漢方薬の効果は?自分に合う購入方法や正しい飲み方を解説|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「漢方薬の効果と正しい飲み方」がテーマ。知っているようで知らない漢方薬の魅力や購入方法をお聞きしました。
目次
「漢方」とは?
みなさんは「漢方」と聞くと、どんなイメージを持ちますか? 中国生まれ、歴史がある、自然な効き目など、さまざまなキーワードが浮かびますよね。
そもそも漢方とは、中国から日本に伝わり、日本で独自に発展した医学のことを指します。生まれは中国ですが、日本の風土や日本人の体質などにあわせて発展してきたため「日本漢方」とも呼ばれます。また、漢方で使う、草木や動物など自然にあるものから生まれた薬を「漢方薬」といいます。
漢方の3つの特徴
病院に行くと主に西洋薬が処方されます。この西洋薬の目的は、いまある病気に対しての治療。1つ1つの臓器に対して働き、効き目がシャープで、なおかつ科学的・客観的なエビデンスに基づいています。
一方、漢方や漢方薬には西洋薬とはまた違った特徴があります。次からくわしくみていきましょう。
漢方の特徴(1)体全体のバランスを診ること
漢方では1つの症状に対してではなく、体全体のバランスを診ます。それは「臓器や体の機能はお互いが助け合って働いている」という考え方がベースになっているから。どの働きも過不足なく整っていることが健康とされ、総合的に判断するのが、漢方の大きな特徴といえます。
漢方の特徴(2)未病に効果的
2つ目は、「未病(みびょう)」に効果的な点です。未病とは、「病気には至らないものの健康から離れつつある状態」のこと。いわゆる予防医学と同じ考え方です。
漢方は、病気になってから治すのではなく、その前の“不調”の段階で体をよくする方向へ導くことを得意としています。いまある全身のさまざまな症状から察して、重い病気にならないように病の芽を摘み取るのが漢方の役割。だからこそ、小さな不調の段階で取り入れたほうが有効です。
漢方の特徴(3)オーダーメイドな処方
いまある症状だけでなく、1人1人の体質や症状のあらわれ方などを示す「証(しょう)」を見極めて判断するのも特徴。例えば風邪の症状があった場合、「熱による風邪なのか」「寒さからくる風邪なのか」を「証」によって診断します。
人によってさまざまな原因やプロセスがあるため、同じ症状でも違う漢方薬が処方されます。そんな“オーダーメイド”な処方も特徴といえます。
漢方のメリット
ご紹介した3つの特徴から、未病の段階で予防でき、病気ではないちょっとした不調やお悩みを改善できるのが漢方のメリットといえます。漢方を取り入れることで、日ごろから自分の体調を整えることができるでしょう。
体質に合わないと副作用もある
ただし漢方薬は薬のため、副作用もあります。体質や症状のあらわれ方などを示す「証」が当たっていないと、別の症状があらわれたり、症状が悪化したりする場合もあります。
漢方薬を購入するときは? 相談場所・購入方法別 メリット・デメリット
漢方薬は、病院で処方してもらうほか、ドラッグストアや漢方薬局などで購入ができます。漢方薬を使ったことがない人にとっては、「難しくてわからない」「ハードルが高そう」と感じる人もいるかもしれません。
初めて使う際は、医師や薬剤師、中医師などの漢方の知識を持った人に相談をして、自分の体質に合う漢方薬に出会うことが大切です。ここからは相談できる場所や購入方法、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
病院・クリニック
病院やクリニックでは、西洋薬以外に漢方薬を処方してもらうことができます。特に更年期、生理不順など、女性特有の不調には漢方薬がよく使われます。漢方にくわしい医師がいるかどうかをホームページでチェックして探してみましょう。また、漢方外来のある病院やクリニックもあります。
メリット…保険適用になる(※病院や処方によっては自費診療もあり)、漢方にくわしい医師に相談できる。
デメリット…使える漢方薬が限られている。
漢方薬局
病院に行くほどでもないけれど体調が不安定、気になる不調があるというときは、住んでいる地域にある漢方薬局に相談を。漢方薬局には、漢方や中医学を学んだ中医師や薬剤師、鍼灸師などの専門家が在籍していることが多く、豊富な知識でサポートしてくれます。
メリット…専門知識を持った相談員に気軽に相談できる、使える漢方薬の種類が多く幅も広い、動物生薬が使える(※薬局によって種類は異なる)。
デメリット…保険適用ではなく自費になる。
ドラッグストア
ドラッグストアでも漢方薬を購入できます。パッケージに書いてある情報をもとに症状に合った漢方薬を選びましょう。このとき、店舗に在籍している薬剤師に相談するほうが安心。いま飲んでいる薬との飲み合わせが問題ないか、症状・体質に合うかなどを確認してから購入を。
メリット…症状に合う漢方薬があればすぐに店頭で買える、自分で選べて値段も手ごろ。
デメリット…自分の体質に合うかがわかりづらい、購入したいときにくわしいスタッフが不在の場合がある、効かなかったときに自分では原因がわからない。
オンライン相談・診療
増えているのがオンラインでの漢方相談・診療です。医師や薬剤師など、漢方にくわしい専門家とオンライン上で話ができ、対面の必要がありません。また、オンライン上で体調や体質、症状などを入力するだけで、AIが自分に合う漢方を診断・処方してくれるサービスも増えつつあります。
メリット…病院や漢方薬局に行く必要がなく自宅にいながら相談できる、スピーディーに漢方薬が届く。
デメリット…舌の状態や顔色を見て症状や体質を診るため画面越しだとわかりづらい、AIでの判断が自分の体質に合わない場合がある。
漢方薬の種類と効果
漢方薬は、原料となる「生薬(しょうやく)」を2種類以上組み合わせてつくられています。生薬の原料は、草木などの植物のほか、動物や鉱物など、自然にあるもの。漢方薬には、煎じ薬や顆粒状のエキス剤など、次のようにいくつかの種類があります。
煎じ薬
細かく刻んだ生薬を組み合わせて処方。加熱しながら有効成分を抽出するのが煎じ薬。生薬による効き目を早く感じられますが、自宅で煎じるときに成分の抽出にバラつきが出るのがデメリット。
エキス剤
生薬の有効成分を抽出して顆粒状にしたのがエキス剤。医療現場でも多く使われています。成分が安定しているうえに、煎じ薬よりも手間がかからず続けやすいのがポイント。
丸薬・錠剤
有効成分を丸い球状や、固形にしたもの。漢方の味が苦手な人には飲みやすい一方で、効果を感じるには多くの量が必要になります。香りによる薬効も感じられません。
シロップ
甘くて飲みやすいのがシロップ剤。やや胃腸に負担がかかりやすい場合があります。
効果を得るための漢方薬の正しい飲み方
漢方薬は正しい方法で飲むことで、しっかりと生薬の効果が発揮されます。漢方薬をこれから始める人や、これまで効き目を感じられなかった人は、基本となる「漢方薬の飲み方」をチェックしましょう!
食前30分~1時間前に飲む
漢方薬の飲み方でもっとも基本となるのが「食前に飲む」こと。植物由来の生薬が多い漢方薬は、西洋薬に比べて胃腸の負担になりにくく、食前に飲むことで吸収が高まります。そのため、食前30分~1時間前に飲むのを忘れずに。ただし、胃腸の強さや症状によって異なる場合があるため、飲み方は医師や専門家に相談しましょう。
エキス剤は白湯に溶かして飲む
誰でもはじめやすいエキス剤の漢方薬を飲むときは、白湯に溶かして飲みましょう。よく溶かしたら温かいうちにすするようにゆっくり飲んでください。白湯に溶かすことで吸収しやすくなります。漢方薬の量さえ守れば、お湯の量は多くても少なくても、お好みでOK。
外出先では水で飲む
外出先で白湯に溶かして飲めない場合は、粉薬を飲むのと同じように、エキス剤を口に含み水や白湯、お湯で流し込んでください。
飲めない人はオブラート使用もOK
漢方薬が苦くて飲めないという人もいます。どうしても飲めない人はオブラートを活用しましょう。ただし、漢方薬は苦みや甘み、香りも薬効になりますので、できればそれらを感じながら飲むのがおすすめです。
1日に飲む量を守る
漢方薬は薬です。1日に飲む量や回数はしっかり守りましょう。市販の漢方薬の場合はパッケージに書いてある量を守り、病院や漢方薬局の場合は指示された通りの量を飲んでください。
忘れたら気づいたときに飲む
飲み忘れたら、気づいた時点で飲めばOK。それが食後や食間だったとしても、問題ありません。次から食前になるように忘れずに飲みましょう。
漢方薬の気になるあれこれQ&A
最後に、漢方薬について気になる疑問をQ&Aでまとめました。効果や他の薬との飲み合わせなど、参考にしてみてください。
Q.漢方薬はどれくらいで効果が出ますか? 効き目がわかりづらいイメージがあります
A.漢方薬は体質を改善しながらゆっくり効果を発揮します。体質改善のカギになるのが、酸素や栄養を運ぶ“運び屋さん”ともいわれる赤血球。この赤血球が体の中で入れ替わるのに120日(4カ月)かかるといわれています。そのため飲み始めてから3~4カ月は続けてみましょう。
体質に合う漢方薬ならば、その期間中、ずっと変化がないわけではありません。前より眠れるようになった、体が軽くなったなど小さな変化を見逃さずに。また、悪い症状が残ったままだとずっと気になりますが、改善して感じなくなった症状は忘れがちに。病院や漢方薬局に通っていれば、ヒアリングを通して改善した点に気づくこともあるでしょう。
Q.ずっと長年同じ漢方薬を飲んでいても大丈夫ですか?
A.ずっと飲んでいて問題がない漢方もあれば、そうではない漢方もあります。一時的に服用するには効果を発揮するものの、長く続けると違う方向に症状が出てしまう生薬も。そのためにも、漢方薬を飲み始めるときは医師や専門家に相談するのがおすすめです。長く漢方薬を飲んでいる人も、効果を感じなくなった、違う症状が出てきたという場合は定期的に医師や専門家に相談しましょう。
Q.漢方薬は子どもの体調不良にもよいですか?
A.子どもの体質改善にも漢方薬は使われています。植物由来の生薬が多い漢方薬は、子どもはもちろん高齢者にも比較的安心して使えます。また、妊娠中でも服用できる漢方薬もあります。
Q.治療している薬があっても漢方薬を飲んでもよいですか?
A.西洋薬を飲んでいても基本的には問題ありません。ただし、いつも飲んでいる薬以外に、漢方薬やサプリメントを飲み始める場合や、持病がある人はかかりつけ医に相談してからにしましょう。
今月の養生ポイント:病気ではなくても体がつらいなら漢方薬の出番
いま感じている体調不良は、一時的に起こったものではなく、長い間の生活習慣や食生活が原因となっていることが多く、たった数日間漢方薬を飲んだだけで改善するわけではありません。
症状だけでなく、根底にある体質が関係していることもあります。不調を感じている人は我慢せずに漢方外来や漢方薬局に相談してみてください。朝すっきり起きられない、便秘しやすい、日々の疲れが取れない…。こうした体のお悩みも放っておくと病気になる可能性があります。
“未病”の段階での体質改善は漢方薬の得意分野。一度、漢方薬をやめた人や漢方って効かないのでは?と思っている人は、プロに相談してみるのがおすすめです。なんとなく続く体調不良が心配、病気ではないけれど体がしんどいというときに、漢方薬がきっと味方になりますよ。
イラスト/植松しんこ
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