口腔ケアに対する意識を向上させるのが歯科医の使命┃ホームドクター(15)
世界レベルの技術を提供し、海外からも患者さんが訪れる歯科医の井上裕之先生。一流の歯科医であり、メンタルセラピスト、経営学博士としても多数の著書を出版する井上先生が目指す理想の歯科医像とは。
「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。
目次
整った歯列こそ、健やかな体の基盤
歯科技術の世界最高峰で学んだ井上裕之先生から見た日本の歯科とは?
井上先生 私は歯科医を志した当時から、「世界レベルの治療を提供できる開業医になりたい」と思って学び続けてきました。日本で歯学博士号を取得し、ニューヨーク大学に留学。その後、ペンシルベニア大学、ハーバード大学などで研鑽を積み、故郷の北海道・帯広で世界標準の歯科治療ができる歯科医院を開業しました。
しかし、日本では世界と同じ治療を行えないことも。歯科治療に使用する新しい材料の許認可に慎重なためです。厚生労働省はしっかりと安全性をチェックしているのでしょう。それでも、口腔トラブルでつらい思いをする患者さんを救うべく、海外で身につけた技術や経験が私の治療の礎となっています。
先生がもっとも重要だと考える口腔ケアのポイントは?
井上先生 まずは“歯並びを整える”ことですね。歯列が悪いとブラッシングを適切に行えず、むし歯や歯周病になりやすい状態に。歯周病菌は歯肉の血管から全身を巡り、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす一因となります。さらに、噛み合わせに不具合があれば、あごがずれ、骨盤がずれて、骨格も筋肉もバランスを失っていきます。
整った歯列こそ、健やかな体の基盤なのです。こうした理由で、海外では幼少期に歯列を矯正するのが当然と考えられています。成人でも、矯正中の人は知性がある人だと好意的に受け入れられます。日本では大半の歯科矯正が保険適用外ですが、歯並びを整えて、噛み合わせを正しい位置にすることは重要です。
歯科医のほか、自己啓発や経営学の分野にも活躍の場を広げているのはなぜですか?
井上先生 “理想の歯科医”について考える機会がありました。そこで気付いたのは、歯科の知識を得るだけでなく、歯科医である前に問われる人間力を高め、経営者としてマネジメントやマーケティングなどの総合的な知識を身につける必要があるということ。
そこで人の心の本質についてや経営学を学び始めました。実のある学びを多くの人にシェアしたいと思っていた矢先、導かれるように書籍を出版したり、セミナーを開催したりする機会に恵まれたのです。とはいえ、私の本業は歯科医です。口もとを清潔に保つことは健康に直結し、人生にもよい影響を与えます。歯科医としては口腔ケアに対する国民の意識を向上させたい。幅広い活動で多少の影響力を持てたからこそ、今後の人生では「口腔ケアが健康で充実した人生に欠かせないことを伝えていく」ことを使命に突き進んでいきます。
日々の体づくりで還暦をさっそうと乗り越える
還暦の祝賀会で赤いちゃんちゃんこならぬ、赤いライダースーツを着こなす井上先生。均整の取れた体は、10年以上続ける筋トレ、ボクシング、ピラティスのたまもの。
取材・文/江山 彩 協力/メディコレ
(からだにいいこと2023年8月号より)
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