命と生活を守るための「正しく怖がる」秘訣
医療の専門家である医師たちが、がん闘病中に行ったことを伝授。様々な実践のなか、共通するのは“ご自愛”です。感情の波と付き合いながら穏やかに過ごすコツを、子宮頸がんで子宮と卵巣を全摘した緩和ケア医に聞きました。
目次
がんは「怖いもの」、正しく恐れて命を守る
「がんは、生活を大きく変える病気。だからこそ、正しく怖がることが必要です」と、子宮頸がんを経験した緩和ケア医・ひまわり先生。自覚症状はなく、突然の出来事でした。
当初は卵巣を残す方向で検討していたものの、再発リスクなどを考え、子宮全摘を決意。背中を押したのは、同じ病気の患者の声でした。
「手術で取り切れず余命宣告を受けた人から、『取れるなら取ったほうがいい』と言われたことが決め手に。後遺症との付き合い方についても、闘病仲間の情報に助けられました」
麻酔科医だったひまわり先生が緩和ケア医に転身したのは、がん罹患が契機。闘病経験が診療に生かせることもあるものの、がんになって良かったと思ったことはありません。
「いまだに『なんで私が』と落ち込むこともありますが、感情が揺れるのは自然なこと。落ち込む自分を責めず、命を守るために決断した結果の“今”を受け止めて生きていきます」
子宮頸がんリアル闘病記
女性特有のがんを患ったひまわり先生。診断から現在までの経緯を聞きました。
無症状なのに検診で異常発覚
年に一度の検診で「腺がん」が判明。自覚症状はありませんでした。知識があるからこそ、恐怖も大きかったそう。
卵巣を手術で摘出
転移が多いのが腺がんの特徴。転移や再発の可能性を調べ、同じ病気の患者の経験談を聞いて熟慮を重ね、生きるために子宮と卵巣の摘出を決意しました。
後遺症と今も付き合い続ける
尿意を感じなくなったため、排尿は時間を決めて行うように。不便はあるけれど、命を守ることを優先した結果なので、対策しながら日々を過ごしています。
【始めたこと】ひまわり先生流・がんの怖がり方
病気について知り、“患者力”を高めるのが、がんと向き合う秘訣のひとつです。
「がんかも」と思ったら
【油断しすぎ】「どうせ平気」と検査を受けない
自分は大丈夫と思い込んで検査が遅れると、進行してから見つかるリスクがあります。
【怖がりすぎ】がんが怖くて眠れない
ただ怖がって情報をシャットダウンするだけでは、検査も早期発見もできません。
【正しく怖がる】検診や検査をきちんと受ける
がんが怖い病気であることは事実。自治体が行うがん検診のほか、不調は見過ごさずきちんと受診するなど、要所での検査は怠らないで。
がんと分かったら
【油断しすぎ】何も調べず流れに任せる
後遺症を知らずに治療を受けると、あとから苦労したり後悔したりする恐れもあります。
【怖がりすぎ】生活について医師に質問攻め
医師の専門は、あくまで治療。生活面は、医師に聞いても十分な回答を得られないことも。
【正しく怖がる】後遺症や症状は“仲間”に聞いてみる
同じ病気の人の声を知ると、後遺症が生活に与えるリアルな影響がわかります。治療の選び方だけでなく、自身の生き方を考える材料にも。
イラスト/HaluS
(からだにいいこと2024年8月号より)
[ 監修者 ]