メンタルが強い人・弱い人の違いは?東洋医学で“落ち込み体質”を改善|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「メンタルが強い人・弱い人の違い」がテーマ。東洋医学のセルフケアでクヨクヨしやすい体質から抜け出しましょう。
目次
メンタルが強い人・弱い人の違いは「気」にある
人から言われた小さなことを引きずってしまう人、トラブルがあっても前向きに切り替えられる人。みなさんはどちらのタイプですか?
東洋医学でメンタルの強さ・弱さには「気」が関係していると考えられています。「気」とは、体の中を流れる、目に見えないエネルギーのこと。気は多すぎても少なすぎても不調をきたしますが、メンタルが弱い人は気が不足して、流れも停滞しています。反対に、メンタルが強くて安定している人は、気が充実していてスムーズに体を巡っています。
気が充実していて巡りが良いかどうかは、その人の体質はもちろん、1日の中でも違います。また、女性には生理があるため、周期によっても気の過不足に差があらわれます。
気が不足しているとネガティブ思考のループに
「気」という文字が入った言葉に、「気を配る」「気を遣う」「気にかける」などがありますよね。これらはすべて、自分ではなく周りの人に対して使う言葉です。ここからもわかるように、「気=エネルギー」は、他者と自分との間でキャッチボールをするように動かすもの。だから、人に気を遣ったり、気を配ったりすると、エネルギーが消耗して疲れるのです。
小さいことにいつもクヨクヨしてしまう人は、慢性的に気が不足気味。気が不足すると、血液などをあらわす「血(けつ)」も足りなくなり、脳にも血が巡らない状態に。するとネガティブ思考に拍車がかかり、ますますメンタルが落ち込む、という負のループに陥りやすくなります。
メンタルの強さ・弱さには「胃腸」も関係している
「気」のほかにもう一つ、メンタルの強さ・弱さを決めるのが「胃腸」です。胃腸は「気」の中でも「元気」を作る臓器。
西洋医学では腸と脳がお互いに影響を及ぼしあう「脳腸相関(のうちょうそうかん)」が研究で明らかになっていますが、東洋医学でも胃腸はメンタルとの関係が深いとされています。胃腸が弱い人は元気が作れず心が不安定に、反対に胃腸が強い人は心が安定しているのです。
いわば胃腸は、心の元気をつくる“土台”。メンタルが弱くネガティブ思考から抜け出せない、いつも悪い方向に物事を考えてしまうという人は、まず胃腸を元気にする生活をはじめてみることをおすすめします。
メンタルの不調は体にもあらわれる
東洋医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。これは、心と体は共にあり、切り離せないという意味。メンタルが落ち込むと体調が崩れたり、反対に体調がすぐれないとそれがストレスになったりしませんか。
心が不安定になると、下痢や便秘、食欲低下といった胃腸のトラブルをはじめ、頭痛、肩こり、生理痛といった痛み、お腹や胸が張るなど、さまざまな体の不調につながります。不思議なことに、メンタルが安定してくると、これらの体の不調もすっきりなくなる、という人が多いのです。
安定したメンタルを保つための4つのセルフケア
心の健康を保つカギになるのが、胃腸を元気にする生活と、「気」を不足させない過ごし方です。落ち込み体質を改善するには、自分の思考のクセに気づくことも大切。
ただし、どうしても前向きな考え方ができないという人は、無理してがんばらなくてもOK! まずは胃腸を労わることを優先してみてください。
【胃腸を元気にする】“引き算”の食生活を
体調が悪いと「体にいいものを食べなくちゃ」と、ついプラスすることを考えがちですが、弱った胃腸には逆効果。胃腸を元気にするためには、冷たいものや脂っこいもの、甘い物は控えめにして、“引き算”する食事を心がけましょう。これらは胃腸を弱らせて、元気不足になる代表的な食べ物。また、辛い料理などの刺激物もほどほどに。
【胃腸を元気にする】黄色くて甘味のある食べ物を
胃腸を元気にするためにおすすめなのが、黄色くて甘みのある食べ物。お米やじゃがいも、山芋、にんじん、かぼちゃなどを食事に取り入れてみてください。胃腸の負担になるドカ食いはNGです。ゆっくりよく噛んで食事を楽しみましょう。
【メンタルケア】自分がすっきりする発散法を持つ
現代の生活で、ストレスをゼロにすることは難しいもの。メンタルが安定している人は、ストレスを受けても上手に発散する方法を持っています。例えば、“推し活”をする、おいしいものを食べる、自分のために洋服を買う…。自分が心地いいと感じるなら、何でもいいのです。心がすっきりするプチ発散法を持っていれば、人生がもっと前向きになるでしょう。
【メンタルケア】“気配り”をやめる
「気=エネルギー」は、体の中に充実している人ほど心が安定しているとお伝えしました。気持ちが落ち込みやすい人は、「自分ががんばればいいや」と、自らの気持ちを抑えて無理をしがちです。自分の中の「気」が不足している状態で、人に“気を配る”必要はないのです。“気配り”をするのはメンタルが元気なときだけ、と割り切って過ごしましょう。
今月の養生ポイント:自分のごきげんは自分で取る
メンタルが落ち込みやすい人に共通しているのが、自分よりも他人を優先していること。職場や友人関係、家族にも気を遣い、自分のことを後回しにしていませんか。
そんな人に大事にしてほしいのが、自分の機嫌を自分で取ることです。例えば、いつも夕飯を手作りしているなら今日は作らずに買って帰る、週1回は自分の好きなスイーツを食べるなど、自分の心がよろこぶことをしてあげましょう。毎日完璧にがんばる必要はありません。メンタル不調は、一時のがんばりでガタガタと崩れて、悪化することがあります。
1日に10分でも良いので、人のためではなく自分のための時間を過ごしてください。ごきげんに過ごせる方法を見つけて、落ち込み体質から抜け出しましょう!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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