管理栄養士が食べている「免疫力アップ」を叶える食材まとめ9選
風邪をひかずに体調を崩さず過ごしたい。そんな健康な毎日のために、食事で体の中から元気になる、免疫力アップ食材をご紹介します。管理栄養士も食べている健康に役立つ食材で、不調を寄せつけない体を目指しましょう。
目次
免疫力とは?
風邪をひかずに体調を崩さないためには、「免疫力が大事」と聞いたことがありますよね。
そもそも免疫力とは、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入してきたときに、そのウイルスと戦って倒す能力のことを言います。ウイルスや細菌が体内に侵入して病気になると、体内でそれに対する抗体が作られ、2度目の感染を起こさなくするという、人体に備わったすばらしいバリア機能です。
免疫力が低くなるとこの機能が弱くなり、体外から侵入してきたウイルスや細菌に対する抵抗力が低下。その結果、風邪を引きやすくなったり、他の病気にかかりやすくなったりするのです。免疫力はさまざまな病気から体を守る、自己防衛システムといえます。
免疫力をアップすると不調や病気の予防に
健康な体を維持するためには、常に免疫力を高めておくことが欠かせません。免疫力がアップすると、次のように不調や病気を予防する力が高まります。
- 風邪を引きにくくなる
- 腸の調子が整い、便秘や下痢をしにくくなる
- 病気になりにくい元気な体をキープできる
他にも、美肌効果や若返り効果などの良い効果があります。
食事で免疫力をアップするには?
免疫力をアップするために最も大切なのが食事です。私たちの体は、口に入れるものからできていると言っても過言ではありません。
食事で免疫力をアップさせるには、いくつかのポイントがあります。毎日の生活に摂り入れやすいポイントを紹介しますので、次からくわしく見ていきましょう。
体温を上げる食事を摂る
免疫力アップにまず大切なのが体温を上げることです。体温は1℃下がると免疫力は30%低下もするといわれています。反対に1℃上げると一時的に6倍もアップするといわれています(※1)。
体温を上げるためには、食材に含まれる「ファイトケミカル」という物質が効果を発揮します。ファイトケミカルとは、植物が自己を守るために生まれた物質であるといわれています。紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分のこと。人間でいうと「免疫力」であり、「植物の免疫力」そのものです。
ファイトケミカルの中でも、体温を上げるために代表的なのは、ショウガに含まれる「ショウガオール」やにんにくに含まれる「アリシン」です。体温アップに効果的な食材は、この記事の後半でくわしくご紹介します。
また、食事のほかに、体温を上げるには次のような習慣もおすすめです。
- 毎朝白湯を飲む
- 湯船に入る
- 運動をする
食事以外でも体温を上げる習慣を取り入れて、免疫力アップを目指しましょう。
(※1)雑誌『からだにいいこと』2018年2月号 冬の病気・不調は「免疫力」で防ぐ! より
腸内環境を改善する
腸は、食べ物を消化・吸収する臓器ですが、食べ物と共に外からウイルスや病原菌などが侵入するリスクが高い場所でもあります。
体を守るために、腸の内側には免疫をつかさどる「免疫細胞」が集中。体全体の免疫細胞の約7割が腸に集まっているといわれています。
そのため、免疫力を高めるためには、腸の状態を良くすることが重要です。腸には何兆個もの細菌が住み着いているといわれ、悪玉菌・日和見菌(ひよりみきん)・善玉菌という菌が存在。その割合は「1:7:2」が理想的です。日和見菌とは、腸内の状況で、善玉菌・悪玉菌の優勢な方に味方する菌。善玉菌が多い場合は善玉菌に、悪玉菌が多い場合は悪玉菌になるという性質を持っています。
腸内環境を整えるには、食事を改善して善玉菌を優位にすることが大切。そのためにも食物繊維や発酵食品などを日々の食事に摂り入れていきましょう。
ちなみに悪玉菌が優位になると下痢や便秘につながりますが、悪い働きだけではありません。肉類などのタンパク質を分解して便として処理排泄するという、生きていくうえで大切な働きも担っています。このように免疫力アップに直結する腸内環境は、“良いバランス”をいかにキープするかが大切になってきます。
免疫細胞を増やす食事
免疫をつかさどる免疫細胞は、タンパク質から構成されています。体の中にはさまざまな免疫細胞が存在し、外から侵入したウイルスや細菌などと戦っています。
免疫細胞を強化するためには、材料となるタンパク質を食事からしっかり摂ることが大切。タンパク質は肉や魚、卵、大豆食品などに含まれますが、良質であることが重要です。
良質なタンパク質とは、体で作り出すことができない、9種類のアミノ酸がバランス良く含まれたタンパク質のこと。この9種類をまとめて「必須アミノ酸」といいます。
必須アミノ酸すべてが、バランスよく含まれているかを数字で表したものを「アミノ酸スコア」といい、アミノ酸スコアが100または100に近いものを良質なタンパク質と呼んでいます。
また、タンパク質不足は筋肉量の低下を招きます。タンパク質が不足すると、基礎代謝量が減少。体温の低下を招き、免疫力が下がる原因になります。免疫細胞の強化、筋力アップのためにもタンパク質をしっかり摂りましょう。
栄養に関する研究で世界をリードするDSM社の“ビタミン博士”こと乾泰地さんが、不調を栄養素で解決する方法を教えてくれるこの連載。第9回は「免疫力アップ」です。新型コロナウイルスで、続いた“巣ごもり”生活。外出ができる生活が戻りつつありますが、また気は抜けません。自分の健康を自分で守ることがより重要となった今、「免疫力アップ」のために大切な栄養素をご紹介します。
免疫力をアップするおすすめの食材9選
免疫力を上げるには日々の食事がカギになります。免疫力を上げるポイントは次の3つです。
- 体温を上げる
- 腸内環境の改善
- 免疫細胞を増やす
ここからは、免疫力アップを叶える、おすすめの食材を紹介します。管理栄養士も食べている9つの食材を、今日から食生活に摂り入れてみましょう。
(1) ファイトケミカル:ショウガ
体温を上げる効果のあるファイトケミカル。ご説明した通り、ファイトケミカルとは植物が身を守るために生まれた物質であり、「植物の免疫力」ともいえます。
ショウガには、「ショウガオール」というファイトケミカルが含まれ、体を温めて血行を良くする効果があります。
体温の上昇は免疫力アップの要になるため、ショウガは毎日に摂り入れたい食材の1つです。
注意点として、ショウガオールは「80度以上の加熱」によって活性化するといわれています。味噌汁におろしたショウガを入れて火にかけ、温かいうちに飲んだり、スライスしたショウガを保温機能のある水筒に入れて、80度以上の熱湯を注いで飲んだりと、毎日の食事に摂り入れてみてください。
(2) ファイトケミカル:にんにく
にんにくにも、「アリシン」というファイトケミカルが含まれています。アリシンは、免疫力の向上効果があるといわれています。
また、疲労回復に効果的なビタミンB1の吸収を助けることが知られており、滋養強壮効果が期待できます。
アリシンは、優れた殺菌効果で、体内に入ってきた菌を死滅させます。鍋料理に皮をむいたニンニクを丸ごと入れて調理したり、野菜炒めの隠し味に少し入れるのもおすすめです。
(3)発酵食品:納豆
腸内環境の改善に最強なのが発酵食品です。中でも納豆は、日本の伝統的な発酵食品の1つ。
納豆は大豆を納豆菌で発酵させたもので、さまざまな健康効果があります。納豆菌は善玉菌の一種で、腸内の善玉菌を増やす効果があります。善玉菌が増えると、腸の動きが活性化し、免疫力アップにつながります。
また、納豆の主成分である大豆は、良質なタンパク質の塊でもあり栄養価も抜群。多くのビタミンやミネラル、血栓予防に役立つ「ナットウキナーゼ」という酵素なども含まれています。
納豆は、朝食や夕食で1日1パックを目安に食べるといいでしょう。
(4)発酵食品:ヨーグルト
ヨーグルトも発酵食品の代表です。ヨーグルトには善玉菌である「乳酸菌」が含まれ、腸内環境の改善に効果的です。乳酸菌は腸内で悪玉菌の繁殖を抑え、腸内細菌のバランスを保つ役割があります。 腸内環境を良くして免疫力を上げることはもちろん、そのほかにもコレステロールの低下やピロリ菌の除去機能を持つといった働きも報告されています。(※2)
ヨーグルトはデザートや、朝食などで毎日摂り、腸から免疫力アップを目指しましょう。また、サラダのドレッシングとして使ったり、フルーツと合えて食べたりするのもおすすめです。
(※2)参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 乳酸菌
(5)食物繊維:海藻
食物繊維豊富な海藻も免疫力アップに効果的です。食物繊維には水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けずに水分を吸収する「不溶性食物繊維」があります。
海藻は「水溶性食物繊維」が豊富です。便の量があっても、するっと押し出すことができなければ便秘の原因になります。
便に水分を含ませることができる水溶性食物繊維をしっかり摂り、便をスムーズに出す手助けをしましょう。
乾燥わかめは簡単に料理に使えるので、さっとひとつまみ味噌汁に入れたり、酢の物に加えるなどが手軽です。
不溶性の食物繊維は、比較的ふだんの食事で摂取できるため、海藻などの水溶性食物繊維を特に意識して食べましょう。
(6)食物繊維:さつまいも
腸内環境をよくするには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切。不溶性食物繊維でおすすめなのがさつまいもです。
不溶性食物繊維は、繊維が多く腸内で分解することができないため、腸内細菌の餌になり、便の量を増やしてくれる効果があります。
便の量が増えると、排便時に腸の壁に残っている古い便も一緒に削ぎ取ってくれて、押し出す力も増します。
さつまいものほかにも、キャベツや大豆などにも不溶性食物繊維が多く含まれています。間食や副菜として摂り入れるのがおすすめです。
(7)良質なタンパク質:牛ヒレ肉
免疫細胞を増やすためにはタンパク質の摂取が必須とお伝えしました。中でも脂身の少ない赤身肉は、良質なタンパク質の塊。特に牛肉のたんぱく質は、必須アミノ酸のすべてがバランスよく含まれているかを数字で表した、「アミノ酸スコア」が100点の食品です。これらの点から、牛ヒレ肉は良質なタンパク質摂取におすすめの食材。
タンパク質の摂取量は、自分のこぶし1つ分くらいを目安に、毎食欠かさず摂りましょう。タンパク質は、動物性だけでなく大豆食品といった植物性からも摂取できます。なるべく色々な食材から摂り入れましょう。
(8)良質なタンパク質:豆腐
植物性タンパク質の代表といえば、大豆が主成分の豆腐です。大豆は良質なタンパク質が豊富で、その他にも、ビタミンやミネラル、レシチン、サポニン、イソフラボンなどのファイトケミカルも多く含み栄養満点。
特に、女性ホルモンに似ている働きを持つといわれる「大豆イソフラボン」が注目されています。味噌汁に入れたり、湯豆腐で食べたりと手軽に食べられるのも魅力。汁物や副菜に活用して毎食摂りましょう。
(9)良質なタンパク質:鯖
良質なタンパク質は、魚からも摂りましょう。栄養満点な青魚として積極的に摂りたいのが鯖です。
免疫力アップに欠かせないタンパク質が豊富なほか、DHAやEPAなどの「オメガ3脂肪酸」を多く含んでいます。オメガ3脂肪酸は、体の炎症を抑える働きがある良質な油で、摂取量の少ない現代人は特に摂りたい栄養素です。鯖は、定番の焼き魚や、南蛮揚げにするなどの食べ方が良いでしょう。
免疫力を下げてしまう食事
ここまで、免疫力アップのために食べたい食材を紹介しました。反対に、免疫力を下げてしまう食事はどんなものでしょうか?
それは、ファストフードや加工食品、加工肉などの添加物を多く含む食事です。添加物は、体に悪い作用はあっても、良い作用が期待できるものではありません。
添加物を体内で消化するために、非常に多くのビタミンやミネラル、酵素が必要になります。せっかく体に良い栄養素を摂っても、体に悪い食事の代謝に利用されるならば意味がありません。
免疫力を上げて健康的な体の基礎をつくるためにも、添加物の多い食品は、なるべく食べない方がいいでしょう。体に悪いものを控えることも、免疫力を上げる近道となります。
まとめ:免疫力アップのためには体温を上げて腸内環境を整える食材を
管理栄養士が食べている、免疫力アップに効果的な食材をご紹介しました。免疫力を上げるためには、「体温を上げる」「腸内環境を整える」「免疫細胞を増やす」食事が大切です。
そのためには、“植物の免疫力”ともいわれるファイトケミカルや、免疫細胞の材料となるタンパク質を多く含む食材、腸内環境にいい発酵食品を毎食しっかり食べましょう。
また、反対に免疫力を下げる、ファストフードや加工品は控えめに。良い食材を摂り入れて悪いものを摂らない。これが免疫力の高い体をキープするための秘訣です。
免疫力が上がると、風邪を寄せつけない体になりちょっとした体調不良も少なくなるでしょう。ご紹介した9つの食材うち1つでも良いので、日々の食生活に取り入れてみてくださいね。
腸内環境を整える食物繊維や、発酵食品などをコツコツ食べれば免疫力アップや便秘改善、ダイエット、美肌効果が期待できます。おいしい腸活レシピで、不調をスッキリ改善しましょう。
[ 監修者 ]