「めまい」が起こりやすいのはなぜ?4つの原因タイプ別に解説|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、梅雨時期にも起こりやすい「めまい」がテーマ。原因別の東洋医学的セルフケアで対処しましょう。
目次
水の巡りや栄養不足、ストレス…原因別「めまい」4タイプを解説
天井がぐるぐる回る、体がフワフワする、頭がフラっとするなど、突然起こるめまい。日常生活の中でめまいが起こると、仕事や家事を中断せざるを得なくなることもあり、なかなか改善せずに悩んでいる人が多いようです。
東洋医学でめまいには、いくつかの種類があります。
- 眩(げん)…目がかすみ、目の前が暗くなる。
- 暈(うん)…ぐるぐる回る、物が揺れ動いて見える。
- 眩暈(げんうん)…上記の眩と暈が同時に起きる。
これらのめまいには4つの原因が考えられます。水の巡りの悪さのほか、気(エネルギー)や血(血液)の不足、ストレス、加齢などが関係しているとされ、いずれもめまいが起こりやすい人の特徴と言えます。めまいを改善するには、「何が原因なのか」を見極めてから対策をすることが大切です。
原因別に4タイプのくわしい特徴と、タイプ別の養生法やツボを紹介しますので、めまいを根本から改善したい人はそれぞれの養生を参考にしてみてください。
(1)水の巡りが原因の「ぐるぐるタイプ」
1つ目は、水の巡りが悪くなってめまいが起こる「ぐるぐるタイプ」。脂っこいものが好きで暴飲暴食しがち。水分を取りすぎているため、体に水が溜まって平衡(へいこう)感覚を保てなくなり、めまいにつながります。
胃腸も弱く、痰湿(たんしつ)と言われる体の余分な水分や汚れが蓄積するのも特徴。このタイプはもともとの体質に加え、梅雨時期の湿気によりさらにめまいがひどくなる場合があります。
(2)栄養不足が原因の「フワフワタイプ」
2つ目は、栄養となる気(エネルギー)や、血(血液)が不足して起こる「フワフワタイプ」。働きすぎている人や食事が偏っている人のほか、女性の場合、産後や生理中などに起こるめまいがこのタイプ。
健康な体のベースとなる「気・血」が不足することで必要な栄養が頭に届かずに、フラフラと立ち眩みのようなめまいが起こります。フワフワタイプも胃腸が弱いため天候に左右されやすく、梅雨時期にめまいが悪化することがあります。
(3)ストレスが原因の「イライラタイプ」
一時的なストレスで起こるのが「イライラタイプ」のめまいです。仕事や家庭でストレスを感じると、体の水のバランスが崩れてうるおい不足になり熱が発生。熱は風を連れてくるという特徴があり、カッとなると頭に熱風がのぼり、フラッとしためまいが起こります。
このタイプはめまいと同時に「キーン」と高い耳鳴りが起こることも。めまいが起こるか起こらないかは、ストレスに大きく左右されます。
(4)加齢や虚弱が原因の「ヨロヨロタイプ」
最後は加齢や過労、もともとの虚弱体質などで体が弱って起こる「ヨロヨロタイプ」。東洋医学で腎精(じんせい)と言われる、生命活動の源となるエネルギーが不足した状態になっています。
このタイプはめまい以外にも、足腰がだるい、頻尿、白髪、物忘れといった加齢にともなうさまざまな不調があらわれやすくなります。
4タイプ別 「めまい」を改善・予防する食養生とアドバイス
めまいが起こると、「また起こったらどうしよう」「いつ治るんだろうか」と、外出するのも予定を立てるのも不安になりますよね。少しでもめまいの症状があるならば、原因に合う食事や生活を試してみてください。体質を改善して根本からめまいが起こらない体を目指しましょう。
ぐるぐるタイプ:水はけをよくする食べ物+食生活の見直し
水の巡りが悪いぐるぐるタイプは、水はけをよくする食べ物で、体に溜まった余分な痰湿を追い出しましょう。
水はけをよくする食べ物・飲み物…小豆、枝豆、そらまめなどの豆類、冬瓜、きゅうり、もやし、春雨、しじみ、あさり、海藻類、ハトムギ、とうもろこしのひげ茶、黒豆茶、ウーロン茶など
ぐるぐるタイプは体に水がジャブジャブと溜まっているようなもの。暴飲暴食や脂っこい食事をやめる、水を飲みすぎないようにするなど、食生活の改善が優先です。そのほか、体を動かしてじんわり汗をかく習慣も心がけましょう。
フワフワタイプ:気血を補う食べ物+休みを取り入れる生活
フワフワタイプは、体の栄養となる気(エネルギー)と血(血液)の不足からめまいが起こります。赤いものや黒いものなどの気と血を補う食べ物を摂り、元気のベースをつくりましょう。
赤いもの…なつめ、クコの実、プルーン、いちご、干しぶどうなど
黒いもの…黒ゴマ、黒豆、きくらげ、ひじき、牡蠣など
そのほか、気血を補う食べ物…卵、白米、豆腐・豆乳などの大豆食品、にんじん、かぼちゃ、肉類、まぐろなどの赤身の魚、青魚、小松葉、ほうれん草など
これらの食事で気血を補うことも大切ですが、一番有効なのは睡眠と休息です。フワフワタイプは休む時間が足りていません。ハードに働きすぎず、無理をしない生活を送ってください。体を冷やさないことにも注意を。
イライラタイプ:熱を取り気の巡りをよくする食べ物+ストレスを外に出す習慣
イライラタイプはストレスで体に熱がこもり、気が停滞しています。そのため熱を取り、気の巡りをよくする食べ物で体調を整えましょう。
熱を取り気の巡りをよくする食べ物・飲み物…セロリ、ミント、ゴーヤ、スイカ、緑茶、ジャスミン茶など
このタイプのめまいはストレスが関係しています。ストレスはゼロにはできませんが、こまめに発散することでめまい対策をしましょう。カラオケや汗をかく運動など、体の外にストレスを追い出すような発散法がおすすめ。
ヨロヨロタイプ:腎(じん)を補う食べ物+体を消耗させない生活
ヨロヨロタイプは生命エネルギーを司る腎(じん)の働きが低下しています。腎を補う食べ物で弱った体を少しずつ元気にしていきましょう。
腎を補う食べ物…黒ゴマ、黒豆、きくらげ、ひじき、牡蠣などの黒いもの、くるみ、アーモンドなどの種実類、山芋、海老など
ヨロヨロタイプは虚弱や加齢がめまいにつながっています。ハードな仕事や運動を控えて過度に体を消耗させないことがポイント。腎の働きを低下させないためにも体を冷やさないことも重要です。
4タイプ別「めまい」対策に効果的なツボ
食事や生活習慣の見直しのほかに、めまい対策として効果的なのがツボ押しです。体調を整えてめまいが起こりにくい体質をつくるためにも、次から紹介するツボ押しを習慣にしてみてください。
めまい全般に効果的なツボ:中渚(ちゅうしょ)
中渚(ちゅうしょ):手の甲側の薬指と小指の間を手首の方向にたどって止まるところ。手を握ったときにできる関節のくぼみ部分。
押し方:親指の腹で、気持ちいいと感じる強さで押します。
ぐるぐるタイプに効果的なツボ:豊隆(ほうりゅう)
豊隆:すねの外側。ひざと足首の中間にあり、外側の筋肉が一番盛り上がっている場所。
押し方:親指をツボに当て、ゆっくりと肌が沈み込む程度に刺激。
フワフワタイプに効果的なツボ:足三里(あしさんり)
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。お灸もおすすめ。
イライラタイプに効果的なツボ:復溜(ふくりゅう)
復溜(ふくりゅう):アキレス腱と内くるぶしの間にある太渓(たいけい)から、指3本分上がったところ。
押し方:アキレス腱をつかむように手をまわし、親指の腹で押します。
ヨロヨロタイプに効果的なツボ:太渓(たいけい)
太渓(たいけい):アキレス腱と内くるぶしの間のくぼみにあるツボ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。ツボ周辺を触って冷たければお灸もおすすめ。
今月の養生ポイント:雨に濡れたらすぐ乾かして梅雨による体調不良を防ぐ
梅雨の時期は、湿気による邪気の「湿邪(しつじゃ)」が多く、めまいのほかさまざまな体調不良を引き起こします。注意したいのが、雨に濡れたときです。髪や服、靴下が濡れたときにそのままにしてしまうと、湿邪の影響で体が冷えて、だるさにつながったり、むくみや生理痛がひどくなることがあります。
特に足首には、三陰交(さんいんこう)という重要なツボがあり、濡れたままの靴下を履いていると下痢やメンタル不調につながります。小雨であっても、体が雨に濡れたらすぐに乾かすこと。食事や生活習慣を見直すほか、衣服や室内の湿気対策をして、湿邪を体から追い出すことが梅雨時期の体調管理のポイントになります。雨でどんよりしがちなこの時期を養生で乗り切りましょう!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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