生理中の過ごし方を医師が解説 お風呂は入ってOK?運動は?
つらい生理中を少しでも快適に過ごすためのコツやNG行動を、産婦人科医の高尾美穂さんが解説。お風呂や運動、お酒など、気になる生理中の過ごし方についてご紹介します。
目次
生理中の体は、どうなっているの?
女性にとって毎月当たり前のようにやってくる生理。そもそも女性の体は、約1カ月に1回、排卵があります。排卵した後は、妊娠に備えて赤ちゃんのベッドとなる子宮内膜が厚くなりますが、妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜ははがれて、血液と共に腟から排出されます。これが毎月の生理です。
生理の経血の約半分は子宮内膜、もう半分が血液からできています。つまり生理中は、日々血液を失いながら過ごしているのです。血液は酸素や栄養を運んだり、体を温めたりと、あらゆる働きを担っています。そんな血液が失われるのですから、生理中は調子が悪くて当たり前。
「毎月のことだから」と軽く思わず、そもそも「生理中は普段と同じようには活動できない時期」と思って、無理のない過ごし方を心がけることが大切です。
生理中の過ごし方のポイントは?
忙しい現代女性は、「生理だろうと、仕事や家事を休めない」という人がほとんどですよね。
生理中も動けるならば仕事を休む必要はありませんが、ポイントとして「できるだけ体を休めてあげる」という意識で過ごしてください。
平均的な生理の日数は、3~7日。生理中は自分の中の「体調が一番つらいとき」「それ以外」の2つの期間に分けて過ごし方を変えることをおすすめします。
もちろん個人差がありますが、一般に生理が「一番つらいとき」は2日目くらいまで。この時期はできるだけ早く家に帰って体を休め、「それ以外」の日は、痛みや不快感がなければいつも通りの過ごし方で構いません。「一番つらいとき」は自分の体を最優先することを忘れずに。
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生理中のつらさを快適にする過ごし方のコツとは?
生理痛や頭痛といった痛みや、イライラや落ち込みなどの心の不調と向き合わなければいけない生理期間。そんなつらい時期を少しでも楽にする生理中の過ごし方を紹介していきます。
(1)つらい生理痛には迷わず鎮痛剤を使ってOK
そもそも生理痛の痛みの原因は、子宮を収縮させる「プロスタグランジン」というホルモンの過剰分泌が関係しています。子宮がギュッと強く収縮することで、下腹部に痛みを感じます。
「温める」「運動する」など血行をよくすることで腰回りのだる重さは改善しますが、子宮が収縮することによるお腹の痛みは鎮痛剤でしか抑えることができません。
よく「生理だから仕方ない」とガマンする女性が多いですが、つらいときは痛くなったらすぐに鎮痛剤を使ってください。
鎮痛剤は「毎月飲んでいると効かなくなるのでは?」と思われがちですが、実は鎮痛剤に耐性はなく、毎月使っても効きにくくなるということはありません。
それでも「鎮痛剤を飲んでいるのに効かない」と感じるのには、次の2つの原因が考えられます。
1,飲むタイミングが遅い
子宮を収縮させる「プロスタグランジン」がかなり分泌してしまったあとでは、痛み止めを飲んでも痛みはすぐなくなりません。生理痛がくるタイミングを考えながら、痛みのピークが来る前に早めに服用するようにしましょう。
2,子宮内膜症などの病気の可能性
痛くなる前に飲んでいるのに今まで飲んでいた鎮痛剤が効かないとすると、子宮内膜症などの大きな病気が隠れている可能性もあります。早めに婦人科を受診してください。
また、生理痛が重い人は「月経困難症」の可能性が考えられます。さらに日常に支障をきたすほど症状の重い人は、「子宮内膜症」や「子宮腺筋症」などの病気予備軍と言われています。
これらの病気予防のため、普段からピルを飲むことで生理をコントロールしていくというのも、近年は選択肢のひとつとして考えられています。
(2)いつもより家でゆっくり過ごす
とても簡単なようで、意外とできていない人が多いのが「家に早めに帰宅する」こと。生理が「一番つらいとき」は仕事を早めに切り上げて、寄り道せずに家でゆっくり体を休める。これだけで体への負担は軽くなります。
仕事中に急に生理になった場合、早く帰ることが難しいこともあるかもしれません。ですが普段から生理周期を把握しておき、その前後は仕事量を調整する、生理日であることを周りの女性に伝えておくなどして、予定を入れない工夫をすることも大切です。
生理時期を考えたスケジュール管理は、自分の体をいたわるためにも必要なことなのでぜひ取り入れてください。
(3)睡眠時間は7~9時間を確保
生理中のつらい眠気を軽くするためには、30~40代女性に必要といわれる7~9時間の睡眠時間を生理前から十分にとり、寝不足にならないことが重要です。けれども日本人女性の睡眠時間は、先進国の中で非常に少ないというデータもあるほど、普段から十分に眠れていません。
生理前や生理中はひどい眠気に襲われる人も多いでしょう。生理前の眠気はホルモンが関係していますが、生理中の眠気は、ホルモンというより生理前の睡眠不足が借金のように蓄積することが主な原因。
生理前からあれこれ予定を入れず、数日間は家でゆっくり過ごすことで7~9時間の睡眠時間も確保しやすくなります。ぜひ普段から取り入れてみてください。
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(4)運動で生理中のだる重さを改善
鎮痛剤の話でも触れたとおり、生理痛の痛みそのものに効くのは痛み止めだけですが、ヨガやストレッチなどの運動は、お腹周りのだる重さを改善するのには効果的です。
筋肉は動かすことで血液が集まるので、その温かい血液により冷えや生理特有のだる重さが緩和されて楽に感じるでしょう。
生理中のNG行動は?
普段よりも心と体が不安定になる生理中ですが、自分の体調に問題がなければ、必要以上に生活を制限することはありません。ここでは生理中にやっていいのか迷いがちな行動について解説します。
(1)お風呂(湯舟)は入ってもいいの?
基本的にOKです。生理中でも湯船では水圧により経血が漏れ出ることはなく、腟の中に菌が入りこむこともないので、衛生的には問題ありません。子どもと一緒のお風呂もOKです。
また、温泉などの公共浴場もタンポンをして入ることは可能ですが、経血が多いときは湯船の外に出たときに垂れてしまう場合もあるので、その時期はマナーとしてやめておきましょう。
(2)運動はしてもいいの?
OKです。むしろ生理中は、骨盤周辺の筋肉を動かして血行を良くすることで、生理のだる重さが軽減します。体がつらくない日は、ヨガやストレッチなどの軽い運動をすることをおすすめします。もちろんつらいときは控えてくださいね。
プールはタンポンを使えば入れますが、経血の多い日や体調が悪ければ無理しないで見送ってください。
(3)お酒は飲んでいいの?
生理中の飲酒は控えることをおすすめします。お酒を飲むと血圧と心拍数が上がり、血流量が増えるので出血が増える可能性があります。それにより体に負担が増えてしまうので、生理期間はノンアルコールドリンクにするなど、アルコールを控えるよう心がけてください。
ひどい生理痛は病気予備軍の可能性大! 婦人科受診の目安は?
生理中に重い生理痛があるなら、「子宮内膜症」などの病気が潜んでいる可能性も。すぐに婦人科を受診すべきです。
受診の目安としては、普段から婦人科検診(エコー)を受けている人とそうでない人で対応が異なります。
1年に1回程度婦人科検診などでエコーの検査をしていれば、一度だけ生理痛がつらい月があっても様子をみても構いませんが、それが毎月続く場合や、仕事や家事などの生活に支障が出ている場合は受診をしてください。
婦人科検診を定期的に受診しておらず、さらに重い生理痛がある人は、すでに「月経困難症」の可能性が高いので、すぐに婦人科で相談することをおすすめします。
生理は女性にとって体の状態や病気のシグナルになる重要なもの。生理中はつらい痛みや不快な症状もありますが、自分の周期や体調を把握しながら、無理なく過ごしましょう。
取材・文/松永敦子
生理が少量ずつ出て終わらないとき、不安になりますよね。中には、病気が潜んでいる可能性も。長引く生理の原因について産婦人科医・宋美玄さんに聞きました。
[ 監修者 ]
- 高尾美穂オフィシャルHP
- http://www.mihotakao.jp/
- 女性のための総合クリニック イーク表参道
- https://www.ihc.or.jp/
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