肩こりで感じる“ゴリゴリ”の正体は?理学療法士がセルフケアを解説
マッサージをしてもらったときに感じる肩のゴリゴリ。その正体が何なのか気になりますよね。理学療法士が、肩のゴリゴリの原因と、肩こりを改善・予防するための効果的なセルフケアをご紹介します。
目次
肩こりのときの“ゴリゴリ感”の正体とは?
肩こりがつらくて、指圧やボディートリートメントなどのマッサージに頼っている人も多いのではないでしょうか。触ってもらったときに感じるのが、肩のゴリゴリしたもの。ズバリその正体は、過剰に収縮した筋肉です。
筋肉は、本来マッサージをされるとゆるやかにほぐれていきます。しかし、緊張や疲労などの何らかの原因によって、マッサージをされても硬い筋肉がほぐれず、ゴリゴリとした感覚を覚えることがあります。
また、肩のゴリゴリ感に加え、筋肉が過剰に収縮して硬くなっている場合は、血流や老廃物の流れが悪くなっていることも考えられます。その場合、押されたときに痛みも感じることがあります。
硬さに加え、痛みも出ているときは、そのまま放置すると症状が悪化してしまう可能性もあります。ストレッチや入浴、運動などで早めにケアしましょう。まずは、ゴリゴリする原因をくわしく解説します。
肩がゴリゴリする3つの原因
肩こりで悩む人の中で、多くの人が感じたことのある肩のゴリゴリ。ゴリゴリする原因として考えられるのは、大きく3つあります。
- 血行不良が生じている
- 姿勢が悪くなっている
- ストレスが蓄積している
ゴリゴリの原因となるものを知り、改善や予防に役立てましょう。3つの原因について、くわしくご説明します。
血行不良が生じている
筋肉に血行不良が生じると、栄養分や酸素が行きわたらず、老廃物が蓄積され、ゴリゴリ感や痛みにつながる可能性があります。そのままにしておくと、老廃物のせいでますます筋肉が硬くなる、という悪循環に。
私たちの体に流れる血液は、体のすみずみまで栄養や酸素を届け、二酸化炭素や疲労物質の「乳酸」といった老廃物を排出する働きがあります。そのため、血行不良が生じると、筋肉に栄養が行き届かず体は危険信号として痛みを出します。
姿勢が悪くなっている
デスクワークやスマホ操作の多い現代人がなりやすいのが猫背です。悪い姿勢が続くことでも、肩や首周りの筋肉が縮まり、肩のゴリゴリにつながります。
人間の頭の重さは、成人で体重の10%ほどといわれます。体重が60kgの人の場合、頭の重さは6kgもあります。
頭は肩の真上にあり、正しい姿勢で生活できれば、筋肉への負担は少なく済みます。しかし猫背だと、頭が肩よりも前のほうに突き出て、それを支えるために首への負担が大きくなります。これが肩こりを引き起こす原因のひとつに。
特にデスクワークを長時間行う人は注意が必要です。背中が丸くなりやすく、肩や首の負担が強くなる傾向にあります。
ストレスが蓄積している
意外かもしれませんが、ストレスも肩こりの原因となります。関係しているのが自律神経の働きです。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあります。体が興奮しているときに優位になるのが交感神経で、リラックスしているときに優位になるのが副交感神経です。
ストレスを感じるとこのうち交感神経が優位に。すると筋肉は緊張状態が続き、肩こりを引き起こす要因になります。
その肩こりは放置すると危険? 肩こりの裏にひそむ3つの病気とは
肩こりの大半はご紹介したような血流の悪化や姿勢にありますが、なかには病気が隠れている場合もあります。その場合は、放置すると肩こりの症状が改善しないケースも。
軽い肩こりであれば、マッサージや運動といったセルフケアでよい方向にむかいますが、万が一病気だった場合は、医師による適切な治療が必要になります。
肩こりに似た症状が出やすい病気には、次のようなものが考えられます。
- 肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
- 胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)
- 頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア、後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)
次から、それぞれの病気についてご説明します。
肩関節周囲炎(五十肩)
肩関節周囲炎は、いわゆる「五十肩」とよばれています。肩の痛みが主な症状としてあらわれますが、肩こりとは似て非なるものです。
肩関節周囲炎の原因にはさまざまな説がありますが、今のところ明らかになっていません。何らかの要因により肩の関節に炎症が起きることで、痛みや腕が上がらなくなるといった症状があらわれます。
肩の痛みの原因が五十肩だった場合は、無理にマッサージをすると、さらに炎症が起こる可能性があります。注意しましょう。
胸郭出口症候群
肩の痛みのほかにも、手のしびれの症状や力が入りにくいといった症状も感じる場合は、胸郭出口症候群という病気が隠れている可能性があります。
胸郭出口症候群は、手や腕を支配している神経が、一番上位にある肋骨のあたりで圧迫されることで、肩から手先にかけての痛みやしびれ、力の入りにくさなどの症状があらわれます。
肩の痛みが起こることで肩こりとして自覚されることもあります。しかし、肩こりではしびれや力の入りにくさなどの神経が原因による症状はみられないため、注意が必要です。
頸椎椎間板ヘルニア・後縦靭帯骨化症
首の病気が原因で、肩こりのような症状があらわれている場合もあります。代表的なのが、頚椎椎間板ヘルニアと後縦靭帯骨化症です。
頸椎(けいつい)とは首の骨のことで、頸椎椎間板ヘルニアは、頸椎の間にある椎間板(ついかんばん)から、組織が飛び出して神経を圧迫。しびれや痛み、手や指先の力が入りにくいといった症状があらわれます。
一方、後縦靭帯骨化症は、頸椎の骨と骨をつないでいる後縦靭帯が、骨のように硬くなって神経を圧迫している病気です。神経が圧迫されることで、同様にしびれや痛み、力の入りにくさなどの症状があらわれます。
また3つの病気のほかにも、肩こりを放置すると、痛みが原因で自律神経の働きが乱れ、うつ病になる可能性もあります。肩こりの症状が軽減しない場合は、医師に相談することをおすすめします。
肩こりがすっきり! 肩のゴリゴリを改善するセルフケア
肩のゴリゴリの正体は、過剰に収縮した筋肉とお伝えしました。つらい肩こりをほぐすには、マッサージしてもらうのも良いですが、それよりもセルフケアを毎日行うほうが効果的。肩にこりや痛みを感じたときは、次の3つのセルフケアがおすすめです。
- ストレッチ
- 適度な運動
- 首や肩を温める
毎日少しずつ生活に取り入れることで、いまあるゴリゴリ感を軽減することはもちろん、肩こりの予防にもつながります。
ストレッチ
肩周りの筋肉をゆるめ、ゴリゴリ感を軽減させることが期待できるストレッチ。肩こりを改善するには、肩甲骨の周りの筋肉と、首の筋肉をやわらかく保つことが重要です。簡単にできるストレッチを2つずつ紹介しますので、気持ちよく肩や首をほぐしてみましょう。
肩甲骨周りのストレッチ(1)
肩こりの症状を減らすには姿勢の改善も大切。猫背解消と肩甲骨周りの硬さの改善が期待できる、一石二鳥のストレッチです。
【やり方】
- 布団やマットなど、やわらかい床の上で四つん這いになる。
- 視線をへそに向けながら、背中を持ち上げて猫のように丸くする。
- 視線を斜め上に向け、肩甲骨を寄せながら背中を反らせてお腹を伸ばす。
- 自然に呼吸しながら、2~3を10回繰り返す。
肩甲骨周りのストレッチ(2)
腕の付け根から肩甲骨、肋骨にかけて伸ばすストレッチ。この部分が硬くなると肩甲骨がうまく動かずに肩こりにつながります。
【やり方】
- 右腕をまっすぐ天井に向かって伸ばし、ひじを曲げる。左手を頭の上から通して、右腕のひじをつかむ。
- そのままゆっくりと息を吐きながら、体を左側へ傾けて10秒キープ。
- 腕を入れ替えて左腕も同様に行う。
首のストレッチ(1)
肩こりの原因になりやすいのが、背中側にある大きな筋肉の「僧帽筋(ぞうぼうきん)」。緊張した僧帽筋をリラックスさせるストレッチで、肩と首をほぐします。
【やり方】
- 息を吸いながら、両肩を同時にすくめる。
- 息を吐きながら、両肩を下ろしてリラックスする。
- 1~2の動きを5回繰り返す。
首のストレッチ(2)
同じく僧帽筋をゆるめるストレッチ。今度は縮んだ僧帽筋を伸ばすストレッチです。
【やり方】
- 右手を頭の上から回して、左の耳あたりに手を置く。
- ゆっくりと息を吐きながら、頭を右側に10秒倒す。
- 手を入れ替えて、反対側も同様に行う。
適度な運動
肩のゴリゴリを改善するには、ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。
有酸素運動は酸素を体に取り込みながら行う運動です。血行が良くなるため、酸素や栄養分を体に運びやすくなります。また、“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンという物質を分泌させる働きもあり、心を落ち着かせたり、気持ちをポジティブにしてくれたりする効果もあります。
有酸素運動は、1回限りではなく続けることが重要です。肩こり改善のために運動を始めたいと思ったら、ウォーキングや水泳などのゆっくりとした運動から始めてみましょう。
反対に、筋力トレーニングやダッシュなど、短時間で強い力を使う無酸素運動は、体を緊張させるため、肩こりの改善にはおすすめしません。
肩や首を温める
肩のゴリゴリ感を軽減するには、肩や首を温めることも有効です。血管は温まると広がり、冷たくなると引き締まる働きがあります。
血行不良が原因となる肩こりには、肩や首を温めることで、症状の軽減が期待できます。簡単でおすすめなのが、入浴やホットタオルの使用です。
入浴
肩こり改善のためには、首までゆっくりと浸かる全身浴を。全身の血行がよくなり、こりの軽減が期待できます。就寝の1~2時間前に入浴すると、副交感神経の活動を高めて良質な睡眠をとることができます。リラックス効果もアップ!
【肩こり改善のための入浴法】
- 40℃のお湯に10〜15分浸かる。
- お風呂の中で肩や首を動かすストレッチを行う。
ホットタオルで温める
電子レンジを使ったホットタオルは、お風呂よりも手軽で、気になるところをピンポイントで温めることできます。
【ホットタオルの作り方&使い方】
- タオルを水で濡らしてしっかりと絞り、くるくると丸める。
- ラップで包んで電子レンジ500Wで30~60秒加熱。
- 適温に冷めてから肩や首周辺に1~3分当てる。
※やけどをしないように注意しましょう。60秒だと熱すぎる場合は、短い時間で調節してください。
こまめに水分補給を行う
ストレッチや温める以外で、水分を補給することも大切です。人の体は水分が不足すると、血液がドロドロになり、血行不良を招きます。
適度に水分補給を行うことで、血液中で酸素や栄養分の運搬、老廃物の排出がスムーズになります。そのため血行不良による肩こりの場合は、水分をとることで症状の改善が期待できます。
1日に必要な水の量は、仕事内容や生活スタイルが一人一人違うため個人差があります。一般的には1日約1.5〜2リットルです。しかし、体を動かして汗をかいたり体力を使う仕事をしている場合には、3リットル以上が必要なことも。
また、一度に大量の水を飲むと、すぐに尿として排泄されるほか、内臓も負担がかかるというデメリットも。1回の量はコップ1杯程度にして、”ちょこちょこ”と飲みましょう。
以前はカフェインを含んだ飲み物は、水分補給には適さないと言われていましたが、近年は「カフェインは大量摂取しなければ影響はない」ということも分かってきています。
ただしお茶やコーヒーは、カフェインの他にも様々な成分が入っており、睡眠の質や歯の着色などにも影響があります。水以外の飲み物はそのため飲みすぎない程度に留めましょう。
肩のゴリゴリを改善するにはどこに行けば良い?
ここまで肩こりを改善するセルフケアをご紹介しました。しかし、肩のゴリゴリ感や痛みを改善するには、セルフケアでは限界がある場合も。その場合は、医師やプロによる治療、施術に頼りましょう。
自宅で様子をみても、肩こりが良くならず、痛みが強くてつらくなったら通うべき場所は以下の通りです。
- 整形外科
- 整骨院
- リラクゼーションサロン
それぞれ、どんなときにどこに通うべきかを解説します。
整形外科
肩に痛みやしびれを感じる、腕が上がらないなどの症状を感じたときに、真っ先に行くべきなのは整形外科です。整形外科では、医師による診断のもと、適切な治療を行うことができます。
先にご説明しましたが、単なる肩こりが実は、肩関節周囲炎(五十肩)や頸椎の病気だったということも考えられます。また整形外科では、症状によってレントゲンをはじめとした画像検査や血液検査なども行います。ただの肩こりなのか、病気なのかを診断してもらうためにも一度受診するのが良いでしょう。
医師による治療の他にも、整形外科には理学療法士によるリハビリができる点もメリットです。痛みがある部位だけでなく、動作を分析した上で原因に対して治療を行うことができます。
整骨院
整形外科を受診して肩こりの原因が病気でないとわかった場合は、整骨院での施術で症状を軽減させることが期待できます。整骨院は柔道整復師や鍼灸師の国家資格を持った人が施術を行います。
国家資格を持った専門家による、ほぐしや姿勢の矯正を行うことで、筋肉にかかっていた過剰な負荷が軽減され、肩こりの改善が期待できます。
ただし整骨院であっても1回だけで完治することはほとんどありません。ある程度継続した通院が必要になるため、担当スタッフと治療プランや期間を相談しましょう。
リラクゼーションサロン
アロマや指圧など、リラクゼーションを目的としたサロンでも、肩こりの症状を軽減できるでしょう。
肩こりはストレスや疲労が原因で起こることもあります。心も体もリラックスできるリラクゼーションサロンは、ストレスからくる肩こりの改善にも効果的です。
整形外科や整骨院で病気ではないと確認したうえで、日々のリラクゼーションのために通うのは良いでしょう。こり固まった筋肉をほぐして常に血流を良い状態に保つことは、肩こり予防に効果的です。
まとめ:肩のゴリゴリを放置せず、セルフケアで肩こり対策を
肩こりのときに感じる、肩のゴリゴリの正体や、セルフケアを解説しました。痛みやしびれがなく、ゴリゴリ感やこりが主な症状であれば、肩や首周りをほぐすストレッチで改善することができます。
しかし痛みやしびれもあり、肩こりの原因が病気であると考えられる場合は、医療機関や整骨院を受診しましょう。適切な治療が必要になります。
肩こりの改善には、長時間同じ体勢を続けず、こまめに体を動かすことも重要です。ストレッチや有酸素運動などを日頃の生活に取り入れて、こりや痛みが出ないように予防しましょう。運動のほかにも、猫背にならないように机の高さを調節する、座面にクッションを使うなど、環境を整えることも大切です。
また、肩こりなどの慢性的な痛みがつづく症状は、ストレスも深く関わるといわれています。会社での人間関係や金銭面、社会的に感じる孤独感など、ストレスの原因は数え切れないほど多くあります。肩こりを感じたら、自分が感じているストレスについても振り返ってみましょう。
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