踏み台昇降がダイエットに効果的な理由|メリットと正しいやり方は?
踏み台昇降は、「やせたいけど何から始めたらいいかわからない」「筋トレがなかなか続かない」といった運動初心者におすすめの方法です。理学療法士が、踏み台昇降のやり方や効果をくわしく解説します。
目次
踏み台昇降とは高さ20cmほどの台を昇り降りする運動
踏み台昇降は、「簡単に始められそう」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。踏み台昇降とは、「高さ20㎝ほどの台を昇り降りする運動」のこと。
脂肪を燃やしやすい有酸素運動で、ダイエット効果が期待できます。踏み台昇降には体重を落とすだけでなく、女性にうれしいむくみ解消効果や下半身やせにも効果があります。
踏み台昇降の効果
「踏み台昇降をやってみたい」と思ったときの目的は、ダイエットや健康効果ではないでしょうか。踏み台昇降で得られる効果には、次の4つがあります。
- ダイエット効果
- むくみ改善効果
- 脚の筋力アップ効果
- 病気・不調の予防
踏み台昇降は段差の昇り降りを繰り返す単純な動作ですが、その動きの中にはダイエットや健康維持に役立つポイントがたくさん詰まっています。
ダイエット効果
まず女性にとってうれしいのがダイエット効果。踏み台昇降がダイエットにいい理由として「有酸素運動であること」「大きな筋肉が鍛えられること」にあります。
有酸素運動だからカロリーを消費しやすい
「ダイエットには有酸素運動が良い」と聞いたことはありませんか? 有酸素運動とは、おしゃべりしながらでもできるくらいの軽めの運動を、最低20分程度行う運動です。キツすぎない運動で、体にたっぷりと酸素を取り込みながら行い、体脂肪を燃しやすいという特徴があります。
有酸素運動の代表といえばウォーキング、ランニング、エアロビクスなど。キツくない運動を長めに行うことで、筋トレなどの無酸素運動に比べて女性や運動習慣が少ない方でも取り入れやすい種目が多くなっています。踏み台昇降も有酸素運動のひとつです。
大きな下半身の筋肉を鍛えて代謝を上げる
ダイエットのためには筋肉をつけて代謝を上げることが大切です。踏み台昇降は、昇り降りするときにお尻や太ももといった下半身の筋肉を主に使います。他の有酸素運動と比べても筋トレ効果が大きく、効率よく代謝を上げることができます。
踏み台昇降の消費カロリー
運動をする際に多くの人が気になるのが消費カロリーです。踏み台昇降の消費カロリーを求めるために、「METs(メッツ)」を用いたカロリー計算の方法をご紹介します。
「METs(メッツ)」とは、身体活動の強さの単位のことで、運動ごとにMETsが定められています。踏み台昇降のMETsは、台の高さや動く速さにもよりますが、今回は厚生労働省から発表されている「生活活動のメッツ表」の「階段を上る(ゆっくり)」を参考に、METsとして計算してみます(※1)。
【METsを用いたカロリー計算の方法】
METs×体重(kg)×時間×1.05=消費カロリー(kcal)
例えば体重60kgの人が踏み台昇降を30分やった場合…4METs × 60(kg)× 0.5(時間)× 1.05= 126 (kcal)となります。安静時に代謝するカロリーも含まれています。
このように踏み台昇降を体重60kgの人が30分行った場合、ごはんを茶碗に半分盛った程度の126kcalを消費します。自分の体重を当てはめて計算してみると、大体のカロリー消費がわかります。運動を続けるモチベーションにもなるのでおすすめです。
(※1)厚生労働省「生活活動のメッツ表」
※踏み台昇降のMETs数は調査・研究により異なる場合があります。
むくみ改善効果
踏み台昇降には下半身の血流やリンパの流れを良くしてむくみを改善する効果もあります。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれます。心臓のようにポンプ作用があるふきらはぎを動かすことで、下半身から上半身へ血液を送り戻す働きがあります。
脚のむくみの原因は、ふきらはぎを動かす機会が減ること、それにより冷えることがあげられます。踏み台昇降で下半身の血流がよくなると、脚がすっきりして軽くなるでしょう。また、むくみが取れると脚がほっそり見える効果もあります。
脚やお尻の筋力アップ
踏み台昇降は足の筋力アップにも効果的です。昇るときだけでなく、降りるときも太ももやふくらはぎの脚の筋肉全体を使っています
特にお尻の筋肉は年齢とともに使われにくくなるため、運動で鍛えることで筋力がつきやすくなります。また、脚やお尻といった下半身の筋肉を鍛えることで、転倒を予防してケガを防ぐことにもつながります。
病気・不調の予防
踏み台昇降は、将来の病気や体の不調を予防する効果もあります。踏み台昇降のように一定のリズムで行う反復運動は、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌が促進され、うつ病の予防になるといわれています。また、認知症などの将来の病気を予防する運動ともいわれています。
このように、「台を昇り降りする」という簡単な動きなのに、さまざまな効果が得られる踏み台昇降。続いて、踏み台昇降ならではのメリットについてご紹介します。
踏み台昇降のメリット
ダイエット法はたくさんありますが、ウォーキングやジョギングなどにはない、踏み台昇降ならではのメリットが4つあります。
- 天候に左右されにくい
- アパートでも音が気にならない
- 人目につかず運動できる
- “ながら”で続けやすい
踏み台昇降のメリットは、なんといっても家の中でできるところ。外で行う運動と比べて雨や雪などの天候に左右されません。自宅ですぐできるのでウエアに着替える必要もなし。
また、スマホやタブレットで動画を見ながら行うことも人気ですが、運動によっては激しい動きもあり「音が気になる」という心配も。踏み台昇降は、ゆっくりと昇り降りすることが筋力アップにつながるため、アパートでも運動による騒音が気にならず、比較的取り組みやすいといえます。
さらに、ダイエットしていることを知られたくない人にもおすすめ。外に出ずとも行えるダイエット法なので人目を気にせず汗をかくことができます。
好きな音楽を流す、テレビを見るといった“ながら運動”としても最適で、飽きずに続けられるという点も大きなメリットです。
踏み台昇降はどれくらいで効果が出る?
どの運動も続けることで効果があらわれますが、踏み台昇降には、すぐにあらわれる効果と、実感できるまでに時間がかかる効果の2つがあります。
効果が目に見えないとモチベーションが下がったり、あきらめてしまったりすることもあります。そのため効果があらわれるまでの目安を知っておくことで焦らずに済むでしょう。次に紹介する期間を参考にして続けてみてください。
体重減少は1~2カ月後
踏み台昇降による体重の減少は1~2カ月後に実感できるでしょう。これは、踏み台昇降で消費したカロリーにより、体重減少に到達するまでの時期と考えてください。始めた当初は、まず筋力がアップして脚に筋肉がつきます。
筋肉がつくと一時的に体重が増えることがありますが、気にする必要はありません。そのまま2カ月くらい続けていくと、筋肉が増えて代謝がアップ。徐々に体重や体脂肪が減るといった目に見える効果があらわれます。
下半身やせは2~3カ月後
踏み台昇降で下半身が引き締まってくるのは2~3カ月後くらいからです。筋肉は1日運動しただけではつきません。続けるうちに下半身に筋肉がつき、太ももやお尻が引き締まってきます。
最低でも2カ月は続けてみてください。少し時間はかかりますが、筋肉がついてお尻が上がることにより脚が長く見え、スタイルアップにつながります。
筋力アップはすぐに効果が見られる
脚やお尻の筋力アップは、踏み台昇降を始めてから数日で効果があらわれるでしょう。もともと運動習慣がなかった人ほど筋力がついたことを感じられるはずです。
立ち仕事で疲れを感じにくくなる、階段をスイスイ昇ることができる、脚が軽くなったなどを体感できたら、筋力がアップしている証拠です。
踏み台昇降の正しいやり方
ここまで踏み台昇降の効果や、それを実感できるまでの期間についてご説明しました。踏み台昇降は台を昇り降りする単純な運動です。しかし、その単純な動きの中にもダイエット効果を高めるポイントがいくつかあります。ここからは、踏み台昇降の正しいフォームや強度について解説します。
【正しいフォーム】腹筋に力を入れて腰骨から上がるイメージで
踏み台昇降を正しいフォームで行ううえで気をつけたいのは、背すじを伸ばして腹筋に力を入れることです。猫背にならないように気をつけながら行うと、腰骨から台に上がるイメージで足を踏み出すことができます。
踏み台昇降のやり方
準備:踏み台を用意する。滑りやすい場合はうすい滑り止めマットを踏み台に巻くか、室内用シューズを着用。
- 腹筋に力を入れて背すじを伸ばし、胸を張る。
- ひじを90度に曲げ、腰骨から上がるイメージで右足から昇る。このとき、つま先は上に向ける。
- 続けて左足も昇り、台の上に立つ。
- 腹筋に力を入れたまま右足をおろして1に戻る。これをリズミカルに繰り返す。
昇り降りするときに、音が出ないようにゆっくり行うと筋トレ効果アップがねらえます。消費カロリーを増やすためには、下半身の動きに合わせて腕も大きく前後に動かすことが効果的。
【速さ】1秒より少し遅いくらいの速さで続ける
踏み台昇降は一定の速さで行います。おすすめの速さは、1秒より少し遅いくらいのリズム。インターネットで「メトロノーム80」を検索してそのテンポにあわせて昇り降りを繰り返すと良いでしょう。それでも速いと感じる場合は、もっと遅くてもOK。踏み台昇降は単調な動きになるため、好きな音楽があればBGMとして活用するのおすすめです。
【頻度】ダイエット目的の場合は2~3日おきに行う
踏み台昇降を行う頻度は、以下のようにいわれています。
- 健常な成人:週2~5日
- メタボリックシンドロームや肥満の場合:毎日
以上のことを踏まえて、ダイエット目的であれば「2~3日おき」に実施を。1回あたりの運動は、脂肪燃焼に効果的といわれる「30分程度」が目安です。しかし、始めたばかりでつらい場合は数分でも良いので運動習慣をつけましょう。息が上がりすぎない程度に、運動を楽しみながら行うことが継続のポイントになります。
【強度の変更】負荷を上げたい場合は高さと重量を変える
踏み台昇降を続けて、筋力や持久力が上がってくると物足りなさを感じることがあります。そんなときは使っているステップ台を高くして運動強度を上げる方法があります。高さ調節ができるステップ台の場合は少し高くしてみてください。
もう1つは、重量を変える方法があります。踏み台昇降を行う際に500mlのペットボトルに水を入れて持ちましょう。足首に巻くアンクルウェイトやダンベルがある場合はそれを使ってもOKです。
踏み台昇降の注意点
踏み台昇降は注意しておきたい点もあります。運動するタイミングや中止の判断を間違ってしまうと、ケガや体調不良につながることもあります。効果を出すためにも健康で長く運動を続けることが大切です。以下の注意点を守って行いましょう。
体調が悪いときは無理をしない
踏み台昇降だけでなくすべての運動に共通することですが、体調に不安がある場合は無理をしないこと。体調が悪く、足元がおぼつかない状態で行うと、転んでケガをする可能性も。体調が万全の日に行うことを前提としましょう。
寝起きや寝る前、食事の前後はやめる
踏み台昇降は、寝起きや食事の直前・直後、寝る前の3つのタイミングで行うことはおすすめしません。寝起きは体が固まっていて、動く準備が整っていないため、ケガにつながる危険性があります。
また、健康な成人であれば空腹時に運動をすることは脂肪燃焼につながります。しかし、あまりにも空腹すぎる場合は控えましょう。糖尿病でインスリン療法や服薬中の方はとくに低血糖になる危険もあります。
食事の直後は、血液が胃腸に集中します。そこで運動をすると、消化のための血液が筋肉に流れてしまいうまく消化できなくなります。食後は最低でも30分は空けてから行いましょう。おすすめは、食後30分以降~1時間の間。この間に有酸素運動を行うと、血糖値の上昇がゆるやかになり、ダイエット効果が期待できます。また、アルコール摂取後もバランスを崩しやすく危険なのでやめましょう。
さらに、寝る直前の踏み台昇降もおすすめしません。布団に入る直前に運動を行うと、寝つきに影響します。夜に行う場合は、最低でも寝る2時間前には終わるタイミングで行います。
痛みが出たときはケース別に判断する
運動をしていて痛みが出ると、このまま続けていいのか不安になりますよね。その判断は、痛みのケースで違います。
運動を中止すべき痛みは、股関節、ひざ、足首が体重をかけたときに痛むケース。関節に負担がかかっているため、ケガつながる可能性があります。運動を一時中止して、整形外科を受診しましょう。
運動を続けても良い痛みは、筋肉痛のケース。運動をすると一時的に筋肉が傷つき、その後修復をすることで筋肉が強くなります。その過程であらわれるのが筋肉痛です。
関節ではなく筋肉に痛みがある場合は、心配せずにそのまま続けて問題ありません。筋肉痛がつらい場合は軽いストレッチや、ウォーキングで血流を促し、痛みが和らいだあとに踏み台昇降を再開しましょう。
踏み台がない場合の対処法
踏み台昇降を行うのに必要になるのは踏み台です。踏み台昇降専用の「ステップ台」は、インターネットで購入できます。
購入するときは安定感があり高さが調節できるものを選ぶと長く使えます。また、ステップ台をまだ購入していない場合は身近にあるもので代用できます。まずは代用品でやってみて、習慣化したら専用のステップ台を購入するのも良いでしょう。
【代用品】雑誌をまとめて踏み台に
コストをかけないやり方としては、読み終わった雑誌をまとめて踏み台にする方法があります。大きさが揃った雑誌をヒモでしっかりとまとめて、100円ショップなどで売られているうすい滑り止めマットでくるみます。転倒を防ぐためにも雑誌は必ず同じサイズを使います。これらはあくまで代用品なので、長期的に踏み台昇降を行う場合は、専用のステップ台を購入しましょう。
【注意】階段では実施しない
「踏み台昇降は階段でもできるのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし階段での運動は、室温の調整がむずかしい、段の高さが変えられない、飽きやすいといった理由で控えたほうが良いでしょう。
まず、階段のある場所は空調設備がないところが多く、暑い場合は熱中症、寒い場合は肉離れなどのケガのリスクが高まります。また、段差の高さを変えられないため負荷量の調節がむずかしい点もデメリットとなります。
階段の場合は、踏み台昇降の良いところでもある“ながら”がしにくい点もあります。テレビや動画を見ながら行うことができず、モチベーションも低下しやすいでしょう。このように、踏み台昇降は階段ではなく部屋の中で行う方がおすすめです。
まとめ:踏み台昇降は誰でも続けやすいダイエット法
運動は苦手でも、ダイエットのために何か始めたいと思っているならば、踏み台昇降はおすすめの方法です。下半身の筋肉を効果的に鍛えられ、脂肪燃焼効果も高い踏み台昇降。ダイエット効果以外にむくみ改善にもつながります。
何より、「昇り降りするだけ」という簡単さも魅力。テレビや動画を見ながら行うことができ、自分で運動量の調節もしやすいので、年齢を問わず続けやすい運動といえます。脂肪を燃焼させてダイエットしたい人、運動不足が気になる人は、ぜひ踏み台昇降を始めてみてください。
多くの人が一度はやったことがあるラジオ体操。実はさまざまな効果が期待できることを知っていますか? しっかりと行えば、私たちの心と体の健康に役立ちます。今回はラジオ体操の効果やコツ、注意点を解説します。