりして、腰への衝撃や負担を軽減しているのです。
反り腰は、このS字カーブが正常よりも大きくなっている状態。特に腰椎(ようつい)と呼ばれる、下から5つの背骨のカーブが強くなります。
反り腰にになると、背骨の一部分への負担が大きくなり、クッション性もなくなります。歩いたり走ったりするときの衝撃や負担を和らげること、体重を支えることができなくなってしまうのです。
反り腰になる原因
反り腰は、運動不足や背筋を伸ばしすぎるクセなどで起こり、普段の生活習慣と関係しています。いくつかある反り腰の原因について、くわしくみていきましょう。
筋力・柔軟性の不足
反り腰の原因としてまずあげられるのが、筋力や柔軟性の不足です。「自分が反り腰かも?」と思う人の中には、思い当たる人もいるのではないでしょうか。
特に反り腰に関係しているのが、お腹周りの筋力不足。お腹周りの筋肉が十分で正常に働いていると、背骨を自然なS字カーブに保ってくれます。しかし筋力が低下し、腹筋と比較して背筋が強くなると、背骨は反り返る方に動きます。その結果、反り腰に変化してしまうのです。
また、柔軟性の不足も反り腰の原因に。例えば、股関節にあり、上半身と下半身をつないでいる腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉があります。腸腰筋は、腰の骨と骨盤の全面から太ももの骨にかけてくっついている筋肉で、硬くなって縮まると腰周りの骨を前方へ引っ張り、反り腰を誘発します。
このような筋力や柔軟性低下の大きな原因は、運動不足や悪い姿勢をとり続けてしまうこと。特に、運動習慣がなくデスクワークが多いと、下半身や体幹の筋肉をほとんど使いません。体幹の筋肉が弱くなったり、股関節の筋肉が硬くなるなどして反り腰につながります。さらに、悪い姿勢をとり続けることでも反り腰が悪化します。
ストレス・疲労の蓄積
反り腰になる原因は、単に体だけの問題ではありません。意外に思うかもしれませんが、ストレスや疲労の蓄積も反り腰につながります。
疲労やストレスから自律神経のうち「交感神経」が優位になりすぎると筋肉は過剰に緊張。この過緊張が続くことで、背中の筋肉が硬くなり、背骨を反り返らせてしまいます。
また、ストレスや疲労が溜まると、自然と体を動かすことが億劫になりますよね。ストレッチなどの運動が不足して体を動かさないでいると、筋力や柔軟性が低下。ご説明したように、反り腰につながってしまいます。
背筋を伸ばしすぎること
姿勢を良くしようと、胸を張って腰を反らせた状態になる人がいます。この背筋を伸ばし過ぎる姿勢も、実は反り腰につながっています。
一般的に背筋が伸びている状態が「良い姿勢」といわれます(※1)。姿勢による印象の違いを調査した報告では、背骨が自然なS字カーブを描いている人はもちろん好印象でしたが、「やや反り腰気味の人」も、周りから見ると印象が良くなると報告されています。
しかし、背筋を伸ばしすぎると、過剰に背骨を反った状態が続き、その姿勢が定着してしまう可能性があります。反り腰を防ぐためにも、無理やり背筋を伸ばし続けることはあまりおすすめできません。
(※1)日本感性工学会論文誌 女性の体型と姿勢の関係が美的印象に及ぼす影響より
反り腰のチェック方法
ここまで反り腰になる原因を解説しましたが、気になるのは「自分が反り腰なのかどうか」ですよね。反り腰をチェックするのに一番簡単なのは、壁を使う方法です。自分でできるチェック方法をご紹介しますので、試してみてください。
【壁を使った反り腰チェック方法】
- 壁を背にして、お尻・肩甲骨・後頭部を壁にくっつける
- かかとは壁から5cm程度離す
【正常なカーブの場合】
以下の2つとも当てはまる場合は正常です。
- お尻・肩甲骨・後頭部のすべてが力みがなく壁にくっついている
- 腰の部分に手のひらがちょうど一枚程度入る
【反り腰の可能性がある場合】
いずれか一つに当てはまると反り腰の可能性があります。
- お尻・肩甲骨・後頭部のすべてが壁にくっついているが、腰の部分に手のひら一枚分以上スペースが空いている
- 頭とお尻は壁につくが、肩甲骨が壁にくっつかない
反り腰で起こる体への影響
そもそも反り腰になると、どんな影響があるのでしょうか? ここからは反り腰が体に与える影響について解説します。日々感じている慢性的なプチ不調が、実は反り腰のせいだった、ということもあるかもしれません!
腰痛や肩こりの原因
反り腰の人に起こりやすい代表的な不調が、腰痛や肩こりです。腰痛が起こる原因の一つに、背骨の骨同士が圧迫され、骨や周辺の組織にダメージを与えることがあげられます。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとることがその典型。背骨の同じ部分がずっと圧迫され続けた結果、痛みが出てくるのです。背骨が常に後ろに反り返っている反り腰は、これと同じように強い圧迫が起こり、それが続きます。反り腰によって周囲の組織がダメージを受け、腰に痛みがあらわれるのです。
また、反り腰は肩こりも誘発。肩こりは肩の筋肉を過剰に使い続けて疲労することで起こります。反り腰になると、体のバランスをとるために肩甲骨周辺や首回りの姿勢も変化。必要以上に肩甲骨を寄せて胸を張ったり、肩がすくむような状態になったりします。
上半身がこの状態になると、腕を動かすときに、肩周りの筋肉は余計な力を発揮しなくてはいけません。すると動かすたびに筋肉が疲労し、それが蓄積して肩こりが発生します。
ぽっこりお腹の原因にも
反り腰は、こりや痛みなどの不調だけでなく、スタイルにも影響を及ぼします。反り腰が原因で起こるスタイルの変化が、ぽっこりお腹です。
背骨が過剰に反ると、お腹を前側に突き出す形に。すると平らだったお腹のラインは崩れ、ぽっこりとお腹が目立つ形になります。
体重が変わらないのにお腹が出てきた、ダイエットで体重は減ったのになぜかお腹だけやせない、という人は反り腰も考えられるかもしれません。
反り腰の改善には呼吸とストレッチを
反り腰は、筋力や柔軟性不足のほか、過緊張も原因になるとお伝えしました。そのため反り腰を改善するには緊張した筋肉をほぐして、体をリラックスさせることが第一。
筋肉をほぐして体をリラックスさせるためには、呼吸やストレッチが効果的です。次からくわしくご紹介しましょう。
体がリラックスする呼吸法
反り腰になる原因の一つは、ストレスや疲労によって筋肉が緊張しすぎること。それを改善するためには、リラックスモードのときに働く「副交感神経」を優位すること。
副交感神経に切り替えるのに有効なのが呼吸です。特に「吐くこと」を意識することでリラックスでき、反り腰につながる体の過緊張をゆるめることができます。
【やり方】
- マットなどの上に仰向けになり、ひざを立てる。腰は反らないように床に軽く押し当て、手のひらは肋骨に当てる。
- 鼻から目一杯息を吐ききる。吐きながら肋骨を手のひらで軽く押し込む。このとき腰は反らないように。
- 吐ききったら息を止めて1秒キープ。肋骨を押すのをやめ、鼻から息を吸う。
- 2と3を10回繰り返す。
股関節のストレッチ
両足を前後に大きく開いて、股関節の前側を伸ばすストレッチ。股関節にある腸腰筋が硬くなることも反り腰につながるため、ここを伸ばして体をリラックスさせましょう。
【やり方】
- マットなどの上に片ひざ立ちになり、右足を大きく前に出す。上体は床に対して直角を保ち、手はお腹に当てる。
- お腹に力を入れて腹筋を固くする。そのまま、鼻から息を吐きながら右の足首とひざを曲げ、上体を前にスライドさせる。体幹は床と直角に保ったまま行う。
- 左脚の股関節が伸びているのを感じながら、息を吐ききるまで動きを止める。吐ききってから1秒キープし、鼻から息を吸う。
- 2〜3を10回繰り返し、脚を入れ替えて反対側も同様に行う。
太もものストレッチ
ひざから骨盤まで広い範囲に渡る、太ももの筋肉。硬くなると骨盤ごと前に引っ張り、反り腰を誘発します。そのため太ももを伸ばしてゆるめることも効果的。横向きになって足首を持ち、後ろに引っ張り太ももを伸ばすストレッチです。
【やり方】
- マットなどの上に横になり、下側の太ももが体と直角になるように股関節を曲げる。上側の足の足首をお尻側から手でつかみ、ひざを曲げる。
- 腹筋に力を入れてお腹を硬くして、鼻から息を吐きながら足首を引っ張り、ひざを後ろ側へ。太ももの前側に伸びを感じたところで止め、息を吐ききる。
- 息を吐ききったら1秒キープしてからストレッチを少し緩め、鼻から息を吸う。
- 2~3を10回繰り返し、脚を入れ替えて反対側も同様に行う。
腰を丸めるストレッチ
仰向けに寝て、ひざを抱えて腰を丸めるストレッチ。腰周りの緊張をやわらげて、反り腰を改善します。
【やり方】
- マットなどの上に仰向けになり、両ひざを曲げて両手で抱える。
- 鼻から息を吐きながら手でひざを押し胸に近づける。腰の伸びを感じるところまで胸に近づけ、息を吐ききる。
- 息を吐ききったら1秒キープしてゆるめる。
- 2~3を10回繰り返す。
背中を伸ばすストレッチ
背筋を伸ばそうと意識すると肩甲骨を過剰に寄せてしまいがちです。しかしそれは、背中の上部を硬くさせて背骨を反り返らせる原因に。腕を前に引っ張って伸ばすストレッチで、背中の筋肉をほぐします。
【やり方】
- 右手を前に出し、左手で右手首を掴む。鼻から息を吐きながら右腕を左斜め下へ引っ張る。
- 右の背中に伸びを感じながら、息を吐ききるまで動きを止める。息を吐ききったら1秒キープしてゆるめる。
- 1~2を10回繰り返し、手を入れ替えて反対側も同様に行う。
反り腰の予防法
体の緊張をゆるめて、筋力や柔軟性を高めることが反り腰の改善に大切。それに加え、反り腰にならないために、日ごろから注意したいポイントがあります。ふだんの生活で行うべき反り腰の予防法を3つ紹介します。
イスの座り方に気をつける
反り腰を予防するためにはイスへの座り方に気をつけましょう 。1日中イスに座ることが長く続く人は、姿勢に与える影響がとても大きく、悪い姿勢はそのまま定着してしまいます。
イスに座るときは、座面に深く腰掛けて背筋をまっすぐに保ち、背もたれに「背中全体」で寄りかかること。「背中全体」でしっかりともたれかかることで、腰への負担を分散でき、背中の過緊張も軽減します。
NGな座り方は、浅く座って背中の上の方だけもたれかかる、背もたれに寄りかからず腰を反らせて背筋を伸ばしすぎている状態。これでは腰周りに負担がかかり、背中の筋肉を過剰に緊張させて反り腰を招きます。
30分に1回は立って動く
反り腰を予防するためには座りっぱなしにならないことが大切。30分に1回程度は立って歩き、筋肉が硬くならないように予防しましょう。
座った姿勢では、筋肉が動きません。そのためどれだけ良い姿勢で座っていても、座り続けると筋肉がガチガチに硬くなります。特に座り姿勢が続くと股関節や腰回りの筋肉が硬くなるため、反り腰につながりやすいと考えられます。
これを防ぐには、ずっと座り続けることは避け、定期的に立って歩くこと。デスクワークの時間が長く腰痛や肩こりがひどい人は、仕事の合間に立ち上がる習慣を持ちましょう。
極端なダイエットを行わない
一見関係なさそうなダイエットと反り腰。しかし、極端なダイエットを行うと体力をキープするために必要な栄養が十分に摂取できなくなり、筋力や柔軟性の低下が起こると考えられます。
十分な栄養は、体のベースをつくるために欠かせません。反り腰を防ぐためにも、ダイエットを始めるときは健康的で無理のない食事を心がけましょう。
まとめ:反り腰の改善には緊張をほどいて体をゆるめること
反り腰の原因は筋力・柔軟性の低下や背筋の伸ばし過ぎなど、日常生活の過ごし方が関係しています。一時的に姿勢を意識するといったことでは、なかなか改善しません。
反り腰は過緊張などにより筋肉が硬くなることが原因で起こることが多く、体をゆるめてリラックスさせることが大切です。そのためにも今回紹介した呼吸法や姿勢改善ストレッチなどを取り入れてみてください。
反り腰を改善することで、つらい腰痛や肩こりが和らぐだけでなく、ぽっこりお腹の解消も目指せます。気になる反り腰を根本から見直して、スリムで快適に動く体を作っていきましょう。
長時間のデスクワークや毎日の家事など、さまざまな原因で起こる腰痛。今回は、腰痛に効く足つぼと、効果的な押し方をご紹介します。
[ 監修者 ]
- オフィシャルHP
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