爪が乾燥する原因は?健康に保つための6つのケアを医師が解説
爪に縦線が入ってカサカサになっていた、ということはありませんか? 爪も肌と同じように乾燥します。意外と人目に触れやすい指先はいつでも整えておきたいもの。爪が乾燥する原因と、6つの対策を医師が解説します。
目次
爪が乾燥すると起こるトラブルは?
乾燥というと「肌」が気になりますが、毎日いろんなものに触れる「指先」も乾燥しやすいパーツです。成人の健康な爪は12~16%の水分を含むといわれています(※1)。
しかし、乾燥して水分量が失われるとさまざまなトラブルに。爪が割れる、欠けるといった体験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。まずは爪の乾燥で起こるトラブルについて見ていきましょう。
(※1)『外来で役立つ爪診療ハンドブック』(中外医学社/これえだ皮フ科医院 院長 是枝 哲 著)より
爪が割れやすい、欠けやすい
爪の乾燥で起こる代表的なトラブルが、割れる、欠けやすくなるといったもの。その他に、爪の色が黄色っぽくなったり濁ったりすることもあります。爪は皮膚細胞の一部が硬く変化したもので「ケラチン」というタンパク質の一種からできています。
爪の主成分であるケラチンは水分を含み、適切な水分量が保たれていると透明感のあるきれいな爪になります。しかし、乾燥に弱いのも特徴。水分の不足が続くと、爪がもろくなって割れてしまったり、欠けてしまったりするのです。
爪に縦線が入る
乾燥により爪の水分が失われると、表面に溝のような縦線が入ります。爪の縦線を「爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)」と言い、水分量が多い若いうちはほとんど目立ちませんが、年齢を重ねて爪が乾燥しやすくなると目立ってきます。
爪は一枚でできているように見えますが、実は表面から順に「背爪・中間爪・腹爪」と呼ばれる三層で形成されています。最も表面にある背爪は、繊維が縦方向に重なっているため、乾燥すると溝が深くなり縦線が入ったように見えるのです。
ささくれができる
爪とは関係なさそうなささくれも、爪の周り皮膚の乾燥により起こります。
ささくれとは、爪の周辺の皮膚が部分的に裂けてしまった状態のこと。爪の横にできる小さく硬いささくれは、皮膚ではなく爪であり「小爪」とも呼ばれ、爪の根元の皮膚が裂けたささくれは「さかむけ」とも呼ばれます。
ささくれができた経験がある人も多いと思いますが、爪の周りが乾燥すると、小さな刺激で裂けやすくなります。初めは小さくても、スマートフォンをタップする、ものに触れて指先が引っかかるなどで、段々裂け目が大きくなることがあります。
できてしまったささくれは、無理やり指で引っ張らないこと。爪切りやニッパーで根元からカットして、保湿も忘れずに行いましょう。
二枚爪になる
爪の水分が不足すると、爪の表面がうすく剥がれる「二枚爪」も起こりやすくなります。先ほど爪は三層からなるとお伝えしました。
三層のうち、最表面にある背爪の先端が剥がれたり、二層目の中間爪や、三層目の腹爪が剥がれてしまったりする状態を二枚爪と言います。
爪の強度を保っているケラチンが不足すると、爪はもろくなって割れやすくなり、爪の層がめくれてしまうのです。
また、乾燥のほかに注意したいのが爪切り。湾曲した三層の爪を、爪切りで無理やり切ろうとすると、大きな負荷がかかり二枚爪の原因となる場合があります。
爪が乾燥する原因は?
爪が割れたり欠けたりしてトラブルがあると、何の作業をするにも心配ですよね。爪が乾燥する原因には、外からの影響による「外的要因」と、体の中に関係する「内的要因」があります。それぞれ分けて詳しく解説していきます。
爪が乾燥する「外的要因」
爪が乾燥する外的要因は、洗剤や除光液の使用など、爪に与える直接的な負担によるものです。私たちの生活に欠かせないアイテムが、実は爪の乾燥に影響を及ぼしています。どのような負担があるのかをご紹介します。
食器用洗剤やハンドソープなどの使用
代表的な外的要因が、食器用洗剤やハンドソープ。食器を洗う、手洗いをするといった行為は日常的ですが、毎日繰り返し使うことで、手はもちろん爪も乾燥する原因になります。
中でも、注意しなければならないのは、食器用洗剤の多くに含まれている界面活性剤です。界面活性剤は、油汚れをすっきり落とす力がありますが、同時に、爪に必要な油分まで奪ってしまいます。ハンドソープにも含まれていることがあり、使うたびに手指の水分が蒸発し、爪の乾燥を招きます。
除光液の使用
マニキュアを落とすための除光液の使用も爪の乾燥につながります。エナメルリムーバーも同様です。除光液には「アセトン」という有機化合物の成分が含まれ、これにより油脂を溶かします。
アセトンはマニキュアを落としながら爪の油分や水分まで奪うため、マニキュアやジェルネイルを頻繁に変える方は注意が必要です。
マニキュアであればアセトンフリーの除光液がおすすめです。乾燥が気になる方はチェックしてみてください。
紫外線による影響
意外かもしれませんが、爪も紫外線による影響を受け乾燥します。爪は肌のように日焼けすることはありません。しかし、長い時間紫外線を浴びると、もともと備わったバリア機能が低下してダメージを受け、水分や油分が失われます。
日々紫外線を浴びることで、知らない間に爪が乾燥するというわけです。これが割れやすくなったり、縦線が入ったりする要因になります。
爪が乾燥する「内的要因」
爪が乾燥する内的要因は、体の内側から影響を受けるものです。外的要因は思い当たっても、内的な要因で爪が乾燥するなんて意外に思う方も多いのでは? その理由について解説します。
栄養不足
体の中からの影響でまず大きいのが、偏った食生活による栄養不足があげられます。
爪の主成分は「ケラチン」というタンパク質の一種。そのためタンパク質が不足したり、タンパク質の働きを補う栄養素が不足したりすると、爪がもろく欠けやすくなります。
また、肌のうるおいを保つと言われているビタミンAが不足することも、爪の乾燥につながります。
さらに、ミネラルの一つであるセレンが欠乏すると爪の白色化を起こすほか、亜鉛不足が爪のタンパク質合成を阻害したり、カルシウム分の減少を起こしたりします。
加齢
初めにご説明したように、健康な成人の爪は12~16%の水分を含んでいるといわれ(※1)、爪の水分は、爪の下の土台である「爪床(そうしょう)」と呼ばれる皮膚から補給しています。
しかし、水分量は加齢とともに減少。これは爪に限らず、体の水分量低下も加齢が関係しています。特に更年期世代になると女性ホルモンの減少が影響して、さらに体の水分量は少なくなります。その結果、皮膚である爪床が補給する水分量が減り、内側から爪の乾燥が起こるのです。
爪の乾燥を改善する対処法
爪が割れたり欠けたりすると、日常生活に支障をきたします。それだけでなく爪のトラブルは見た目の印象を左右するため、早く解消したいもの。爪の乾燥を改善する対処法をご紹介します。
ネイルオイルやネイル美容液で乾燥を防ぐ
最も大切なのは外側からの爪の保湿です。ネイルオイルは爪や爪の周りに油分を与えて乾燥を防ぐアイテム。一方ネイル美容液は、保湿効果だけでなく、これから生えてくる爪を丈夫にしてくれる働きが期待できます。マニュキュアやジェルネイルをしているときはもちろん、自爪の保湿ケアにも有効です。
ネイルオイルや美容液は、べたつきにくくゆるいテクスチャーが特徴で、爪や爪周辺に油分や美容成分を浸透させて乾燥を防ぎます。乾燥によるささくれに悩んでいる方にもおすすめです。
また、これらを使うときは、爪の表面だけではなく、爪周辺の皮膚、裏側の爪と指の間にも塗るのがポイント。塗ったあとは指でやさしくなじませましょう。
塗るタイミングは、手洗い後や乾燥を感じたときなど、一日数回こまめに。塗り続けて常に保湿しておくことで、爪のトラブルを改善・予防できます。
ハンドクリームを爪まで塗る
手指の保湿に使っているハンドクリームを爪まで塗ることも、乾燥対策に有効です。ハンドクリームの油分や保湿成分が、手だけでなく爪の乾燥も防いでくれます。
ネイルオイルやネイル美容液と併用する場合は、ハンドクリームをあとから塗ります。そうすることで、ハンドクリームがオイルや美容液にフタをする役割を果たし、より爪の保湿効果がアップ。
爪の乾燥が気になる人はハンドクリームの持参を。手洗後や乾燥を感じたときに塗って、うるおいを保ちましょう。
マッサージで血行をよくする
外側から保湿するだけでなく、マッサージで血行をよくすることも有効です。指の付け根から爪先までを反対の手の親指と残りの4本の指で挟み、もみほぐすように手指をマッサージします。
もむだけでも血行が促進され、爪先まで栄養が行き渡りやすくなるでしょう。
爪に必要な栄養素を摂る
爪の乾燥は栄養不足も関係があるとお伝えしました。爪の健康のためには、必要な栄養素の摂取も欠かせません。
主成分であるタンパク質が不足すると爪が弱くなり割れやすくなります。タンパク質は爪だけでなく、髪の毛や肌も形成しています。美爪や美肌のために、肉や魚のほか、卵、大豆製品などの良質なタンパク質を積極的に摂取しましょう。
タンパク質の合成には亜鉛の摂取も必要です。亜鉛が不足すると爪がもろくなったり白い斑点ができたりします。亜鉛は、牡蠣や赤身肉、豚レバー、ナッツ類、納豆などに多く含まれています。
また、鉄分が不足すると爪が反りかえったり表面が凸凹になったりします。爪を強く健康に保つためには、レバー、貝類、小松菜などの鉄分が豊富な食材を食べましょう。
あわせてビタミン類も必要です。ビタミンAは爪を丈夫にして乾燥を防ぎ、ビタミンB群は爪の成長を促進。ビタミンAはレバー、緑黄色野菜など、ビタミンB群は豚肉や魚介類、乳製品などに豊富に含まれています。
爪を乾燥させないための予防法
日常生活では常に指先を使った作業が多く、爪へのダメージはなかなか避けられません。しかも現代人の多くが使っているスマートフォンは、指先で操作するため負担がかかりやすいと言えます。
できるだけ乾燥を防いで爪への刺激を減らしたいものです。爪を乾燥させないための具体的な予防法を紹介していきます。
水仕事では手袋を使用する
爪が乾燥する原因には、界面活性剤が含まれている洗剤があるとお伝えしました。そのため食器洗いや掃除などの水仕事の際はゴム手袋の着用がおすすめです。
特に食器用洗剤には、油汚れを落とすための強力な界面活性剤が含まれているものが多く、素手で触れてしまうと、手指の油分を奪われ爪も乾燥します。
食器洗いで手指だけでなく爪の乾燥を感じたことがある方も多いはず。少し面倒でも、水仕事では手袋を着用しましょう。
なお、ラテックスアレルギーなどゴム手袋の使用で手荒れする方は、ビニールやポリエチレン、合成ゴムであるニトリルゴム製など、別の素材の手袋を試してみてください。
日焼け止めを爪まで塗る
爪の乾燥には紫外線も大敵です。手や腕に日焼け止めを塗る際には、爪まで伸ばして塗りましょう。紫外線は夏だけではなく、冬でも降り注いでいます。爪と肌のためにも日焼け止めは1年中使用したいアイテムです。
まとめ:爪の乾燥を防いで健康的でトラブルのない指先を
肌の乾燥には敏感でも、爪の乾燥はそこまで気にしてこなかった方も多いのではないでしょうか。食器洗いや掃除などの水回りの家事が多い方、ネイルを頻繁に変える方などは、特に爪が乾燥してトラブルが起こりやすくなります。
爪の乾燥を防ぐにはネイルオイルやハンドクリームなどをこまめに塗って保湿をして、うるおいを保つことが重要です。また、水仕事では洗剤で必要な油分や水分を奪われないように手袋の使用を。
指先は意外と人に見られているもの。指先まで手入れが行き届いている人は好感度もあがります。ご紹介したケア方法を実践して、健康的でトラブルのない“指先美人”を目指しましょう。
[ 監修者 ]
- 逗子メディスタイルクリニック
- https://medi-style.jp/