鼻水・鼻づまり・ムズムズ…。3タイプ別「鼻の症状」を和らげる方法|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「鼻の症状」がテーマ。3つのタイプ別に、鼻水や鼻づまりなどの鼻トラブルの原因や対策をご紹介します。
原因別「鼻の症状」3タイプを解説
肌寒いと思ったら鼻水がダラダラ出てきた、季節の変わり目でムズムズする、鼻づまりで呼吸が苦しい…。このように鼻に何かしらの症状があると、仕事に集中できなかったり、人と話すのもつらかったりして、1日中ストレスを感じますよね。
鼻の症状には、冷えや熱が原因で急に起こる「急性」の症状と、いつも鼻トラブルが起こりやすい「慢性」の症状があり、原因別に3タイプにわけられます。東洋医学の視点でそれらを解説しますので、よく起こりやすい鼻の症状が、どのタイプに当てはまるかを確認してみましょう。
(1)【急性】冷えが原因の「ダラダラ鼻水タイプ」
1つ目は、急性の「ダラダラ鼻水タイプ」。冷房や寒い風に当たって体が冷えたことで、風の邪気「風邪(ふうじゃ)」や、寒さの邪気「寒邪(かんじゃ)」が侵入。透明で水のようなダラダラとした鼻水が出て、鼻づまりや鼻声といった症状があらわれます。そのほか、悪寒がする、頭痛や関節が痛むなど、風邪の引き始めのような症状が出るのも「ダラダラ鼻水タイプ」の特徴です。
(2)【急性】体にこもった熱が原因の「ネバネバ鼻水タイプ」
2つ目は、急性の「ネバネバ鼻水タイプ」です。風の邪気「風邪(ふうじゃ)」や、熱による邪気「熱邪(ねつじゃ)」が体にこもり、炎症を起こしている状態。熱が上がり、黄色くてネバネバした鼻水が出ます。発熱のほか、鼻づまり、のどが痛い、口が乾くなどの熱邪による症状があらわれるのも特徴です。「ダラダラ鼻水タイプ」同様に、急性の症状なので、熱が下がれば過剰に心配する必要はありません。
(3)【慢性】肺・脾のエネルギー不足が原因の「グズグズ鼻水タイプ」
3つ目は、慢性の「グズグズ鼻水タイプ」です。肺や脾(胃腸)のエネルギー不足が原因で、鼻炎を繰り返すのがこのタイプ。慢性的な鼻の不調が続き、嗅覚が落ちる、風邪をひきやすい、疲れやすい、食欲が落ちる、動悸・息切れしやすいなどの症状もあらわれやすくなります。一時的に改善しても、生活習慣が乱れると再び鼻がグズグズするのが特徴です。
鼻水・鼻づまり・ムズムズ…「鼻の症状」をラクにする養生法
「グズグズ鼻水タイプ」でお伝えしたように、東洋医学で鼻の症状は、肺や脾(胃腸)が深く関係しています。肺は鼻を通して外部とつながり、新鮮な空気を出し入れしています。
また、胃腸は食べたものから栄養を吸収し、顔や頭など体の上部にエネルギーを運ぶ役割があります。そのため、肺と脾が弱ると、酸素や栄養が不足し、鼻に症状があらわれます。肺と脾を健康にする養生を心がけて、鼻トラブルに悩まされない体質を目指しましょう。
全タイプ共通の養生法:肺を強くする「服を着たまま乾布摩擦」
肺を元気にするためにおすすめなのが、乾いたタオルで体をこする「乾布摩擦」です。といっても、裸になる必要はありません。服を着たまま手で腕や脚、お腹などをさするだけでOK。皮膚を活性化することで肺を健康に保ちます。
肺は使わないと衰えます。ウォーキングや散歩など、適度に体を動かして体に空気を取り込むことを習慣にしましょう。晴れた日の散歩は、陽のエネルギーである「陽気」も取り込むことができる最高の健康法です。
全タイプ共通の養生法:脂っこい食事を控えて胃腸を元気に
脾(胃腸)はデリケートです。脂っこい食事や冷えた食事ばかりが続いたり、甘い物を食べすぎたりすると、働きが落ちて栄養をうまく吸収できなくなります。胃腸を疲れさせるそのような食事を控えると同時に、粘膜を修復するため、十分な睡眠時間を確保することも忘れずに。
ダラダラ鼻水タイプの養生法:体を温める
ダラダラ鼻水タイプは、冷えが原因です。「鼻水が止まらなくてつらい」と感じたら、しょうが湯などの温かいドリンクを飲んで体を温めてみてください。漢方薬は、「葛根湯」「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」などがよく使われます。ドラッグストアや漢方薬局で相談しましょう。
ダラダラ鼻水タイプにおすすめの食べ物…しそ、パクチー、ネギ、しょうが、カモミール、シナモンなど
ネバネバ鼻水タイプの養生法:体の熱をとる
ネバネバ鼻水タイプは、症状が鼻水だけで熱が出ていなければ、ミントガムや緑茶などの熱をとる食べ物や飲み物をとりましょう。発熱している場合は、無理せず休むことを優先します。漢方薬は、「銀翹散(ぎんぎょうさん)」、「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」などがよく使われます。
ネバネバ鼻水タイプにおすすめの食べ物…ミント、菊花茶、くず、ごぼう、梨、柿など
グズグズ鼻水タイプの養生法:食生活に気を付ける
グズグズ鼻水タイプは、全タイプ共通の養生法でも紹介したように、肺と脾(胃腸)を労わる生活が重要。食生活の乱れが慢性的な鼻炎につながります。アルコールの飲みすぎにも気を付けましょう。漢方薬は、「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」、「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」などがよく使われます。
グズグズ鼻水タイプにおすすめの食べ物…米、大豆・枝豆・そら豆などの豆類、にんじん、山芋、サツマイモ、かぼちゃ、栗、りんご、柿など
※漢方薬は体質によって処方が異なります。漢方薬局やドラッグストアの薬剤師に相談してから購入してください。高熱などで体調が優れない場合は、無理せず早めに医療機関を受診してください。
3タイプ別「鼻の症状」に効果的なツボ
鼻水や鼻づまりは、一刻も早くラクになりたいもの。そんなときに試して欲しいのがツボ押しです。タイプ別にツボを紹介しますので、症状がつらいときはもちろん、予防のためにも習慣にしてみてください。
【急性】「ダラダラ鼻水タイプ」に効果的なツボ:大椎(だいつい)
大椎(だいつい):首を下に曲げたときに一番出っ張っているところ。
押し方:押すのが難しい場所なので、熱めのシャワーや、ドライヤーで温めるのがおすすめ。
【急性】「ネバネバ鼻水タイプ」に効果的なツボ:曲池(きょくち)
曲池(きょくち):ひじを曲げたときにできる、シワの外端。
押し方:反対側の手でひじを包み、親指でイタ気持ちいい強さでじんわり押しましょう。
【慢性】「グズグズ鼻水タイプ」に効果的なツボ:脾(胃腸)を元気にする足三里(あしさんり)
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人差し指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:骨の方に押し込むように、親指でグッと力を込めて、イタ気持ちいい強さで押しましょう。
【慢性】「グズグズ鼻水タイプ」に効果的なツボ:肺を元気にする中府(ちゅうふ)
中府(ちゅうふ):鎖骨の外側の下から。指2本分下がったところ。
押し方:親指でイタ気持ちいい強さで押しましょう。
今月の養生ポイント:乾燥しやすい秋は「肺と胃腸」にやさしく
秋は、東洋医学で乾邪(そうじゃ)の季節とされ、乾燥による不調があらわれやすい時期です。特に影響を受けるのが、肺です。肺は、「喜潤悪燥(きじゅんおそう)」といって、「潤いをよころび乾燥を嫌う」という特徴があります。
夏は大丈夫だったのに、秋になったら急に鼻がムズムズしだしたり、鼻づまりが起こったりするのは、肺の乾燥と関係しています。肺が弱ると免疫力が落ちて、風邪をひきやすくなり、そこに脾(胃腸)のダメージも重なると、体調が戻りにくくなります。
長く続いた猛暑の疲れが、そろそろ体に出始める時期。いつも以上に肺と胃腸を労わることが養生のポイントです。みなさんが、秋も心穏やかに元気に過ごせますように!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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