「抜け毛・薄毛」の原因は?4タイプ別 東洋医学のセルフケア|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「抜け毛・薄毛」がテーマ。4つの原因別に、髪のお悩みを改善する養生をご紹介します。
目次
ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ…原因別「抜け毛・薄毛」の4タイプを解説
ボリュームが減ってきた、頭皮が透けて見えるなど、年齢と共に増える抜け毛や薄毛のお悩み。シャンプーやブラッシングで以前より抜ける量が増えたと感じている人も多いでしょう。
1年の中で秋は、抜け毛が増える時期。夏に浴びた紫外線や強い日差し、冷房による乾燥などで頭皮や毛根、毛髪などが想像以上にダメージを受け、傷んで抜けやすくなっています。
そんな抜け毛や薄毛は、何も対策しなければ徐々に進行してボリュームがダウン…。早めにセルフケアを行うことで、髪はもちろん体の健康維持にも役立ちます。
東洋医学では、抜け毛・薄毛の原因は4つにわけられます。それぞれの特徴と養生法を紹介しますので、当てはまるタイプのセルフケアを参考にしてみてください。
(1)髪をつくる材料がない「ハリコシ不足」タイプ
1つ目は、「ハリコシ不足タイプ」です。東洋医学で髪は血の余りをあらわす「血余(けつよ)」とされています。血や、それを頭皮に届ける気(エネルギー)が不足することで、髪の毛の元気がなくなるのがこのタイプ。
髪のハリやコシがなくなって細くなり、次第に髪が抜け落ちていきます。過度なストレスや慢性的な睡眠不足、極端なダイエットなどが気血不足による抜け毛・薄毛につながります。
(2)肝と腎が弱っている「ボリュームダウンタイプ」
2つ目は、「ボリュームダウンタイプ」です。主な原因は加齢で、「血の貯蔵庫」といわれる肝(かん)や、生命力を司っている腎(じん)が年齢と共に衰えると、髪も老化の影響を受けます。
加齢以外にも、「ハリコシ不足」タイプと同じく、過度なストレスや睡眠不足で心身共に無理をしすぎる生活が続くと、肝や腎がますます弱くなり、抜け毛・薄毛が悪化します。
(3)ストレスが原因の「ガチガチ頭皮タイプ」
3つ目は、「ガチガチ頭皮タイプ」です。ストレスを受け続けると、全身に血を運んでいる肝の巡りが悪化。血が不足して頭皮はガチガチに固くなり、髪にも栄養が行き渡らなくなります。
仕事やプライベートで心が疲れている、気分が落ち込みやすい、イライラしやすいなど、ストレスから抜け毛・薄毛になるのがこのタイプ。気の巡りも悪くなり、お腹やわき、胸が張る、頭痛や生理痛がひどいなどの症状もあらわれやすくなります。
(4)食生活の乱れが原因の「ベタベタ頭皮タイプ」
4つ目は、「ベタベタ頭皮タイプ」です。暴飲暴食により、体にベタベタ・ネバネバした汚れの「湿熱(しつねつ)」が蓄積。湿熱は、脂っこくて味が濃い食事、甘い物やジャンクフードの食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎなどでたまり、頭皮は湿ってベタベタになります。
頭皮環境の悪化が続くことで、抜け毛・薄毛が増え、全体的にボリュームダウン。このタイプは、口臭や体臭もきつく、便秘や軟便、肥満気味なども特徴です。
抜け毛・薄毛は遺伝する?
抜け毛や薄毛で悩む多くの人が気になるのが、「親から遺伝はするのか」ということ。ボリュームダウンタイプでお伝えしたように、髪の健康には生命力を司る腎が関係しています。
腎は、両親から受け継いだ生まれ持った生命力です。東洋医学的には、もともと「腎精(じんせい)」といわれる生命エネルギーが弱いと、遺伝的に薄毛になる可能性が考えられます。
しかし、生まれ持った腎のエネルギーが少なくても、食事や生活習慣に気を使った生活を心がければ、その低下スピードはゆるやかになります。薄毛の遺伝が心配な人は、より一層、日々のセルフケアに目を向けてみましょう。
4タイプ別 「抜け毛・薄毛」を予防する養生法
抜け毛・薄毛対策に、頭皮や髪のケアに力を入れている人が多いと思いますが、根本的な改善を目指すなら、生活習慣を見直すことが大切です。4つの原因タイプ別に、生活のアドバイスとおすすめの食べ物をまとめました。タイプに合う養生で、髪を健やかに保ちましょう。
ハリコシ不足タイプ:睡眠時間をしっかり確保する
ハリコシ不足タイプは、髪をつくる血や、エネルギーを巡らせる気が不足。睡眠時間が短く、いつも疲れている人は、まずは1週間、布団に入る時間を少し前倒しして、体を休める時間を増やしてください。1週間続けてみると、日中の体が軽いと感じるはずです。良い睡眠サイクルをそのまま継続して、髪を元気に保ちましょう。
ハリコシ不足タイプにおすすめの食べ物…なつめ、卵、干しぶどう、桑の実(マルベリー)、ほうれん草、小松菜、にんじん、黒きくらげなど
ボリュームダウンタイプ:生活の乱れを最小限にする
ボリュームダウンタイプの原因は、加齢によるもの。加齢による老化は誰にでも起こり、仕方ないことですが、低下スピードを加速させないことが大切です。そのためには、早寝早起き、適度に体を動かすなど、規則正しく健康的な生活がもっとも効果的。生活の乱れを減らして、豊かな髪をキープしましょう。
ボリュームダウンタイプにおすすめの食べ物…黒米、ひじき、黒豆、大豆、レバー、肉類、イワシ、太刀魚、えび、烏骨鶏、黒ごま、くるみ、ブルーベリー、プルーン、クコの実、なつめなど
ガチガチ頭皮タイプ:心が癒される時間を持つ
ガチガチ頭皮タイプの原因はストレス。落ち込んだりイライラしたり、心が不安定になったら自分がよろこぶことをしてあげてください。例えば、行ってみたかった場所に出かける、“推し”の動画を見るなど、心が癒される時間をつくること。ストレスの原因を考えすぎず「楽しい・うれしい・心地よい」と思う行動を優先することが、髪の健康につながります。
ガチガチ頭皮タイプにおすすめの食べ物…春菊、ピーマン、せり、セロリ、金針菜(きんしんさい)、イカ、グレープフルーツ・きんかんなどの柑橘類、ミント、ハーブティー(ローズ、ラベンダー、カモミールほか)など
ベタベタ頭皮タイプ:腹八分目と休肝日を心がける
ベタベタ頭皮タイプは、食生活の改善から始めましょう。つい食べ過ぎてしまう人は腹八分目を意識する、お酒を飲み過ぎてしまう人は休肝日をつくるなど、これまでより暴飲暴食を控えることが、抜け毛を減らすポイントです。体にたまった湿熱をとるために、ウォーキングなど適度に汗をかく運動もおすすめです。
ベタベタ頭皮タイプにおすすめの食べ物…しじみ、あさり、ワカメや昆布などの海藻類、玄米、はと麦、大根、ごぼう、きゅうり、緑豆、もやし、春雨など
4タイプ別「抜け毛・薄毛」に効果的なツボ
髪のお悩みには、ツボ押しも効果的です。4タイプ別に紹介しますので、1日に数回、ツボ押しをやってみましょう。
「ハリコシ不足タイプ」に効果的なツボ:三陰交(さんいんこう)
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指幅4本分上の場所。※妊婦の方は「三陰交」のツボ押しは避けましょう。
押し方:足首の内側をつかむようにして、親指の腹でじんわり気持ち良い強さで押します。
「ボリュームダウンタイプ」に効果的なツボ:太渓(たいけい)
太渓(たいけい):アキレス腱と内くるぶしの間のくぼみにあるツボ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。ツボ周辺を触って冷たければお灸もおすすめ。
「ガチガチ頭皮タイプ」に効果的なツボ:太衝(たいしょう)
太衝(たいしょう):足の甲の親指と人差し指の骨の間を上に向けて指を滑らせ、指が骨と当たって止まるところのへこんだ場所。
押し方:親指の腹を当てて、ズーンと響く強さで押します。
「ベタベタ頭皮タイプ」に効果的なツボ:豊隆(ほうりゅう)
豊隆(ほうりゅう):すねの外側。ひざと足首の中間にあり、外側の筋肉が一番盛り上がっている場所。
押し方:親指をツボに当て、ゆっくりと肌が沈み込む程度に押します。
【全タイプ共通】頭皮マッサージで経絡・ツボを刺激
東洋医学でエネルギーの通り道とされるのが「経絡(けいらく)」です。頭には膀胱経(ぼうこうけい)、胆経(たんけい)、小腸経(しょうちょうけい)、大腸経(だいちょうけい)、胃経(いけい)、三焦経(さんしょうけい)、督脈(とくみゃく)といった多くの経絡(けいらく)やツボが点在しています。そのため頭皮を指で揉んだり、トントンと軽くたたいてマッサージしたりするのも抜け毛・薄毛対策に効果的です。
今月の養生ポイント:無理をやめて負荷を減らす生活が髪の健康に
東洋医学で、髪は「血余(けつよ)」と言われるとお伝えしました。つまり、髪の毛は「血の余り」でできているということ。血が不足すれば髪がやせ細って、抜けやすくなり、ツヤも失われてパサついた印象になります。反対に、年齢を重ねても髪が豊かでツヤのある人は、血が十分にありスムーズに巡っている証拠。
また、髪は「腎の華(じんのはな)」とも言われます。これは、腎の源である腎精(じんせい)が充実していることで、豊かな髪が生えてくるという意味。腎を元気に保つために重要なのは、無理しすぎないことです。
やるべきことがたくさんある現代女性のみなさん、体にも心にも負荷をかけすぎていませんか? 抜け毛や薄毛は、そんな多忙すぎる日常に「待った」をかけるサインかもしれません。今日から自分のための養生を心がけて、ツヤとボリュームのある髪を手に入れましょう。
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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