おしっこの悩みを解決する「生活のための医療」を目指す┃ホームドクター(17)
おしっこの悩みは生活の質に直結するけれど、誰にも相談できずに苦しむ人が数知れず。こうした人が一刻も早く解決の道を進めるよう、泌尿器科クリニックを開院し た、泌尿器科医・磯野誠先生の思いとは。
「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。
目次
尿トラブルに悩む人、前立腺がん治療の役に立ちたい
磯野誠先生が医師を目指し、泌尿器科を専門にした理由は?
磯野先生 小学校のころは週に一度のペースで学校を休むほど、体が弱い子どもでした。だからという わけではありませんが、漠然と医師への憧れがあったのかもしれません。
一度は東京大学に入学しましたが、手に職をつけたいと防衛医科大学校へ。泌尿器科を選んだのは、高齢化社会が進み尿トラブルに悩む人が増えると思ったからです。また、当時のアメリカでは前立腺がんの罹患数が男性がん患者のトップで、日本も同じ状態になると予測できました。前立腺がんの治療技術を身につければ、多くの方の役に立てるのではないかと。そして泌尿器科医として研鑽を積みながら、陸上自衛隊駐屯地の医務室での勤務やデュッセルドルフ大学への留学など、20年近く防衛医科大学校のお世話になりました。
その後、恵佑会札幌病院でロボット支援手術を学び、2021年からは我孫子東邦病院で医療にあたりました。
所沢で泌尿器科のクリニックを開院しようと思ったのはなぜですか?
磯野先生 生活の質に直結するおしっこの悩みを今まさに抱えている方が、検査待ちのためにご自身の時間を犠牲にしている問題を解決したかったのが理由の1つです。‘‘医療は生活のため’’にあるべきであって、医療のための生活では本末転倒です。
私は岐阜県の出身ですが、防衛医科大学校がある所沢は、私にとって‘‘第2のふるさと’’と呼べる場所。そこで、2023年4月にこの地で開院しました。CT・エックス線撮影装置、エコー、膀腕内視鏡、最先端の尿分析装置を備え、スピーディーな検査結果を提供できるクリニックとして地域医療の一翼を担っていきたいと願い、日々診療を行っています。
尿トラブルを抱える女性にメッセージをお願いします
磯野先生 40代以降の女性は頻尿や尿漏れといった尿トラブルが急増します。「年だから…」とあきらめたり、おしっこの悩みなんて恥ずかしくて誰にも相談できないと苦しんだりする方が大勢いることでしょう。
でも、おしっこの悩みは治療できます。
くしゃみなどで腹圧がかかると漏れる「腹圧性尿失禁」や、膀腕が異常に収縮することで頻繁に尿意を感じる「切迫性尿失禁」、急に我慢できないような尿意が起こる「過活動膀脱」は、薬を適切に使い、骨盤底筋を鍛える体操やおしっこを一時的に我慢する膀脱訓練を併用することで、劇的に改善する方が多いです。
尿道にボトックス®注射をして膀脱の収縮を抑えたり、女性ホルモンの腟剤で尿トラブルが解決することも。ささいと感じるようなおしっこの悩みはもちろん、日中に10回以上の尿意があるなら、ぜひ泌尿器科を頼ってください。
アコーディオンの演奏で心身をリフレッシュ
ドイツ留学中、磯野先生が街中で流れる音色に魅了されたアコーディオン。現在は、毎日、診察前のクリニックで自ら演奏し、1日を元気に始める活力にしているそう。
取材・文/江山 彩 協力/メディコレ
(からだにいいこと2023年12月号より)
[ 監修者 ]