ゲーム感覚の運動療法で腎臓病患者の健康寿命を延ばす┃ホームドクター(14)
“新・国民病”といわれる慢性腎臓病が増加するなか、腎臓内科医として患者さんに寄り添う医療を続ける石川英昭先生。自身を知的好奇心の塊だと評する石川先生が、健康寿命を延ばすために取り組む最先端の方策とは。
「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。
目次
「腎臓病は安静に」という考えは過去のもの
石川英昭先生が腎臓内科医になったきっかけを教えてください
石川先生 祖父と父が医師で、医学が身近だったことが原点。『ブラック・ジャック』を愛読して医学への興味を深め、中学生時代は開業医の父を手伝うなどして、自然と歩む道が定まりました。
腎臓内科医を選んだきっかけは、患者さんの思いを聞きながら生活を支える医療が自分の性に合っていると思ったこと。弱音を吐かずに黙々と体のバランスを整える“沈黙の臓器”である腎臓が好きで、患者さんにも腎臓にも長期的に向き合いたい。それができる根気強さを私自身が持ち合わせているんでしょうね。
透析患者さんに透析しながらのエアロバイクをすすめているそうですね
石川先生 「腎臓病は安静に」という考えは過去のもの。運動は心肺機能を高め、足腰を鍛える最善の方法で、透析の効率を上げることがわかっています。
シビアな話をすると、慢性腎臓病で透析治療を受ける患者さんの平均年齢は67~68歳で、終末期に近い人もいます。そして、運動をよく行う透析患者さんのほうが長生きしやすい。でも、そもそも運動が苦手な人が多いでしょう? 半年続ければ心肺機能も筋力も上がると熱弁を振るっても、実際に継続するのは簡単じゃない。だから透析中の運動療法がスタンダードになりつつあります。ただ、いくら治療の一環でもつまらないと続かないため、透析しながらエアロバイクをこぎ、VR(仮想現実)で移り変わる景色を目の前に映し出すなど、ゲーム要素を取り入れたんです。
将来的にはオンラインで人とつながる機能が搭載され、患者さん同士の世界大会が開催できたらと夢が膨らみます。
腎臓を元気に保つ日常での工夫を教えてください。
石川先生 腎臓は症状が出にくい臓器ですが、むくみや疲れやすくなるのが機能低下のサイン。急にむくんで体重が増えたり、階段の上り下りがつらくなったりしたら、医療機関に相談を。特に腎臓病の家族歴がある人はリスクが高いので、腎機能検査を受けましょう。
また、女性は更年期を迎えると「骨粗しょう症」が増えますが、腎機能が低下していると悪化しやすい。骨折を防ぐために「骨密度」も要チェックです。
そして何より、食事と十分な睡眠という基本的な生活を大切にしてほしいです。腎臓を元気に保つには高血圧を防ぐことが重要。私は糖質、特に砂糖を避け、高血圧の原因となる塩分も控えています。
最後に、いくつになっても新しい挑戦を続けてください。自然と体を動かす機会が増え、腎臓の健康力が底上げされますよ。
健康の秘訣は5本指靴!
勤務中もオフの日も足元の相棒は「5本指靴」。指先が自由になるだけでなく、靴底が2~3mmとごく薄いのが特徴。足裏からの刺激が増え、脳が活性化するそう。
取材・文/江山 彩 協力/メディコレ (からだにいいこと2023年6月号より)