女性の冷えタイプを解説!食べ物とツボで対策を|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「冷え」がテーマ。食べ物やツボなど、タイプ別にすぐできる冷え対策を紹介します。
目次
あなたはどれ? 東洋医学的3つの「冷えタイプ」
寒さがどんどん厳しくなってくると、つらいのが「冷え」。特に女性は、冷えで悩んでいる人が多いですよね。手足が冷たい、体が芯から冷えるなど、悩みもさまざま。
“冷えは万病のもと”という言葉がある通り、体が冷えると生理痛や肩こり、首こりといった体の不調だけでなく、メンタル不調にもつながります。「体質だから仕方ない」と我慢せずに、自分でできる対策をしましょう。
「冷え」と一言でいっても、東洋医学ではタイプにより症状や原因が違います。「気血不足タイプ」「陽気不足タイプ」「冷えのぼせタイプ」の3つを、それぞれを解説していきます。自分のタイプにあった対策をすることで、冷えない体を手に入れることができます。
(1)手が冷える「気血不足タイプ」
冷えの中で最も多いのがこのタイプ。「常に手が冷える」「末端の冷えがつらい」という人は「気血不足タイプ」です。
気=エネルギー、血=血液は、体を温めるための材料となります。これらが体に足りていないため、末端まで材料が届かず手先が冷える原因になっています。
また、極端な食事制限が気血不足になることも。気血不足タイプは、他のタイプに比べると、冷えの程度は軽い方なので、しっかり対策をすることで改善していくでしょう。
(2)体が芯から冷える「陽気不足タイプ」
東洋医学の「陰陽」でいう、「陽の気(陽のエネルギー)」が足りていない「陽気不足タイプ」。このタイプは、気血不足に比べると重度の冷えといえます。
「体が芯から冷えて常に寒い」「お腹や腰周り、お尻が冷える」「冷えでしもやけができる」という人は、陽気不足タイプ。体の中心から冷えきっているため、冷え改善にはやや時間がかかります。
また、明け方は体が「陰」から「陽」に切り替わるタイミングのため、「陽」の気が少ない朝は冷えがつらくなることも。「陽」の気を補う食事やツボを習慣にしましょう。
(3)顔はのぼせて手足が冷たい「冷えのぼせタイプ」
顔はのぼせた感じがするのに、末端の手足は冷たいのが「冷えのぼせタイプ」。
東洋医学で「瘀血(おけつ)」といわれ、体の中の血が滞り、巡りが悪い状態といえます。
このタイプの人は夜に冷えが強くなりやすく、寝ようと思ったら顔はのぼせる、なのに手先は冷えて眠れないといった症状に悩まされることがあります。
タイプ別セルフケア「冷えにおすすめの食べ物&ツボ」
みなさんの冷えはどのタイプでしたか? タイプ別に東洋医学の視点から、セルフケアを紹介します。
例えば体を温める食べ物は、タイプによって違います。自分のタイプにあった食べ物を摂ったり、ツボを刺激したりして、つらい冷えを遠ざけましょう。
(1)気血不足タイプの冷え改善法
【食べ物】黄色と赤い食べ物を摂る
気=エネルギー、血=血液の材料が不足している「気血不足タイプ」は、食べ物で補うことが大切です。
「気」を補う食べ物は、黄色い食材と、自然な甘みを感じられる食材。「気」は胃腸で作られ、いずれも胃腸を元気にする働きがあります。
黄色い食べ物…さつまいも、かぼちゃ、バナナ など
自然な甘みを感じる食べ物…米、大豆製品、リンゴ など
「血」は、赤い食材で補います。赤身肉は血も気も、どちらも補うので積極的に。鉄分豊富といわれる、ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜もおすすめ。
赤い食べ物…なつめ、クコの実、ぶどう、赤身肉、ブルーベリー、小豆、鮭 など
緑黄色野菜…ほうれん草、小松菜 など
【ツボ】生命エネルギーが泉のよう湧く「湧泉(ゆうせん)」
ツボの場所:足の指をグッと丸めて、シワが寄ってくぼみができるところ。
押し方:手の親指を重ねて、グーっと押しても良いですが、ゴルフボールやテニスボールを「湧泉」のあたりで転がしたり、青竹踏みで刺激するのも効果的。
(2)陽気不足タイプの冷え改善法
【食べ物】温め力が強い食材をしっかり摂る
体が芯から冷える陽気不足タイプは、東洋医学で温める力が強いといわれる食べ物を意識して摂ってください。
「L-カルニチン」が含まれていて栄養満点のラム肉や、鮭、エビのほか、香辛料も上手に摂り入れましょう。
また、陽気不足タイプの人が、健康にいいと思って冷たいヨーグルトやドリンク、サラダ、フルーツなどをたくさん摂ると冷えが悪化します。せめて常温にするか、冷たいものを食べるときは、必ず温かい汁物と一緒に。
温める力が強い食べ物…ラム肉、鮭、エビ、かぼちゃ、玉ねぎ、クルミ など
薬味や香辛料…シナモン、ターメリック、コショウ、山椒、八角、しょうが、にんにく、ネギ、唐辛子 など
【ツボ】元気の源になる「命門(めいもん)」
ツボの場所:おへその真裏。背中側のウエストの一番くびれたライン上。
押し方:指で押しても良いですが、手が届きにくく、力の入れにくいところなので、カイロを貼るのが効果的。体の温める力を、カイロを貼ったり、ゆっくりお風呂に入ったりすることで助けてあげましょう。
(3)冷えのぼせタイプの冷え改善法
【食べ物】血液サラサラ食材を
瘀血(おけつ)といわれる、血の滞りがある冷えのぼせタイプ。滞りをスムーズにするのは、血液サラサラ効果のある食材です。玉ねぎや青魚など、食事に摂り入れやすいものを、毎日食べることをおすすめします。
血液サラサラ食材…らっきょう、しょうが、玉ねぎ、黒きくらげ、カニ、青魚 など
【ツボ】瘀血(おけつ)を改善する「三陰交(さんいんこう)」
ツボの場所:内くるぶしの頂点から指幅4本分上がったところの骨と筋肉の境目。
押し方:気持ちいい強さでゆっくり息を吐きながら静かに押して、息を吸いながら離します。お灸をするのもおすすめです。※三陰交は妊娠中は押さないように。
全タイプ共通の冷え改善法
首・手首・足首を冷やさない
冷えを予防・改善するために、まず大切なのは、体を冷やさない工夫をすること。「そんなの当たり前」と思われがちですが、これだけでも違います。
特に、「首」「手首」「足首」は絶対に冷やさないで。太い血管が通っているため、この“3首”が冷えると、体全体が冷えてしまいます。
冬は、マフラー、手袋、タイツや靴下は必須。夏でも冷える人は、“3首”を冷房からガードしましょう。
体を動かして血流をアップ
血流が滞ると、体が冷えやすくなるため、日常生活の中でなるべく体を動かすようにしてください。
わざわざジムに行かなくてもいいので、ストレッチや筋トレ、ラジオ体操など、家の中でできることから始めてみましょう。
かかとの上げ下げ、階段を昇り降りするなどでもOK。体を動かすと全身の巡りが良くなり、冷えづらい体質になります。
15分程度の入浴で芯から温める
冷えがつらい人ほど、入浴はシャワーで済ませずに湯船に浸かる習慣を。シャワーでは体が温まりません。
どのタイプも全身浴で15分前後、40℃前後のお湯に入りましょう。冬は41~42℃程度を目安に。熱すぎない程度の温度がおすすめです。
冷え対策に効果的な「焼きみかん」
冬においしいみかんをトースターで焼いた「焼きみかん」は、冷え改善におすすめ。風邪予防にも効果的です。
みかんには「気」の流れを良くして、体を温める作用があります。作り方はトースターにみかんを入れて、皮が黒くこげるまで5~10分焼きます。
トースターが面倒な場合はレンジで30秒ほど温めるだけもOK。
※レンジの場合は、そのまま入れると爆発するので、温める前に必ずみかんに切れ目を入れてください。時間はお好みで調整を。
今月の養生ポイント:冬は心を温めることも大切
冬は、体の冷えがつらいだけでなく、心も冷えて不安定になりやすい時期。「ウインターブルー」といわれ、落ち込んだり、ネガティブになったりして、うつ症状も増えやすくなります。
中国の言葉で「天寒、暖身先暖心」という言葉があります。これは「寒いときは、まず体より心を温めましょう」という意味。
新型コロナの影響で人と直接会う機会が減りつつありますが、家族や友人、パートナーなど、人とのつながりを大切にして、まずは心を冷やさないようにしましょう。
いつでも心と体は表裏一体。心の冷えは体の冷えにつながります。どちらも温かくしてお過ごしくださいね!
イラスト/植松しんこ
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