「朝が弱い」のは体質が原因?すっきり起きられるタイプ別セルフケア|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、朝が弱い人の特徴と対策を紹介。東洋医学のセルフケアで“目覚めすっきり”を目指しましょう。
目次
朝が弱いのはなぜ? タイプ別の原因を解説
朝が苦手で布団から起き上がれない、目覚めが悪くて朝の体がだるい…。このように「朝が弱い」という自覚のある人は、意外と多いのではないでしょうか。
東洋医学で朝が弱い人は、体質別に2つのタイプに分けられます。次から紹介する特徴に当てはまる人は、無理やり朝から運動をしたり、過剰に早起きをして活動をしたりするのはおすすめしません。ご紹介するタイプ別セルフケアで、まずは体を回復させることを優先させ、体調が整ってから“朝活”を!
(1)体に必要な材料が足りない「不足タイプ」
1つ目は、活動するために必要な「気」と「血」が不足している「不足タイプ」。東洋医学で気はエネルギー、血は血液などをあらわし、どちらも元気に過ごすための体のベースをつくっています。
- 起きたい気持ちはあるけど起き上がれない
- 血圧が低い
- 午前中はどんよりしている
- 朝ご飯を食べると少ししゃきっと目覚める
- 昼寝をすると元気になる
このような特徴がある人は「不足タイプ」と考えられます。
(2)余分なものが体に溜まっている「滞りタイプ」
2つ目は、体に余分なものが溜まり、それが悪さをしている「滞りタイプ」。食べ過ぎや飲みすぎなどで、乱れた食生活が続くと、“湿”といわれる余分な水分が溜まり、朝の体がだるく、重くなるのです。
- 体がどんよりしている
- すっきりしない
- 寝た気がしない
- 悪い夢を見ることが多い
- 目覚めは悪いが動き始めると楽になる
このような特徴がある人は「滞りタイプ」と考えられます。
朝すっきり起きるためのタイプ別セルフケア
朝起きられないのは、決して「気合いが足りないから」ではありません。食事の内容や朝・夜の過ごし方など、生活習慣を見直して、根本から体質改善をすれば、次第に目覚めが良くなるでしょう。次からタイプ別の対策をご紹介します。
不足タイプ:食事と生活の改善ポイント
【食養生】赤いもの、黒いもの、自然な甘みのある食べ物を
不足タイプに必要なのは、気と血です。赤い色の食べ物や黒い色の食べ物、そのほかに鉄分が豊富といわれる食べ物には、「血」を補う働きがあります。
また、自然な甘みのある黄色の食べ物には「気」を補う働きがあります。不足タイプは、以下の食べ物を食事に取り入れてみてください。
赤いもの…なつめ、クコの実、プルーン、いちご、干しぶどうなど
黒いもの…黒ゴマ、黒豆、きくらげ、ひじき、牡蠣など
鉄分が豊富な食べ物…レバー、ほうれん草、小松菜など
自然な甘みのある黄色い食べ物…お米、豆類、かぼちゃ、さつまいも、とうもろこし、にんじんなど
【生活アドバイス】夜のテレビ・スマホを最小限に
夜にテレビやスマホを見すぎて目を酷使すると、血を消耗します。そもそも不足気味なうえにさらに血が足りなくなり、朝の目覚めの悪さにつながります。夜はテレビやスマホの使用を最小限にして、血を減らさないように過ごしましょう。
【生活アドバイス】長風呂で汗をかきすぎるのはNG
東洋医学で「汗血同源(かんけつどうげん)」という言葉があります。これは「汗と血は同じものからできている」ということ。そのため不足タイプの人は、汗をダラダラかきすぎる長風呂は控えましょう。全身浴でさっと15分程度、体を温める入浴を。
滞りタイプ:食事と生活の改善ポイント
【食養生】香りの良いもの、湿を取り除く食べ物がおすすめ
滞りタイプは、湿以外に気の巡りも悪くなっています。そのため香りの良い食べ物で、気の流れをスムーズにしましょう。ハーブティーやアロマなどで自分が心地いいと感じる香りをかぐのもおすすめ。また、体に溜まった湿を取り除く食べ物も意識して取り入れてみてください。
香りの良い食べ物…レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系フルーツ、パクチー、パセリ、クレソン、セロリ、ミント、しそ、みょうが、ハーブティーなど
湿を取り除く食べ物…もやし、小豆、はとむぎ、はるさめ(緑豆)、昆布などの海藻類、バナナなど
【生活アドバイス】夜遅い時間の食事をやめる
夜遅い時間帯に食事を取ると消化不良を起こして、湿の蓄積につながります。できるだけ遅くならない時間帯に夕食を食べ終わるように調整しましょう。どうしても遅くなる場合は、みそ汁やスープなどの軽めの食事を。
【生活アドバイス】仕事を早めに終わらせて夜はリラックス
遅い時間まで仕事をすると、気づかないうちにストレスが溜まります。すると気が滞り、ますます湿が溜まりやすい体に。夜は仕事のことは忘れてヨガやストレッチなどでゆるやかに体を動かし、リラックスして眠りましょう。
朝すっきり起きるためのツボ押し
ここまで食養生と生活のポイントをご紹介しました。そのほかに、気血の不足や滞りに効果的なのがツボ押しです。ご紹介するツボは、どちらも寝たまま刺激できます。朝の弱さを克服したい人、すっきり起きたい人はツボ押しを毎朝の習慣にしてみましょう。
不足タイプに効果的なツボ:気海(きかい)
気海(きかい):おへそから指2本分下の位置。
押し方:やさしくなでるように押したり、温めた手をそっと置くだけでも効果的です。カイロやお灸、ホットのペットボトルなどで温めるのもおすすめ。
滞りタイプに効果的なツボ:合谷(ごうごく)
合谷(ごうごく):親指と人差し指の骨の付け根が合わさった、V字になったくぼみ。
押し方:反対の手の親指で人差し指側に押し込み、ズーンと響く強さで押します。
今月の養生ポイント:朝が苦手な人は「おにぎり×みそ汁」の朝ごはんで活力を
朝が苦手な人に多いのが、朝食を抜くパターンです。家を出るギリギリまで寝ているため時間がない、体がだるくて食べたいと思わないなど、理由はいくつか考えられますが、活動するための材料がますます不足して、一日中だるさが続きます。
朝起きられない人こそ試してほしいのが、おにぎりとみそ汁の朝食です。お米は朝食べることで一日のエネルギー源になりますし、温かいみそ汁は体を温めて胃腸を目覚めさせる力があります。
おにぎりやみそ汁の具は何でも良いですが、自分の体質や感じている不調に合う具材を取り入れると、もっと効果的です。次のような具材を参考にしてみてください。
【おにぎりにおすすめの具材】
潤い不足:梅
冷え性:鮭
気血不足:おかか
むくみ:昆布
元気不足:そぼろ
エイジングケア:黒ゴマ、ひじき
乾燥対策:白ごま
胃腸のむかつき、ストレスケア:大葉、みょうが
【みそ汁におすすめの具材】
むくみ:わかめ
乾燥:豆腐
冷えた、ゾクゾクした風邪:ねぎ
胃腸のお疲れ:人参
消化不良、胃腸のむかつき:大根
おにぎりやみそ汁は前日の残りでもOK。作るのが大変なときは買ってきたものやレトルトのみそ汁でも良いでしょう。まずは「朝、温かいものを食べる」という習慣を始めてみましょう。おにぎりとみそ汁で目覚めのスイッチが入ると、日中も活動的に元気に過ごせますよ!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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