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漢方薬いろいろ

“病名のつかない病気”なら漢方薬の出番です|漢方専門医の「不調を解決する漢方の話」

「不調を漢方薬で改善したい」と思っても、うまく活用できていない人は多いもの。そこで、北里研究所病院で漢方科部長を務めた専門医・鈴木邦彦先生が、漢方薬と仲良くつきあう方法をお教えします。今回は連載第1回。

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「効いているかわからない」なら飲むのをやめてみる

疑問を持つ女性

漢方薬を飲んでいる人からよく聞くのが「効いているのか、効いていないのかよくわからない」という言葉です。

漢方薬は「効き目が優しい」とか「効くのに時間がかかる」と思っているので、はっきりした変化を期待していないからなのでしょう。

しかし、漢方薬でも即効性のあるものでは、飲んで数分ほどで効果が出るものもあります。

もちろん、体質改善には時間がかかるので、3ヵ月から半年と長期間続けることで変化が出る症状もあります。

もし、長く飲んでも効果を感じられないなら、一度、飲むのをやめてみるのがおすすめです。それで調子が悪くなったら、やはり漢方薬が効いていたわけですから、再開する。もし調子が変わらなければ、その薬はあなたの症状に合っていないと考えられます。

サプリメントなども「お守り代わりに飲んでいる」という人がいますが、効果が実感できないなら、いったんやめてみたほうがいいでしょう。サプリメントは薬ではないですが、栄養補助食品といってもふつうの食べ物でもないので、肝臓に負担をかけることもあります。

健康にいい食べ物もそう。「バナナが体にいいと聞いたから」と、何年も食べ続けているという方がいましたが、果たしてそれが自分の体に合っているのか、健康効果があるのか、検証をしているでしょうか。効果を自覚しないまま、続けている人は多いものです。

漢方薬を始めるときは、最初にやめどきを決めておくのもいいでしょう。「肌荒れがなおって、きれいになったら飲むのをやめよう」とか。

変化というのはわかりにくいので、自分でしっかり観察して、やめどきをどう判断するかが大切です。

肌の調子が整った女性

漢方専門医でも“最適の薬”は一発でわからない

「漢方薬が効かない」と言われるのは、その人の不調を改善する最善の薬が見つかるのに時間がかかる場合もあるからでしょう。

「効く薬がわからない!?」と疑問に思うかもしれませんが、実はそこが漢方薬の優れたところなのです。

西洋薬は、数字合わせが得意です。血液検査などで、基準より高い数字が出たら、それを下げるといった使い方ですね。しかし、数値が下がるのは、薬が効いているときだけ。根本的な解決になっていないため、すぐに数値は元に戻って、永遠に薬を飲み続けなければならない、ということも多い。

また、血液検査やCTスキャンなどのさまざまな検査をしても原因がわからない、といった症状にはお手上げです。

一方、漢方薬は、ある特定の症状をピンポイントで狙うのではなく、体全体のバランスをよくすることを考えます。体のシステムがうまく働くように、漢方薬による刺激で正常に整えていくのです。

そのために、どの生薬の組み合わせが最適なのか、それは私たち漢方専門医でも、一発で当てるのは正直、難しいのです。

その人の不調、症状を発する深い原因を探り、徐々に軌道修正して、最適な薬にたどり着くのが、漢方薬での治療です。

漢方イメージ

手間がかかると感じるかもしれませんが、体全体の働きを正常にすることで、不調がまとめて改善する、ということが起こりえるのが、漢方薬のすごいところなのです。

生理痛の漢方薬で花粉症が治ることも!

たとえば、生理痛で困っている女性は多いですね。

生理痛なら、ファーストチョイスは「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が定番です。この薬は「血虚」「水毒」といった体質を改善します。これらは、冷え性、むくみ、貧血、頭痛、胃腸の不調なども引き起こすことが多い。そのため、生理痛対策の「当帰芍薬散」により、こうした不調が次々に改善することにもなるのです。さらに、水毒が改善すると、花粉症が治ることも。西洋薬で、生理痛の痛み止めを飲んで、花粉症がよくなることはまずないでしょう。

また、痛み止めは対処療法なので、次の生理のときも飲まなくてはいけません。しかし漢方薬なら、根本原因を取り除くことで、生理痛と縁のない生活を送れるようにもなります。

伸びをする女性

漢方薬の処方で大切なのは、不調や症状の原因がどこにあるのかを探すこと。ですから、病名は必ずしも必要ではないのです。

一方、西洋薬は、何らかの病名をつけないと対処できません。患者さんは病名というレッテルを欲しがりますが、不調や病気、すべてに病名がつくわけではありません。

そして、病名がなくても漢方的な見立てで病態を把握し、治療できるのが漢方薬の強み。病名がつかない症状の治療こそ、漢方薬の救えるところです。

病名のつかない症状や、根本治療ができない不調は、ぜひ漢方薬を頼ってみてください。

ただ、先ほどお伝えしたように、漢方薬はその人に合うものを探すのが難しい。最適な漢方薬で不調を改善するためには、漢方医学に詳しい専門医にかかってほしいと思います。

一般社団法人 日本東洋医学会のサイトでは、自分の家の近くにある漢方専門医を探すことができます。活用してみてください。

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