家族関係に困ったら|ズバッと解決!実家の大問題(前編)
大人になると頭を悩ませる人が多い「実家の大問題」。親の病気や介護、家族関係などが気になる方に、問題との上手な付き合い方を伝授します。前編は介護問題がテーマです。
目次
介護も人間関係も自分のできる範囲でいい
実家で暮らす親の病気や介護、それに家族関係のさまざまな問題。「まだ関係ない」と目を背けたり、誰にも言えずに悩んだりしていませんか?
「年齢を問わず、介護はいつ始まっても不思議はありません。いざというときに備え、ある程度の知識は持っておきましょう」と、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。
「とはいえ、具体的な流れを正確に理解しなくてもOK。何かあったとき最初に頼るべき窓口など、基本的なことを知っておけば十分です。また、事前に親子で相談することも備えのひとつ。記事をきっかけに、介護について親と話してみて」(太田さん)
そもそも親子の仲が良くなく、付き合い自体に悩んでいる人も。
臨床心理士の玉井 仁さんは、「子にとって、親は何歳になっても特別な存在に感じますよね。でも、親と子は別の人間。関係性で悩んだときは“どうすれば自分自身が幸せになれるか”を最優先に考えて」と話します。
家族という近しい間柄で生じた問題は、1人で抱え込まないこと。専門家や周囲をうまく頼って乗り越えて。
『からだにいいこと』読者165人にアンケートを実施。「親と不仲なんだけど、介護はどうすれば……」という不安の声もありました。
「親の病気・介護」の基礎知識
親の年齢と関係なく、いつ始まってもおかしくないのが介護。最低限の知識は持っておいて。
これだけは覚えて!“もしも”に備える3カ条
急に介護が必要になると、頭が真っ白になることも。細かいことは覚えなくても大丈夫なので、この3つだけは今から押さえておきましょう。
1.介護の最初の相談先は「地域包括支援センター」
2.介護休暇は「手続きのため」に使う
3.介護は「チーム戦」。1人で抱え込まないで
介護の始まりの多くは「突然」
「うちの親はまだ元気」と思っていませんか? 実は、介護の大半が急に始まります。
病気やけがで突然の入院
病気や骨折などで入院したあと、退院と同時に介護が始まるケースが大半。多くの場合、入院から退院まではあっという間です。
「何か変」から要支援・要介護に
ボーッとしている、ヤセてきたなど「何か変」と感じたら、認知症や体調不良のおそれが。こうした異変から介護が始まることも。
介護で最初にすべきこと4選
専門家や相談窓口をうまく頼ることが、介護の最大のポイントです。
まずは「地域包括支援センター」に相談
地域包括支援センターは、介護に関する総合相談窓口。介護保険の申請もサポートしてくれます。相談は無料なので、心配ごとがあれば親が住む地域のセンターに気軽に連絡を。
親が住む地域の地域包括支援センターを確認する
ケアマネジャーは親の家の近くで選ぶ
介護保険サービスを受ける場合はケアマネジャーが利用計画を作成。親の家の近くの何人かと電話で話し、相談しやすい人を選んで。
できないことは「できない」と宣言して
行政やケアマネジャーとのやりとりでは、無理なことは「できない」と伝えて。そうすれば、「できる範囲」のことを提案してもらえます。
介護保険の認定調査は必ず立ち会う
要介護者の心身状態を確認する「介護認定調査」。親だけだと、調査員の前で強がってしまうことも。調査には立ち合い、もし親が事実と違うことを言ったら、あとでそっと本当のことを伝えて。
異変を感じたら、日付と一緒に記録を。メモの頻度が上がったら、介護を検討する頃合いかも。認定調査のときの資料としても使えます。
長期戦の介護とうまく付き合う Q & A
ときには10年以上続くこともある介護。心身ともに消耗しないコツをお伝えします。
Q.介護のお金は誰が出す?
A.基本は親のお金。代理人カードの活用を!
交通費を含め、親が負担するのが大原則。もしものときにどの口座からお金を出せばよいか、早めに聞いておいて。代わりに出金できる「代理人カード」を作れる銀行もあります。
Q.良い施設を選ぶコツは?
A.金額だけでなく目的に合わせて検討を。
予算も大切ですが、まずは入居する目的を重視して。たとえば認知症の親なら、そのケアに特化した施設が“良い施設”。体験入居などで、親本人の意向も確認を。
Q.不仲の親の介護はどうする?
A.早めに相談したらあとは行政に任せて。
無理をせず、事情を地域包括支援センターに伝えましょう。「かかわらない」という選択肢もアリ。ただし急な介護放棄は法に触れるので、必ず行政に相談を。
Q.仕事は辞めたほうがいい?
A.再就職は意外と大変。辞めない方法を考えて。
介護離職後の再就職は、年収が下がるケースも多いそう。介護中心の生活は心身への負担も大。さまざまなサービスを活用し、できるだけ仕事は続けて。ときには「介護休暇」の活用を。
介護やお金の話は“親が元気なうち”がベスト
親が体調を崩してから「仕事は辞めない(介護中心の生活にはしない)」などと伝えると、ショックを与えるリスクも。自分の事情を伝えるのも、親の希望を確認するのも、親が元気なうちがベスト。
Q.親を自分の近くに呼ぶべき?
A.遠距離介護は良いことだらけ!
住み慣れた土地を離れたがらない親は多いもの。交通費はかかるものの、“遠距離介護”は意外とメリット多数。制度やサービスを活用すれば、介護は十分可能です。
〈遠距離介護のメリット〉
・親子ともに住み慣れた土地で暮らせる
・介護一色の生活にならず、自分のペースを保てる
・介護保険サービスを受けやすい場合がある
・医療費や介護費が安くなることがある
・特別養護老人ホームに入りやすくなる
イラスト/前田はんきち
(からだにいいこと2023年8月号より)
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