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ホームドクター16

外科医として地域に根ざした在宅診療の可能性を広げる┃ホームドクター(16)

認知症の祖父を精神病院でみとった経験から医師を志し、大学病院では外科医として研鑽を積み、現在は一般外来と在宅診療の両方を担うハイブリッドなクリニックを営む髙橋公一先生。その根底にある思いとは。

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「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。

在宅医療は特別ではない、誰にでもできると伝えたい

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髙橋公一先生

髙橋公一先生が医師の道を目指したきっかけは?

髙橋先生 私が高校生のとき、すでに認知症を患っていた祖父の病状が進行。ある日、介護をしていた祖母のこともわからなくなり、けがをさせてしまいました。見かねた父と叔父が、祖母を泣く泣く説得し、祖父を施設に入れることにしたのですが、当時は今のような介護老人施設はありませんでした。そこで父が知り合いの精神病院にお願いをして、入院させることに。

ほどなくして祖父は自力では食事ができないくらい衰弱し、私はそこに1人でお見舞いに行くことになりました。精神病院の鍵がかかる個室に、意識のない、点滴で腕が腫れ上がった祖父と2人で過ごすうちに、「なぜ、精神病でない祖父が精神病院で亡くならなければならないのか?」と疑問に思い、「私はこういう人を助けたい」と考えるようになったのが医師を志したきっかけです。

外科医のご経験を生かし、訪問診療も行う医院を開業した理由は?

髙橋先生 大学病院で外科医をしていると、早く手術をして早く治すことが一番大切だと思っていました。しかし、一般病院で外来診療をするなかで、さまざまな理由によって手術ができず、通院で加療を継続している患者さんがたくさんいることを目の当たりにするように。一方で、自力で食事が摂れず胃ろうとなり、数ヵ月に1回外来で胃ろう交換のために受診される方がいることも気になるようになりました。

動けないから在宅診療を受けているのに、家族は仕事を休んで高い介護タクシー代を払い来院。その最中、患者さんは朝から水分も止められているというのに……。そこで私は患者さんが病院で行っている医療的ケアを在宅で行い、患者さんと家族の負担を減らす、そんなクリニックを作ろうと考え、開業することにしました。

診療以外に、講演や執筆活動にも力を注がれるのはなぜですか?

髙橋先生 私がやっていることは特別なことではないと思っています。よく人から「在宅診療で、1日に30人も40人も胃ろう交換するのは大変でしょう?」と言われますが、やってしまえば大したことではありません。ポータブルレントゲンも胃ろう内視鏡も市販されたモノで、誰でも手に入れることができます。在宅診療で先天的な疾患を抱えた小児も見ていますが、これも同じです。

我々は、お子さんとご両親が安心して自宅で過ごせるように定期的に往診をさせていただいているだけです。私は、「在宅医療が誰にでもできる、特別ではない」ということを伝えるために講演や執筆活動を行っています。それによって「在宅診療をやってみよう」と、誰かほかの医療従事者の行動につながったらうれしいです。

在宅診療についての講演を定期的に実施

後援会

持ち運び可能なレントゲン、エコー、内視鏡などを見せながら、在宅診療で行う検査の講演を
する髙橋先生。症例を挙げながら謎解き形式で進む展開に、聴衆も真剣なまなざしに。

取材・文/江山 彩 協力/メディコレ
(からだにいいこと2023年10月号より)

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