「鼻のムズムズ」を止めるには?つらい症状を和らげる食養生とツボ|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「鼻のムズムズ」がテーマ。不快な症状を和らげるための食事や、効果的なツボをお聞きしました。
目次
「鼻のムズムズ」の原因は?
症状が出始めると不快で仕方がない鼻のムズムズ。くしゃみや鼻水が止まらない、目がかゆい、のどがイガイガするといった症状があわさることが多く、仕事や家事などの日常生活に支障をきたす場合もあります。
東洋医学で、鼻のムズムズの原因とされるのが、「風邪(ふうじゃ)」といわれる“風の邪気”です。そもそも人間の体には「衛気(えき)」といわれるバリア機能がそなわっていて、外的刺激から体を守っています。しかし睡眠不足や疲れといったさまざまな要因で体の元気がなくなると、この機能が低下して風邪が侵入。鼻のムズムズが起こります。
特に寒暖差や気圧の変化が激しい春は、体がそれに順応しようとして元気を消耗。そのため「衛気」が減ってしまい、風邪の影響を受けやすくなるのです。体が不安定になりやすい春こそ、「衛気」を減らさない生活が大事になってきます。
「鼻のムズムズ」を改善する食べ物や飲み物
鼻のムズムズの原因は、風邪(ふうじゃ)です。風邪を発散させる、辛みのある食べ物や、葉や花といったフワフワと軽い食べ物がおすすめ。軽い食べ物は、風邪を“パッと飛ばす”効果があるといわれます。温かい飲み物で摂るのも良いでしょう。
辛みのある食べ物…ネギ、玉ネギ、ミョウガ など
フワフワと軽い食べ物…三ツ葉、シソ、ミョウガ、ミント、カモミール など
飲み物…ミントティー、カモミールティー、菊花茶、たんぽぽ茶、くわの葉茶などの花を使ったお茶
体がゾクゾク冷える人は「+シナモン」
鼻のムズムズに加えて、体がゾクゾクする人は冷えている証拠です。血を巡らせる「シナモン」を摂りましょう。飲み物にシナモンパウダーを入れるだけでも効果的。ただし、体が冷えていても目のかゆみがあり充血している人は、炎症が悪化するので、シナモンはNGです。
「鼻のムズムズ」改善に一番大切なのは睡眠
鼻のムズムズの原因は風邪(ふうじゃ)ですが、その根底にあるのは、先にもご説明した「衛気(えき)=バリア機能」の不足です。「衛気」が減る一番の原因が、睡眠不足です。
睡眠中は衛気をはじめ、健康に過ごすために必要なさまざまな気(エネルギー)が補われる時間です。よく眠れなかった次の日に、鼻水やくしゃみが止まらなくなったという経験はありませんか。それは睡眠不足によって「衛気」が減ってしまったから。
体が不安定になりやすい春は、十分な睡眠時間を確保することが大切です。「衛気」を満たしてしっかりガードしましょう。
「鼻のムズムズ」をすばやく止める方法
鼻のムズムズを今すぐなんとかしたいときは、髪の生え際を少し超えたところにある「上星(じょうせい)」というツボを、蒸しタオルで温めてみてください。気持ちよ~く効いてきますよ。
上星(じょうせい):眉間からまっすぐ上、髪の生え際を超えたあたりの場所。なでるとでこぼこしていて、軽く押すとズーンとするところ。
やり方
- 濡らしたタオルを絞り、レンジ(600W)で1分温める。
- 手で触れるくらいの温度に冷ます。※やけどに注意を。
- 「上星」を蒸しタオルでじんわりと温める。
「上星」を温めると、次第に鼻のムズムズがラクになってくるでしょう。心地よい温かさを感じながら、リラックスして行います。ツボの温め以外に、ムズムズがつらいときは顔を洗うのも効果的です。
「鼻のムズムズ」に効果的なツボ
最後に、鼻のムズムズに効果的なツボを紹介します。「風門(ふうもん)」「風池(ふうち)」のある首や背中は、風邪が入ってきやすい場所。「風池」は即効性があるので鼻がムズムズしたら試してみましょう。
どちらもドライヤーで温める、熱めのシャワーやお風呂で温めることが有効です。薄手のストールやタートルネックで冷やさないようにして、風邪の侵入を防ぐことも大切。
風門(ふうもん)
風門(ふうもん):背中の上の方で肩甲骨の間にあるツボ。首を下に曲げたときに一番出っ張る背骨から、3つ下の背骨を探し、そこから左右外側に指2本分移動した場所。
押し方:押すのが難しい場所なので、熱めのシャワーや、ドライヤーで温めるのがおすすめ。
風池(ふうち)
風池(ふうち):首の後ろの生え際部分で、くぼんだ場所。
押し方:右側の風池は左目の方向に向かって、左側は右目の方向に向かって、グッとイタ気持ち良い強さで押します。熱めのシャワーや、ドライヤーで温めるのも効果的。
大椎(だいつい)
大椎(だいつい):首を下に曲げたときに一番出っ張っている場所。
押し方:押すのが難しい場所なので、熱めのシャワーや、ドライヤーで温めるのがおすすめ。
今月の養生ポイント:“体の4大気”で季節の変わり目を健康に過ごそう
私たちの体には、目に見えない“気(エネルギー)”が存在しています。鼻のムズムズに関係する「衛気(えき)」を含め、次にご紹介する4つが備わっています。
- 衛気(えき)…体の“外”を巡っている気で、バリア機能の役割を持つ。体温をキープして調整する働きや、毛穴を開けたり締めたりして発汗をコントロールする。
- 営気(えいき)…体の“内側”を巡っている気で、血と一緒に体じゅうに栄養を運ぶ。営気は消化吸収したものから作られる。
- 元気(げんき)…生命活動の原動力となるもの。4大気の中で唯一、生命エネルギーを司る「腎(じん)」から作られる気。
- 宗気(そうき)…呼吸や心拍のために使われる気で、生きていくために欠かせない働きがある。
これらは“体の4大気”といわれ、健康に生きるために重要な気(エネルギー)です。4つの気は、密接に関わりを持ち、いずれかが不足するとその他の気に影響を及ぼします。春のように体のバランスを崩しやすい季節は、特に注意が必要です。
“4大気”の働きを保つためには、無茶な生活をしないこと。睡眠時間を最優先する、食事から栄養を摂る、適度に体を動かす、ストレスを溜めないといった、“当たり前”とも思われるような生活習慣こそが大切です。鼻のムズムズだけに限らず「春は体調を崩しやすい」という人は、“4大気”を消耗させないように、自分にやさしい毎日を過ごしましょう。
イラスト/植松しんこ
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