腸腰筋のストレッチで腰痛改善!自宅で簡単にできる5つの方法
腸腰筋のストレッチで腰痛や姿勢の改善を目指しませんか? 固くなると腰痛はもちろん、さまざまな体の不調を招きます。理学療法士が、自宅で簡単にできる腸腰筋のストレッチを紹介します。
目次
腸腰筋とは?
私たちが感じている腰痛のほか、姿勢の維持にも深く関係しているのが、「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉です。
腸腰筋は、ふだんはあまり意識することがない筋肉ですが、上半身と下半身をつなぎ、姿勢を安定させる大切な役割があります。まずは、腸腰筋の位置や働きについてくわしく見ていきましょう。腰痛と腸腰筋との関わりについても解説します。
腸腰筋の位置は腰から太ももの付け根にある
腸腰筋は、腰の骨である「腰椎(ようつい)」から太ももの付け根についている筋肉です。
腸腰筋は次の3つの筋肉が1つにまとまってできています。
- 大腰筋(だいようきん)
- 小腰筋(しょうようきん)
- 腸骨筋(ちょうこつきん)
腸腰筋の中でも腰椎についているのは、大腰筋と小腰筋で、腸骨筋は骨盤についている筋肉です。また、腸腰筋には次のような2つの特徴があります。
- 体の深い位置にあるインナーマッスルである
- 腰や骨盤、股関節といった複数の部位にまたがる
インナーマッスルとは体の深い部分にある筋肉のこと。「深層筋」ともいわれ、体を安定させる役割を持ちます。
また、腸腰筋は腰や骨盤から、足の付け根の関節である股関節まで複数の部位をまたがっているため、さまざまな体の動きや姿勢に影響を与えています。
腸腰筋には姿勢を安定させる働きがある
腸腰筋はインナーマッスルとして、関節の動きや姿勢を安定させる働きがあります。腰椎の動きをコントロールして、腰が反りすぎたり、曲がりすぎたりするのを防ぎ、腰痛を改善させます。
また、骨盤についている腸腰筋は、骨盤の傾きにも関わっています。例えば、骨盤が前に倒れると、腰椎は反った状態になります。反対に骨盤が後ろに倒れると、腰椎は曲がった状態に。背中も丸くなりいわゆる猫背の姿勢になります。
腸腰筋が固くなったり、働きにくくなったりすることでこのような悪い姿勢が続くと、腰にストレスがかかります。すると腰の筋肉に疲労が溜まったり、腰椎が固くなったりして腰痛を引き起こすのです。
このように腸腰筋は、腰椎や骨盤、股関節の動きに関わり、姿勢に影響を与えています。腸腰筋のやわらかさを保つことは、良い姿勢をキープして腰痛の改善につながります。
腸腰筋が固くなり腰痛につながる3つの原因
「腸腰筋が固い」という自覚がある人は少ないと思いますが、誰にでも当てはまるような日々の生活が原因となっています。腸腰筋が固くなる理由には、次の3つがあげられます。
- 長時間のデスクワークで腸腰筋が縮んだまま固くなる
- 冷えにより血行が悪くなる
- 腸腰筋の使いすぎで疲労がたまる
次から、それぞれの原因をくわしく解説します。
デスクワークで常に腸腰筋が縮んだまま固くなる
まずは、多くの現代人が当てはまるデスクワーク。イスに座った姿勢は股関節を曲げた状態になり、上半身と下半身の間にある腸腰筋は縮んだ状態に。その姿勢を長時間続けると、腸腰筋がそのまま固くなってしまうのです。
そのため、イスに座る時間が長い人は、腸腰筋が固くなりやすいといえます。腸腰筋が縮むと、骨盤が前に傾いて、腰椎が反る原因になるため、腰痛につながりやすくなります。
冷えにより血流が悪くなる
体が冷えると、自律神経や筋肉の働きにより血管が収縮して、血流が悪くなります。腸腰筋は腰や股関節を通る太い血管から栄養を受けて、やわらかさを保っています。
そのため、冷えにより血流が悪くなると、周辺の血管からの栄養が行きわたらなくなり、腸腰筋が固くなります。
筋肉は伸びたり縮んだりすることでポンプのように血液を送り出します。そのため、腸腰筋が固くなることで血液がとどこおり、余計に血流が悪くなるという悪循環に陥ります。その結果、腰痛を引き起こしてしまうのです。
腸腰筋の使いすぎで疲労がたまる
腸腰筋は使いすぎで疲労がたまることでも固くなります。使いすぎると筋肉が常に緊張した状態となり、血流を妨げてしまうからです。
先ほどご説明したように、血流が悪くなると筋肉に栄養が届かなくなったり、疲労がたまりやすくなったりして、固くなる要因になります。
腸腰筋は股関節を曲げる働きのある筋肉です。そのため、次のような運動やスポーツが使いすぎの原因になります。
- 階段の昇り降り
- サッカー
- ランニング
- ウェイトトレーニング
腸腰筋に疲労がたまると固くなるだけでなく、動きにくくなり、姿勢を安定させる力が低下。その結果、腰痛を招くのです。
腸腰筋のストレッチで腰痛が改善する3つの理由
固くなった腸腰筋はストレッチでほぐすことでやわらかくなり、力も入りやすくなります。腸腰筋のストレッチで腰痛が改善する理由は3つあります。
- 姿勢が安定する
- 腰の筋肉への負担が軽くなる
- 血流が改善する
腰痛を改善する理由を知っておくと、ストレッチを続けるモチベーションにもつながります。次からくわしく見ていきましょう。
姿勢が安定する
腸腰筋のストレッチで柔軟性がアップして力が入りやすくなると、腰にかかる無理な負担が軽減し腰痛が改善します。
また、腸腰筋が柔軟になれば、腰が反りすぎてしまう“反り腰”が改善する点も、腰痛の発生を防ぐポイントになります。
腰の筋肉への負担が軽くなる
腸腰筋のスレッチにより、姿勢や股関節の動きが改善されると腰の筋肉にかかっている負担が軽くなります。
特に腸腰筋が固くなり、股関節の動きも悪化すると、しゃがんだり、中腰になったりするときに、股関節ではなく腰ばかりが動きます。そのため、腰の筋肉に無理な負担がかかるのです。
腸腰筋が柔らかくなれば、腰、骨盤、股関節がスムーズに動きます。筋肉をバランス良く働かすことができると腰が楽になり、腰痛が気にならなくなるでしょう。
血流が改善する
ストレッチによる腸腰筋の柔軟性が高まると、腸腰筋周辺の血流が良くなります。
先にご説明したように、腸腰筋は深層部にあるインナーマッスルです。近くにさまざまな太い血管が通っているため、腸腰筋がほぐれることで全身の血流が良くなります。
腰周りの血流が全体的に良くなることで、疲労物質の蓄積や筋肉の緊張を防ぐことができ、腰痛の改善につながるでしょう。
ほかにもある! 腸腰筋のストレッチによるうれしい3つのメリット
腰痛の改善以外にも腸腰筋のストレッチにはうれしいメリットがあります。ストレッチを続けて、より快適な体を目指しましょう。
足があがりやすくなる
腸腰筋は股関節を曲げる筋肉です。ストレッチによって腸腰筋自体が柔らかくなると、足があがりやすくなります。日常生活や運動をするときに、股関節周りがスムーズに動くことを感じられるでしょう。
呼吸がしやすくなる
意外かもしれませんが、腸腰筋は呼吸にも関係しています。呼吸をするときに働く「横隔膜(おうかくまく)」と腸腰筋はつながっています。そのため、腸腰筋ストレッチを続けると、横隔膜も動きやすくなり、呼吸がしやすくなる効果が期待できます。
深い呼吸が自然とできるようになると、体に酸素をたくさん取り込むことができ、疲労回復やリラックス効果など健康維持に役立ちます。
代謝が良くなりダイエットにつながる
先にご説明した通り、腸腰筋の近くには太い血管が通っているため、ストレッチで血流が良くなると体の代謝も改善します。その結果、脂肪が燃焼しやすい体になり、ダイエットにつながります。
自宅で簡単にできる腸腰筋のストレッチ5選
腸腰筋のストレッチは生活の中の“すきま時間”に取り入れるのがおすすめです。自宅でできる方法をご紹介しますので、腰痛や姿勢が気になる人は今日からはじめてみましょう。毎日すべてのストレッチを行う必要はありません。続けやすいストレッチから取り組んでみてください。
寝たままできるストレッチ
夜寝る前や朝起きたときにおすすめの寝たままできるストレッチ。腸腰筋を伸ばすだけでなく、気持ちもリラックスできます。
【やり方】
- 仰向けになり体をゆるめる。
- 右脚のひざを抱えて、太ももを胸に近づけるように曲げる。左脚はできるだけ伸ばす。
- そのまま15〜30秒キープする。
- 脚を入れ替えて、反対側も同様に行う。
座ってできるストレッチ
デスクワークやテレビを見ているときなど、イスに座ったついでにできるストレッチです。“ながら”で良いのでこまめにやってみましょう。継続しやすくおすすめです。
【やり方】
- イスに浅く座る。右脚の股関節を伸ばすように右脚を後ろに引いて、左脚を前に出す。
- 背中をまっすぐ伸ばしながら、お腹を突き出すように上半身を前に傾ける。
- 右脚の太ももの前側が伸びるのを感じながら15〜30秒キープする。
- 脚を入れ替えて、反対側も同様に行う。
立ってできるストレッチ
壁があればどこでもできる、立ったままのストレッチ。仕事や家事の合間に、立ち上がったついでに試してみてください。股関節周りが気持ちよく伸びるのを感じましょう。
【やり方】
- 左脚が壁側になるように立ち、左手を壁について右手はお尻に添える。
- 右脚が後ろにくるように両脚を大きく前後に開き、腰を前に突き出す。
- 右側の太ももの前側が伸びるのを感じながら15〜30秒キープする。
- 脚を入れ替えて、反対側も同様に行う。
テニスボールを使ってできるストレッチ
続いて、テニスボールを使ったストレッチです。テニスボールで直接圧迫することで、体を動かすストレッチでは伸びにくい部分を伸ばすことができます。「気持ちいい」圧迫感を目安に、痛みがない程度に圧をかけましょう。
【やり方】
用意するもの:テニスボール1個
- うつ伏せになる。へそと、右側の骨盤の出っ張っているところの間にテニスボールを入れる。
- 上半身を起こして両ひじで体を支える。
- 右脚を少し持ち上げて、腸腰筋に圧を加え、15~30秒キープする。
- テニスボールを左側に入れ替えて、同様に行う。
もっと伸ばしたいときのストレッチ
紹介した4つの方法以外に、もっと腸腰筋を伸ばしたいときや、さらに腰痛対策をしたい場合は、次のストレッチを行ってみてください。
バランスを崩しやすいのでゆっくりと行い、腰が反らないように気をつけましょう。ひざが痛い場合はクッションや座布団などを敷くのがおすすめです。
【やり方】
- 右ひざを床につけ、左ひざを立てて片ひざ立ちになる。
- 大きく前後に足を開くように重心を前に移して、太ももの前側をストレッチする。
- 体勢をキープしたまま、右腕を天井に突き上げ、上半身を左側にひねる。15〜30秒キープする。脚を入れ替えて、反対側も同様に行う。
まとめ:腸腰筋のストレッチで腰痛のない快適な体に
上半身と下半身をつなぐ重要な筋肉、腸腰筋について解説しました。腸腰筋が腰痛に関係があると言われても、なかなか理解しづらい人も多いのではないでしょうか。デスクワークや疲労がたまって固くなっていても、原因としてつい見逃されがちです。
今回ご紹介した方法で腸腰筋をストレッチして、常に柔軟に保つことが大切です。腸腰筋がスムーズに働くことで、良い姿勢を保つことができ、つらい腰痛の改善・予防につながるでしょう。
また、腸腰筋は腰痛以外にも脚の上がりやすさや呼吸などにも関係があります。ストレッチを続けることで体の調子を整え、快適な生活を送りましょう。